電子機器の操作などをユーザーに実行してもらうことにより、製品を評価する方法がユーザビリティテストです。ユーザビリティテストには、さまざまな手法があります。どのような手法があるか知ることにより、アイテムや状況に合った適切な方法でユーザビリティを評価できるようになるでしょう。
今回の記事では、ユーザビリティテストの意味や必要とされる理由、テストの方法について幅広く解説します。
ユーザビリティテストの基礎知識
●ユーザビリティとは?
「ユーザビリティ=使いやすさ」と理解している人も多いかもしれません。しかしユーザビリティとは、ただ「使いやすさ」を示す言葉ではなく、「特定のユーザー」「特定の利用状況」を想定しているものです。
ユーザビリティの構成要素はいくつかあります。正しく評価するためには、「使用した際の効率性」「使いこなすまでの困難さ」「久しぶりに使用した際にユーザーがすぐ操作できるか」「エラーの発生率」「主観的満足度」などを測ることが必要です。
●ユーザビリティテストとは?
上記の項目で紹介したユーザビリティを評価するのが、ユーザビリティテストです。ユーザーにタスクを実行させ、その際の行動や発話から問題点を知る評価手法になります。
ユーザビリティを測るための手法を大別すると、定性的手法と定量的手法に分かれます。定性的手法は、それぞれの対象がもつ問題点を具体的に求めたい場合に適した手法です。問題が起こった理由や、どのような修正方法があるかを見つける上で有効な手法と言えます。ユーザビリティテストは、この定性的手法にあたります。
一方、定量的手法は、複数の対象を比較したい場合に利用される手法です。「どのくらいの量か」「どの程度か」などの疑問を解決する上で役立ちます。ここまで確認すればわかるように、ユーザビリティテストは、定量的手法ではなく定性的手法です。
●ユーザビリティテストが必要な理由
ユーザビリティテストがなぜ必要なのかというと、開発者側がユーザーの立場になって想定するのが難しいからです。たとえばWebサイトを制作する人は、必ずしもWebを利用する人ではありません。実際に使用しているユーザーではないため、ユーザーの立場になって考えるのが極めて難しいと言えます。
たとえば定量的手法で「あるページでの離脱率が高い」といった課題が見つかっても、なぜ離脱率が高くなってしまうのかを正確に突き止めるのは難しいでしょう。定量的手法は、どのくらいの量か」「どの程度か」などの疑問を解決する上で役立ちます。具体的な数値を使って分析するアクセス解析などに使われますが、ユーザーの立場になって考えるには不向きです。
そこで定性的手法であるユーザビリティテストを用いて、ユーザーの行動観察・ヒアリングを実施することによって、明確な課題が発見できます。
ユーザビリティテストを実施するメリット
ユーザビリティテストにはさまざまなメリットがあります。ここでは代表的なメリットを、3つのトピックに分けて解説します。
●ユーザーの行動心理がわかる
ユーザビリティテストを実施することで、アクセス解析ではわからない、ユーザーの行動心理が理解できます。たとえばサイトにはアクセス解析のシステムが備わっており、「ユーザーがどのページを訪問しているか」「ユーザーがどこで離脱しているか」などがわかります。
しかしそこで判明するのは、あくまでアクセス履歴などの事実であって、「どうしてそこを離脱しようと思ったのか」まではわかりません。そこでユーザビリティテストを実行することによって、課題分析に大きく役立てられます。ユーザビリティテストによって、ユーザーの行動心理の細かい部分が理解できるため、課題分析に大きく役立てられます。
●仮説検証を効率的に行える
仮説検証のプロセスを効率的に行えるのもユーザビリティテストを実施するメリットです。ユーザビリティテストは、「どのくらいの量か」「どの程度か」などの疑問を解決する定量的手法ではなく、問題点を具体的に求める際に役立つ定性的手法です。
仮説検証のプロセスとしては、まず大まかな目標を立て、それを達成するための仮説を設定します。ユーザビリティテストでは、ユーザーにタスクを実行してもらうため、タスクの種類や具体的な質問事項も考えます。それから被験者の募集を行い、実際に検証をするという流れです。
購入率のようなデータではなく、ユーザーの「心の機微」に触れられるため、有効な仮説を立てやすくなります。有効な仮説を絶えず検証していけるため、効率良く商品・サービスのパフォーマンスを改善できます。
●課題が共有しやすい
課題が共有しやすくなるのもユーザビリティテストのメリットです。ユーザーの心理を分析することによって、「実はユーザーはこのような機能を求めている」といった事実がわかるため、開発の方向性を掴みやすくなります。
例えばECサイトの設計段階では、「購入をしようと思ってもどこから購入すればよいか迷ってしまう」「商品を探したいのに上手くいかない」といったケースがあります。開発者の視点では気付けなかった課題が見え、チーム全体でそれを共有できるため、効率的な改善が可能です。
ユーザビリティテストの種類
ユーザビリティテストには、「対面型」「オンライン型」「簡易型」の3種類があります。「対面型」は手間や時間のかかる方法ですが、得られるデータの量や質が高いため、根本的にサービスを見直したい時に有効です。
「オンライン型」は、「対面型」に比べて情報量・質は劣ってしまいますが、低コストかつスピーディにテストを行えるのが魅力です。「簡易型」は、名前の通り簡易なテストであり、家族や友人などの身内に依頼するのが基本です。
ユーザビリティテストは、一定のプロセスに沿って実施するのが重要です。ここではユーザビリティテストを行う手順を解説します。
●ユーザビリティテストの内容を考える
まずはユーザビリティテストの内容を決定します。ユーザビリティテストには、対面式やオンライン式などの種類があるため、どのような形でテストをするのかを決めましょう。
内容を決める際は、4W1H(What:何を、Who:誰に、When:いつ、Where:どこで、How:どのように)を意識するのが重要です。
●参加ユーザーを決める
ユーザビリティテストの内容が決まったら、それに参加してくれるユーザーを探します。簡易型のテストであれば、自分の家族など親しい間柄の人に依頼するとよいでしょう。
商品・サービスの開発であれば、設定されているターゲットに近い人に依頼します。商品・サービスに詳しい人であれば、より質の高いフィードバックがもらえるため、課題解決がしやすくなるでしょう。
●ユーザビリティテストの実施
参加ユーザーが決まったら、実際にユーザビリティテストを実施します。特定の商品のテストであれば、試用品を使ってもらい、フィードバックをもらいましょう。
特定のサービス(Webサイト)などであれば、ユーザーにタスクを実行してもらい、その行動を記録します。ユーザビリティテストはユーザーの善意によって成り立っているものなので、基本的には商品・サービス利用料を請求しないのが望ましいでしょう。
●フィードバックをもらう
ユーザビリティテストを実施したら、参加したユーザーにフィードバックをもらいましょう。具体的な方法としては、アンケートとインタビューの2種類があります。
アンケートは、記録の手間を削減しやすい方法です。ただしインタビューの方が、よりユーザーの声を聞きやすく、意識的に話を引き出すことも可能です。アンケートとインタビューのメリット・デメリットをそれぞれ検討し、自社に合ったスタイルを考えてみましょう。
●フィードバックを開発計画や製品に反映
次にユーザーからもらったフィードバックを、開発計画や商品・サービスに反映させます。計画の修正にはそれなりのコストがかかるため、事前に優先順位を決めておくとスムーズに進められるでしょう。
修正した開発計画を元に、新しい商品・サービスを作ります。重要なのは課題を分析し、仮説を立てることです。仮説検証を繰り返すことによって、商品・サービスのパフォーマンスが改善できます。
●再びユーザビリティテストを実施
新しい商品の開発やサービスの修正ができたら、再びユーザビリティテストを実施します。思ったような効果が得られなかった場合は、もう一度フィードバックをもらい、再度修正していくとよいでしょう。
商品やサービスの質によっては、何度も修正可能です。たとえばWebサイトのようなサービスは、リソースに余裕がある限り、ユーザーからの声を取り入れつつ何度も改善できます。
まとめ
今回はユーザビリティテストについて解説しました。ユーザビリティテストは、仮説検証のプロセスを最適化し、商品・サービスのパフォーマンスを改善するのに不可欠です。ユーザビリティテストの種類を整理し、自社に合った方法を採用するとよいでしょう。