マーケティングリサーチには定量調査と定性調査の2つがある
マーケティングリサーチは大きく「定性調査」と「定量調査」に分けられます。マーケティング活動に活用するためには、それぞれの特徴や手法を適切に理解しておくことが重要です。
今回は、定性調査の特徴やメリット・デメリット、定量調査との使い分けなどをご紹介します。
定性調査とは
定性調査とは、「数値」で表せない情報、生活者の「心理」や「行動理由」を探るための調査です。
言葉や行動などの定性的な情報から、生活者の心理を分析します。
代表的な手法はインタビュー調査です。インタビュー調査には、インタビュアーと対象者が1対1で行う「デプスインタビュー」、複数人同時にインタビューする「グループインタビュー」、Web会議ツールなどを利用して行う「オンラインインタビュー」があり、それぞれ使いどころが異なります。
定量調査との違い
定性調査と定量調査の違いは以下の通りです。
比較項目
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定量調査
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定性調査
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分析データ
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調査目的
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主な調査手法
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ネットリサーチ
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会場調査
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ホームユーステスト
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郵送調査
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デプスインタビュー
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グループインタビュー
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オンラインインタビュー
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エスノグラフィー(行動観察調査)
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分析データの違い
定量調査で分析するのは数値データです。例えば「女性20代の●%が購入したいと言っている」などのように、年代や性別など、さまざまなセグメント別に分析できます。
一方定性調査で分析するのは、インタビューや観察によって得た言葉や行動などの数値化できない情報です。
調査目的の違い
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定量調査:仮説検証、実態把握、効果測定
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定性調査:仮説立案、行動理由や心理の深堀
定量調査は、仮説の確からしさを数値的に証明したい場合や、市場全体の状況、広告による態度変容などをデータで把握する場合に適しています。数値として全体傾向を把握しやすい点、客観的な根拠として示しやすい点で、仮説検証、実態把握、効果測定の目的で実施されます。
定性調査は、課題を解決するための仮説立案、アイデアのヒントを得るために実施します。定性調査で得た生活者の言葉を分析することで、「生活者のニーズは○○なのでは?」「生活者が感じている価値は○○なのでは?」という仮説を立てることができます。
また、生活者の行動理由や心理を深堀し、生活者のニーズやインサイト理解を行う目的でも実施します。
調査手法の違い
目的の違いに応じて、それぞれの調査手法も異なります。定量調査は、主に選択肢式の質問を用いて量的なデータを収集する手法であり、多くの参加者から回答を得ることに焦点を当てています。対照的に、定性調査は一人ひとりの生活者の心理を深く理解し、アイデアや仮説につなげることを重視しています。
メリット
生活者心理・インサイトを把握できる
人の行動には、必ず心理的背景や理由があります。定性調査では、意識や感情に迫り、生活者を動かす「インサイト」を探ることができます。
昨今、成熟市場やコト消費と言われるように、品質の良さだけで売れる時代ではなくなりました。1人の生活者を徹底的に深掘りし、インサイトを捉えた価値提供が求められています。デジタル化によってさまざまなデータが収集できるようになりましたが、生活者の心理を深堀しインサイトにせまれる方法は定性調査だけです。
仮説立案に利用できる
商品やサービスの改善、マーケティング施策の立案にも、さまざまな「仮説」が必要です。生活者理解を深め、価値観や行動の理由、インサイトを把握することで、マーケティング活動に生かせる具体的な仮説を立てることができます。
アイデア創出に利用できる
定性調査では、インタビューや行動観察を通じて、さまざまな意見や情報を収集できます。思いもしなかった発見につながることもあり、それが新たなアイデアの種になります。得られた情報をもとに、製品やサービスの改善案や新商品、効果的なマーケティング施策を考案できます。
デメリット・注意点
対象者選定の難しさ
定性調査では、調査対象者の選定が非常に重要です。深堀できる情報をそもそも持っていない対象者からは、情報を引き出しようがないためです。聞きたい情報を持っているか、対象者条件に当てはまっているかを調査前に判断するノウハウが必要です。
よくある失敗が、対象者の条件をあいまいに設定してしまう場合です。例えば、新しい転職サービスを検討しており、「転職検討者」にインタビューするとします。この場合、将来的に転職を考えているだけの人も、転職サイトに登録して2~3回面接を実施している人も「転職検討者」といえます。
このように「転職検討者」という条件設定をしてしまうと、検討度の差をリクルーティングに反映できず、欲しい情報が得られない可能性があります。そのため、対象者条件は細かく設定したうえで、条件に合致する人をリクルーティングする必要があるのです。
結果分析の難しさ
定性調査は言葉や行動を分析対象とするため、調査参加者によって解釈が異なります。そのため、関係者間で調査結果について認識の共有をおろそかにしたことにより、施策検討段階でもめてしまうことがあります。
少数の意見であり、量的な根拠はない
定性調査を何百人も対象に行うのは、コストの観点で現実的ではありません。定量調査と比べると調査人数はどうしても少なくなるため「一部の生活者の意見に過ぎない」という指摘を受けてしまうことがあるようです。
デメリットに対する考え方
対象者選定と結果分析については、調査経験とノウハウがあれば設計段階で対策できます。量的な根拠がないという指摘については、定性調査は仮説立案や生活者理解を深める目的で実施すると割り切り、量的な検証は定量調査を実施するようにしてください。
主な手法
デプスインタビュー
インタビュアーと対象者、1対1のインタビュー調査です。最も深掘りができる調査手法だといえます。
デプスインタビューの詳細を見る
グループインタビュー
4~6名を同時にインタビューする調査手法です。個々に対する深堀はできませんが、一度に複数人への調査が可能なため、目的によってデプスインタビューと使い分けることが有効です。
グループインタビューの詳細を見る
エスノグラフィー(行動観察調査)
インタビューだけでなく、行動観察や自宅訪問などを通して、ことば以外からも情報を得る調査手法です。対象者がインタビュー調査で話せることは、深さの程度こそあれ、あくまで本人が認識できている範囲にとどまります。エスノグラフィー(行動観察調査)は、人の行動や生活環境に現れる無意識に迫れる調査手法です。
エスノグラフィー(行動観察調査)の詳細を見る
オンラインインタビュー
テレビ会議システムを活用して、オンライン上でインタビュー調査を行うことができます。対象者の場所を問わず、インタビューを実施できます。
オンラインインタビューの詳細を見る
ワークショップ
インタビュー調査などで得た情報や仮説をもとに、事業者側の関係者だけでなく、時には一般の生活者、ユーザーも巻き込んで、さまざまな意見をぶつけあいアイデアを収束させる手法です。
定性調査にワークショップを取り入れる方法を見る
成功事例
【スポーツ用品】インタビュー調査を商品開発とブランド戦略に活用
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企業名
アシックスジャパン株式会社
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実施した調査
グループインタビュー、デプスインタビュー
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目的背景
これまでランニング以外の競技の商品については、調査経験が少なかったといいます。改めてそれらの競技の商品について、顧客理解を深め、マーケティング戦略立案のために調査を行いました。
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調査結果、活用
調査を実施したことにより、顧客のインサイトやカスタマージャーニーを理解できました。年間のマーケティング計画や、商品のコミュニケーション設計もこれまでの踏襲や感覚的に作成するのではく、顧客のカスタマージャーニーに沿った形で設計できるようになり、売上につながるようになったといいます。
【審美歯科フランチャイズ】インタビュー調査をサービス改善とリブランディングに活用
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企業
ホワイトエッセンス株式会社
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手法
デプスインタビュー
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目的背景
これまでは定量調査を実施していましたが、数値データだけを使ったマーケティング活動に限界を感じていたといいます。顧客の生の声をサービス強化やCRM強化につなげるために、インタビュー調査を継続実施することを決めました。
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調査結果、活用
優良顧客へのインタビューを重ねることで、担当者たちも理解していなかったホワイトエッセンスの本当の価値、セールスポイントに気づかされたといいます。そこで得た自社の強みをリブランディングに活用し、ブランドミッションも顧客の声を反映させて生み出しました。顧客のサービスへの意見は、その後のサービス改善方針に取り入れ、経営計画にも反映させました。
成功させるポイント
調査目的を整理し関係者で共有する
まずは調査を行う目的を明確にすること、さらに関係者間で共有しておくことが重要です。定性調査で得たいこと、調査目的を明確にしなければ、選定する調査対象者やインタビュー内容もずれてしまいます。
人によって解釈が異なる情報を分析するからこそ、調査目的を関係者間で共有し、インタビュー内容や活用方法について認識齟齬がないよう、事前に確認しておきましょう。
適切な対象者を選定する
定性調査では、「何を聞くか?」より「誰に聞くか?」が重要です。意見の深堀が可能な人を調査対象として選ぶ必要があります。対象者の選定(スクリーニング)は注意して行ってください。
インタビューフローを作成する
質問内容、時間配分をまとめたインタビューフローは必ず用意し、関係者間でも質問内容に抜け漏れがないか、確認をとっておきましょう。
関係者全員で参加する
定性調査当日は、できるだけ関係者全員で参加しましょう。生の声をその場で聞くのと、調査結果をまとめたレポートを見るだけでは、得られる情報量、生活者理解の深さと幅に大きな差があります。
インタビューは臨機応変に行う
作成したインタビューフローはあくまで参考としてとらえ、それに縛られる必要はありません。むしろインタビュアーには、その時その時の対象者のコメントを深掘りする姿勢が求められます。決して一問一答のようなインタビューにならないよう、臨機応変に対応しましょう。
インタビュー後はすぐにワークショップを行う
インタビュー後は、すぐに参加者で認識を共有する場を設けましょう。定量調査とは違い、定性調査では得られた情報の解釈が人によって異なります。参加者それぞれが抱いた感覚や意見を共有し、議論を深めることが重要です。内容を鮮明に覚えているうちに、次のアクションにまで落とし込めるようなワークショップを行いましょう。
まとめ
定性調査は、生活者の行動理由や心理を深堀、深く理解するために最適な調査です。その生活者への深い理解が、優れた新商品やマーケティング施策につながる仮説やアイデアの創出につながります。
調査対象者の選定、関係者の調査参加、ワークショップ実施などのポイントを意識して、効果的な調査を実施してください。
定性調査の実施で不安やお悩みがあれば、ネオマーケティングにご相談ください。