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PPM分析とは?基礎から事例まで分かりやすく解説!

ライター:株式会社ネオマーケティング

公開日:2021年09月24日 | 更新日:2024年10月15日

カテゴリー:
目次

PPM分析は自社の事業を市場成長率と市場占有率(マーケットシェア)の2つの軸を使い、経営資源投資の優先度を測るフレームワークです。

ユニークなグループ分けと把握のしやすさで、経営戦略策定から企業研究などに活用するため、学問から実際のビジネス現場で広く導入されています。

本記事では、

  • PPM分析の基礎知識
  • PPM分析の実施例
  • PPM分析の応用方法

について詳しく解説いたします。

PPM分析とは?~経営戦略に役立つ分析~

 

■定義と目的

PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、事業活動を「市場成長率」と「市場占有率(マーケットシェア)」という2つの軸で大きく4つのグループに分類して、経営資源の効率的な分配のヒントを得るフレームワークです。
1970
年代にBCG(ボストンコンサルティンググループ)が提唱したもので、分かりやすく事業を分類できることから世界的に広く使われるようになりました。

 

PPM分析の実施目的は、自社の事業の市場におけるポジションを把握し、経営資源を効率的に分配することです。

自社のそれぞれの事業の中でも、市場成長率と市場占有率(マーケットシェア)には差があります。

経営資源は限られているため、競合に負けており今後の市場拡大も見込めない事業には、これ以上投資すべきではないかもしれません。

また、今は小さな事業でも、今後の市場成長とともに拡大する見込みが十分にある場合は、うまくいっていない事業から撤退してでも、投資を増やす選択が必要かもしれません。

PPM分析で市場成長率と市場占有率(マーケットシェア)を分析することで、限られた経営資源をどの事業に分配すべきか、優先度をつけることができます。

 



市場成長率
花形(Star)  問題児(Problem Child)
金のなる木(Cash Cow)  負け犬(Dog)
 

相対的な市場シェア

分析の際は、自社の事業を以下の4つのグループに分類します。

 

■花形(Star)

市場成長率が高く、市場占有率(マーケットシェア)も高い事業が「花形」です。
成長過程にある分野でトップクラスのシェアを誇っているため、今後も投資を続けることでさらなる利益拡大が見込めます。
ただし、成長率が高いマーケットということで、競合の数も多く競争が激しいことも忘れてはいけません。

競争に負けて市場占有率(マーケットシェア)を維持できなければ、利益も少なくなり、「問題児」のグループに分類されてしまう可能性もあります。
市場占有率(マーケットシェア)を維持し、さらに上げていくために、マーケティング活動やイノベーション創出に積極的な投資が必要です。

 

■金のなる木(Cash Cow)

「金のなる木」は、市場成長率は低いものの市場占有率(マーケットシェア)が高い事業のことを指します。
競合が少なく、安定して利益を得やすい反面、市場の拡大は期待できず長期的な事業成長は見込めません。

将来的には「負け犬」に転落する可能性もあります。
そのため、長いスパンで見ると多額の経営資源を投資することは得策ではありません。

「金のなる木」で得た利益は、「花形」や「問題児」に積極的に投資し、将来の経営基盤を築く必要があります。

 

■問題児(Problem Child)

「問題児」は、市場成長率の高い一方で、市場占有率(マーケットシェア)が低い事業です。競争が激しい市場で、利益を出せていない事業です。
これだけ見ると、「シェアが低いのに競合が多いジャンルなら投資するだけ無駄」と感じてしまいがちですが、「これから成長するチャンスがある分野」であると考えることもできます。
そのため、勝機があると判断した場合は、継続して資源を投入するのもひとつの手段です。
ただし、ニーズや市場のバランス以外の要素、たとえば法律などの影響を受ける可能性があります。
やっとシェアが拡大してきたところで、法整備されて市場全体が縮小するという事例も考えられるため、絶えず情報収集して動きを予想しなければなりません。

 

■負け犬(Dog)

「負け犬」に分類される事業は、市場成長率・市場占有率(マーケットシェア)共に低く、利益を出しにくい傾向にあります。損失を抑えるために早めに撤退した方がいいとされています。

自社の事業の市場占有率(マーケットシェア)が低いだけでなく、市場自体の成長も見込めないため投資分の効果は期待できないでしょう。
いきなり完全撤退するのは難しい場合でも段階的に縮小していき、経営資源を拡大見込みのある事業にシフトしていくことをおすすめします。

メリット・デメリット

 

■メリット

PPM分析のメリットは、以下の2つです。

 

事業のポジションを客観的に把握できる

「市場成長率」と「市場占有率(マーケットシェア)」という軸で、事業の特徴を把握し、さらに競合との相対的な比較によって、事業の現状や今後の見通しなどを客観的に整理できます。

 

経営判断に利用できる

ビジネスの現場では事業そのものの進退を見直すことよりも、目の前の売り上げ課題の解決が優先されがちです。市場自体の成長率や競合との関係性をマクロに分析し、自社の事業が属するグループの特徴を理解することで、現場では考えられないレベルで、より長期的な戦略を考えることができます。

将来的にどの事業に経営資源を分配すべきか優先度をつけ、事業の投資強化や撤退などの重要な経営判断におけるヒントを得られます。

 

■デメリット

PPM分析のデメリットは、以下の3つです。

 

イノベーションによって覆される可能性がある

PPM分析は、あくまでも既存の市場環境の中で事業を分類する方法です。そのため、生活者意識の変化や、急激な技術革新によって、分析の前提が覆されてしまう可能性があります。

これまで優良な「花形」や「金のなる木」だった事業が、突如世の中に出てきた新しい技術によって、将来性が見通せなくなり、急激にそのポジションを悪化させる可能性もあります。

 

それぞれの事業単体の評価にとどまる

PPM分析では、「市場成長率」と「市場占有率(マーケットシェア)」という軸でそれぞれの事業がどのグループに属するかを評価することはできますが、そもそもそれ以外の軸に事業の存在意義がある場合や、複数事業間でシナジーを生んでいる場合などは考慮できません。

例えば、単体では「負け犬」や「問題児」のグループに属する事業であっても、他の事業と組み合わせることで競合よりも優位に立てている場合や、ブランディング目的で事業が存在しているような場合もあります。

 

そのほか考慮できない事項がある

例えば、以下のような事項を考慮して分析することはできないため、事業を評価する際には別軸で検討しなければなりません。

・事業や商品のブランド力

・事業や商品が特許や独自の先端技術を有している場合

・顧客ロイヤリティー

実施方法

PPM分析は以下の3つのステップで実施します。

  1. 市場成長率を計算する
  2. 市場占有率(マーケットシェア)を計算する
  3. 座標上にプロットする

 

1. 市場成長率を計算する

市場成長率は、ある期間における市場規模の増減です。次の式で計算できます。

市場成長率=本年度の市場規模/前年度の市場規模 ※前年度からの増減を計算

市場規模のデータは、民間の調査会社・シンクタンク・公的機関が発表している統計データを参考にします。

 

2. 市場占有率(マーケットシェア)を計算する

市場占有率(マーケットシェア)は、市場全体に対する自社事業の売り上げが占める割合のことです。次の式で計算できます。

市場占有率(マーケットシェア)=自社の売上高/市場規模

市場占有率(マーケットシェア)は、自社だけではなく競合の率も計算することで、相対的な関係を導くこともできます。

 

3. 座標上にプロットする

視覚的に結果を確認するために、「市場成長率」と「市場占有率(マーケットシェア)」の2軸で表される平面上に、事業をプロットします。

これにより自社の事業がどのグループに属すか確認できます。

ただの点でのプロットではなく、売上額や利益額の大小をバブル(円)で表現することで、異なる情報を付与することもあります。

PPM分析の実施例~花王株式会社~

PPM分析は、自社事業の「選択と集中」に役立てられています。
一例として、花王株式会社が実際に行ったPPM分析を紹介します。

 

日用品大手の花王の、自社事業をPPM分析した研究を見ると、事業ごとにそれぞれ戦略策定していることが分かります。
「花形」に分類される事業の中では、2012年当時、住居・家具用洗剤においては市場シェア5割を占めており、競合他社と比較しても優位性を保っていることが分かります。
「マイペット」に代表される先発優位(最初に市場参入した企業が優位になる)製品に甘んじず、品質改善や新商品開発、時代にあったマーケティング戦略などを駆使して進化する業界最大手として先頭に立っています。
一方、「金の生る木」に属する医療用合成洗剤「アタック」の施策も注目です。
TCR(Total Cost Reduction)と呼ばれるコスト削減プロジェクトにより、発売当初の1987年には800円程度だった価格が2012年には約300円程度まで引き下げられています。
投資分の回収が難しい市場では、このようにコスト削減も有効な手段の1つと考えられています。

参考:PPM 分析を通じた花王の経営戦略と競争戦略研究

PPM分析の応用方法~自社商品の認知度分析~

PPM分析は、事業の分類だけでなく、自社のブランドや製品の認知度を分析する方法としても応用可能です。
具体的には、例えばX軸を「商品・ブランドの特長」、Y軸を「商品・ブランドの魅力度」とすることで、商品のポジションを把握することができます。

 

画像4-4

画像2-May-13-2022-07-29-10-17-AM

各象限のXY軸の線の引き方は幾つかあります。

上記の分析はアンケート調査で実施可能です。

PPM分析の応用方法~アンケート調査例~

PPM分析をアンケート調査で行う際の設問例としては、以下のような形があります。

 

■アンケート例

特徴認知  ⇒ Q1.あなたが●●の特徴で知っているものをお答えください。(お答えはいくつでも) 
特徴魅力度 ⇒ Q2.あなたが●●の特徴で魅力に感じるものをお答えください。(お答えはいくつでも)

画像3-4
このように、特定の商品ブランドを知らなくてもそれぞれの特徴自体が魅力的かどうか判断できるため、非認知層にも聴取することができます。

また、アンケート調査以外の調査方法でも、自社ブランドについて調査可能です。自社が現在抱えている目的や課題に合わせて適切な調査手法を選択することが求められます。

分析上の注意点

PPM分析を実施するにあたり、注意いただきたい点が2つあります。

 

■定期的に実施する必要がある

PPM分析の結果は、あくまで分析時の市場環境を反映したものです。

市場や生活者のニーズ、技術、政治的要因などは絶えず変化し続けているため、今の分析結果が維持されるわけではありません。

何か特徴的な出来事が起こった後に実施するのでは市場変化をとらえきれない可能性があるため、定期的に分析を行い、常に情報をアップデートしておくことが重要です。

 

■事業は多面的に分析する必要がある

先述したように、PPM分析では考慮できない要素が多々あります。あくまでも2軸での評価、事業単体での評価という前提で、多面的に分析し判断に活かす必要があります。

必要に応じて他の事業分析フレームワークや定性情報も活用しましょう。

定性情報はインタビュー調査などで、顧客などからヒアリングを行うことで把握できます。

インタビュー調査について詳しく知る

まとめ

PPM分析は、自社の事業が今どのような状況なのかを把握するためのフレームワークです。
基本は経営資源の配分を検討するための事業分析に用いられますが、記事中でご紹介したように、アンケート調査を用いて認知度や購買欲求の調査としても応用可能です。
フレームワークには複雑な工程が必要なものもありますが、PPM分析は比較的簡単な計算で分類ができ、分かりやすいので多様な分野で利用可能です。

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