n=1は50倍の共感を呼ぶ!?
ライター:加藤 賢大
公開日:2023年07月28日
| 更新日:2024年07月01日
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リサーチャーコラム
アンケートやインタビューで「n=1」のキラリと光る原石を見つけたと思っても、それが本物の原石なのか、石ころなのか判断がつかず悩ましい経験をされたことはないでしょうか。
そこで、今回の記事では、「n=1」のポテンシャルをご理解いただくために、自主調査結果と考察を交えながら解説します。初めての方にもわかりやすいように丁寧に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
・調査概要
調査は2つ行い、1つ目では「純粋想起(自由記述形式)」で意見を収集します。
その中から多数派の意見と少数派の意見を任意にピックアップし、2つ目の調査で「助成想起(複数選択形式)」で聴取しました。
※本コラムでは、ポジティブイメージ、ネガティブイメージを取り上げてご紹介いたします。
1.純粋想起と助成想起の上位は概ね一致(=コモディティ化されている)
自由記述形式(FA)で上位の意見は、複数選択形式(MA)においても概ね上位に挙がっている。
これは、質問をされた際に多くの人に思い浮かべられるものが一致するということであり、コモディティ化された意見と捉えることができそうです。
Q.「冷凍食品」に対してどのようなイメージがありますか。ご自由にお答えください。(お答えは具体的に)
Q.「冷凍食品」に対してどのような良いイメージがありますか。(お答えはいくつでも)
※自由記述形式の回答は、アフターコーディング(AC)という選択肢化の処理をしています(以降同様)。
Q.「冷凍食品」に対してどのようなイメージがありますか。ご自由にお答えください。(お答えは具体的に)
Q.「冷凍食品」に対してどのような悪いイメージがありますか。(お答えはいくつでも)
2.少数意見の中には、多くの共感を呼ぶものとそうではないものが混在している
自由記述形式(FA)で少数の意見に着目すると、複数選択形式(MA)でギャップが生まれているものとそうではないものが見られます。
例えば、ポジティブイメージでは、「安全安心」「鮮度が良い」「栄養バランスが良い」は、 自由記述形式(FA)と複数選択形式(MA)にギャップがなく、いずれも少数となっていますが、一方で「料理が面倒な時に良い」は、 自由記述形式(FA)では少数意見でしたが、複数選択形式(MA)では多くの人に選ばれています。
同様に、ネガティブイメージでは、「鮮度が良くない」「味に飽きる」「食感が悪い」「麺にこしがない」「ヴィーガン製品が少ない」は、 自由記述形式(FA)と複数選択形式(MA)にギャップがなく、いずれも少数となっていますが、一方で「野菜が今一つ感がある」は、自由記述形式(FA)では少数意見でしたが、複数選択形式(MA)では多くの人に選ばれています。
このギャップは、「言われてみればそうだ」というふうに思われたということではないでしょうか。
つまり、n=1を含む少数派の意見の中には、多くの人の共感を呼ぶトレジャーデータと、そうではないガーベッジデータ(ゴミ)が混在していると捉えることができると思われます。
【「冷凍食品」のポジティブイメージ】
【「冷凍食品」のネガティブイメージ】
3.n=1は50倍の共感を呼ぶ
最後に、n=1含む少数意見はどれほどの共感を呼ぶのか確認してみました。
まず、自由記述形式(FA)(n=1000)の回答比率に対し、複数選択形式(MA)の回答比率が何倍かを算出します。
次に、自由記述形式(FA)(n=1000)において、n=10以上(1%以上)とn=10未満(1%未満)に分類した上で、それらの倍数の平均値を算出して比べてみました。
結果、自由記述形式(FA)で
「n=10以上(1%以上)」の意見は、複数選択形式(MA)では約10倍にとどまったが、
「n=10未満(1%未満)」の意見は、複数選択形式(MA)では約50倍にも跳ね上がりました。
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もちろん、「n=10未満(1%未満)」の意見は、元々が少ないため倍数は大きくなりがちではありますし、
今回の調査では数問での検証のためすべてにあてはまるというわけではないと思われますが、「n=1は50倍の共感を呼ぶ」可能性があるという示唆を得ることができました。
【「冷凍食品」のポジティブイメージ】
【「冷凍食品」のネガティブイメージ】
まとめ
今回は、以下の3点についてお話しさせていただきました。
1.純粋想起と助成想起の上位は概ね一致(=コモディティ化されている)
2.少数意見の中には、多くの共感を呼ぶものとそうではないものが混在している
3.n=1は50倍の共感を呼ぶ
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筆者としては、特に3点目は大きな気付きであったと感じています。
マーケティングリサーチの現場では、純粋想起やインタビューにおいて、たった一人の意見だからと採用することに迷われるケースは多いと思いますが、 しっかりと定量的に検証することで、それが多くの共感を呼ぶトレジャーデータになりえると、自信を持っていただくきっかけになれば幸いです。
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