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企業を強くするインナーPRとは

ライター:高橋 拓己

公開日:2021年06月30日 | 更新日:2024年10月25日

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PRの役割は、パブリックリレーションズ(Public Relations)の名のとおり、公共との関係作りにあります。メディアと関係性を築き、生活者(顧客)とのつながりを育んでいくくわけですが、PRが関わるのは生活者やメディアだけではありません。
株主・投資家や金融機関、取引先や関連会社、地域住民や行政機関、そして、従業員といったステークホルダーも、自社の商品やサービスの世界観・価値を伝える重要な存在。こうした「内」に向けての関係づくりもPRの仕事です。今回は「インナーPR」について、解説していきます。

◇インナーPRとは

新発売するユニークな商品やサステナビリティへの取り組みなど、企業の価値ある情報がメディアに取り上げられるように、PRは外向けにプレスリリースを出します。
それと同時に、従業員を含む各ステークホルダーが、その価値を同じように理解し共有できるよう、内側に向けて発信していくのがインナーPRです。「インナーブランディング」「インナー広報」などとも呼ばれ、昨今、その役割の重要性が高まっています。

社長がインタビュー受けたとき、営業担当が取引先で話をするとき、店頭スタッフがお客様とコミュニケーションをとるとき、PRが打ち出しているメッセージと同じ内容や価値観で話ができているでしょうか?

たとえば、メディアを通じて生活者に伝わった価値が、
「社長も、発信している」
「営業さんも、言っていた」
「投資家も、理解している」
「そういえば、お店の人が教えてくれた」
こうした状態を作ることができれば、PRに実態がともない、打ち出したいメッセージや企業の価値がより印象深く残るとともに実体化されます。
たとえば、もしプレスリリースの内容や新製品情報が外向けのPR発信によってメディアに取り上げられたとしても、社長や社員、店舗で発するメッセージと異なっていたら、PRに信ぴょう性や信頼感がなく消費者はついてこないのです。

インナーPRに成功している企業といえば、世界的に有名な某テクノロジー・モバイル機器製造企業が有名でしょう。そのクリーンな店舗にはおそろいのTシャツを着た店員がたくさんいますが、皆、自社製品が大好きで、自社が発するメッセージに共感(なんなら、心酔)し、自信と誇りをもっています。そんな人たちにおすすめされるから、その製品は魅力的に伝わり、顧客ロイヤリティも非常に高くなります。その企業の新製品発売日には、行列を作る多くの熱狂的ロイヤルカスタマーたちがTVのニュースで報道されていますね。
その企業はPRの体制を整えているだけでなく、社内研修など従業員に対するコミュニケーションを充実させるなどもしているそうです。あまりにも突出すぎている例ですが、インナーPRによって従業員の目線が合うことで、企業が強くなることはまちがいありません。

「社員を一番のファンにしろ」というのは、ブランディング論でよく指摘されることですが、
「うちの製品、いまいち」と思っている店員と、ブランドのコンセプトや製品を理解し、「心からドキドキするぐらい好き」という熱量をもった店員とでは、伝わるものがまるで違います。
やはり、社員が商品の一番の理解者であり推奨者であってほしい。そうしたファンを内側につくるのがインナーPRの仕事です。
テレビや雑誌、ウェブ媒体やSNSだけがメディアではありません。社長も営業担当も店頭に立つスタッフも皆、自社の価値を伝える “メディア”だと考え働きかける。インナーPRも、PRの重要なミッションだと理解できるのではないでしょうか。

◇広告ではできないPRの力

インナーPRの重要性から、新製品の案内や新規プロジェクトの情報や新しい取り組みなどの社内向けツールを作る企業内PR(コーポレートPR)担当者を配置する企業も増えています。業態によっては、全国から店長を集めた店長会を企画してPR担当者がプレゼンをする機会を設けたりもしています。
しかし一方で、外向けへのPRだけで手一杯、正直、インナーPRまで手が回らないという企業もあるでしょう。それでもやはり、インナーPRを意識していただきたいと思います。

はじめは、外向けのリリースの“ついで”で構いません。イノベーティブな新商品を社内向けならではの内容に少し書き直して発信してみる、自分たちの会社の強みを社員で紹介しあうコンテンツを作る、開発者の熱量や困難な開発過程を生の声で紹介する、SDGsへの取り組みを紹介して参加してもらう、環境への配慮について啓蒙的情報とともに発信した自社の取り組みについて勉強会を企画するなど、発するメッセージはその時々、いろいろでしょうが、企業がどこに向かっているのかというメッセージを社内報や投資家向けのIRリリースなど、機会があるごとに打ち出していくのです。
さらに、内向けのPRメールマガジンを定期発行したり、社内行事を利用してメッセージを出したり。あるいは、店舗スタッフに向けた紹介ツールのようなものをPRが用意するという方法もあります。
もし、社内で手が回らない、外部のエキスパートにコンサルしてもらいながらやってみたいという場合は、外部機関と一緒に取り組むのも一つの手です。

こうした取り組み一つひとつによって外も内も全員の足並みが揃っていくと、変化は確実に訪れます。

もちろん売上結果は、PRだけで成しえるものではなく、商品やサービスの魅力と相まっての相乗効果で生まれるもので魅力的な商品やサービスの存在が前提です。そのうえで、社内外のメッセージに一貫性が生まれることで、企業や商品・サービスのブランド力が高まり、購買時に想起してもらえる存在になっていきます。たくさんの製品があるなか、自社製品をまず一番に選んでもらえるようになるでしょう。

◇おわりに

語弊があるかもしれませんが、お金があればなんとかなるのが広告です。しかし、お金をかけてテレビCMをバンバン打ったとしても、それだけで社内外のステークホルダーに会社や商品のことを「心からドキドキするぐらい好き」という気持ちにさせることは難しいものです。広告やその他のマーケティング手法との相乗効果でそれを叶えていくのがPRです。
つい二の次になりがち、忘れがちなインナーPRですが、是非、意識して取り組んでみていただきたいと思います。PRの力、PRの面白さを体感できるはずです。

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高橋 拓己
WRITER
高橋 拓己
マーケティング業界歴13年。2011年よりネオマーケティングに入社。マーケティングリサーチに留まらず、次なるPR施策まで含めた提案も多く実施。 日用品・調味料メーカー、広告代理店、PR会社など多様な業界でのプロジェクトに携わり、数々のプロモーションを手掛ける。

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