この記事では、Facebook広告ライブラリについて解説していきます。
Facebook広告ライブラリとは、Facebookの運営会社である「Meta」社が提供するサービスの一つです。Meta社の運営する、Facebook、Instagram、Audience Network、Messengerに出稿されている、全ての広告を閲覧することができます。
このFacebook広告ライブラリの使い方や活用方法、注意点などを見ていきましょう。
Facebook広告ライブラリの使い方
Facebook広告ライブラリは、Meta社(旧Facebook社)が、自社サービスに出稿されている広告の透明性の確保を目的とし、無料提供を行っている広告閲覧ツールです。
Facebook広告ライブラリには、以下のURLからアクセスできます。
https://www.facebook.com/ads/library/
アクセスすると、以下の画面が開きます。
画面中央の「広告を検索」窓を使って、地域、カテゴリ、任意のキーワードで広告を検索できます。
・地域(上図では「日本」)…広告の国または地域を指定します。
・広告カテゴリ … 「すべての広告」「社会問題、選挙または政治活動」の区分を選択します。
・キーワード入力欄 … 任意のキーワードを入力します。
すべての項目を入力すると、検索結果画面が表示されます。
画像は、「日本」「すべての広告」「政府広報オンライン」での検索結果です。
この画面で、指定した検索条件に当てはまる広告を、すべて確認できます。
各広告枠にある「広告の詳細を見る」ボタンをクリックすることで、より詳細な情報を確認できます。
また、広告主のFacebookページを閲覧することも可能です。
このように、Facebook広告ライブラリを利用することで、Facebook、Instagram、Audience Network、Messengerに出稿されている、全ての広告(※)を誰でも確認することができます。
(※アルコール、ギャンブルなどの成人向け広告の閲覧に関しては、Facebookへのログインが必要です。)
(※2022年3月25日現在:ウクライナ侵攻の影響により、ロシアの利用者に広告は表示されません。また、ロシアの広告主による広告は掲載されておらず、出稿も制限されています。)
SNS広告の基礎については、こちらのショートウェビナ―動画をご覧ください。
Facebook広告ライブラリで広告の詳細と広告主を確認する
Facebook広告ライブラリを使って、より具体的な情報を閲覧してみましょう。
出稿された広告は、以下の詳細情報が確認できます。
・広告の掲載開始日
・広告が配信されているプラットフォーム(Facebook、Instagramなど)
・同様のクリエイティブ(画像や文章)を使っている広告の数
・広告主のFacebookページの名前
・広告の画像と文章
・広告のリンク先
また、広告主のFacebookページからは、以下の情報が確認できます。
・名前とID
・いいね!数
・フォロワー数
・ページの作成日
・ページ名の変更履歴
ページ名の変更履歴は、[ページの透明性]→[もっと見る]と辿ることで詳細を確認できます。
また、「社会問題、選挙または政治活動」に関する広告の場合、以下の情報も確認できます。
・広告費用の出資者
・広告費の消化予算
・広告がリーチした利用者の年齢層と性別
・広告のインプレッション数
Facebook広告ライブラリの注意点
Facebook広告ライブラリの情報を閲覧する際には、いくつか注意点があります。
1:実際の表示と異なる場合がある
Facebook広告ライブラリで確認できる表示は、実際の広告表示と異なる場合があります。
2:広告ライブラリへの反映に24時間ほど掛かる
実際に配信された広告がライブラリに反映されるまで、24時間程度の時間が掛かります。
3:配信中の広告のみ表示される
広告ライブラリで確認できるのは、配信中の広告のみです。配信が停止されたものについては確認できません。
Facebook広告ライブラリを競合調査に活用する
Facebook広告ライブラリは、競合調査として活用することも可能です。
たとえば、自社が「ダイエット」でFacebook広告を出稿しようと考えた時、Facebook広告ライブラリで「ダイエット」と検索することで、競合の広告を確認できます。
ただし実際には、競合の広告を参考にしてクリエイティブを作成・出稿しても、成果につながるとは限りません。
Facebook広告ライブラリを使った競合調査のポイントについて、詳細を解説していきます。
1:広告の成果は確認できない
Facebook広告ライブラリでは、その広告の成果までは確認できません。
インプレッション数(何回表示されたか)、リーチ数(何人に表示されたか)、クリック数、CTR(クリック率)といった、広告の成果を示す指標までは閲覧できないようになっています。
そのため、「Facebook広告ライブラリを見て、競合の広告をもとにクリエイティブを作ろう」と思っても、その広告が成功しているものか、それとも失敗している広告なのかは判別できません。
参考にしようと思った広告が、実際には成果が出ておらず、「様子見で出稿されているだけ」という可能性もあります。
2:広告の入札戦略や金額範囲、ターゲティング等も確認できない
また、競合の入札戦略や予算、ターゲティングなども確認することはできません。つまり、「その広告がいくらで出稿されているのか」「どんなユーザーに向けて配信されているのか」も、わからないことになります。
Facebook広告はオークション方式で出稿費用が決まるため、入札戦略や予算設定によって、広告のリーチ数やインプレッション数が大きく変わります。そのため、同じような広告でも、入札戦略や予算設定によって成果が大きく変わることもあります。
こうしたFacebook広告の予算や料金の仕組みについては、次の記事で詳しく解説していきます。
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⇒基礎から解説!Facebook広告の料金の仕組みと相場
また、ターゲティングの設定も重要です。
FacebookやInstagramなど、SNSプラットフォームは、ユーザーのさまざまな属性情報を保有しています。この膨大なビッグデータに基づき、最適な広告を最適なユーザーに配信し、高い費用対効果を実現できることがFacebook広告の強みです。しかし逆に言えば、適切なターゲティング設定ができなければ、同じ広告でも成果は期待できなくなってしまいます。
こうした戦略的な要素までは、Facebook広告ライブラリから確認することはできません。そのため、ただライブラリ上の競合広告を参考にするだけでは、成果の上がる広告は実現できないでしょう。
3:似たようなクリエイティブでも、審査に通らないことがある
Facebook広告ライブラリに掲載されている広告は、配信中の広告のみです。これは言い換えれば、“広告掲載の審査に通過した広告”だと言うこともできます。
「競合がこのクリエイティブで審査に通過しているなら、自社も同じようなクリエイティブを使えば、ひとまず審査には通るだろう」
…という考え方もありますが、実際には、似たようなクリエイティブを出稿しても、審査に通らない場合があります。
競合の広告はあくまで参考程度にとどめ、Facebook公式のガイドラインや広告ポリシーにしっかりと準拠して、クリエイティブを作成しましょう。
4:競合と類似するクリエイティブでは、差別化戦略が機能しない
競合と似たようなクリエイティブでは、差別化戦略が機能しません。競争力を発揮できず、膨大な広告ネットワークに埋もれてしまう恐れもあります。
また、FacebookやInstagramなどのSNSは、「新しいもの」が高く評価される傾向にあります。どこかで見たような広告や、ユーザー目線で見れば陳腐化してしまっており、すでに“見向きもされなくなっている”広告表現かもしれません。
ただ競合を真似するのではなく、競合の広告を見て「これよりもっと良い広告は作れないか」と考えることが重要になります。
5:広告の遷移先も確認し、カスタマージャーニーを把握する
Facebook広告ライブラリで競合調査を行う場合、広告だけでなく、遷移先のコンテンツも確認すると良いでしょう。
Facebook広告に限らず、WEB広告は、遷移先のコンテンツとのつながりが重要です。
広告のクリエイティブ(画像や文章)と遷移先のコンテンツとが、カスタマージャーニーとして一貫性をもって繋がっていなければ、ユーザーは戸惑ってしまいます。せっかく広告をクリックしてくれたユーザーの取りこぼしにもつながり、広告の費用対効果を大きく下げてしまう要因にもなりかねません。
広告クリエイティブと遷移先は一つのセットとして考えて、遷移先のコンテンツまで、しっかりと確認していきましょう。
Facebook広告ライブラリによる競合調査の実践例
それでは今から実際に、Facebook広告ライブラリを使って競合調査を実践してみましょう。
自社の状況を以下のように仮定して、Facebook広告ライブラリを使って競合の広告を調べてみます。
<自社の状況>
・業種:小売業
・取扱商品:家具、インテリア、雑貨
・広告の目的:新生活向けの自社製キッチン家具の販売促進
「中小規模の家具・インテリアメーカーが、自社製のキッチン家具を新生活向けキャンペーンとして販売するため、Facebookに広告を展開する」という状況を想定してみました。
それでは、競合他社はどのような広告を出稿しているのか、実際にFacebook広告ライブラリを使って調べてみましょう。
1:Facebook広告ライブラリで競合の広告を探す
まずは競合の広告を探しましょう。Facebook広告ライブラリで検索を行います。
地域を「日本」、カテゴリを「すべての広告」と設定しました。問題は、任意の検索キーワードです。
まず最初に「家具」で検索してみましたが、検索結果がとても多く、さまざまな家具やインテリアが表示されるため、なかなか自社のプロジェクトに近い広告が見つかりません。
検索キーワードをいくつか変えて試したところ、「キッチン 家具 新生活」の検索で、ようやくイメージに近い広告が表示されました。
2:Facebook広告ライブラリの検索結果を見て、競合の全体像を把握する
それでは検索結果を見ていきましょう。まずは全体をスクロールして、どのような広告が出稿されているのか、全体像を把握していきます。
家具販売大手の「ニトリ」も、新生活特集の広告を出していますね。
また、キッチン家具の広告だけでなく、マンションの広告も出ていることに注目です。「新生活向けのキッチン家具」の広告を今回は探していますが、このように、意図とはまったく異なる広告が表示されるケースもあります。
こうした可能性も念頭に置きながら、競合調査を進めていきましょう。
3:目に留まった広告について、詳細を確認する
次に、いくつか目に留まった広告について、詳細や遷移先を確認していきます。
詳細な競合調査を行いたい場合、自社と競合関係にあると思われる広告は、「すべて確認していったほうが良い」という考え方もあります。しかし実際には調査に掛けられる時間も限りがあるため、「いくつか良さそうなものをピックアップして深く読み込む」という手法も選択肢の一つです。
今回は簡易的な調査として、先ほど目に留まった、業界大手・ニトリの広告を見てみます。
「広告の詳細を見る」ボタンをクリックして、クリエイティブを改めて確認してみましょう。
まず目に止まるのは、「新生活特集」とロゴが描かれた中央の写真ですね。清潔感のある、充実した新生活を伺わせる室内の風景です。一枚の写真の中に、ベッド、ローテーブル、ラグ、クローゼット、テレビ台など、さまざまな家具が映っています。
今回想定する「自社の製品」はキッチン家具のため、訴求したい製品そのものは異なりますが、「一枚の写真の中に複数の家具を配置し、実際の生活の期待感を膨らませる」という手法は応用できそうですね。
次に、写真の上の文章を確認していきます。
「新生活のスタートに」という一言が、ターゲットを明確にしていますね。続く文章も、「引っ越しした日からすぐに必要な家具や布団」「お手頃価格のカーテンセット」など、具体性のある内容になっている点にも注目です。
4:「詳しくはこちら」ボタンを押して、広告の遷移先を確認する
それでは、「詳しくはこちら」ボタンを押して、広告の遷移先を確認してみましょう。
実際にクリックした結果がこちらになります。
ニトリ通販サイトの、新生活特集のページに遷移しました。
トップのビジュアル(写真)が、広告に掲出されていた写真とよく似ていることに気が付きます。画像のサイズに合わせて、家具の配置や撮影アングルが変更されていますが、ベッドや布団、ローテーブル、ラグ、テレビ台など、いくつかの家具は同じものが使われていますね。
広告に表示されている写真と遷移先のトップのビジュアルに統一感があるため、「広告を見て期待したコンテンツがここにある」と、ユーザーが一目でわかる作りになっています。
また、ページをスクロールすると家具のカテゴリ別のメニューがあり、すぐにショッピングを始められる構造になっています。
広告からECサイトに遷移して買い物を始めるまで、体験がシームレスにつながる設計が伺えます。こうした手法は応用できそうですね。
5:さらに調査を進める
それではFacebook広告ライブラリの検索画面に戻って、もう少し競合調査を行ってみましょう。いくつか広告を見るなかで、他社とは少しトーンが異なる「個性的な広告」を見つけました。
並んでいる3つとも、ナチュラルインテリアの人気店「ポタフルール」の広告ですが、注目したいのは一番左側のクリエイティブです。
他の広告のほとんどは写真を使っていますが、こちらは線画イラストになっています。シンプルなクリエイティブですが、他の広告と違った個性があるため、つい目を引かれてしまいます。こうした差別化戦略は、とても効果的だと実感できます。
こちらも「広告の詳細を見る」ボタンをクリックして詳細を確認し、「詳しくはこちら」ボタンをクリックして遷移先を確認してみましょう。
「91~120cmの食器棚」と、かなり絞り込んだ訴求になっていますね。
万人に響くメッセージではないものの、「これが欲しかった!」というユーザーに届けば、確実に興味を持ってもらえる内容です。
「詳しくはこちら」ボタンを押して、遷移先を確認してみましょう。
こちらも遷移先のページは、同社のECサイトになっていました。広告で訴求されていた「高さ91~120cmの家具」に特化したページです。トップのビジュアルが、広告クリエイティブの画像と統一されている点も、先ほどのニトリのページと同じですね。
6:調査により得られた知見をまとめる
このように、Facebook広告ライブラリを使って複数の競合を調査しながら、得られた知見をまとめていきましょう。
家具の写真を使った広告が多いことや、一方でイラストを使って差別化をはかる戦略もあること、広告クリエイティブと遷移先ページの統一感など、いろいろな知見が得られたと思います。
こうしたポイントを元に、「では、自社の場合はどうするか?」と考えていくことが重要です。ただ競合の真似をするのではなく、自社の強みや製品の特長を活かしていきましょう。
広告を“読み解く”スキルの有無が、Facebook広告ライブラリから得られる情報は大きく異なる
今回は、Facebook広告ライブラリについて解説をお届けしました。
Facebook広告ライブラリは、掲載広告の透明性の確保を目的に運営されているツールであり、マーケティングや競合調査用のツールではありません。しかし、FacebookやInstagram等で配信中のすべての広告を確認できるため、実態としては、競合調査として用いられることが多くなります。
とはいえ、Facebook広告ライブラリを見るだけで、競合の情報が何もかも得られるわけではありません。そのため、広告を“読み解く”スキルが重要になります。
クリエイティブの画像やテキストに込められた意図や狙い、遷移先のページとの関係性、それらがユーザーにどのような印象を与え、どんなメッセージの発信になるか…等、一歩踏み込んだ分析や考察が必要になります。そうして競合の手法を解き明かし、整理して一般化することで、はじめて自社の広告戦略にも応用できるようになります。
こうした踏み込んだ分析をせず、表面的な広告表現だけを参考にしても、成果にはなかなか結実していきません。
Facebook広告ライブラリは、誰でも利用できます。しかし、競合調査用のツールではないからこそ、“Facebook広告ライブラリを使った競合調査”には、マーケティングの理論と実践・応用の知識や技術が不可欠です。
実際にマーケティングや競合調査にFacebook広告ライブラリを活用したい場合、広告運用の専門家のサポートを得ながら行っていく方が良いでしょう。