企業活動において、顧客の潜在ニーズを掴むことは必要不可欠です。しかし、その潜在ニーズとは何かを正しく理解できているでしょうか。この記事ではマーケティング活動に活かしていただくことを目的として、潜在ニーズと顕在ニーズの違いをご説明したうえで、顧客の潜在ニーズを引き出す方法や事例をご紹介します。
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潜在ニーズ・顕在ニーズとは
はじめに潜在ニーズと顕在ニーズの言葉の定義をそれぞれ確認していきましょう。
●顕在ニーズとは
顕在ニーズとは、顧客自身が欲しいモノ・サービスを自覚している状態をいいます。顧客のニーズ全体を氷山に例えるなら、顕在ニーズは水面から外に出ていて、明確に可視化されている部分といえます。顧客は自身がニーズを満たすことを自覚して行動をおこします。
●潜在ニーズとは
一方で潜在ニーズとは、顧客自身に明確に自覚がないにもかかわらず何かしら欲求がある状態を示します。潜在ニーズは前述の氷山に例えると、水面下にある部分となり、表面上はみえていないが、確かに存在している部分にあたり、顕在ニーズよりも潜在ニーズのほうがウェイトは大きいといわれているため体積も大きくなっています。
普段は顧客自身も意識していないため、潜在ニーズを理解するのには苦労します。顧客本人が日常生活を通じて突発的に気づくこともありますが、外部から、例えば企業のマーケティング活動を通じ欲求を掘り起こされることでニーズが顕在化することがございます。
●顕在ニーズとウォンツの違い
潜在ニーズをより的確に理解するために、ここで「ニーズ」と「ウォンツ」の構造を捉えておきましょう。顧客のニーズには潜在的なものと顕在化しているものと2種類あることは前述の通りですが、単純に「◯◯が欲しい」と思う状態はニーズではなくウォンツであるといえます。
●ニーズ(顕在ニーズ、潜在ニーズ)とウォンツの例
これまで説明した3つの言葉を、例を交えて簡単に整理しましょう。
(例)仕事が一段落して少し眠気を感じたので「コーヒーが飲みたい」と思いコンビニへ行き、いつも購入している商品Aを購入した。
上記の場合、「コーヒーが飲みたい」はウォンツ、「少し眠気を感じた・眠気を覚ましたい」が顕在ニーズと区別することができます。潜在ニーズはというと、「商品Aを購入した理由」がそれに該当します。なぜ「いつも購入」しているのか、ココを深く掘り下げていくと潜在ニーズが浮かび上がってきます。
成熟した業界では顧客の抱えている課題を解決するためには、顕在ニーズに着目するだけでは不足しており、潜在ニーズを探索し、それに合った最適なソリューションを提供することが必要となってきています。
●おまけ:潜在ニーズとインサイトの違い
ここ最近マーケティング業界において「インサイト」という言葉をよく耳にします(車のインサイトではありません)。潜在ニーズと意味を混同している方がよくいらっしゃいますが、厳密には異なります。
インサイトと潜在ニーズの違いが気になる方は、下記記事をぜひご覧ください。
インサイトと潜在ニーズの違いについて読む
潜在ニーズを引き出す方法
顧客が気付いていない潜在ニーズをさぐる上で、リサーチを活用してどのようにして引き出すことができるのでしょうか。代表的な手段が、インタビューやエスノグラフィーといったマーケティングリサーチです。
●インタビュー
顧客に直接尋ねる手段がインタビュー調査です。顧客の発信するウォンツをヒントに、なぜそのようなウォンツが生まれるに至ったのかについて繰り返し質問していきます。ラダリングという深層心理を丁寧に引き出す対話方法によって顧客本人も普段意識していないことに気づき、潜在的なニーズにつながるヒントを炙り出すことが可能となります。インタビューには複数名の顧客を1箇所に集めて行うグループインタビューと、1対1で行うデプスインタビューがあります。
●エスノグラフィー(行動観察調査)
エスノグラフィー(行動観察調査)とは、自宅などに出向き顧客が生活する空間に調査員が身を置いて、顧客の行動を観察することで、商品・サービスの利用状況を確認する定性調査の一つです。エスノグラフィーは顧客の日常の言動や生活環境、コミュニティなどに参加・観察することで、その顧客の価値観や意識を明らかにすることを目的としており、潜在ニーズを探る手段として適した手法となります。
エスノグラフィーの調査方法や活用事例については以下の記事をご参照ください。
潜在ニーズを引き出す質問例
それでは、顧客に直接インタビューして潜在ニーズを引き出すには、どのような質問を投げかけるとよいでしょうか。具体的な質問例をご紹介します。ポイントはウォンツをヒントに、「なぜ」を基本としたオープンクエスチョン(はい/いいえ などの選択肢がなく、自由に答えさせる質問)を使ってその背景を探ることです。
先程挙げたコーヒーの例をもう一度用いて、質問例を紹介します。
●顕在ニーズからその手段(ウォンツ)にした理由を聞く
「コーヒーが飲みたい」ウォンツは、「眠気を覚ましたい」というニーズから生まれた一つの手段でした。なぜコーヒーが飲みたいのですかと顧客に問えば、眠気を覚ましたいからですと答えるでしょう。さらに一歩踏み込んで、「眠気を覚ますにはコーヒー以外にもあると思いますが、なぜ、コーヒーにしたのでしょうか」まで尋ねることで、「他にも方法はあるが、コンビニなら10分で会社に戻れるし安いので」などといった、「このタイミングでは眠気覚ましに時間をかけたくない」や「できるだけお金をかけたくない」といったコーヒーを飲むと決断に至る理由が炙り出せます。
●なぜコーヒーなのか?、どのようなメリットがあるのか?
前の質問の言い換えに近い形ですが、ウォンツの向こう側には何があるのか、ウォンツを手に入れた先にどのような素敵な世界が広がっているのかを確認することで、顧客が本当に目指している状態を確認することができます。例えば、コーヒーを飲んだことで眠気を覚ませることと同時に頭がさえて仕事の能率があがる気がする、といったことです。
すると、実は別の手段があってもよいのではないかということに気付けるかもしれません。
ただし、実際にはオープンクエスチョンの質問ばかりではインタビューされる側に負担がかかるため、適宜クローズドクエスチョンも交えながら、うまくバランスを取って顧客の本音を引き出していく工夫が求められます。
潜在ニーズから本質的な課題解決を
以上、ご紹介したように、顧客のウォンツはあくまで、顧客が想像し得る選択肢の中から、顧客が選んだ一つの手段に過ぎません。顧客が潜在的に持っているニーズを探ることで、全くことなる最善のソリューションを提案できる可能性がでてきます。インタビューやエスノグラフィーといった調査を活用するなどで、顧客の潜在ニーズを探り、今後のマーケティング活動に役立てていくことが大切です。
また、ネオマーケティングでは、顧客の潜在ニーズを把握し、それを商品開発に活用するサービスがございます。ご興味のある方は、下記お役立ち資料をご覧いただき、今後の施策の参考にしていただければと思います。
また、上記サービスを導入いただいた企業様の事例も一部ご紹介いたします。下記のインタビュー記事をご覧いただき、自社のマーケティングに落とし込むイメージの一助となりましたら幸いです。
●株式会社セブン&アイ・ホールディングス様
<事例概要>
- 課題:様々なカテゴリーのブランディングを行っている中で競合他社のPBと「同質化」しているという課題
- エスノグラフィーを実施したことで、これまで見えてなかった発見があった
- エスノグラフィーで得た情報を、ワークショップでインプット・意見交換をして今後の方針を決定した
- 課題を持っていたカテゴリーのリブランディングのヒントを得て、商品開発に活用することができた