シンプルな広告がインパクトを生む
ライター:与安 紀之
公開日:2023年08月01日
| 更新日:2024年10月24日
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カテゴリー:
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クリエイティブ
広告はマーケティングにおける重要な施策です。SNSなどを使った口コミの力が大きくなったとはいえ、TVや雑誌、新聞などのマスメディア、WEB、交通広告などへ出稿すれば、広くたくさんの人にメッセージを届けることができます。
広告運用に携わる方は「どう伝えたら自分たちの商品やサービスを理解してもらえるか」「どんな表現をしたら生活者の印象に残るだろうか」べきか、熟慮されていることでしょう。
その答えこそ、本コラムでお伝えしたいことになります。
シンプルな広告がインパクトを生む
2023年春にSNSで話題となったある交通広告を事例に、考えていきたいと思います。
誰にも届かない広告になってしまいませんか?
広告の制作で陥りがちな過ちのひとつが、「自分たちの商品・サービスのことを知ってもらいたい!」という思いが強すぎて、情報過多に陥ることです。
「高機能を訴えたいし、デザイン性の高さも伝えたい」「メイン顧客は女性だけど、男性にも訴求したい」「使用法の注意書きも必要だろう」と、企画時のコンセプトからどんどん要素が加わっていくのは、広告のあるあると言えるでしょう。
“せっかく”出稿するのだからという気持ちはわからなくもありません。
しかし、長い文章で説明したところで、人は足(手)を止めて読むでしょうか?
写真やビジュアルをたくさん盛り込んだとしても、見た人の印象に残るでしょうか?
結果、“せっかく”出稿したのに、誰にも届かない広告になってしまいます。
むしろ、情報を極限まで絞った、シンプルな表現がインパクトを生む、そんな時代になっています。それを鮮やかに証明したのが、明治が今春に新発売したアイスクリーム「明治 Dear Milk」の交通広告です。
2023年3月末から4月中旬までの約2週間、東急東横線の車両内をジャックし、SNSでも拡散されましたので、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。
商品コンセプトを何も足さない「真っ白」で表現
中吊り・窓上・ドア横と掲出された広告は「真っ白」。窓上の広告に小さく商品写真が入っているものの、商品名やコピーは広告の隅に光があたってかろうじて読める印刷で小さく入っているだけです。
「明治 Dear Milk」の最大の特徴が、「原材料、乳製品のみ」ということ。一般的なアイスクリームは乳製品にさまざまな素材を加えて美味しさを生み出すのですが、「明治 Dear Milk」は、「乳本来のおいしさのみに削ぎ落としていく高度な引き算の発想」で開発したそうです。
その「原材料、乳製品のみ」の何も足さないアイスクリームというコンセプトを、何も足さない真っ白な広告に表現したわけです。
シンプルでインパクトある広告はこれまでにもありました。しかし、ここまで潔い広告はなかったように思います。ここまで振り切った表現は簡単にできるものではありません。
「コンセプトに合わせて、真っ白にする」という方向性に決まったとしても、制作の過程で誰かから「商品名くらいはちゃんと伝えたい」「小さくてもいいからスミ文字で入れるべきでは?」といった声が出てくるものです。
この広告に対して、明治は「本商品に対する明治の本気が、真っ白な体験広告を通して伝わることを願っています」とコメントしていますが、その言葉のとおり、メーカーの勇気や心意気を感じました。
さまざまな情報が氾濫している街中に突如現れた「白い空間」。その違和感は、見た人に強烈な印象を残しました。「ないもの」が逆に目に留まる——。そんな効果が最大限生かされ、広告として成功したわけです。
シンプルな広告がインパクトを生む——ということが、ご理解いただけたのではないでしょうか。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000040840.html
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