商品やサービスに対する消費者の反応を調査する手法として、アンケートなどが用いられる場合があります。アンケート調査は、定量的なデータを集めるには適した方法ですが、定性的な深い意見を収集するのは容易ではありません。会場調査の場合、実際に商品を試用していただき、その場でアンケート回答をするのが基本ですが、必要に応じて定性データを集めることも可能です。
今回は、会場調査の手法や目的、活用方法、メリット・デメリットについて解説します。会場調査の具体的な進め方や成功させるポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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会場調査(CLT)とは
会場調査とは、会場を用意してモニターを呼び、アンケートやインタビューを現地で行う調査手法のことです。Central Location Testの頭文字を取ってCLTと呼ばれることもあります。会場調査の手法・目的・活用方法を整理しておきましょう。
●会場調査の手法
会場調査を実施する際には、調査のための会場を用意して調査スタッフを配備します。会場に呼び込んだ調査対象者に商品やサービスを実際に試用してもらい、感想などの回答を求めるのが基本的な進め方です。調査はアンケート用紙を配布して行うこともあれば、調査員が直接インタビューして回答を聞き取ることもあります。
会場調査の特長は、会場の現地で実際に商品を手に取ってもらうい、その場で感想を聞き取ることです。回答者の様子が見える状態で調査が行われるため、回答を得た経緯も含めて調査結果を収集できます。
●会場調査の目的
会場調査は、会場を訪れたモニター限定で行われます。調査内容が外部に漏洩しにくいことから、発売前の商品や試作段階のサービスなど、機密性の高い調査に活用されるケースが少なくありません。
また、会場でモニターから直接感想を聞くことで、定性的なデータ収集も可能なことから、ユーザーのリアルな声を収集したい場合にも会場調査が行われます。モニターから得た感想に気になる点があれば、より深掘りしてヒアリングすることもできるということです。このように、一般的なアンケート調査では困難な機密性の保持や詳細な調査結果の収集を実現することが、会場調査を実施する主な目的といえます。
●会場調査の活用方法
会場調査にはさまざまな活用方法があります。会場調査でよく見られる活用例は次の通りです。
- 試飲、試食
- パッケージ評価
- 商品陳列評価テスト
- 競合商品との比較評価測定
- 広告評価
試飲・試食に代表されるように、実際に体験しなければ感想を述べにくい性質の商品の場合、会場調査は有効な手法といえます。また、商品パッケージや陳列方法など、見た目の印象が重要な位置を占める調査においては、実物を見てもらったほうが確実性の高い調査結果が得られるでしょう。消費者が店頭で商品を手に取った場面を再現したり、実際の利用シーンを想定したりする必要がある場合に、会場調査が活用される傾向があります。
会場調査のメリット
アンケート調査のみの場合と比べると、会場調査の方が手間・時間・コストがかかるのは明らかです。しかしながら、あえて会場調査を選択するケースが多々あるのは、ほかの調査方法では得られないメリットがあるからです。会場調査の主なメリットを見ていきましょう。
●機密性が保たれる
会場調査は実施会場内でのみ行われるため、情報の機密性が保たれる点が大きなメリットです。試作段階の商品など、外部流出を避けたい商品の調査に適しています。リリース前のサービスに関する広告のように、商品の存在自体を伏せておきたい場合の調査にも活用できるのです。
機密性を保持できる大きな要因として、調査員の存在が挙げられます。会場には専門の調査員が配置されるため、管理が行き届いた環境下での調査が可能です。商品の不正な持ち出しや写真撮影など、外部流出につながるリスクを回避できることは会場調査に特有のメリットといえるでしょう。
●ユーザーのリアルな反応を観察できる
会場調査では、モニターが商品を手にした時の様子を間近に見ることができます。商品を初めて見た時の反応や、商品陳列棚を目にした際の視線の動きなど、表情・行動を詳細に把握できるのです。
モニターの様子を観察するにあたり、調査員による目視のほか、アイトラッキングなどの仕組みが活用されることもあります。近年はVRを取り入れることで、商材のサイズや規模を問わずモニターの反応を確認できるようになっています。ユーザーのリアルな反応が見られることは、会場調査だからこそ実現できるメリットといえます。
●試用条件の統一化を図ることができる
モニターが試用する際の環境や条件を統一できることも会場調査のメリットです。たとえば試食の場合、提供される飲食物の温度が商品の評価に大きく影響することが想定されます。同じ条件で試食ができる環境を整えることで、調査結果のブレを防げるのです。
ほかにも、照明の具合によってパッケージや陳列棚の印象が大きく変わることは十分にあり得ます。同じ環境下で調査が行われたことが保証されているからこそ、モニター間の意見の違いを正しく検証できるのです。試用条件の統一化を図る意味においても、会場調査は有効な調査手法といえるでしょう。
●意見や感想を掘り下げてヒアリングできる
会場現地で柔軟に対応しやすいことも、会場調査のメリットの1つです。モニターから得た回答の中で気になる点や曖昧な点があれば、その場でより詳しく意図を尋ねることができます。一見すると同じ回答でも、モニターによってニュアンスが異なるケースは少なくありません。意見や感想を掘り下げてヒアリングするといった対応は、会場調査だからこそ可能な調査方法といえます。
一般的なアンケート調査では、とくに記述式の場合に抽象的な回答が続出することが考えられます。「なぜそう思ったのですか」「もう少し詳しく聞かせてください」といった一言を添えられるのは、会場調査ならではのメリットです。
会場調査のデメリット
数多くのメリットを得られる会場調査ですが、場合によってはデメリットとなり得る面も持ち合わせています。会場調査の特性を理解し、調査対象の商材に適しているか、ユーザーの意見や感想を聞く上で有効な方法といえるか、慎重に判断することが大切です。
●実施するためのコストがかかる
他の調査手法と比較すると、会場調査を実施するには、準備や運営にさまざまなコストがかかります。一例として、下記は避けられないコストと捉えておく必要があるでしょう。
- 会場費用
- 商品の搬送
- モニターのリクルーティング
- 調査員の手配
- 調査票の準備
- ボールペンなどの備品
ユーザーのリアルな声を収集するために必要なコストと捉えるべきか、コストの抑制を重視して別の手段で調査を進めるべきか、費用対効果を見据えて判断することが大切です。会場調査でしか得られないデータがあるかどうかが、適した調査方法を見極めるポイントとなるでしょう。
●取得可能なサンプル数が限られる
会場調査で取得できるサンプル数は、モニターの人数や会場のキャパシティに制約されます。一人ひとりのモニターから得た意見や感想を掘り下げられるのは会場調査のメリットですが、調査件数を重視するのであれば、ほかの調査方法を選択するほうが適切な場合もあるのです。
一定数のサンプルを取得したいからといって、モニターを増やせばよいというものではありません。モニターが自然体で調査に協力できるからこそ、リアルなユーザーの声を集められるからです。調査をせわしなく進めることにならないよう、取得したいサンプル数と調査方法のバランスを慎重に考慮する必要があります。
会場調査の進め方
会場調査は、具体的にどのように進めればよいのでしょうか。会場調査の流れを4ステップに分けて見ていきましょう。
①調査企画の立案
はじめに、調査企画を立案しましょう。調査の目的・内容を設定した上で、具体的な調査方法を決めていきます。何を調査したいのかを明確にし、目的に合った調査方法を選ぶことが大切です。
会場調査はアンケート形式で行うケースが多いため、一般的には定量調査が中心となります。ただし、より掘り下げて調査する必要がある場合は定性調査を組み合わせるとよいでしょう。調査会場の一角に定性調査専用スペースを設け、デプスインタビューやグループインタビューを実施する方法が想定できます。このように、調査したい深度に応じて定量調査・定性調査を使い分けましょう。
②対象者のリクルーティング
会場調査を実施するには、調査対象者(モニター)を集める必要があります。対象者をリクルーティングする方法は、一般的に次の2つです。
- 事前リクルート:条件を満たすモニターをあらかじめ抽出・選定しておく
- ストリートキャッチ:調査会場付近で通行人に声をかけ、会場に呼び込む
事前準備が不要で調査を実施できる点はストリートキャッチのメリットですが、求めるターゲットを必ず集められるとは限りません。より確実に対象者を集めるには事前リクルートが適しているものの、リクルーティングのノウハウが必要です。そのため、事前リクルートを調査会社やマーケティング会社に委託するケースも多く見られます。
ネオマーケティングでは、自社のアンケートパネルに対してリクルートのご支援をしております。
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③調査票の作成
調査当日に使用する調査票を作成しましょう。質問内容を整理し、実際に回答する際にかかる時間を考慮して調査票を作成することが大切です。
調査票には大きく分けて自記式と他記式があります。自記式は対象者自身に記入してもらうため調査員の負担は少ないものの、質問の仕方や設問順を十分に考慮しておく必要があります。他記式は調査員が質問を読み上げ、対象者から得た回答を書き込んでいく方式です。調査員がそのまま読み上げられるよう、質問文を作り込んでおくことが求められます。調査する商品・サービスの特性や必要な質問内容に応じて、どちらの方式を選択するかを決定しましょう。
>調査票の作り方について詳しい記事を読む
●調査の実施・集計・分析
調査実施当日は、混乱なく調査が進むよう調査員の動きや質問方法を徹底しておきましょう。調査が始まってから問い合わせが頻発することのないよう、想定される質問内容や不明点をあらかじめ洗い出して回答を提示しておくことが大切です。
調査実施後は、結果の集計・分析へと移ります。項目ごとに件数を集計する単純集計と、複数の項目を掛け合わせて集計するクロス集計を適宜使い分けましょう。調査結果に定性情報が多く含まれているほど、集計・分析の難易度は高まります。定性調査を行う場合は、マーケティング会社などに結果分析を委託するのも1つの方法です。
会場調査を成功させるポイント
会場調査から有意な結果を得るには、ポイントを押さえて調査を進める必要があります。会場調査の特性を最大限に活かすためにも、次の3点を意識しましょう。
●調査内容に適した会場を選ぶ
会場を選定する際には、調査内容に適した設備が整っているかどうか慎重にチェックしてください。たとえば、会場の照明や温度・音響など、調査を実施する上で欠かせない条件があるはずです。商品・サービスを実際に利用する環境を想定し、条件を満たす会場を選ぶことが大切です。
ネオマーケティングでは、本社にて会場の用意があります。新たに備品の準備が不要であったり、別室でインタビューなどが可能なため、進行がスムーズになります。
●適切な対象者を選定する
調査対象者の選定によっては、会場調査の結果が実態とかけ離れたものになる恐れがあります。そもそも商品・サービスに対してまったく興味がない人や、逆に思い入れが強すぎて偏った答え方をする可能性が高い人は、モニターから外したほうが無難でしょう。
調査対象者を絞っておくことは重要ですが、あまりに絞り込みすぎてしまうと十分な人数の対象者を集められないことも想定されます。対象者の条件に優先順位を付け、マストの条件を満たす対象者をできるだけ多く集められるように工夫するのがポイントです。
●調査会社を活用する
会場調査にはさまざまな注意点や押さえておくべきポイントがあり、ノウハウがない状態から調査を行うのは容易ではありません。精度の高い調査結果を効率よく収集するためにも、会場調査を委託できる調査会社を活用するのがベターでしょう。
とくに調査対象者のリクルーティングに関しては、万が一失敗すれば会場調査の意義そのものが失われてしまいかねません。このほか、「会場調査の進め方」で紹介した各ステップを着実に実行するためにも、会場調査のノウハウを保有する調査会社を活用することをおすすめします。
まとめ
会場調査は一般的なアンケート調査などと比べると、手間や時間、コストのかかる調査方法といえます。しかし、統一された条件のもとで正確性の高い調査ができる点や、調査内容の機密性が保たれる点など、会場調査だからこそ実現できるメリットも多々あるのです。
会場調査のメリットを最大限に活かすためにも、専門の調査会社に相談することをおすすめします。ネオマーケティングでは、さまざまな目的の会場調査に対応できる柔軟なオペレーションを提供可能です。調査設計から対象者のリクルーティング、実査オペレーション、データ集計までフルサービスで対応することもできます。会場調査をご検討中の事業者様は、ぜひネオマーケティングにご相談ください。