第一想起を獲得するには、「カテゴリーを絞る」「ポジションを固定する」「接触頻度を高める」「想起のフックを仕掛ける」「一貫性を保つ」ことが重要です。これらのポイントを押さえた戦略を講じることが、「思い出される」「選ばれる」商品群に加わるための第一歩といえます。
本記事では、第一想起が形成されるプロセスや、マーケティング戦略上のポイントをわかりやすく解説しています。第一想起の調査方法やメディア戦略についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
なぜ「良い商品でも売れない」のか
第一想起とは

第一想起の基本的な定義や、認知・純粋想起・助成想起などとの違いを確認しておきましょう。
第一想起はどのように形成される?
プ第一想起は、そもそもどのようなプロセスを経て形成されるのでしょうか。生活者の内面で起きている変化は、次の4段階に分けられます。
1. 知名集合が形成される
はじめに形成されるのは「知名集合」、つまり知っている商品・ブランドの集合です。生活者の記憶は、まず知っている商品(知名集合)と知らない商品(非知名集合)に分けられます。この段階で知名集合に入ることが、想起される商品・ブランドになるための第一歩です。
一例として、前出の炭酸飲料について考えてみましょう。世の中には数多くの炭酸飲料がありますが、それらのうち商品名やブランド名を明確に認知しているものは思いのほか限られているのではないでしょうか。知名集合が形成される段階で、すでに商品群は選り分けられているのです。
2. 処理集合が絞り込まれる
次に形成されるのが処理集合です。処理集合とは、単に商品・ブランドを知っている、聞いたことがあるだけでなく、具体的な要素や特徴を知っている商品群のことを指します。
炭酸飲料の例であれば、商品名を聞いたことがあるだけの商品は非処理集合、味やパッケージデザイン、ブランドイメージなどが思い浮かぶものは処理集合に含まれています。
3. 想起集合へと分類される
処理集合のうち、自身にとってメリットがあると感じられるものや、興味を惹かれるものが想起集合へと選り分けられます。このとき、検討の対象となるものの優先度が低いものは保留集合、そもそも検討の対象外となるものは拒否集合へと組み込まれているのです。
炭酸飲料であれば、「この味が気に入った」「また飲みたい」と思えるものは想起集合にカテゴライズされるでしょう。一方、「それしかなければ買うかもしれないものの、積極的には買わない」といったものが保留集合、「味が苦手」「おいしくなさそう」と感じるものは拒否集合にカテゴライズされます。
4. 優先順位が付けられる
想起集合に選り分けられた商品群は、最初に思い浮かぶもの(第一想起)と、そうでないもの(助成想起)へと分岐していきます。想起集合に入っていたとしても、優先順位が低ければ購買行動に直結しないことも十分にあり得るでしょう。
さらに、第一想起に挙がらない状況が続くことによって、「知っているが買おうと思ったことがない」「人から商品名を聞けば思い出す」といったポジションに定着してしまう可能性もあります。想起集合に留まらず、第一想起へと押し上げるためのマーケティング戦略を講じることが重要です。
第一想起につながるマーケティング戦略のポイント
第一想起を獲得するには、どのようなマーケティング戦略を講じればよいのでしょうか。戦略上のポイントとして、次の5点が挙げられます。
カテゴリーを絞る
商品・サービスのカテゴリーを絞ることは、第一想起を獲得する上で非常に重要なポイントです。カテゴリーが絞り切れていないと狙うべき市場が広くなるため、特定ジャンルでの第一想起を獲得しにくくなります。
【×カテゴリーが絞り切れていない例】
「清涼飲料水」としてカテゴライズしている。
【△カテゴリーがある程度絞られている例】
飲み物⇒清涼飲料水⇒炭酸飲料 とカテゴリーを絞り込んでいる。
【◎カテゴリーが明確になっている例】
飲み物⇒清涼飲料水⇒炭酸飲料⇒お風呂上りに飲みたくなる炭酸飲料 とシーンも想像できるくらいカテゴリーを絞り込んでいる。
ポジションを固定する
「〇〇といえば■■」と想起してもらうには、商品・サービスのポジションを明確にする必要があります。商品やブランドの特長や強み、独自性をはっきりと打ち出し、言語化しておくことが大切です。
たとえば、「おいしい炭酸飲料」はすでに市場に数多く存在するため、自社独自のポジションを確立するのは容易ではありません。「気分転換したいときの炭酸飲料」といった具体的なポジションを打ち出すことによって、場面や状況と連動して想起されやすくなります。
接触頻度を高める
ターゲットとの接触頻度を高めることは、第一想起を獲得する上で欠かせないポイントです。広告やSNS、コンテンツマーケティングなど複数のチャネルを駆使して、タッチポイントを設けましょう。
このとき、ターゲットユーザーの使用頻度が高い媒体を選ぶことが重要です。自社が発信しやすい・慣れ親しんだ媒体を選ぶのではなく、ターゲットユーザーの具体的な閲覧シーンを想定してタッチポイントを設計する必要があります。
想起のフックを仕掛ける
第一想起につながるきっかけを意図的に設けます。一例として、ネーミングやコピー、ブランドストーリーなどが想起のフックとなり得るでしょう。単に印象に残すのではなく、具体的な場面や状況とセットにするのがポイントです。
1つの好例として、自動車のテレビCMが挙げられます。車の性能や装備について詳しく伝えるのではなく、「家族の思い出づくり」や「大切な人と過ごす空間」として訴求しているメーカーが少なくありません。車そのものではなく、どう使われるのか、消費者は何を求めているのかを追求した結果、このような想起のフックを設けているのです。
一貫性を保つ
ブランドコンセプトや理念をベースに、一貫したブランドイメージを保つことも重要です。どのチャネルでもトーンやテイストが統一されていることによって、生活者は「〇〇といえば■■」のようにブランドを認知するようになります。第一想起の獲得後、その状態を維持するためにも一貫性の確保は不可欠なポイントといえるでしょう。
たとえば、SNS広告を見かけて上質な商品という印象を抱いたものの、Webサイト上に表示されたバナーからチープな印象を受けたとすれば、生活者が抱くイメージにブレが生じかねません。こうしたイメージの齟齬を防ぐには、発信する情報の一貫性を維持する必要があります。
第一想起を狙う際にやってはいけない施策
第一想起を狙うにあたって、避けるべき施策がいくつかあります。失敗しやすいポイントでもあるため、とくに次の3点に該当することのないよう注意しましょう。
ターゲットを広げすぎてしまう
自社の商品・サービスを認知してもらいたい層を広げすぎると、かえって第一想起を獲得しにくくなるおそれがあります。幅広い層にメッセージを届けようとした結果、誰に向けたメッセージかが不明確になるケースが少なくないからです。
化粧水を例に考えてみましょう。「男女問わずお使いいただけます」と訴求した場合、その商品は男性向けなのか女性向けなのかがわかりにくくなりがちです。むしろ「男性用化粧水」として打ち出したほうが、商品の特長や「誰向けの商品なのか」が明確になるでしょう。結果として、「男性用化粧水といえば■■」のように想起されやすくなります。
無難に平均化・平準化してしまう
誰もが理解しやすい無難なメッセージの発信は、第一想起の獲得に失敗する原因となり得ます。マイルドで無難なメッセージは広く受け入れられるイメージがあるかもしれませんが、実際には誰にも届かないメッセージになりやすいからです。
第一想起されるには、ターゲットに「自分のための商品だ」と感じてもらう必要があります。メッセージの平均化・平準化は、これとは逆行する施策といえるでしょう。具体的なペルソナを設定し、その1人に届けるためのメッセージを発信することが大切です。
トーンやメッセージを急に変えてしまう
発信するメッセージのトーンや内容を途中で変えてしまうと、第一想起を阻む原因となりかねません。施策の成果がすぐに表れなかったとしても、急な路線変更は避けるべきでしょう。
トーンや内容が変更されたことによって、ターゲットの内面で形成されつつあった想起が振り出しに戻ってしまいます。さらには、「このブランドは一体何がしたいのだろう?」「よくわからない」といったイメージが浸透し、修正できなくなってしまう可能性も否定できません。メッセージのトーンや内容の一貫性を維持することは、第一想起を着実に獲得する上で欠かせないポイントの1つです。
第一想起の調査方法
第一想起の獲得を目指すには、まず現状の市場を把握しておく必要があります。第一想起の主な調査方法について見ていきましょう。
純粋想起アンケート
純粋想起アンケートとは、自由回答によるアンケート調査のことを指します。「〇〇で最初に思い浮かべたブランドを答えてください」などの質問を含むアンケートを実施するイメージです。
純粋想起アンケートのメリットは、実際に回答者が思い浮かべた商品・ブランドを聞き取れることです。一方で、無効な回答や無回答(「わからない」などの回答)が一定数発生することも念頭に置いてサンプル数を決定する必要があります。
指名検索数分析
指名検索数分析は、商品・ブランド名を含むキーワードの表示回数やクリック数といった検索クエリを調査する手法です。Googleサーチコンソールなどのツールで手軽に確認できる点がメリットといえます。
ただし、検索クエリにはコンバージョンにつながらない検索も含まれている可能性があります。たとえば、単に情報収集を目的として検索しているユーザーも存在するからです。商品・ブランド名が検索されている=第一想起されている、とは限らない点に注意が必要です。
SNS分析
SNS分析とは、SNS上でユーザーが商品・ブランドに言及している回数や頻度を調査する手法のことです。各サービスが提供している分析ツールのほか、テキストマイニングツールなどを活用して調査する方法が挙げられます。
注意点として、SNSユーザーの認知度が高い=購買に結びつくとは限らない点が挙げられます。SNS上で見かけた商品・サービスを、実際に各ユーザーが購入するケースばかりではないからです。さらに、トレンドに引きずられて一時的に話題になっている可能性も考えられます。SNS分析の結果だけを元に分析するのではなく、他の手法による調査結果とあわせて参照するのが得策でしょう。
想起集合(エボークトセット)調査
想起集合(エボークトセット)調査は、生活者の想起の実態を把握するための調査手法です。単に想起集合の実態を定量的に捉えるだけでなく、想起される理由や検討ポイントを深掘りできる点が特長です。
【調査の設問例】
・そのカテゴリーを購入する目的・シーンは?
・〇〇と聞いて思い浮かぶブランドは?
・〇〇を購入する際、購入を検討するブランドは?
・最初に想起したブランドについて、購入を検討する理由は?
・誰かに勧めるブランドは?
・最初に推奨したいブランドについて、推奨する理由は?
ネオマーケティングでは、調査の設計・実施から事後の分析、取るべき戦略のご提案まで一気通貫で実施しています。第一想起の獲得を実現したい事業者様は、ぜひネオマーケティングにご相談ください。
第一想起率を高めるためのメディア戦略
第一想起率を高めるには、メディアでの発信戦略を構築・実行していくことが重要です。メディア戦略の主なポイントを確認しておきましょう。
特長や専門性を打ち出す
自社の商品・ブランドならではの独自性を打ち出すことは、第一想起を獲得する上で欠かせないポイントです。「お客様満足度No.1」などの具体的な強みや、突出した専門性は第一想起につながりやすい傾向があります。
自社の独自性を見出すには、既存顧客の声を参考にすることをおすすめします。自社が想定している強みと、生活者が認知している強みとの間にずれが生じている可能性もあるからです。自社商品・ブランドをあらためて分析し、対外的に認知されている特長や専門性を見極めましょう。
場面や状況と関連づける
商品そのものの強みに留まらず、場面や状況と関連づけて想起してもらうことも重要なポイントです。実際の利用シーンと密接に関わるテーマやイメージを打ち出すことで、記憶が定着しやすくなり、より強く印象づけられる効果が期待できます。
一例として、飲料であれば味の特徴を紹介するだけでなく、「暑い日」「汗をかく」「喉が渇いた」→飲みたい、といったように、イメージを関連づけて発信していくのがポイントです。
マルチチャネル化する
マルチチャネルとは、実店舗や広告、SNS、コンテンツマーケティング、マス広告、DMなど複数のチャネルを駆使するマーケティング手法のことです。単一チャネルで発信する場合と比べて、ターゲットとのタッチポイントが多角化する効果が期待できます。
ただし、発信する媒体を増やしさえすればよいというものではありません。あくまでもターゲットの視点に立ち、触れる機会が多い媒体や身近な媒体を調査した上で発信していくことが重要です。
チャネル間でのイメージ統一を図る
どの媒体でも伝え方のトーンや表現をそろえることで、イメージのブレを防ぐことも大切です。ブランドのロゴやカラー、キービジュアルを統一するほか、メッセージのトーンやテイストを一貫したものにする必要があります。
イメージが統一化されることによって、メッセージを目にした生活者は「以前も同じような広告を見た」「最近よく見るロゴだ」といったように認識し始めます。別の媒体で発信していても、同じブランドから届いたメッセージであることを生活者が認識できるようにするのがポイントです。
第一想起をKPIに設定する際の注意点
第一想起の度合いをKPIとして設定する場合、誤った指標にもとづいて判断を下さないよう留意する必要があります。次に挙げる3点を必ずチェックした上でKPIを設定しましょう。
ネガティブな第一想起ではないことを確認する
第一想起はポジティブなイメージから来るものだけとは限りません。「価格は安いが質が低い」など、ネガティブな理由で想起されている可能性もあるからです。よって、第一想起率が高い=売れる状況が整いつつある、と単純に結びつけないよう注意する必要があります。
第一想起を調査・測定する際には、想起率など定量的な指標だけでなく、想起されている理由もあわせて確認することが大切です。競合他社の商品・ブランドがどのように想起されているのかも含めて、生活者の検討ポイントを慎重に調査しましょう。
調査時の設問順を考慮する
調査の設問を設計する際には、どの順序で問いを投げかけるべきか十分に考慮しなければなりません。たとえば、調査の冒頭で助成想起を問う質問(次の商品のうち、知っているものをすべて答えてください など)を提示した場合、回答者に特定の商品・サービス名が印象づけられてしまいます。この状態で純粋想起に関する質問をすると、その時点で印象に残っている商品・サービス名に引きずられた回答が続出しかねません。
設問は「純粋想起(商品名などのヒントなし)→助成想起(ヒントあり)」の順に設けるのが基本です。回答者が順に答えていくことを念頭に置き、先入観を植え付ける設問構成になっていないか十分に確認しましょう。
売上に直結する第一想起になっているか見極める
購買行動に直結する第一想起かどうかも重要なポイントです。何が検討ポイントになっているのか、指名買いと比較検討買いの比率はどうか、といった点を詳細に調査することをおすすめします。
指名買いに対して比較検討買いの比率が高いようなら、第一想起される商品群の中で2位以下のブランドとして位置づけられている可能性が考えられます。指名買いを増やすには、既存顧客の満足度を高めるための施策も取り入れていく必要があるでしょう。
第一想起に関するよくある質問
第一想起に関するFAQをまとめました。疑問点や不明点の解消に役立ててください。
Q. 第一想起を獲得している企業の共通点は?
第一想起の獲得に成功している企業には、「自社独自の価値を的確にアピールできている」「想起獲得のカテゴリーとターゲットが絞り込めている」「メッセージが明確で一貫している」といった共通点があります。これらの3点は、第一想起の獲得を目指す上で欠かせない要素ともいえるでしょう。自社にどの要素が不足しているのかを分析し、改善を図ることが第一想起の獲得につながります。
Q. 第一想起とブランド好意度はどちらを優先すべき?
売上に直結する可能性が高いのは第一想起です。ブランドに対して好感を抱いているものの、自分では購入しない層も少なくありません。したがって、売上伸長を目指すなら第一想起の獲得にまずは注力するべきでしょう。
ただし、ブランドのファンが増えていくことによって、安定した顧客基盤の形成につながるのも事実です。長期的なブランド戦略として、好感度も重要な指標の1つといえます。
Q. 第一想起を短期間で改善することは可能?
第一想起の獲得には、基本的に中長期にわたる戦略が不可欠です。ごく短期間で第一想起の大幅な改善を図るのは、あまり現実的な目標ではありません。
ただし、CEP(カテゴリーエントリーポイント)を大胆に絞り込むことで、第一想起形成までの期間を短縮できる可能性があります。一例として、食パンであれば「おいしい朝食のパン」から「いつものトースターでモッチリ食感」にCEPを絞り込むことにより、想起率を高める効果が期待できます。
Q. 第一想起を高めるために必要な接触回数の目安は?
第一想起が高まる接触回数の目安は5〜7回と考えられます。接触回数が3回に達した頃からブランドの印象形成が始まり(スリーヒッツ理論)、5〜7回ほどの接触によって購買行動につながる(セブンヒッツ理論)といわれているからです。
注意点として、接触回数が多すぎたり、頻度が高すぎたりすると慣れが生じて効果が薄まるおそれがあります。場合によっては「しつこい」などと敬遠される原因にもなり得るため、適度な回数と頻度に留めることが大切です。
Q. 第一想起が売上に与える影響を経営陣に説明するにはどうしたらよい?
具体的なデータを提示しつつ説明するのが効果的です。たとえば、純粋想起アンケートやエボークトセット調査の結果と、自社/他社商品の市場シェアとの間にどのような相関関係が確認できるのかを分析し、売上に与える影響をデータで示すといった方法が考えられます。
なお、第一想起される商品群は時間の経過とともに入れ替わるケースが少なくありません。定期的に調査を実施し、自社/他社商品の第一想起率の推移を可視化することで、売上推移との関連性を示せる可能性があります。
第一想起を獲得して購買動機を強化しよう
第一想起の獲得は、「選ばれる存在」になる上で必須のステップといえます。まずは現状における自社/他社の第一想起の状況を把握した上で、商品・ブランドを第一想起してもらうための戦略を練っていくことが重要です。
現状の動向を把握したい事業者様には、想起集合(エボークトセット)調査の実施をおすすめします。「認知されていても購買検討の対象になっていない」ブランドは少なくありません。第一想起されるブランドになることが、購買検討の対象となる上で重要なポイントです。想起集合調査を通じて、ブランディング活動の効果測定や狙うべきサブカテゴリーの把握が可能になります。さらに、想起集合・推奨集合(他人に勧める際の想起集合)を活用することで、新たなCEPの発見につながることも大きなメリットです。想起集合調査を通じて、第一想起獲得に向けた戦略立案を進めてみませんか。