マーケティングリサーチは、定量調査と定性調査の2種類に分けられます。
この記事では、定性調査の一つに該当するグループインタビュー(フォーカスグループインタビュー:FGI)について紹介します。
メリット・デメリット、実施方法など網羅的に紹介していますので、ぜひご覧ください。
ネオマーケティングでは、グループインタビューのサービスを提供しています。
詳細は以下のページをご覧くださいませ。
>グループインタビューのサービスページをみる
グループインタビュー(FGI)とは
グループインタビューとは、6名程度の調査対象者を1箇所に集め、座談会形式で行うインタビュー調査です。
フォーカスグループインタビュー、略してFGIとも呼ばれます。
モデレーターが参加者にインタビューを行いながら、商品・サービスに対する感想やその理由などについて直接顧客に尋ね、顧客の生の声を聞き取っていきます。
グループインタビューは、商品・サービスに対する評価のヒアリング、購買行動に至るまでの背景、購買動機などの深堀が可能です。
また、対面で行うことで、想定するターゲット層の嗜好性やライフスタイルを具体的に知り、ペルソナ理解に役立てることができます。
グループインタビューの目的
グループインタビューの実施目的は、直接生活者にヒアリングしなければ得られない多量で深い情報を取得することです。
アンケート調査などの定量調査では取得できる情報量に限界があります。
仮説の量的検証や、市場把握はできても、商品サービスの利用方法や購買動機など、詳細な情報は手に入りません。
グループインタビューを実施することで、複数の生活者から一度に多くの情報を取得できます。
グループインタビューのメリット
■1度に複数の生活者から定性情報を得られる
グループインタビューの最大のメリットは、生活者と直接対面で会話をしながら、商品・サービスに対する生の声を聴けることです。
インタビュー参加者には特に制限がなく、自由な発言が期待できます。
たとえば、新しい商品・サービスを実際に手に取って試してもらいながら、既存商品や競合商品との印象の違い、使い勝手などについて尋ねることができます。また、その商品に触れた時の表情、発言の仕方、立ち振る舞いや風貌、服装などの雰囲気など、言語以外の情報から生活者理解をより深めることができます。
顧客一人ひとりの嗜好性やライフスタイルを感じ取ることができ、ペルソナ理解にも役立てられるでしょう。
■比較的短期間に低コストで実施できる
グループインタビューは6名程度の顧客を1箇所に集め、インタビューをする形式のため、1対1で行うデプスインタビューよりも比較的迅速に低コストで調査を実施することができます。
一度に複数名の方から、まとまった意見を効率良く伺えることも、メリットのひとつです。
グループインタビューのデメリットと対処法
■「インサイト」探索には向いていない
グループインタビューでは意見の深堀はできないため、潜在ニーズやインサイト探索には適していません。
あくまでも、話しやすいテーマで多くの定性除法を短期間に得たい場合に実施しましょう。
■グループの意見が偏る可能性がある
参加者が他の参加者に遠慮・同調してしまい、本当の情報を得られない可能性があります。
誰か1人の発言が多くなりすぎないよう、また同調圧力を感じさせないよう、インタビューのモデレーターがその場をうまく管理する必要があります。
■意図しない対象者が参加する可能性がある
事前スクリーニングを行っても対象者を的確に選定することは難しく、実際に参加した対象者が求める条件と違った、ということも起こり得ます。
対象者選定のためのスクリーニング調査の設計を綿密に行ったうえで、可能であれば架電やオンラインで、求める対象者か確認するのがよいでしょう。
■統計的なデータは得られない
グループインタビューだけでなく定性調査全般に言えますが、調査対象数は小規模のため、統計的な信頼性は担保されません。
そもそも定性調査に量的検証を求めることは間違っています。
必要であれば定量調査も合わせて実施することが望ましいでしょう。
グループインタビューとデプスインタビューの違い・使い分け
■デプスインタビューとの違い
違いは以下の通りです。
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グループインタビュー
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デプスインタビュー
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インタビューの参加者数
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複数名(4~6名程度)
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1名
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実施時間
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1時間程度
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1時間~1時間半程度
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目的
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多数の定性情報の収集
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意思決定プロセスや意識の深堀
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メリット
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複数の対象者から定性情報を得られる
比較的短期間・低コストで実施できる
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生活者心理や意識の理解が深められる
実施テーマを選ばない
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■デプスインタビューとの使い分け
グループインタビューは、短期間に多くの定性情報を得たい場合、仮説やアイデアの定性的な評価、検証を行いたい場合に適しています。
一方デプスインタビューは、他の人の前では話しづらいテーマを扱う場合、対象者の意見や心理をじっくりと深堀したい場合に適しています。
グループインタビューの活用場面
■商品・サービスの利用状況別の評価
グループインタビューは、ある商品・サービスについて、利用頻度に応じて状況を把握したい場合に有効です。
ロイヤルユーザーになる顧客特性は何か、リピートに繋がらない顧客の離脱原因は何かなど、差を把握し、施策検討に役立てられます。
■年齢・性別の評価
商品・サービスの利用状況は、年齢・性別によって変化します。
20代女性、30代男性というような分け方、あるいはF1層(20〜34歳女性)、F2層(35〜49歳女性)といった分け方で顧客を集め、それぞれの意見を集約させることで、違いが可視化されることがあります。
年齢・性別の属性情報と商品・サービスの利用状況を掛け合わせて条件を設定し、評価させることが一般的です。
■ライフステージ別の評価
同じ年齢・性別でも、独身者なのか既婚者なのか、また既婚者でも子どもの有無によって、商品・サービスの使われ方が変わることがあります。
毎日の食事や洗濯など日常生活に高頻度で利用される商品・サービスについては、ライフステージ別で変化を見ることが有効な場合があります。
■商品・サービス利用者別の評価
競合商品Aを好んで利用する顧客のグループ、競合商品Bを好んで利用する顧客のグループなどに分けて意見を伺うことで、自社商品の課題や優位性、販路拡大の可能性などを多角的に把握できます。
スケジュール感について
調査企画から報告書の納品まで、目安としては1か月強を要します。
・リクルーティング調査票確定:約1週間
・リクルーティング:約1~2週間
・実査:「1グループ6名/実施時間90分」の場合、1日あたり2グループ実施
・報告書やレポートの作成:約2週間
費用感について
たとえば20名のグループインタビューの場合、1グループ5名で4グループ、各1時間インタビューを行うと、あくまでも一つの目安ですが、約350万円ほどかかります。
調査対象の条件や、人数、インタビュー時間などによって費用は上下します。
費用の項目は大きく分けて以下の3つです。
・対象者抽出のためのスクリーニング調査の費用
私達ネオマーケティングのように、「モニター(その集合であるパネル)」という会員組織を抱えている場合、パネルからインタビュー対象条件に合致するモニターを選定する必要があります。
性別や年齢などの基本的な属性情報は、会員情報としてあらかじめ保有していますが、趣味嗜好や、具体的な商品・サービスの利用状況までは一般的には把握していません。
そのため事前のアンケート調査(スクリーニング調査と呼ぶ)を行い、条件に合致するモニターのみに、インタビューの案内をすることになります。
必要な人数を集めるためにどのくらいの人数に回答してもらったか、スクリーニング調査の規模が費用に関係します。
・対象者をインタビューに参加させるリクルーティングの費用
スクリーニング調査で対象条件に合致した人をリスト化した後、条件に合致しているか、当日の参加意思があるか、改めて電話で確認する「リクルーティング」を行います。
電話での最終確認ののち、インタビューの日時を決め、最終的な参加者と当日のグループ構成を固めます。
この調整にかかる工数と費用は主にインタビューの人数に比例します。
・当日のインタビューにかかる費用
モデレーター(インタビューを回す人)、書記の手配、インタビュー参加者への謝礼、会場費用、そしてインタビュー後の納品物に関する費用があります。
これらはインタビュー時間、インタビュー人数によって変動します。
その他 検討すべきこと
■インタビュー会場について
インタビューを対面で実施するのであれば、映像や音声を録音・記録するための設備を備えた、静かで清潔な会議室・応接室が必要です。
マーケティング会社の中には、グループインタビュー専用ルームを保有している会社もあります。
専用ルームは複数人で話し合うのに適した円卓、関係者がインタビューの様子を裏で見られるミラールーム、録音・録画設備を備えています。
■役割分担について
関係者間で、当日の役割分担を決めておきます。必要な役割は以下の通りです。
役割名
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内容
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適正人数
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モデレーター
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司会進行
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1名
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インタビュアー
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司会進行補佐
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0~1名
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記録係
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記録
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1~2名
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観察かかり
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観察・録画・録音
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0~1名
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モデレーターの力量によって、引き出せる情報の量と質が変わります。
時間管理をしながら対象者全員から意見を引きだすように、場を回していきます。
不慣れな場合は、記録係などと合わせてマーケティング会社に手配を依頼するのもよいでしょう。
■実施時間について
グループインタビューにかける時間は、人数にもよりますが一般的には2時間程度です。
実施日については調査対象者の属性にもよりますが、働いている方を対象とするのであれば土日や平日の夜が集まりやすいでしょう。
■インタビューテーマについて
グループインタビューに向くテーマとしては、商品・サービスを利用されてみての評価を聞いたり、新しい商品・サービスをその場で試していただいて使用感を聞いたり、大人数でざっくばらんに話しやすく、参加者同士で共感が生まれやすい案件が望ましいといえます。
最後に、グループインタビューを実施する際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
■共感が生まれやすい環境づくり
グループインタビューでは、共感を生む環境作りが大切であり、グループ分けには配慮が必要です。
たとえばテーマが料理の話題であれば、既婚者と未婚者では共感できるポイントが少なく、本音で話しにくい可能性があります。男性と女性でも大きく意識が異なるでしょう。
本音で話せる環境を提供できるかどうかで、引き出せる情報の質も変わってきます。
■気軽に話しやすいテーマを設ける
調査内容によっては、グループインタビューが適切でない場合があります。
たとえば年収や家庭内の事情、病気など身体に関することは答えにくいテーマの例として挙げられます。
このように複数名では話しにくいことを調査したい場合や、個人の意識を深く掘り下げて検証したい場合には、1対1のデプスインタビューの実施を検討しましょう。
■対象者選定を大切にする
グループインタビューをはじめとするインタビュー調査は、「誰に聞くか」ということが非常に重要です。
そのため、インタビュー対象者の条件設定と、その条件に当てはまる人をいかにインタビューに呼ぶか、ということが問われます。
まとめ
グループインタビューは、商品・サービスに対する評価や意見を効率的に収集したい場合に特に効果的です。
定性調査の経験がない場合や、既存の商品・サービスについて顧客の生の声をできるだけ多く聴きたい場合は、是非実施をご検討ください。
ネオマーケティングでは調査パネルとインタビュー専用ルームを保有して、グループインタビューを一気通貫でご支援しています。ご相談ください。