「ネオマーケティング」ライターチームです。
PRは、「パブリック リレーションズ」という言葉の頭文字を取った略語で、企業をはじめとした組織や団体、そしてそれを取り巻く社会が良好な関係性を築けるように努めるための考え方とそれに伴う活動のことです。
では今回取り上げる戦略PRとはどのようなものなのでしょうか? ここではPR活動や広報活動との違い、戦略PRを進めていく上で押さえておくべきポイントなどを解説していきます。
戦略PRとは
PRという言葉は私たちの日常にすっかり溶け込んでいるワードですが、「その意味は?」と問われると、明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。
具体例としては、商品やサービスの展開にあたり、生活者に対してその魅力を周知させるため、メディアと良好な関係を築いていく――といったものが挙げられます。
そして、これまでアピールの手法として利用されてきたPR活動とは別に、価値や魅力を各種メディアと共有し生活者の購買意識に刺激を与えることを目的としたのが戦略PRです。
●誰もがメディアになれる時代だからこそ戦略PRが重要
メディアといえば、一昔前ならテレビや新聞、そして雑誌などが主でしたが、SNSの普及が進んだ現代は誰もがメディアとなり得る時代です。
さらに、インターネットが日常のツールとして生活に浸透した結果、生活者の購買意識も多様性を極め、これまでのPR活動だけでは生活者の求める価値を提供できなくなってきました。そこで注目されているのが戦略PRの手法です。
戦略PRをわかりやすく解説するならば、従来のようにテレビでコマーシャルを流して無理矢理生活者の購買意欲をかき立てるのではなく、雰囲気作りで購買意識を刺激し、生活者から共感を得た上で購入したいと思ってもらえるように誘導するための活動です。
通常のPR活動ではどれだけの生活者に魅力をアピールできるかが大事でしたが、戦略PRにとって大事なのは「どれだけ拡散できるか」になります。そしてそのためのコンテンツ作りが重要になるのです。
戦略PRに求められる本質
戦略PRの本質は、“生活者に自社のブランドがどう把握されているのか”といった、ブランドのポジショニングを把握することです。
企業側は、「センスの良さ」がPRポイントだと考えていたとしても生活者は「実用性に欠ける」と認識していたり、商品の認知度が課題だと思っていてもある層には深く知られていたといったこともあります。
企業が考えているブランドイメージと、生活者が抱いているブランドイメージは、必ずしも一致しているとは限らないということを念頭に置くことが重要です。
●錯綜する情報の中でブランドのポジショニングを把握する
ブランドイメージは、その時々の社会的な出来事やトレンドなどにも左右されます。生活者が商品カテゴリーに求めていることや購買のきっかけなどを調査分析し、変化しやすいブランドイメージの“いま”を把握しておくことが大切です。
そうすることで、生活者の希望に添った、今この瞬間にPRすべきポイント(PRのバリューポイント)や、その内容に価値を見出すターゲットの属性が見えてきます。
ヒット商品を生んだ企業の社長やマーケティング・PR担当者、高視聴率を誇るテレビ番組のプロデューサー、そして読者人気の高い雑誌の編集長は必ずこう言います。
「ユーザー(または視聴者・読者)に一人でも多く会うことに答えがある」と。
戦略PRの本質は、まずターゲット層をよく知ることからがスタートです。
PRの仕事は商品発売のスケジュールや在庫削減など企業側の都合で進められがちですが、そこを生活者視点で考え直す必要があります。
企業側の都合ではなく、生活者目線でPRプランの立案をし実行することで、企業価値を高めファンを増やせます。そうしてこそはじめて戦略PRとしての価値が生まれます。
●広報、PR、広告の違い
広報、PR、広告を混同してしまっている人も少なくありません。3つの違いを整理します。
・PR
パブリックリレーションズ(Public Relations)の略であり、Public(公共)とのRelations(関係づくり)をすることです。
商品やサービスその他様々な情報発信の機会を、企業内外との関係の中で構築し、「誰に」「何を」「いつ」「どのように」伝えるかを選定して、多くの情報収集の中で戦略的・継続的におこなう活動です。
第三者が自発的に発信する機会を創出し、企業やブランド・商品やサービスの認知だけでなく、信頼やイメージ(世界観)、共感や好感度などを創り上げます。
・広報
企業が社会に向けて情報を発信することを広く意味します。
取材の問い合わせ窓口として対応し、商品やサービスの情報をメディアなどに共有したり、メディアなどからの依頼に応えて商品を貸し出したり、サービスや企業の情報を提供します。
外部との伝達窓口として会社を代表して対応をおこなうと共に、メディアなどの反響や意見に適切に対応することも広報の一環です。
自社内の合意を取り纏め、リスクを避け、企業にメリットをもたらすよう適切で迅速な対応をおこないます
・広告
広告料を払ってメディアの広告枠・広告商品(編集タイアップなど)を購入します。
PRが、メディアに料金を払わずに(実費や協力費を払うことはありますが)、メディアが自身の判断で自身の言葉により発信するのに対し、広告は、発信内容やタイミング、発信先やボリュームなどを企業が決めます。
メッセージが画一化するため深いコミュニケーションは難しいですが、一定の認知を高める即効性があります。(プレスリリースがそのままメディアに掲載されることは、広告に近い宣伝活動とも捉えられます。)
会社として戦略PRを成功に導くためには
戦略PRは、通常のPR活動のようにメディアと良好な関係性を築くだけでは成功へと導けません。
まず戦略PRでは、
目標や成果を数値化する
生活者にとって価値のある情報を提供する
長期継続的な視点で活動する
ステークホルダーとのコミュニケーションは双方向であること
以上のポイントを押さえておくことが大切です。
●KGI KPIの設定
営業部門は売り上げが数字にはっきりと表れますし、広告部門は出稿枠や広告量、広告内容を確認して購入できるので目標や成果を数値化しやすいのが特徴です。一方PRは、数字や数値などのように可視化して把握することが難しいため、具体的・数値的目標を立てにくい部門です。
そのため従来のPRでは、最終目標KGI(経営目標達成指標)を「PR対象案件のリーチ数」に設定し、プレスリリースの配信数や雑誌・テレビでの露出を広告換算して、目標達成のための中間目標KPI(重要業績評価指標)を定めたりします。
しかし、これでは定量的な結果検証のみしか得られず、ターゲットとする生活者にどのような心理変容を与えたのかを明確にできません。また、ネガティブに受けとめられてしまうなど、こちらの意図とは異なった形で届いたメッセージも成果として含まれてしまいます。
PRはあくまでもメディアとの関係がベースにありますが、戦略PRはさらにその先の生活者とも良好な関係を構築していくことを目指します。戦略PRを成功させるためには、KGI・KPIの設定も変えていかなくてはなりません。
戦略PRのKGIは「ファン、ロイヤルカスタマーの創出」です。この目標を達成するためのKPIは、
生活者の心理変容
ブランドイメージ
社会への影響
などを調査によって指数化し設定します。
戦略PRがもたらす生活者の心理変容は長く続けることで結果に表れますので、売り上げへの貢献度は「心理的満足度の高まり」・「ファン、ロイヤルカスタマーの増加」などの要素を長期的スパンで検証しなければなりません。
企業体である以上、期ごとの数値的な目標から逃れることはまずできませんが、企業のリソースや商品カレンダーに縛られる内向きの要素は見直す必要があり、生活者のニーズや心理的要素を調査した上で目標を定めていく視点が求められます。
●メッセージはシンプルかつ具体性を重視
テレビコマーシャルなどのようにお金を出して枠を買う広告ならばともかく、コストをかけずにたくさんある情報のすべてを発信することはまず困難です。なぜなら、メディアで発信できる情報枠が限られているためです。
こちらにとって有益な情報だけをメディアが拾って発信してくれれば楽ですが、情報が溢れている現代にあってそれを期待するのは不可能です。それならばコストをかけて情報枠を買い取り情報発信した方が、遥かに確実性が高いでしょう。
数ある情報の中から必要な情報だけをメディアに取り上げてもらうためにはどうすればいいかといえば、当然ながらメディアからその情報に目を留めてもらうことです。そして、メディアから目に留めてもらえる情報とは何かといえば、「メディアの向こう側にいる生活者にとって“価値ある内容”」でなければならないのです。
実際に、どのようなメッセージがメディアの目に留まりやすいかというと、
インパクトがあること
短くてシンプルであること
生活者にとって具体性があること
わかりやすいこと
などがポイントです。
そしてメディアの目に留まりやすいPRメッセージを打ち出すためには、
ターゲットの属性をできるだけ絞る
そのコンタクトメディアに的を絞る
以上の2点を意識することが大切です。
多くのメディアの目に留まって情報が掲載されたとしても、そのメディアの先にターゲットユーザー(ポテンシャルカスタマー)がいなければ意味がありません。
精査してキーメッセージを定め、その世界観の価値がメディアに届くと、メディア側は「その情報が信頼できるものか」・「客観的に見て価値があるものか」という点から掲載可否を判断します。
「この企業は業界トップになり、注目されそうだ!」、「おもしろい取り組みをしている、ぜひ取材したい!」と思わせることがポイントなのです。
その際には、キーメッセージを裏付ける数値や開発ストーリー、第三者からのお墨付きや実体験など、可視化した情報を提供するのが効果的です。
テキストはもちろん、写真や動画などメディアが即座に使いやすいPRツールやコンテンツを用意することも有効ですし、合わせて簡素化された軽く短いデータや精度の高い高画質なものなどを用意しておくことで、より高い効果を期待できます。
●長期継続的であること
戦略PRにとってメディアは強力なパートナーになり得る存在ですが、その関係性はすぐに築けるものではありません。メディアの先にいる生活者が欲しい情報を長期的かつ継続的に提供し続け、それを根気強く続けていくことが重要です。
そうすれば、メディアの方から取材依頼が入るようになります。またメディアを通じてファンやロイヤルカスタマー化した生活者は、自ら企業のサイトやSNS、店頭にリーチするようになります。そこに至るまでには、継続的なメディアリレーションが不可欠なのです。
情報発信には、リリース配信やプレス発表会、PRイベント、タイアップPR施策など、具体的な方法はいろいろありますが、これらをトータル的に管理するために「戦略的PRカレンダー」を作ることをおすすめします。
商品発売日やサービスローンチ日、企業活動日など自社活動のスケジュールに従って、プレスリリースの配信日やプレス発表会の日程などを組みます。実際に、こうしたマーケティングカレンダーを作成している企業は多いでしょう。
戦略的PRカレンダーは、このマーケティングカレンダーに生活者調査やメディアの特集、時事・季節ネタ、トレンドなどを加えていきます。情報ソースを整理することでPRバリューを高められ、情報を提供する頻度も高められます。
継続的にメディアへ情報を届け続けて商品やサービスが認識されれば、どういった内容に掲載価値を見出しているのかメディアから教えてもらえるようにもなります。後はそれを繰り返していき、掲載率を高めつつ記事化への道を広げていきます。
繰り返しになりますが、こうした関係性を一朝一夕で築くことはできません。長期的に継続していくことで、はじめて戦略PRとしての結果をもたらすのです。
●ステークホルダーとのコミュニケーション
先述のとおり、PRは「Public Relations――関係性の構築」のことであり、内外のステークホルダーとの関係を構築し維持の仕方をマネジメントするのが仕事です。
PRを取り巻くステークホルダーはメディアや生活者に限りません。株主や投資家、金融機関、取引先、関連会社、さらには地域住民や行政機関、自社の従業員も重要なステークホルダーです。
企業がどういったイメージで見られているのか、安全で信頼できる企業なのか、商品やサービスがどの程度どのように認知されるのか――といったものは、さまざまなステークホルダーと双方向のコミュニケーションを行うPRの仕事によって左右されます。
PR担当者は各ステークホルダーと関係を築きながら企業やブランドのメッセージを伝え、商品やサービスの情報提供を行いますが、それだけでなく、従業員に向けて情報をフィードバックしていく必要もあります。戦略PRで打ち出しているメッセージを社内で共有することで、生活者に対しても首尾一貫したブレのないメッセージを届けられます。
また、IRやCSRと連携して、株主・投資家を意識した情報の伝達や開示の策定を行い、場合によっては不祥事などの危機管理への対応も行います。その業務は多岐にわたり、複合的な関係性のなかで情報をマネジメントしていく必要があります。
戦略PRの注意点
今や、ただ情報を発信すれば商品やサービスが売れる時代ではなくなっています。PR活動によって一方的な情報発信をしても、生活者にとって有益となる価値を提供できないのです。
さらに言えば、あまりにも情報が溢れ過ぎているため、いくら有益な情報であっても生活者に気付かれることなく埋もれてしまうケースも少なくありません。関心を持ってもらえなければ、それはもはや無価値と同じです。
そうならないためにも、いかに生活者からの関心を集めれるのかを中心にコンテンツ作りを行い、購買意識を刺激するための雰囲気を創出していかなければなりません。
そうすることで、商品やサービスの魅力はもちろんブランドメッセージなどを確実に伝えられるようになっていきます。そうすれば、生活者からもポジティブな反応を期待できるでしょう。何より、成功事例を重ねていくことで自社の戦略PRに対しても自信を深めていくことが大事です。
まとめ
戦略的PRで大切なポイントについてご紹介してきました。実際には、通常のPR業務だけでも忙しく戦略PRまで踏み込めないという担当者も多いはずです。
そうしたお悩みのお応えするため、ネオマーケティングでは、調査会社としてのリソースを活かし、PRの課題発見やKPIの設定、届けるべきキーメッセージと世界観の提案など、結果を含めさまざまな段階において個別またはトータルでサポートいたします。