在留外国人の数は過去最高の370万人を記録し、企業にとっては無視できない大きな市場に成長しています。日本人とは違う行動様式や心理をもつ在留外国人の方々が、日本に住む中で何に「困った」と感じるのか理解できれば、効果的な商品サービスや広告を展開できるのではないでしょうか。そうすれば、企業の成長にも寄与するはずです。
本記事では、日本での【生活】にスポットをあてて、これまでに感じた5つの「不」を聞いていきました。本記事では長沼日本語スクールの学生さんに行ったインタビュー結果を中心に、ご紹介します。
在留外国人は過去最高を記録!
出入国在留管理庁の統計調査によれば、令和6年末の在留外国人数は約376万人で、過去最高を記録しました。統計を取り始めた平成24年は約203万人で、1.5倍以上増えている状況です。増加傾向は右肩上がりで、新型コロナウィルスの国内初感染が確認された2020年、2021年と一時落ち込んだものの、2022年に過去最高を記録して以降、伸び続けています。なお本統計調査の対象者である在留外国人は、法務省が定めた3カ月以上の在留資格をもつ外国人です。そのため、在留カードを持たない観光客などインバウンドを含めれば、日本にいる外国人は更に多くなります。
給与の安さや物価高に不満を感じる外国人が多い
令和6年、出入国在留管理庁は在留外国人約7,600人にアンケート調査を行い、日本の生活環境について調査しました。その結果、生活環境全般では「満足している」「どちらかというと満足している」の回答は88.2%に達しており、おおむね住みやすさを感じているといえます。
一方で「満足していない」ことについては、「給与の安さ」「物価の高さ」「外国人に対する差別」が高い割合を占めており、まだまだ改善の余地が大きいことがわかります。「給与の安さ」「物価の高さ」については令和4年度の調査と比べて回答率が大きく上昇しています。また「就労環境の悪さ」「日本人との交流が少ない」といった回答も増加していました。
在日留学生へのインタビュー
定量調査に加えて、インタビューの定性調査によってビジネスチャンスに気づけることがあります。「あ、こんなところに不満を感じているんだ。ここを改善するサービスを提供すれば、事業拡大できるかもしれない」という部分があるかもしれません。ぜひ生の声を参考にしてみてください。インタビューには、在留資格をもつ東京日本語学校 長沼スクールの学生の皆さんにご協力を頂きました。
ご協力いただいた学生さんのご紹介
J.Aさん

韓国出身。モバイル系企業の日本支社に配属され、仕事のために来日。大学生時代に日本留学の経験があるが、日本文化を知るためにもっと日本語を上達させたい という想いから東京日本語学校 長沼スクールに通っている。
J.A.Mさん

カナダ出身。日本の歴史や文化に強く魅力を感じており、日本人の精神をもっと深く感じたいと感じ、思い切って来日。もともとカナダではオンラインで日本語を学んでいたが、現地で使われるニュアンスなど細かい表現などを身につけるために、日本語学校 長沼スクールに通っている。
S.Lさん

台湾出身。歌舞伎など日本文化が好きで、大学卒業後に来日。台湾で学べる日本語と日本で教える日本語には違いがあると感じ、現地で日本語をしっかり学びたいと考えた。就職に向けた準備も兼ねて、日本語学校 長沼スクールに通っている。
P.Wさん
台湾出身。日本語学校 長沼スクールの職員として、学生さんの募集、通訳、ビザ申請支援などを行っている。観光で訪れて日本を好きになり、高校卒業後に来日。日本語学校で日本語を勉強した後に大学へ入学。そのまま長沼スクールに就職した。
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実際に聞いてみた!「何に不満を感じてますか?」
■これが不便!「住所・電話番号・口座をつくるのに時間がかかる」

── 日本で生活する上で、不便に感じたことはありますか。
──(J.A.さん)日本で生活するとき必ず手に入れるべきものがあります。それは在留カード、銀行口座、電話番号、住所、マイナンバーカードです。これらをそろえるのに、2カ月くらいかかり、とても大変でした。
最初に部屋を探し、在留カードで身分を証明して住所登録します。しかし部屋を借りるためには、電話番号が必要になります。また銀行口座をつくる上でも電話番号が必要です。一方でスマートフォン(電話番号)の契約をするためには住所が必要になります。何も知らずに日本に来ると「何から始めたらいいのか」がわからず時間がかかりますし、一通りそろってマイナンバーカード登録をするときでも、発行の予約ができるのが、私の場合は15日先だったりして、とても時間がかかりました。
■これが不思議!「現金払いしかできないお店が多い」

── 日本で生活する上で、不思議に感じたことはありますか。
──(J.A.M.さん)支払いの方法ですね。現金払いが多いことが不思議でした。カナダではクレジットカードなど、キャッシュレスが当たり前でしたが、現金払いしか受け付けないお店がとても多いです。あと不思議だったのが、現金を店員さんが受け取るときに、必ずトレーに置く習慣ですね。お釣りもトレーに置かれて返ってきます。どうして手渡ししないのでしょう。それから、商品の包装がとても過剰で、持って帰ったときにゴミが増えてしまいます。どうして? と不思議ですね。
■これが不安!「地震や病気になったときの対応方法」

── 日本で生活する上で、不安を感じたことはありますか。
──(J.A.さん)地震が起きたとき、どうすればいいのかわからないのが不安ですね。まだ自分自身、大きな地震は体験したことがないので。避難するときどこへ行けばいいのか、非常用の水を買って保管しているけれど足りるんだろうか、高いところに住んでいるが大丈夫なんだろうか…など、いろいろ考えます。両親も地震のニュースが出るたびに心配して連絡してきますね。それから、病院は紹介制のところがあったりして、それは暗黙の了解らしい ですが、私たちにはわからないです。行っても受け付けてくれるのか、不安に感じることはあります。
■これは不要!「過度なカタカナ表記と部屋の礼金」

── 日本で生活する上で、不要では?と感じたことはありますか。
──(S.L.さん)カタカナ表記が多すぎることです。とても読みにくくて、レストランなどに行く際に困りますね。台湾人としては、漢字があれば何となくわかるのですが。最初は日本語だと思っていたのですが、フランス語やイタリア語がそのままカタカナでメニュー名になっていて、どんな料理なのかまったくわからないです。
■これが不足!「重要文書の多言語対応」
── 日本で生活する上で、不足に感じたことはありますか。
──(P.W.さん)多言語表記ですね。私たちは日本語を勉強していますし、最近は翻訳アプリもあるので、ある程度は何が書かれているのかなど、理解できます。とはいえ、難解な文章を理解するのには時間がかかります。たとえば部屋の賃貸の契約書です。あまり一般的ではない表現で書かれていて、翻訳アプリでは理解が追い付きません。その他にもいろいろな重要文書に目を通すこともあり、これらが多言語表記になっていると、外国人はとても住みやすくなるはずです。
インタビューを終えて
今回のインタビュー調査で見えてきた課題の1つは「日本での生活をスタートする上での障壁が多い」ということです。部屋、携帯電話、マイナンバーカードなどを取得するときに手続きが煩雑だったり、時間がかかったりと、なかなか生活を軌道に乗せられず、ストレスを感じている方が多いようです。母国で仲介事業者に頼んで、事前に対応した上で訪日している方もいるとのことです。こうしたサービスを日本企業が対応することは、高いニーズがあるかもしれません。また、日本ならではの「地震対応、現金払い」など、日本人でも不便を感じることにも同様に、不便を感じていることがわかりました。
ネオマーケティングは外国人をターゲットとした定量調査・定性調査を得意としています。「外国人向けの商品サービス企画をするために、市場調査をしたい」「自社で作った商材が、外国人の方々に本当に受け入れられるか検証したい」といった考えをお持ちの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
最後に、今回のインタビューにご協力いただいた東京日本語学校 長沼スクールおよび学生の皆様に、心より感謝申し上げます。皆様全員が日本のことが大好きで、快くインタビューに答えてくださいました。誠にありがとうございました。