「ネオマーケティング」ライターチームです。
マーケティング用語のデモグラフィックに聞きなじみがない方も多いのではないでしょうか。デモグラフィックは消費者・購買者の具体的な属性を細分化したものであり、マーケティングに役立てられます。
似たような単語であるジオグラフィックやサイコグラフィックとの違いを明確にしておくことで、知識を整理しやすくなるでしょう。ここではデモグラフィックの概要やその類語、活用法について幅広く解説します。
デモグラフィックとは
この記事を読んでいる人の中には、デモグラフィックについてよく知らない方も多いでしょう。ここではデモグラフィックの概要や、その類語について解説します。
●デモグラフィックの概要
記事の冒頭でも解説したように、デモグラフィックは消費者の具体的な属性を細分化したものです。人口統計に使われる指標であり、たとえば以下のようなものが挙げられます。
・年齢
・性別
・職業
・学歴
・所得
「年齢」「性別」といった上記の要素は、デモグラフィック変数と呼ばれます。たとえば、ある商品Xを購入した人のデータを、デモグラフィック変数で表現すると以下のようになります。
・年齢:35歳
・性別:男
・職業:営業
・学歴:大卒
・所得:年収700万円
商品Xを購入した消費者のデモグラフィックを分析し、その中に30代の男性が多いと分かれば、「商品Xのターゲットは30代の男性」ことが理解できます。これは極端な例ではありますが、このように顧客分析を行う際に、具体的な社会ステータスを用いるのがデモグラフィックの基本です。
●STP分析に使われる指標
デモグラフィックはSTP分析に使われる指標の一つです。STP分析とは、「セグメンテーション(市場の細分化)」「ターゲティング(どの市場を狙うか)」「ポジショニング(自社の立ち位置を決める)」を使って、市場で優位に立つためのフレームワークです。
上記のセグメンテーションを行う目的は、利用してもらいたいターゲットを明確化することです。そこで使われるのが、デモグラフィックのような指標です。
デモグラフィックと並び、セグメンテーションに使われる指標として「ジオグラフィック」「サイコグラフィック」「行動変数」の三つが挙げられます。
ジオグラフィックは、消費者の要素の中でも地理的な観点で市場を分析するための方法です。たとえば以下のような要素があります。
・国籍:日本
・地域:都市部
・最寄り駅:目黒
サイコグラフィックは、性格や価値観のような心理的な側面に着目する方法です。たとえば以下のような要素があります。
・ライフスタイル
・趣味嗜好
・価値観
・性格的特徴
行動変数は、消費者の購入頻度や購入経験のような要素に注目する方法です。たとえば以下のものがあります。
・過去の購入歴:なし
・重視するベネフィット:コストパフォーマンス
・購買意思決定権(B to Bの場合のみ):社長
デモグラフィックの特徴
デモグラフィックには、ジオグラフィックやサイコグラフィックのような指標と比べて、固有の特徴を持っています。ここではその特徴について解説します。
●基本的な個人情報
デモグラフィックは、変わらない個人情報であり、「基本的に変わることがない」もしくは「どう変わるかが想定できる」情報となっています。ある日突然男性から女性に変わることはほとんどなく、過去の学歴や職歴も変化しません。年齢は変わりますが、決してランダムではなく、数学的な法則に従っています。
しかしジオグラフィックやサイコグラフィックは、状況によって簡単に変化します。引っ越せばジオグラフィックは変わりますし、人生の中で趣味・嗜好が変わっていくことも珍しくないでしょう。「デモグラフィックはその人固有の基本情報である」といった理解が重要です。
●データを入手しやすい
ジオグラフィックやサイコグラフィックなどと比べて、データを入手しやすいのもデモグラフィックの特徴です。たとえば「性別」や「職業」のような項目は、アンケートを実施するだけで簡単に手に入れられます。
また政府や研究機関によって調査された統計情報も多いため、そこから情報を取得することも可能です。個人の内面を深く分析するサイコグラフィックのような方法とは異なり、表面的な情報なので、ユーザー側にとっても回答しやすいと言えます。
●「なぜそうなったのか」の分析が難しい
デモグラフィックは、表面的な情報は分かりますが、「なぜそうなったのか」の分析が難しいといった特徴があります。たとえば商品Xが30代男性に売れていることが分かっても、「なぜ商品Xが30代男性に売れているのか」という理由までは分かりません。
デモグラフィックはあくまで個人の基本情報であり、その人の価値観や思考の流れを表す指標ではありません。「なぜそうなったのか」を分析する際は、個人の内面に焦点を当てるサイコグラフィックが役立ちます。
デモグラフィックの活用例
ここではデモグラフィックの活用例を二つのトピックに分けて解説します。
●アナリティクス
デモグラフィックの活用例としては、YouTube Studioのアナリティクスが挙げられます。YouTube Studioは、簡単に言えば動画投稿者の管理画面であり、コンテンツの編集やアナリティクスの確認ができます。
アナリティクスでは、視聴者の年齢と性別が確認できます。たとえば「若者向けの動画を作っていたものの、実際には30代から40代の視聴者が多い」「これからはもう少し高い年齢層に向けた動画を作ってみよう」といった方向転換が可能です。
もちろんYouTubeのアナリティクスに限らず、自社サイトの顧客を分析するGoogle Analyticsや、各種アクセス解析ツールでも同じことが言えます。デモグラフィックの情報を参考に、コンテンツの改善やターゲットの見直しが行えるため便利です。
●広告
リスティング広告やSNS広告では、事前に収集したデモグラフィックを活用し、特定のターゲットに向けた広告を配信できます。見込みがありそうなユーザーにのみ広告が表示される仕組みになっているため、効率のいいマーケティングが可能です。このような手法をデモグラフィックターゲティング広告と呼びます。
たとえばLINE広告では、上記の手法が主流になっており、LINEの登録データなどを元に広告を配信できるようになっています。他にもFacebook広告のように、デモグラフィックを活用したターゲティング広告が増えており、今後も注目される手法になるでしょう。
効率的にデモグラフィックを活用するには
効率良くデモグラフィックを活用したい場合は、他の指標を掛け合わせてみるのがおすすめです。たとえばデモグラフィックとジオグラフィックを組み合わせれば、個人の基本情報に地理的な条件を含めた、より詳細な分析ができます。
それぞれの特徴を見ても分かるように、デモグラフィックのような指標には、得手・不得手があります。一つの指標の弱点を他の手法で補うことで、ターゲットを総合的に分析できるようになり、最適なマーケティングが実現できるでしょう。
まとめ
今回はデモグラフィックについて解説しました。顧客分析をする際に、デモグラフィックのような指標はとても役に立ちます。効率的にマーケティングを進めるためにも、それぞれの指標の特徴を整理しておくといいでしょう。
しかしデモグラフィックのような指標は、決して万能ではありません。記事の中でも解説したように、表面的な事実は分かりますが、「消費者がなぜそのように考えたのか」まで理解するのは難しいでしょう。
重要なのは、デモグラフィックにこだわるのではなく、状況に応じて適切な指標を当てはめることです。「顧客分析が足りていない」と考えているのであれば、今回の記事で紹介した指標に注目してみてはいかがでしょうか。