メールによる宣伝広告施策を講じる際、必ず押さえておくべき概念として「オプトアウト」「オプトイン」が挙げられます。言葉自体は聞いたことがあるものの、具体的な意味や注意点を明確に把握していないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、オプトアウトの定義や個人情報保護法との関わり、オプトインとの違いについてわかりやすく解説します。オプトアウトの仕組みを設ける具体的な方法や、送信者・受信者の双方から見た場合のメリット・デメリットにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
オプトアウトとは
はじめに、オプトアウトの基本的な概念について確認しておきましょう。オプトアウトには、大きく分けて次の2つの意味があります。
1. ユーザー自身が配信リストから自分の情報を削除すること
2. ユーザーの承認を得ない状態でメールを送ること
本記事では、このうち「2」の意味について解説します。オプトアウトの権利や個人情報保護法との関わりを押さえておくことが大切です。
ユーザーが個人データの第三者提供を拒否するための仕組み
オプトアウトとは、ユーザーの承認を明確に得ることなくメールを送信することを指します。事前に承認を得ることなくメールを送るものの 、ユーザーが要望すれば個人情報の第三者提供を止められるのが、オプトアウトの基本的な仕組みです。
オプトアウト(Opt-out)は、もともと「会員からの脱退」を表す英語です。メールマガジンなどの施策で用いる場合には、主に配信停止を表す言葉として使われます。企業がメールマガジンなどを配信するのは原則自由ではあるものの、ユーザーがメールを受け取りたくない場合には受信拒否の意思を表示できることに加え、実際に受信が停止される仕組みを備えていなければなりません。また、送信されるメールが広告宣伝に関するものの場合、ユーザーの承認を得ることなく送信すること自体が特定電子メール法により禁止されています。
オプトアウトの権利と個人情報保護法
メールによる宣伝広告を拒否することはユーザーの権利であり、宣伝広告を行う企業にはユーザーの権利を守ることが義務づけられています。
個人情報保護法では、オプトアウトによって第三者提供をしてはならない個人データの種類が下記のように定められています。
1. 要配慮個人情報(人種・信条・犯罪歴・病歴など)
2. 不正な手段で取得された個人情報
3. オプトアウトによる第三者提供によって取得した個人情報
4. 上記2または3を複製・加工したもの
このように、ユーザーが個人データの第三者提供を拒否できる仕組みを備えていたとしても、ユーザーの許可なくメールなどを配信できるわけではない点に注意が必要です。
オプトインとの関係性
オプトアウトと対をなす用語として「オプトイン」が挙げられます。オプトインの基本的な考え方と関連する法律・規制について整理しておきましょう。
ユーザーが個人データの第三者提供を承認するための仕組みがオプトイン
オプトインとは、ユーザーが承認しない限り宣伝広告に関するメールが送られることはない仕組みのことを指します。オプトアウトが「ユーザーの承認を明確に得ることなくメールを送り、ユーザーが拒否した場合には配信を止められる仕組み」であるのに対して、オプトインアウトは「ユーザーが承認した場合のみメールを送る仕組み」であることが大きな違いです。このように、オプトアウトの主導権が送信側(企業側)にあるのに対して、オプトインの主導権は受信側(ユーザー側)にある点が異なります。 前述のとおり、ユーザーの承認を得ないまま広告宣伝メールを送ること自体が特定電子メール法違反です。つまり、広告宣伝に関するメールを送るのであれば、必ずオプトインによって送信しなければなりません。
CPCは広告クリック1回あたりにかかる費用オプトインの具体例
オプトインの具体例をいくつか見ていきましょう。
- メルマガ登録に際して、ユーザーが自らメールアドレスを入力して登録申請を行う
- ECショップで商品を購入時、ショップのメルマガ配信を希望するチェックマークを付ける
- 資料をダウンロードする際、メルマガ登録をする旨のチェックマークを付ける
- アプリのプッシュ通知を受け取るために、ユーザーが自ら通知をオンに設定する
上記のプロセスを経てオプトインされた場合、該当するユーザーにはDMメールが配信されたり、アプリのプッシュ通知が届いたりするようになります。ユーザーが自らの意思で明確に「このメールアドレス宛てに情報を配信してほしい」「プッシュ通知を表示してほしい」と希望した結果、情報が配信されている点が特徴です。
なお、オプトインは誘導的に登録される仕組みにすることは認められていません。たとえば、ECショップで商品を購入した際、初期状態でメルマガ配信希望のチェックマークが入った状態になっていたり、アプリのプッシュ通知がデフォルトでオンになっていたりする場合、オプトインの条件を満たしているとは見なされない点に注意が必要です。
オプトインに関連する法律と規制強化
2020年に個人情報保護法が改正されたことに伴い、オプトアウトによって取得した個人情報は第三者提供ができないことになりました。民間企業が個人データを第三者に提供するには、オプトインによってユーザーの同意を得る方法が基本となっています。
自社が保有している個人データをオプトアウトによって第三者に提供していない企業であっても、第三者から個人データの提供を受ける可能性がある場合には注意が必要です。提供された個人データがオプトアウトによって取得されたものだった場合、個人情報保護法に抵触することになります。個人データの提供を受ける場合には、ユーザー本人からオプトインによる同意を得たものかどうかを必ず確認しましょう
オプトアウトによるメール配信を行うには、どのような仕組みや事前準備が必要になるのでしょうか。必ず実践しておくべき2つの取り組みについて解説します。オプトアウトによるメール配信を行うには、どのような仕組みや事前準備が必要になるのでしょうか。必ず実践しておくべき2つの取り組みについて解説します。
個人情報保護委員会への事前申請が必要
オプトアウトによるメール配信を行う際には、事前に個人情報保護委員会へ申請しておく必要があります。申請が必要な項目は下記のとおりです。
- 個人情報を第三者提供する目的
- 第三者に提供される個人データの項目
- 第三者への提供方法
- ユーザーのオプトアウトの方法
- 個人情報取扱事業者の名称・住所・代表者氏名
- 第三者に提供される個人データの取得方法
- 個人データのデータ更新方法
- 第三者へのデータ提供を開始する予定日
また、個人データの提供をやめた場合にも、同様に個人情報保護委員会にその旨を届け出る必要があります。
ワンクリック解除が可能な仕組みを提供する
オプトアウトによるメール配信では、受信者がいつでも簡単に配信を解除できる仕組みを提供する必要があります。具体的には、ワンクリックで解除できるようにした上で、解除方法を文面にわかりやすく表示することが大切です。
また、解除依頼に必要となる事業者情報を明記しなければなりません。どこから配信されているメールなのか、受信者が判断できないような記載方法になっていないか十分に確認してください。
さらに、メールの解除依頼があった場合には確実に配信を停止し、以降は一切配信されない仕組みを整えておくことが重要です。
オプトアウトのメリット
オプトアウトによってメールを配信することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。送信者・受信者にとってのメリットをそれぞれ見ていきましょう。
送信者側のメリット
幅広い層へのアプローチがしやすくなる
オプトアウト方式は事前にユーザーの承認を得ることなくメールを配信するため、幅広い層へのアプローチがしやすくなる点が大きなメリットです。潜在層の掘り起こしを積極的に行えることは、マーケティングやプロモーション施策を講じる上で重要なポイントといえます。
ユーザーデータの収集が容易になる
広告識別子などを利用することにより、ユーザーデータの収集がしやすくなります。登録者の層が幅広いほど多くのユーザーデータを収集できることから、マーケティング施策やプロモーション施策に役立つデータが取得できる可能性も高まるでしょう。
ユーザーが解除しない限り配信し続けられる
オプトアウト方式の場合、ユーザー側から解除のためのアクションを起こさない限りメールの配信を継続できます。結果として商品やサービスに関する紹介をより多くの層に対して継続的に届けられる点が大きなメリットです。
受信側のメリット
オプトアウトの仕組みが提供されていることによって、受信者であるユーザーは自分にとって不要な情報を受け取りたくないという意思表明ができます。これにより、不要なDMやプッシュ通知などが届く頻度を下げられ、必要な情報が埋もれるのを避けられる点がメリットです。
近年では宣伝広告メールを選り分ける機能を備えたメールクライアントなども提供されているものの、すべての宣伝広告メールを識別できるとは限りません。中にはユーザーにとって重要度の低いメールや、不要と感じるメールが届いてしまうケースもあります。こうしたストレスを感じる頻度が下がることは、ユーザー側にとってのメリットといえるでしょう。
オプトアウトのデメリット
オプトアウト方式には、いくつかのデメリットがあります。送信者側・受信者側から見た場合の主なデメリットは次のとおりです。
送信者側のデメリット
前述のとおり、オプトアウトによるメール配信や個人データの第三者提供に対する規制が強化されている点がデメリットといえます。ルールに則っていない場合、行政指導の対象となる可能性があるからです。たとえば、自社としてはユーザーにとってわかりやすく登録解除方法を記載していたつもりでも、ユーザーから見てわかりにくい点があればルール違反と見なされるおそれがあります。また、個人情報保護委員会への事前申請が必要になるなど、事務処理の工数が増える点もデメリットの一つです。
受信者側のデメリット
必要な配信メールを以降受け取れなくなる可能性がある
受信者がオプトアウトに必要なアクションを起こした場合、以降の配信メールを受け取れないことになります。中にはユーザーにとって必要な情報が含まれていたとしても、情報に触れる機会そのものを失ってしまいかねません。結果としてユーザーが自力で調べなくてはならないことが増えるなど、情報収集の負担が増すことが想定されます。
メルマガ限定サービスなどが受けられなくなる
メルマガ会員を対象とした限定サービスなど、お得な情報が届かなくなることが想定されます。本来であれば会員に対して優先的に案内されていた情報を知らずにいたり、割引サービスなどの優遇を受けられなくなったりすることは十分に起こり得るでしょう。
まとめ
オプトアウトは、企業側から一方的に情報を配信できる仕組みであり、ユーザーが配信停止の意思を示さない限り配信を続けられる方式といえます。一方で、広告宣伝メールに関してはオプトアウト方式に対する規制が強化されているため、ルールに則って運用していくことが重要です。今回紹介したオプトアウトによるメール配信方法や遵守すべき法令を参考に、ルールに則ったメール配信を実践してください。