リサーチの活用を妨げるバイアスとは?~確証バイアス~-ネオマーケティング-
ライター:株式会社ネオマーケティング
公開日:2022年01月26日
| 更新日:2024年10月21日
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マーケティングリサーチ
生活者が商品に対してどういうイメージを持っているのか? 自社サービスの利用者はどういう人なのか? 仮説を立て、検証するためにリサーチを行うことは多いでしょう。
しかし、調査の設計や結果の解釈に「バイアス」がかかってしまうと、マーケティング施策全体に悪影響を与えることがあります。
本コラムでは、とくに陥りやすいアンケート調査における「確証バイアス」と、その解決法について解説します。
「バイアス」とは?
バイアスとは思い込みや偏りのこと。人間誰しもが持っているもので、私たちの日常にも溢れています。たとえば…
「几帳面なのは血液型A型だからだね」
「体育会系出身はやっぱり打たれ強い」などなど。
A型でも雑な人はいるし、体育会系出身者でも繊細な人はいます。しかし、先入観や思い込みにあてはめて評価をしてしまうことは珍しくありません。
こうしたバイアスのうち、マーケティングリサーチにとくに影響を与えるのが「確証バイアス」です。確証バイアスは自分の価値観や信じていることを立証、補強する説だけに着目してしまうことを言います。
仮説を立て、それを検証するための調査なのに、企業や担当者の「うちの商品・サービス・顧客はこうだ!」という“思い”が強いと、無意識にその思いを補強する結果を求め、探してしまうのです。すると、せっかくの調査が無駄になるばかりでなく、本質からズレた施策を行ったり、大きなチャンスを逃したりすることになりかねません。
調査時におこる「バイアス」
確証バイアスは調査の設計段階から結果の解釈まで、さまざまな形で影響を与えることがあります。
●調査票作成時のバイアス
評価の取り方や回答の選択肢にもバイアスがかかる場合があります。言い方を変えると、回答ありき、欲しい結果を導くための調査も行うことができてしまうということです。
例えば、ブランド評価を行うとき。
「あなたはコカ・コーラが好きですか?」という質問に対し、はい/いいえの二択で聞くのと、いくつかの清涼飲料水の中から「好きなものを一つ選んでください」と聞いた場合では、結果がまったく異なることがあります。
「はい/いいえ」で問いかけると、人はポジティブな回答に傾きやすくなることはまま指摘されることがあります。「好きですか?」と聞かれたとき、「嫌い」とは言いにくいものです。「好きでもないけど嫌いでもない」という人は「好き」を選択するでしょう。
調査設計をする際のテクニック的な話になりますが、この場合は、「あなたはコカ・コーラが好きですか? それとも嫌いですか?」という聞き方をすべきです。
また、順序効果というものがあり、選択肢の上位にあるものが選ばれやすい傾向があります。担当者が無意識に選択肢の筆頭に自分たちが推したい最有力候補を挙げてしまう、なんてことはよくあります。
担当者も決して意図的ではなく、思いが前に出すぎて、バイアスがかかっていることに気づけないのです。
●調査結果の解釈時のバイアス
リサーチの支援を行っていて、ときおり見かけるのが調査結果の解釈にバイアスがかかってしまうケースです。いくつか例を見てみましょう。
例1)パッケージの評価でA案とB案があり、社内的にA案のほうが評価は高く、生活者にも響くだろうという仮説を立てた。それを検証するため調査を行ったところ、結果は予想と異なりB案の評価が高かったーー。
「調査全体ではB案の評価が高いけれど、20代ではA案のほうが高い。ターゲット層の中心はわりと若めだから、やっぱりA案でいこう」
例2)「親しみやすさ」をブランドイメージとしてきたが、調査をしてみたら、生活者がもっとも強く抱いているのは「良質」「洗練」といったイメージだったーー
「ずっと、『親しみやすさ』でCMを展開しているのに、それが伝わってないのはおかしいなぁ。今回の調査結果は違ったけれど、『親しみやすい』という回答もそんなに低くないから『親しみやすさ』も浸透していると考えても良いだろう。
これらは極端にデフォルメした例ですが、このように調査結果の一部を切り取り解釈した上で、その結果をもとに、具体的な施策に進んでしまうことは実際にあります。
正しい結果を無視して、間違った仮説で突き進んでしまうと、その結果、本質とズレた施策を行ってしまうことになりかねません。本質とズレた施策に効果が期待できるはずもなく、調査結果を有効活用できないばかりか、調査自体の有用性をも揺らいでしまいます。
マーケターの「バイアス」
こうした事例を見ると、「調査結果はきちんと活かさなきゃもったいない」と思うかもしれません。しかし、先にも言ったように、バイアスは誰しもが持っているものです。
マーケティング担当者は日々、自社の商品やサービスのどこが生活者に響くのかを考え、施策を行っています。自分の仮説とは異なった結果が出たとき、事実を受け入れられないのも分からなくもありません。
あれだけ頑張っていたのに、なんでこのイメージが浸透してないんだ?と思ってしまうのも当然です。しかも、それを上司から指摘されることもあるでしょう。
そもそも、自社の商品やサービスを広めていくには、自分がまずユーザーになり、ファンになる必要があります。ブランドに対して思い入れが強くなるのもので、だからこそ、仮説を立てることができる。何かを推すときには熱い思いは必要ですから、それ自体は悪いことではありません。
しかし、熱い思いと同時に客観的な視点も必要です。思い描いていたことが正しいこともあるし、間違っていることもある。
もともとは「裸の王様」にならないように行うのが仮説の検証です。結果に対しては、フラットに解釈すべきで、独りよがりな凝り固まった考えに縛られてはいけません。
生活者に担当者の世界観を押し付けてはいけないのです。
「バイアス」の存在を意識する
古代ローマの武将で政治家のユリウス・カエサルは、「人は現実のすべてが見えるわけではなく 、多くの人は見たいと思う現実しか見ない」という言葉を残しました。
人には感情があり思いがあるので、バイアスからはどうしても逃れられません。
まずは、「バイアス」の存在を意識する。そして、客観的に判断することを意識して、生活者の意見を正として理解することが大切です。
バイアスにとらわれない解決法は次の5点だと考えています。
・結果を真摯に受け止める
・仮説の妥当性を常に見直す
・クリティカルシンキング(批判的思考)
・他者の意見にも耳を傾ける
・複数のデータソースを比較する
調査結果を真摯に受け止め、できるだけフラットに見て、仮説の妥当性を常に批判的に検討し、複数のデータソースからの情報を比較する。自分たちの仮説が間違ってことに気づいたら、謙虚に受け止め修正していくことが重要です。
簡単に書きましたが、これはなかなか難しいことです。人はバイアスから逃れられないこと、そして、この5つの解決策を意識するだけで、眼差しは変わるはずです。それが、妥当な結論にたどり着く可能性を高め、結果、有効なマーケティングを展開することにつながるのです。
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