企業と顧客との架け橋の役割を果たすコールセンター。その応対品質や印象はそのまま、企業のイメージやブランディングに直結します。
そのようなコールセンターの改善点を抽出するのに効果的な手法の1つが「ミステリーコール」です。
本記事ではミステリーコールの概要や効果的な活用のポイントなどについて紹介します。
ミステリーコールとは?
顧客として架電し、オペレーターの応対品質や接続品質などをチェックする調査のことを「ミステリーコール」といいます。いわば、コールセンターにおける覆面調査と考えてもよいかもしれません。
似たようなサービスとして小売店に覆面調査員を派遣するミステリーショッパーや、飲食店の覆面調査などがあります。これらの調査のコールセンターに置き換えたものがミステリーコールです。
ミステリーコールではコールセンターに関するさまざまな要素を客観的に評価できるので、オペレーターの教育体制の見直しや、マニュアルの改善、定期調査など、多岐にわたる目的で利用されています。
ミステリーコールの狙い
なぜミステリーコールが重宝されているのでしょうか?
その理由は「客観的にオペレーターの品質調査ができるから」です。
ミステリーコールでは調査員が素性を伏せて電話をかけるので、実際の顧客応対や接続環境、処理能力などを知ることができます。
この、「実際のサービスをチェックできる」というのがポイントであり、たとえば事前に告知をした調査や社内テストなどでは応対者がどうしても身構えてしまい、本当のサービス状況を知ることができません。
ミステリーコールでは顧客として抜き打ちで電話をかけるので、実際にお客さんが感じているのと同様の印象や課題、要望などを詳細に洗い出すことができます。
ミステリーコールが有効な業種
ミステリーコールはコールセンターをもつすべての企業において効果的です。とくに以下のような業種ではミステリーコールが有効とされているので、ぜひご確認ください。
・メーカー
・学習塾
・インフラ事業者
・飲食店
・小売店
・物流会社
また、上記に当てはまらなくても、次のようなニーズや課題をもつ企業ではミステリーコールを実施する意味があります。
・コールセンターの品質をチェックしたい
・他社と自社のコールセンターのクオリティを比べたい
・コールセンターの教育体制を見直したい
・外注候補のコールセンター会社の中から依頼先を選ぶ決め手がほしい
ミステリーコールをうまく活用することで、コールセンターにおけるさまざまな課題を解決できるでしょう。
ミステリーコールの調査ポイント
上効率良くミステリーコールを行うためには、ただやみくもに電話をかけるだけではいけません。評価項目や評価基準をきちんと設定し、適切に調査を行う必要があるでしょう。
実際には、以下のような項目がチェックの対象になります。
話し方
正しい言葉遣いができているか、聞き手に威圧感や不快感を与えないかなど、オペレーターの話し方を確認します。
オペレーターの話し方1つで印象が大きく変わるため、非常に重要な項目です。
聞き方
いくらオペレーターの話し方が丁寧でも、お客さんが「ちゃんと話を聞いてくれているのかな?」と不安に思ってしまえば、顧客満足度は低下してしまいます。
そのため、ミステリーコールにおいては聞き方も重要な調査項目の1つとなるでしょう。
相槌の打ち方や電話越しに伝わる態度など、聞き方に関連するいくつかの指標を総合的に判断します。
接続品質
コールセンターの印象を決める項目の1つが接続環境です。接続品質を確認するため、ミステリーコールでは電話のつながりやすさや音質などをチェックします。
とくにクレーム目的の電話がつながりにくい場合、お客さんは余計にイライラしてしまい、問題の解決が難しくなることもあるでしょう。
オペレーターが気持ち良く業務に取り組むためにも、接続品質の向上が欠かせません。
応対内容
話し方や聞き方、接続状況などが完璧だったとしても、問い合わせの目的が果たせなければコールセンターの印象は悪くなってしまうでしょう
「質問に対する的確な回答が得られるか」「回答を得るまでに過大に時間がかかっていないか」など、応対に対する全体的な評価を行う必要があります。
総合印象
上記のようなさまざまな項目の調査結果を踏まえたうえで、総合的な印象をチェックします。
総合印象はどうしても調査員の主観的評価になってしまうことも多いのですが、同様な印象を抱く顧客もいるという事実を確認できます。
ミステリーコールのメリット
客観的な視点で自社のコールセンターの強みや課題を知れるミステリーコールですが、どのようなメリットにつながるのでしょうか。
以下に、ミステリーコールを実施するメリットのうち、代表的なものをご紹介します。
リアルな応対品質を調査できる
ミステリーコールは実際にコールセンターに電話をかけて調査を行うので、リアルな応対品質を調べることができます。またミステリーコールでは、顧客対応のプロや調査のプロがチェックを行うため、改善点や課題を的確に指摘してくれるでしょう。
これは社内での研修やテストで得ることが難しい情報です。
リアルな応対品質の情報は、応対スキルの向上や競合他社のコールセンターとの比較など、さまざまな役に立ちます。
自社のコールセンターの評価を客観視できるという点は、ミステリーコールを行う大きなメリットでしょう。
ブランディング効果
ミステリーコールによってコールセンターの課題が改善され、オペレーターの質が向上すれば、企業に対するイメージや印象もアップします。
またブランドイメージが向上すれば、顧客に自社の製品やサービスを選んでもらえる確率が高くなり、利益も上がりやすくなるでしょう。
自社教育の見直し
長年、自社の研修内容やマニュアルを更新しないままでいると、どうしても価値観が偏りがちになってしまいます。
一方で、教育制度を見直ししようと思った場合、現行のマニュアル等をどのような基準で評価すればよいのかという課題が出ることも珍しくありません。
ミステリーコールでは客観的にコールセンターの弱みを抽出してくれるので、教育制度を見直す際の参考になります。
ミステリーコールをうまく活用すれば弱みが把握できるだけでなく、今後の人材が同じ弱みを抱えないよう、企業体制を強化することもできるでしょう。
ミステリーコールの主な流れ
ミステリーコールを実施しようとした際には、専門のサービス会社に依頼することになります。
ここではミステリーコールを行うまでの流れを解説するので、ご参考にしてください。
打ち合わせ
まずはクライアントと調査会社で打ち合わせを行います。調査項目や狙い、問い合わせの傾向などを聞きながら、適切な方針を決めていきます。
各種ツールの作成
ミステリーコールの方針が決まれば、必要なツールを作成していきます。ツールとしては調査項目に沿った「シナリオ」や「対話スクリプト」、品質を客観視するための「評価項目」などが挙げられます。
ミステリーコールの実施
ツールがそろえばいよいよ、ミステリーコールの実施です。専門の調査員が該当するコールセンターに、素性を伏せて架電します。希望する調査項目や目的によっては、日をまたぎながら、複数回にわたって電話をかけることもあるでしょう。
報告書の作成
ミステリーコールによって得られたデータを集計し、報告書を作成します。その際ほとんどの場合で、優先して解決すべき課題の抽出なども行います。
結果報告
作成した報告書をもとに、結果報告を行うケースも多いようです。単に報告書の内容を読み上げるだけでなく、競合他社のデータを共有したり、改善に向けた対策を提案したりすることもあります。
まとめ
企業と顧客との架け橋になるコールセンターの質を向上させることは、ブランドイメージや利益の向上につながります。
一方、自社のコールセンターの強みや弱みを社内活動だけで正しく把握することは非常に困難です。
コールセンターにおける覆面調査である「ミステリーコール」をうまく利用して、オペレーターの応対品質を向上させましょう。