定性調査とは何か
はじめに、定性調査の定義と目的、活用される場面について整理しておきましょう。
定性調査の定義と目的
定性調査とは、数値では表せない情報を収集するための調査手法のことです。生活者の「心理」や「行動理由」など、潜在的なニーズへの理解を深めたい場合に用いられます。
定性調査を実施する目的は、数値化できない「質的な情報」の収集です。対象者との対話を通じて、内面や行動の背景を詳細に把握できることが定性調査の大きな特徴といえます。
定量調査との違い
定量調査は、数値や数量といった「量的な情報」の収集に用いられる調査手法です。回答が多い/少ない、割合が高い/低いといった結果が明確に表れるため、対象者層全体の傾向を把握したい場合に適しています。
一方で、対象者のインサイト(内面)をより深く掘り下げたい場合には、定量調査だけでは不十分なケースが少なくありません。そのため、定量調査と定性調査を組み合わせて実施することもあります。
定性調査が使われる場面
定量定性調査が活用される場面として、次の例が挙げられます。
・消費者インサイトを把握したいとき
・新たなニーズを発掘したいとき
・商品・サービスの改善点を深掘りしたいとき
たとえば、ある商品を人にすすめる可能性の有無は、定量調査によって把握できます。一方で、すすめたい/すすめたくない理由を具体的に聞き取るには定性調査が必要です。
定性調査の主な手法
定性調査の主な手法として、次のものが挙げられます。
・デプスインタビュー
・グループインタビュー
・オンラインインタビュー
・エスノグラフィー
各調査手法の特徴とメリット・デメリットは次のとおりです。
デプスインタビュー
デプスインタビュー(DI:Depth Interview)とは、対象者と1対1で実施するインタビュー調査のことです。対象者一人当たり30〜90分程度の時間を確保し、意見や感想をじっくりと聴取します。
デプスインタビューのメリットは、調査対象者の反応や発言を軸に、意見や感想を深掘りできる点にあります。一方で、一度に調査できる対象者は1名のみのため、大人数を対象とした調査を実施しにくい点がデメリットです。
グループインタビュー
グループインタビュー(FGI:Focus Group Interview)とは、4〜6名の対象者を同室に集めて実施するインタビュー調査のことです。似た属性の対象者を同じグループにすることで意見を言いやすくなったり、議論が活性化しやすくなったりする傾向があります。
グループインタビューは複数名を同時に調査できるため、効率良く進められる点がメリットです。一方で、健康や金銭といったデリケートなテーマに関しては、他の対象者に知られたくないという心理が働く可能性があります。このようなケースでは、デプスインタビューが適しているでしょう。
オンラインインタビュー
オンラインインタビューとは、ビデオ会議ツールを活用したインタビュー調査のことです。調査会場の確保や移動時間が不要のため、調査実施者・参加者双方にとってメリットのある調査手法といえます。一方で、対面インタビューと比べて微細な表情や仕草といった非言語情報を把握しにくいことや、参加者間での共感や共鳴といった相乗効果が生じにくくなることがデメリットです。
エスノグラフィー
エスノグラフィー(行動観察調査)とは、対象者の行動を一定期間にわたり観察する調査手法です。生活者の自宅や職場に訪問・滞在して実施されるため、ありのままの実態を把握できます。インタビューでは得にくい生活文脈の中での行動を知りたい場合に適した手法です。
ただし、調査員が対象者の生活空間に入り込んで調査することになるため、インタビュー調査よりも時間や費用が多くかかる傾向があります。また、ささいな行動に重要なヒントが潜んでいるケースもあることから、高度な観察力・分析力が求められる調査手法といえるでしょう。
定性調査の進め方(全体フロー)
定性調査の大きな流れを紹介します。まずは全体像を把握しましょう。
調査目的の設定
定性調査を成功させるには、調査を通じてどのような情報を得たいのか、目的を明確にしておくことが重要です。調査を実施すること自体が目的ではなく、調査を通じて得られた結果を意思決定やその後の施策に生かす必要があります。調査目的を明確にしておくことは、聞き取るべき事項の抜け漏れを防いだり、調査結果の分析方法やまとめ方を見誤ったりしないためにも欠かせないポイントです。
仮説設計
仮説設計とは、調査実施前に「どのような結果が得られる見込みか」を仮に決めておき、調査目的を達成するための質問事項や対象者を定義することです。具体的には、「誰が(ターゲット)」「何に困っているのか(課題)」「どうすれば解決できるのか(解決策)」を定義し、これらを検証するための質問を設定します。
調査設計(手法・対象者・質問)
事前に立てた仮説を元に、調査目的の達成につながる調査手法・対象者・質問を設計します。調査を通じて新たな発見に出会えるかどうかは、「誰に何をどのように聞くのか」にかかっているからです。調査目的に立ち返り、新たな発見につながるにはどんな人に質問すればいいのか、何を聞く必要があるのか、どのような尋ね方が適切かを設計し、質問内容と全体の流れをまとめた「インタビューフロー」を作成します。
実査(インタビュー実施)
インタビューフローと質問項目に沿って調査を実施します。インタビューでは対象者の回答をいかに深掘りできるかが重要なポイントです。インタビュー内で気になることがあれば、積極的にヒアリングして本音を引き出す必要があります。はじめは簡単に答えられる質問から入り、対象者との心理的な距離が縮まったタイミングで、より踏み込んだ質問をしていくことが重要です。
分析・示唆出し
調査実施後は、得られた回答を分析します。定性調査は数字や割合を扱うわけではないため、定量的な分析はできません。たとえ少数意見であっても、深く狭い情報からアイデアの種を見出していくことが大切です。
インタビュー調査の結果は定性情報のため、受け取り手によって解釈が異なる可能性があります。関係者間で意見を交わし合う「デブリーフィング(振り返り会話)」の場を設け、感想や意見を出し合いながら認識合わせを行い、具体的なアウトプットへと落とし込んでいくとよいでしょう。
インタビュー設計のポイント
定性調査の成否は「インタビュー設計」にかかっていると言っても過言ではありません。良い質問設計とは何か、バイアスを避けるにはどのように質問すればよいのか、どうすれば回答を深掘りできるのか、の3点からインタビュー設計のポイントを確認しておきましょう。
良い質問設計とは何か
良い質問設計の条件は「目的が明確であること」「オープンクエスチョンであること」「中立であること」「ラダーリング(構造化)されていること」の4点です。
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条件
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概要
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質問の目的が明確であること
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「何が知りたいのか」を端的に伝えている。
「1Q1A」(1つの質問に対して1つの答え)になっている。
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オープンクエスチョンであること
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Yes/Noでは完結しない聞き方をしている。
具体的な行動や理由、感情を引き出している。
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中立であること
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回答を誘導していない。
対象者の本心を引き出している。
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ラダーリング(構造化)されていること
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顕在化した意見や感想から、その根底にある感情的・個人的価値を深掘りしている。
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上記の原則にもとづき、答えやすい質問から徐々に踏み込んだ質問をしていくことで、回答者が答えやすい流れを作ることが大切です。
バイアスを避ける聞き方
インタビューでは、質問する側のバイアスにより意図せず回答を誘導してしまう可能性があります。バイアスを避けて質問するには、中立な表現を心がけ、誘導的な表現を用いないようにすることが重要です。
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×バイアスがかかった質問
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◎バイアスを避けた質問
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「この商品は良いと思いますか?」
→良し悪しに回答が誘導されている
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「この商品についてどう感じましたか?」
→純粋な意見や感想を引き出している
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「商品は就寝前に使用しますよね?」
→質問者側で状況を限定している
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「商品をどのような場面で使用しますか?」
→利用シーンの実態を引き出そうとしている
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「〇〇は人気がある商品ですが…」
→商品の評価が前提条件になっている
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「〇〇という商品がありますが…」
→評価を示さず中立な視点で質問している
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深掘りするためのテクニック
対象者の回答を深掘りするには、「行動・体験」「理由・動機」「感情・感覚」「数値・変化」を尋ねる質問を織り交ぜるのがコツです。
・行動・体験:「〇〇を使う直前に何をしましたか?」「使用時のエピソードを教えてください」
・理由・動機:「なぜ〇〇を使おうと思ったのですか?」「何がきっかけで使い始めましたか?」
・感情・感覚:「〇〇を使っていてどう感じましたか?」「何か気になったことはありますか?」
・数値・変化:「〇〇を使用したことで、どのくらい時間が短縮されましたか?」
なお、「使い心地はどうでしたか?」「改善点を挙げてください」といった、何を答えればよいのか曖昧な質問は避ける必要があります。聞きたいことを絞り込み、ピンポイントで質問することが大切です。
対象者リクルーティングの進め方
定性調査における「リクルーティング」とは、調査の対象者となって参加してもらう人を確定することを指します。対象者条件の設計方法とリクルーティングの主な手段について見ていきましょう。
対象者条件の設計方法
リクルーティングの対象者条件は、「誰の何を知りたいのか」を軸に、基本属性と行動・価値属性を組み合わせて設計します。
1. 調査目的の明確化:「どのような人に何を質問し、何を知りたいのか」を定義する。
2. 基本属性:年齢、性別、居住地、家族構成、住居形態、職業、年収帯などを絞り込む。
3. 行動・価値属性:商品の購入経験、利用頻度、ブランド認知、課題、悩みなどを絞り込む。
条件を絞り込みすぎると対象者が見つかりにくくなり、反対に緩すぎると対象外の参加者が現れやすくなります。まずは理想的な条件を設定した上で、該当する対象者が少ないようなら徐々に条件を緩和していくとよいでしょう。
リクルーティングの主な手段
リクルーティングの主な手段として、「リサーチ会社が保有するアンケートパネルの活用」「オンラインインタビューツールの活用」「自社でのリクルーティング」の3パターンが挙げられます。それぞれの手段のメリット・デメリットは次のとおりです。
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メリット
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デメリット
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アンケートパネル
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条件に適合する対象者に即座にアプローチできる。
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母集団が小さいターゲットへのアプローチは難しい場合がある。
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オンラインインタビュー ツール
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地理的制約を受けることなく、対象者を迅速に確保できる。
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一定水準のITリテラシーを備えた層に対象者が限定される。
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自社でのリクルーティング
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既存顧客リストなどを有効活用できる。
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条件に合う対象者を確保できる保証がない。
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よくある失敗と注意点
調査対象者リクルーティングのよくある失敗として、次のものが挙げられます。
・参加意欲の高さが裏目に出てしまう
良かれと思い、企業側が求める回答の「正解」を模索してしまうパターンです。アンケートの回答欄や電話でのコミュニケーションを踏まえて、企業側に意見を寄せる傾向が見られる候補者をあらかじめ除外しておく必要があります。
・謝礼目当ての参加者が混在してしまう
謝礼が主目的の参加者は、回答の信頼性が低い可能性があります。モニターの調査協力謝礼の額と受取回数を調べるシステムを活用して事前確認を実施する、これまでの調査参加者のリストを作成するなど、同じ人の連続参加を避ける仕組みを構築しておくとよいでしょう。
・明らかに対象外の参加者が招集されてしまう
商品の使用経験がある人が対象であるにもかかわらず、使用経験がない人が混在してしまうようなパターンです。オンラインインタビューであれば、事前の接続テストの際に所有している商品を見せてもらうなど、確認の工程を挟むことをおすすめします。
定性調査の分析方法
定性調査は数字や割合を扱うわけではないため、定量的に分析するべきものではありません。では、どのように分析を進めればよいのでしょうか。「発言の整理方法」「共通点・パターンの抽出方法」「インサイトの導き方」に分けて解説します。
発言の整理方法
定性調査を通じて得られた回答は、録音や調査票などの形式で記録されています。このままでは分析が困難であることから、次の段階を踏んで整理していきます。
1. データクリーニング:音声の文字起こしや回答のリスト化を行う
2. データ理解:全体を通じて回答の傾向を把握する
3. 抽出:発言の端々に表れている共通点やパターンを抽出する
4. 構造化:分類された回答をグループ化し、KJ法などを用いて図式化する
5. 解釈:発言に表れている動機や本質的な要望を特定する
共通点・パターンの抽出
定性調査の分析に際して、回答者の発言に見られる共通点やパターンをいかに抽出するかが分析精度を左右します。回答を構造化するには、「コード化」「グルーピング」「テーマ抽出」のプロセスを経ることが大切です。
・コード化
回答者の発言や行動に表出しているキーワードにラベル付けをします。
(例:「価格」「機能」「不満」など)
・グルーピング
類似したコード(ラベル)をまとめます。
(例:「不満」が表れているコメントをグルーピングする など)
・テーマ抽出
各グループにおいて、繰り返し出現する回答のパターンや共通する感情、対照的な意見などを見つけ、テーマとして抽出します。
インサイトの導き方
対象者のインサイトを導き出すには、発言の背後にある感情や行動の動機を深掘りすることが重要です。発言そのもの以上に、「なぜその発言をしたのか」「どんな感情が背後にあるのか」といった点を深く問うことに分析の意義があります。次の3点を意識して、インサイトの特定につながる分析を行いましょう。
・Why?を重ねる
なぜ?という問いを積み重ねながら、回答を深掘りしていく分析方法です。「〇〇と回答している」→「なぜその回答なのか」→「なぜその感情を抱いたのか」といったように、Whyを繰り返すことで発言の背景に迫っていきます。
・矛盾点に着目する
回答者自身が自覚していないところで、発言や行動に矛盾が生じているケースがあります。こうした矛盾点には、本音と建前のギャップが表れていることも少なくありません。矛盾が生じた原因を深掘りすることで、本音に到達できる可能性があります。
・感情の起伏に注目する
対象者の口数が多くなったり、反対に回答が急に簡素になったりした場面には、感情の起伏が表れていることがあります。感情の変化をもたらすきっかけとなった言葉やトピックは、対象者のインサイトを特定するための重要なヒントです。
定性調査のサンプルサイズの考え方
サンプルサイズとは、1つの調査において「何人にアンケートを取ったか」「何件のデータを集めたか」を表す数字です。たとえば、100人にアンケートを実施した場合、サンプルサイズは100と表します。サンプルサイズに関する基本的な考え方を確認しておきましょう。
なぜ少人数でよいのか
調査対象者が少人数でよい理由は、サンプルサイズよりも回答の精度が重要だからです。サンプルサイズは大きければよいというものではありません。調査サービスの多くは、回収する回答数(=サンプルサイズ)に応じて価格が変動するケースがほとんどです。回収数が増えるほど費用や回収に要する時間がかかります。集まった情報の精度が十分であれば、必要数以上回答を増やしても判断はほぼ変わりません。逆にグループ分けの条件(=サンプル数)が多すぎると、ノイズが入り分析や結論に影響する場合もあります。
適切な人数の目安
調査手法別に見た場合のサンプルサイズの一般的な目安は次のとおりです。
・デプスインタビュー:10〜20名(1セグメントあたり3〜5名)程度を推奨
・グループインタビュー:12〜24名(4〜6名×3〜4グループ)程度を推奨
・オンラインインタビュー:10~20名(1セグメントあたり3〜5名)程度を推奨
・エスノグラフィー:5〜10名程度を推奨
ケース別の設計例
・例①:製品コンセプトや消費者インサイトに関する調査
可能な限り多様な意見を集めておくのが望ましい。
⇒6名へのグループインタビューを4グループ分実施
・例②:ターゲットが明確に絞られている商材に関する調査
サンプルサイズは比較的小さくても問題ないケースが多い。
⇒10名前後へのオンラインインタビューを実施
・例③:ニッチな製品・サービスやテーマが限定的な商材に関する調査
サンプルサイズが比較的少数でも調査として成立する可能性がある。
⇒10名へのデプスインタビューを実施
定性調査を自社で実施する際の課題
定性調査を自社で実施した場合、さまざまな課題が発生することが想定されます。主な課題として挙げられるのは「対象者の確保」「インタビュースキルへの依存」「分析の属人化」「バイアスが入りやすい」の4点です。
対象者の確保が難しい
調査対象者をどのようにして確保するかは、自社で定性調査を実施する際の大きな課題です。当然のことではありますが、調査に協力してくれる人は誰でもいいわけではありません。条件について相違があると、せっかくインタビューをしても求めていた情報が得られないことになりかねません。求める生活者像に合致する人を、必要とする人数分だけ確実に採用できるかどうかがポイントとなります。
インタビュースキルに依存する
定性調査の結果は、インタビュー時の「聞き方」しだいで左右されがちです。適切な質問の仕方を熟知している調査員を確保できるか、質問の順序や尋ね方、回答を深掘りするスキルを備えているか、といった点を注意深くチェックしておく必要があるでしょう。
分析が属人化しやすい
調査結果の分析方法や分析の精度が属人化しやすいという課題もあります。誰に向けてどのような目的で調査結果をまとめるのかを念頭に置き、データの粒度や重点的に伝えるべきポイントを決定しなければなりません。社内担当者の分析スキルしだいで、調査結果が有用なものになるかどうか決定づけられると言っても過言ではないでしょう。
バイアスが入りやすい
組織に属している従業員特有のバイアスがかかりやすいことも課題の1つです。社内では常識と思われていた前提が、実は一般的な感覚とずれていた、といったことも起こり得ます。調査設計の段階から調査実施、分析に至るまで、バイアスがかかっている可能性があるという視点に立って進める必要があるでしょう。
定性調査を外注すべきケース
定性調査を調査会社やマーケティング会社に依頼したほうがよいのは、どのようなケースでしょうか。具体的なパターン別に解説します。
重要な意思決定を伴う場合
経営方針や事業計画に影響を与える重要な意思決定を伴う場合には、精度の高い調査結果と正確な分析が不可欠です。誤った意思決定を下さないためにも、良質で豊富なサンプルを保有し、定性調査に関する専門スキルを備えている委託先を選定するべきでしょう。
新規事業・ブランド調査の場合
新規事業やブランド調査に関する定性調査を実施する場合は、専門業者に依頼することを強くおすすめします。まだ形になっていない事業に関する質問や、認知度が不明のブランドに関する質問は設計の難度が高く、対象者の絞り込み方や収集した回答の整理にも高い水準のスキルが求められるからです。
社内にノウハウがない場合
定性調査に必要なノウハウが社内に蓄積されていない場合や、過去に調査実績がない場合には、調査を専門とする事業者に委託するべきでしょう。調査設計や対象者のリクルーティング、調査実施、結果分析に至るまで、定性調査には高度な専門スキルと相当な工数が必要になります。一連のノウハウを1から構築するよりも、すでにノウハウが確立されている専門事業者に依頼するほうが得策です。
外注する際のポイントと選び方
定性調査を自社で実施するのが現実的でない場合は、外注を検討することをおすすめします。外注する際のポイントと調査会社の選び方について見ていきましょう。
調査会社の選び方
調査会社を選ぶ際には、次の5点に着目することが大切です。
・調査手法への対応状況:調査目的の達成に必要な手法に対応しているか
・業界に関する知見:自社と同業種で調査を実施したことがあるか
・リクルーティングの信頼性:自社パネルを豊富に保有しているか
・分析力・提案力:調査結果を分析し、具体的な提案につなげるノウハウが確立されているか
・所要期間・費用:調査に要する期間や費用が自社の計画に合っているか
費用の考え方
定性調査の費用相場は、デプスインタビューであれば対象者一人あたり3〜10万円程度、グループインタビューであれば1グループあたり10〜100万円程度です。
調査費用は安ければ良いというものではありません。リクルーティングの難度や適切なサンプル数、レポートの質などを加味して、適正価格を見極める必要があります。
依頼時に確認すべきポイント
定性調査を依頼する際には、次の5点を必ず確認しておくことが大切です。
・調査目的の共有:調査結果をどのような意思決定に役立てたいのかを共有できているか
・調査の実施体制:経験豊富なインタビュアーをアサインできるか、一気通貫で対応できるか
・納品物の形式:具体的に何が納品されるのか(文字起こし、レポート、インサイトマップなど)
・追加費用の有無:調査の実施状況等に応じて追加費用が発生する可能性があるか
・個人情報の取り扱い:調査を通じて収集した情報を安全かつ適切に管理できるか
ネオマーケティングでは、お客様の課題やお悩みを丁寧にヒアリングした上で、最適な調査手法をご提案しております。定性調査の実施をご検討中の事業者様はもちろんのこと、まずは現状の共有やご相談から始めたい事業者様も大歓迎です。ぜひネオマーケティングにご相談ください。
定性調査の活用事例
商品開発での活用
対象者の本音を引き出すことで、数値化できない感情や行動の動機が明らかになります。言語化されていない不満や欲求を特定できれば、新商品の開発や既存商品の改良に役立てられるでしょう。
【活用事例:株式会社セブン&アイ・ホールディングス様】
訪問観察調査から得た結果にもとづき、ワークショップを通じて商品コンセプト開発へとつなげた事例です。エクストリームユーザー(極端な使い方やこだわりをもつ方々)の行動を観察し、商品開発や差別化のヒントを見出しました。ワークショップを通して「すぐにテスト品を作りたい」というレベルのアイデアが発案され、商品開発に対する意識改革につながったことも大きな収穫でした。
▼事例詳細
ブランド戦略での活用
自社ブランドに対するイメージの実態や、競合ブランドとの立ち位置の違いが、対象者の深層心理を引き出すことで浮き彫りになります。こうしたリアルな声が、自社に適したポジショニングや、ブランドメッセージの最適化に役立つでしょう。
【活用事例:ミルウォーキーツール・ジャパン合同会社様】
日本市場に参入して間もない建設工具メーカー様が、日本市場におけるブランド認知の強化に定性調査を活用した事例です。若い世代が建設業界に対して抱いているイメージの調査結果をリリースし、建設業界の根本的な課題に切り込んだことが、認知拡大と新規ユーザー獲得に寄与しました。収集した調査結果は、デジタルマーケティングを通じた若い世代へのアプローチにも活かされています。
▼事例詳細
顧客理解の深化
定量データに表れていない本当の購入動機や、自社が予測していなかったニーズを引き出せる可能性があります。商品・サービスの具体的な利用シーンや感情の変化といった顧客の深層心理への理解が深まり、より実態に即した戦略立案につなげられるでしょう。
【活用事例:株式会社夕月様】
老舗かまぼこメーカー様が、現状のブランド認知や購買実態、消費実態を可視化するために定性調査を活用した事例です。自社の認知度が高いエリアをあえて避け、笹かまぼこ全般への認知が浸透しているエリアに絞って調査を実施したことで、より中立的で実態に即した消費者の声を収集できました。板かまぼこをチャーハンや炒め物、サラダに使うほか、さらには天ぷらにして食べている顧客も存在するなど、同社が想定していなかった活用シーンを発見できたことも大きな収穫です。こうした新たな発見が、商品開発のアイデアに活かされています。
▼事例詳細