前回第一回では、マーケティングリサーチ業務におけるChatGPTの活用例をお伝えしました。
第二回では、ChatGPTとリサーチャーの役割を明確定義し、相互補完関係を構築するために、リサーチャーはどうあるべきかを考察してみようと思います。
第一回:ChatGPTを活用したマーケティングリサーチの実践
第二回:マーケティングリサーチャーとChatGPTの役割の比較
第三回:ChatGPTをパートナーにするためのプロンプト作成とおススメ拡張機能・プラグイン
第二回の主なトピック
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✓ChatGPT等の生成AIの盛り上がりを危機感ではなく好機と捉える
✓どこでどう使えるか試行錯誤してみる
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はじめに
マーケティングリサーチャー(※以下リサーチャー)は、市場調査や消費者の意見収集、データ分析を通じて、
企業の戦略立案やマーケティング活動をサポートするのに対して
ChatGPTはAI技術を利用して、データ収集や解析の効率化という点においてリサーチャーの業務をサポートしることが可能です。
人間にも限界があるように現時点でのChatGPTにも限界はあります。
例えば、ChatGPTは高度な自然言語処理技術を持っていますが、人間が持つ洞察力や状況判断力、コミュニケーション能力などには及ばない部分があります。
この点を念頭に置くと、リサーチャーの価値を生み出す領域を定めて、その領域に選択と集中することが重要といえます。
そこで、リサーチャーとChatGPTそれぞれの優位点、ChatGPTの登場によってみえてきたリサーチャーの価値創造領域をみていきます。
マーケティングリサーチャーが優れている点=価値を創れる点
●人間独自の観察力(インサイトを創る力)
・質的リサーチでの洞察力
人間のリサーチャーは、質的リサーチにおいて、独自の観察力や洞察力を発揮します。
感情や言葉に現れないニュアンスを読み取る能力は、現段階のAI技術では十分に再現できません。
・状況に応じた適応力
人間は状況に応じて適切な判断や対応を行うことができます。一方、ChatGPTはプログラムされた範囲内でしか対応できず、予期せぬ状況や複雑な問題には対処が難しい場合があります。
●コンテキストの理解と適用
・言語のニュアンスと文化的背景の理解
人間は言語のニュアンスや文化的背景を理解し、それをリサーチに活かすことができます。
一方、ChatGPTは文法や語彙を理解することができても、言葉の奥にある意味や文化的背景を完全に理解することは難しいです。
・独自の経験と知識の活用
リサーチャーは、自身の経験や知識を活用して、リサーチの質を高めることができます。
しかし、ChatGPTはプログラムされた情報に基づいて動作するため、独自の経験や知識を活用することはできません。
●人間関係とコミュニケーション能力
・インタビューでの対話力
マーケティングリサーチャーは、インタビューやワークショップを通じて、対象者との対話を通じて情報収集ができます。
人間同士のコミュニケーションは、感情や関係性が大きく影響するため、AI技術ではまだ完全に再現できない領域です。
●非言語コミュニケーションの解釈
マーケティングリサーチャーは、非言語コミュニケーション(表情や身振り、声のトーンなど)を解釈し、リサーチ結果に反映させることができます。
しかし、ChatGPTは非言語コミュニケーションを理解することが困難であるため、この点では人間のリサーチャーには及ばないでしょう。
ChatGPTが優れている点=リサーチャー自身で価値を出す必要がなくなる領域
●スピード
ChatGPTは、人間のリサーチャーよりもはるかに速く大量のデータを処理し、分析することができます。
これにより、時間とコストを節約し、より多くの情報に基づいた意思決定をより迅速に行うことができるようになります。
●正確さ
ChatGPTは、テキストとコードの膨大なデータセットでトレーニングされているため、リサーチャーよりも正確な結果を生成することができます。ただし、デスクリサーチはfactチェックがマストなので、調べ事においては正確性は担保されていません。
ChatGPTがもたらすリサーチャーにとってのメリット
✓効率性の向上
ChatGPTは大量のデータを素早く処理し、分析できるため、リサーチャーの業務効率が大幅に向上します。また、繰り返し行われるルーチンタスクや簡単な分析作業をAIが担うことで、リサーチャーはより高度な分析や戦略立案に専念できます。
✓コスト削減
ChatGPTを活用することで、データ収集や分析にかかる人件費や時間コストが削
減されます。これにより、リサーチャーはより効果的かつ効率的にリサーチ活動を行うことができます。
✓柔軟性の向上
ChatGPTは多様なデータソースから情報を収集し、解析することができます。
これにより、リサーチャーは様々な市場状況や変化に対応しやすくなり、迅速かつ柔軟なマーケティング戦略を策定できます。
<事例>「日々の情報インプット量が格段に上がった」
従来:業界の動向やトレンドのインプットのため、1時間程費やして様々な媒体の記事に目を
通し、マーケティングのニュース、生成AIのニュースを読んでいました。
現在:読むから見るに変わりました。これまでと同じ情報量であれば1/3以下に減り、同じ1時間でもインプット量が格段に上がっています。
何をしているか:徹底した要約
- Chrome拡張機能でweb記事を要約
- Chrome拡張機能でPDFを要約
- Chrome拡張機能でYouTubeを要約
- ChatGPTのプラグインを使って記事を要約・図解
結論:これからリサーチャーはどうあるべきか
ChatGPTは、マーケティングリサーチの効率と効果を向上させるための強力なツールです。しかし、人間のリサーチャーは、独自のスキルや能力によって価値を高め、リサーチプロセスにおいて重要な役割を担っていくことに変わりはありません。
これからのリサーチャーのあるべき姿
- 好奇心旺盛で探究心が旺盛であるべき
- 新しいことを学び、新しいアイデアを探求することに貪欲であるべき
- 創造的で革新的であるべき
- 多様なコミュニケーション能力を有すべき
このような資質があれば、ChatGPTをはじめとした生成AIと共存・共創していくことができるでしょう。
言い換えれば、この領域にこそマーケティングリサーチャーは価値を生み出せるといえます。
情弱にならないためにフル活用、業務を作業から脱却するためにフル活用頭を使うために秘書役として生成AIを活用できるリサーチャーが生き残るのだと思います。
第三章では、ChatGPTをはじめとした生成AIをマーケティングリサーチにどう活かせるか、具体的に紹介していきます。次世代のマーケティングリサーチを創るために・・・
・・・第三弾:「ChatGPTをパートナーにするためのプロンプト作成とおススメ拡張機能・プラグイン」に続く