コロナ禍によるリサーチ活動のメリット・デメリット
ライター:中島 孝介
公開日:2021年01月22日
| 更新日:2024年10月22日
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リサーチャーコラム
2021年を迎えた現在もコロナの脅威は進行系ではありますが、節目でもあることから2020年のリサーチ活動の取組について振り返っておきたいと思います。
定量調査の主であるWEB調査についてはコロナによる影響がほぼなかったため、特にこれまで対面式が主となっていた定性調査やワークショップについて昨年感じたことを綴っていきたいと思います。
インタビュー調査はオンラインへシフト
2020年3月から新型コロナウイルスにより、これまで業界的には常識的に実施されていた対面式の質的情報収集(主にデプスインタビューやグループインタビュー)は活動が一旦立ち止まりました。
クライアントがバックルームからマジックミラー越しに生活者のインタビュー内容や表情を観察しながら文脈を感じ取る調査が出来なくなったのです。
これまでも地方居住者とのインタビュー方法として、オンラインでインタビューを実施してきた経緯はあるものの、常識が通用しなくなった状況からいち早く変化対応する必要がありました。
即座にオンラインでの対応に切り替えましたが、ほぼ1対1で実施するデプスインタビューでの実施となりました。それまで定性調査のうち最も多く実施されていたグループインタビューは、オンライン環境では知らない人5、6名で抵抗なくどんどん会話するような空間には向かず、コロナ禍においてはデプスインタビューが主流となった年でした。
オンラインで行うデプスインタビューはネット接続状況による会話のしにくさ以外のデメリットはほぼ皆無であり、むしろ、オンラインに切り替えたことにより全国で生活している人にどこでもインタビューが実施可能という意識変革を業界的にもたらしました。
また、インタビュー対象者が自宅から参加されるためリラックスした状態でインタビューに参加できるのも本音を聞き出すには向いているように感じられますし、画面越しに生活環境が見えるのも情報として有意義なケースもあります。
このようにオンラインインタビューにシフトしたことは、デメリットよりもメリットのほうが大きいといえるでしょう。
インサイト探索のための訪問観察調査の需要は高まる
一方、インサイト探索という目的から考えるとリッチな情報を得られる訪問観察調査はコロナによる影響を大きく受けました。生活者、クライアント双方の感染リスクの面から直接訪問して会うことが出来なくなったためです。
オンラインでも生活環境を画面越しに映してもらうこともできますが、インサイトには非言語情報が重要であるため、結果としては“ないよりはまし”といえる程度のものでしかありませんでした。
夏が終わる頃、コロナも落ち着いたタイミングで対象者自宅に直接訪問する観察調査を再開したところ、入手できる情報量と質が全く違うと再認識することができました(画面越しで環境を観察することは表面的な部分しか理解できず、実際に訪問した時の五感から入ってくる情報の比ではないことをあらためて認識しました)。
定性情報は客観的な論理性を導くための情報ではなく、ストーリーや体験といった共感につなげるための情報であり、そのための非言語情報は創り上げるペルソナ像やインサイトへの納得感への影響度合いが全く違ってきます。
論理で説明しにくいものはこの納得感が非常に重要であり、そのような情報と担当者の熱意がその後の企業のアクションに影響を及ぼします。インサイト探索は新しいことをはじめる時に相談されるケースが多く、リアル環境の観察というプロセスは必要なプロセスといえるでしょう。
余談ですが、コロナによるデジタル推進とは逆行するように、企業からの観察調査の相談も増えてきているのはどういった因果関係があるのでしょうか。。。
ワークショップはオンラインとオフラインの使い分けが重要
ワークショップについてもオンライン化が余儀なくされた時期でした。ワークショップはオンラインコミュニケーションツールであるzoomとオンラインワークショップツールであるmiroを駆使して実施する仕組みを試行錯誤をしながらつくりました。
インタビュー同様wifi環境による接続に関する懸念はありますし、身体性を伴うリアル空間のほうが右脳は刺激され、新商品などの開発には向いていることは間違いありませんがオンラインでも実施可能です。
オンラインでのワークショップの場合は、人数が多い場合どこでも参加できるメリットもあり、使い分けが今後定着していきそうです。
まとめ
このようにリサーチの中でも定性的なサービスにおける、オンライン化のメリット・デメリットがわかったことは、インサイトを理解する方法論の進化において気づきが多い1年でした。
今年、オリンピックも予定されておりコロナがどのようなタイミングで収束していくのか、様子を見ながらですが、リサーチにおいても今後も素早い変化対応が必要であることは間違いないといえるでしょう。
執筆者
インサイトドリブンディビジョン デザインリサーチャー
中島 孝介
リサーチ歴20年。主にメーカー、サービス事業会社向けにマーケティング課題から一緒に解決プランをつくるリサーチを実施。
2013年からデザイン思考を取り入れ、商品・サービス開発のサポートに携わる。2019年よりネオマーケティングに加入。デザイン思考セミナー講師/行動観察セミナー講師/TOKYO DESIGNERS WEEK2013「発想の種」ワークショッププレゼンターとしても活躍。著書に「インサイト・ドリブン~たった1人のこだわりからヒットは生まれる~」がある。
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