アンケート調査を行う前に、まずは調査票を作成する必要があります。調査票とは、アンケート対象者に対する設問や回答の選択肢を記載したもので、いわゆる「アンケート用紙」のことです。一見、簡単に作れそうですが、質の良いアンケートを作成するには、気を付けるポイントが幾つもあります。質が悪いと、求めていた情報が得られず、アンケートを行った意味が薄くなる恐れがあります。
この記事では、アンケートの作り方について、8コのポイントに分けて解説します。
①調査目的を整理する
実際にアンケートを作る前に、まずは調査を行う目的を整理しましょう。ここのステップをないがしろにして調査を進行すると、設問の設定や、調査後の活用方法などがまとまらず、結果「調査を行った後のアクションが分からない」という状態に陥ってしまいがちです。
そうならないために、以下の3点はアンケート作成前に整理しておきましょう。
- マーケティング課題の整理(どのような課題を抱えているのか)
- 調査目的の整理(調査を行って何を検証したいのか/明らかにしたいのか)
- 調査結果の活用方法(調査結果をどのようなアクションに活用するのか)
②検証したい仮説から必要な情報を洗い出す
検証したい仮説と検証に必要な情報を洗い出します。そうすることで必ず設問として用意するべき項目を洗い出し、抜け漏れを防げます。上長など意思決定者にプレゼンテーションするときの資料をイメージしながら作りましょう。
仮説例:30~50代女性を中心に、ハイクラスな宿へのニーズが高いのではないか? |
例えば上記の仮説を検証するためには、少なくともアンケートで次の情報が必要になるでしょう。
- 年齢
- 性別
- 今後〇カ月で旅行を計画しているか
- 旅行に求める体験
- 1泊あたりの予算
③集める情報の細かさ、詳細さを決める
調査目的や仮説から、集めるべき情報にどこまでの細かさや詳細さを求めるのか考えましょう。
仮説例:30~50代女性を中心に、ハイクラスな宿へのニーズが高いのではないか? |
前段で、上記の仮説を検証するために「1泊あたりの予算」が情報として必要であると例として紹介しましたが、その際の選択肢が以下だとします。
この選択肢の場合、最も価格が高い選択肢が「1万円以上」のため、「ハイクラスな宿へのニーズが高いのではないか」という仮説を検証するには細かさが不十分であると言えるでしょう。
④回答しやすい順番に設問を設ける
回答しやすい順番で設問を設けることは、回答者の負担軽減に繋がります。その結果、アンケートの回答率が高くなります。たとえば、年齢や性別、職業といった、回答者の「属性」と呼ばれる情報は、深く考えなくても回答できるので、冒頭で聴取することがほとんどです。属性以外の設問に関しては、以下の点を意識してみましょう。
- 過去、現在、未来の順番に聞く。
- 抽象的なこと、具体的なこと、の順に聞く。
- 全体的な内容を聞いた後に、深掘りした内容を聞く。
また、設問の順番が原因で、特定の回答へ誘導してしまうことがあります。
設問1:新型コロナウイルスは今後も定期的に蔓延すると思いますか? 設問2:あなたは近い将来、旅行をしたいと考えていますか? |
上記の順番の場合、設問1でコロナウイルスという、旅行に対してネガティブな内容について回答した後に旅行について質問をしているため、「旅行に行きたいとは考えていない」と回答する方向に誘導している恐れがあります。
⑤設問の文章表現に注意する
設問の文章表現は、回答者の離脱率(途中でアンケート回答をやめてしまう割合)や、負担軽減、さらには回答結果に大きく影響します。分かりやすく回答結果に影響を与えない設問文を作るために、以下の3点に注意しましょう。
- 専門用語や難しい言葉はつかわない
- 特定の回答に誘導しないようにする
- 1つの設問文で2つ以上の内容を聞かない
それぞれについて解説します。
●専門用語や難しい言葉はつかわない
設問の文章に専門用語や難しい言葉を用いると、回答者にとっての負担が大きくなり、アンケートを途中で離脱する可能性があります。誰が読んでも内容が理解できるように、わかりやすい文章を心がけましょう。
悪い例:宿泊先ホテル選択の意思決定を左右するファクターを教えてください。 良い例:宿泊先ホテルを選ぶポイントを教えてください。 |
また、言葉の言い回しによっては、ミスリードを招き、回答結果の信ぴょう性が欠けることに繋がります。
悪い例:旅行に求める体験をご教示頂けますでしょうか? 良い例:旅行に求める体験を教えてください。 |
アンケート調査票はさまざまな人が読みます。どんな人が読んでも、同一の認識を持つような文章にすることを心がけましょう。
●特定の回答に誘導しないようにする
前段で、設問の順番で回答を誘導する可能性があることを紹介しましたが、文章表現も同様に回答を誘導する可能性があります。
悪い例:新型コロナウイルスの感染者が増えつつある中、旅行をしたいと思いますか? |
この文章は、先程と同様、「コロナウイルスの感染者が増えつつある」という表現が、外出に対してネガティブな印象を与え、その結果「旅行をしたくない」の回答者が集まりやすくなる恐れがあります。
また、この設問文のように「はい/いいえ」で回答することができる形式も、回答を誘導する原因になる可能性があります。
「蔓延すると思いますか」「蔓延しないと思いますか」といったように、設問文の聞き方に引っ張られて「はい」「いいえ」の回答に寄ってしまう可能性があります。
決して利用してはいけないというわけではありませんが、必要以上に多用することは控えましょう。
●1つの設問文で2つ以上の質問をしない
1つの設問文につき設置できる選択肢は原則1セットなので、1セットの選択肢に異なる内容の項目が混同したり、「どのように選択したら良いのか」などと、回答者に混乱を招く可能性があります。
悪い例:新型コロナウイルスの感染者が増えつつある中、旅行をしたいと思いますか?また、それはなぜですか? |
⑥選択肢の項目は過不足なく用意する
アンケート回答者が選択肢から回答を選ぶ際に、「自身にあてはまる選択肢がない」「似たような表現の選択肢があって、どちらを選べば良いか」という状況が極力発生しないようにしましょう。
「自身にあてはまる選択肢がない」場合の対策として、選択肢に「その他」を設ける方法がありますが、選択肢に漏れが多いと、「その他」を選択する回答者が多くなり、回答結果を詳細に分析することができなくなる恐れがあります。
設問:あなたが旅行で最もよく利用する宿の種類をお答えください。 ・シティホテル ・リゾートホテル ・温泉付き旅館 ・温泉なし旅館(民宿も含む) ・ゲストハウスやユースホステル ・その他 |
例えば上記の場合、「カプセルホテル」や「ビジネスホテル」といった選択肢がありません。
そのため、「カプセルホテル」か「ビジネスホテル」をよく利用する回答者は「その他」に流れるか、他の選択肢を適当に選ぶことになります。
「選択肢でどこまで網羅する必要があるのか」という点については、調査目的に立ち返って「どこまで情報が必要か」という観点から、選択肢に設ける/設けないを考えましょう。
⑦設問に合った回答形式を選ぶ
回答形式にはいくつかの種類があります。設問内容や求めている情報に合わせて、適切な設問形式を選択しましょう。ここでは5つの回答形式について解説します。
●シングルアンサー(SA)
シングルアンサーとは、選択肢の中から1つだけを選ぶ回答形式です。回答が1つに限られる場合や、「最も●●する」のように1つのみ回答してほしい場合などに用います。
設問例①:あなたの性別を教えてください。 設問例②:あなたが宿を選ぶ際に最も重視するポイントは何ですか? |
●マルチプルアンサー(MA)
マルチプルアンサーとは、複数の選択肢を同時に選べる回答形式です。回答が1つに絞ることができない、または複数にわたる場合に用います。
設問例:以下の中から、あなたが宿を選ぶ際に重視する要素をすべてお答えください。
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●フリーアンサー(FA)・オープンアンサー(OA)
自由記述による回答形式です。定型化や数値化が難しかったり、自由な回答が欲しい場合に用います。
設問例:あなたがこれまでに訪れた宿泊先の中で、最も満足度が高かった宿について、理由を教えてください。 |
●マトリクス設問
複数の設問に対して同じ選択肢を用意する回答形式です。異なる項目に対して、同じ質問をする場合に用います。設問数を1つにまとめることができるため、費用の削減などにつながりますが、項目数が多くなりすぎると回答者の負担が上がるので注意しましょう。
設問例:以下の宿泊先のアメニティに対する利用頻度についてお答えください。
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利用する |
時々利用する |
あまり利用しない |
利用しない |
シャンプー |
〇 |
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コンディショナー |
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○ |
ボディソープ |
○ |
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洗顔フォーム |
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○ |
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上記の例は、シングルアンサーをマトリクス設問でまとめた例になりますが、同様にマルチプルアンサーもマトリクス設問にまとめる事が可能です。
⑧プレテストを行う
アンケート作成が完了したら、配信をする前に、「設問の流れが自然で回答しやすいか」「わかりにくい文章になっていないか」など、先に紹介した6つのポイントも踏まえてチェックをしましょう。チェックする人は、作成者自身ではなく、調査目的などを知らない人にやってもらうのが良いでしょう。作成者自身で確認すると、どうしても主観が入ってしまい、不自然な点に気付かない可能性があるからです。
まとめ
アンケート調査票は、調査の質を大きく左右するものであり、作り方次第で調査結果に大きく影響を及ぼします。この記事で紹介したポイントを意識しながら、アンケート作成に臨んでください。
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