広告・プロモーションの果測定はマーケティング担当者にとって馴染みのある調査だと思います。しかし、その結果を意味あるものにできているでしょうか? 惰性で調査を行なっていませんか? 本コラムでは、現状の問題点を整理しつつ、効果測定をブランディングに生かせる調査にするための評価指標を提案します。
広告・プロモーションの効果測定の実際
広告・プロモーションの効果測定でもっともポピュラーなものは、事前/事後でアンケート調査を行うプレポストの測定でしょう。施策前と後で認知度やイメージを訊ね、その変化を効果だと見るわけです。
施策前に10%だった認知度が20%に上がれば、それは広告・プロモーションによって引き上げられたものだと考えられますし、「親しみやすい」「洗練されている」「信頼できる」など、イメージに変化が生じていれば、メッセージが生活者にきちんと伝わったと判断できます。
また、接触者/非接触者の差も、効果の指標としてよく用いられます。ブランドイメージや購入意向、商品に対する興味・関心、あるいは購入経験などについて、施策接触者グループのポイントが高ければ、施策が引き起こした態度変容だと推測できる。ウェブ広告に対する測定「ブランドリフト」も、接触者/非接触者間での違いから分析していきます。
広告・プロモーションの効果測定は古くから研究されていて、この他にもさまざまな指標があります。
効果測定の意味と目的を見失っていませんか?
ここまで説明したように、広告・プロモーションの効果測定の目的は、追跡して検証できる指標を設定し、施策の事前/事後でどのような変化が生じたのかを比較することです。その意味で現在、一般的になっている評価方法は完成された、とてもよくできたものです。もちろん、ネオマーケティングでもソリューションとして提供しています。しかし同時に、こんなご相談をいただくことがあります。
「変化はわかるけれど、結局、どれを基準に判断すればいいの?」
「正直、なんのためにこの指標をとっているのかよくわからない…」
なんのために調査をしているのか、結果をどう活かしていいのかよくわからないというのです。
代表的なものが、「NPS(ネットプロモータースコア)」かもしれません。顧客ロイヤリティを測る調査で、商品やサービスを周囲におすすめる可能性を10段階で訊ねるものです。業績との相関が高いともいわれていて、多くの企業が導入していますが、これもまた活用できていないケースが多いようです。
人にすすめたくなるほど商品やサービスに愛着がある、ということは理解できますが、そのスコアがどのレベルまで達していたらいいのか、その基準がよくわからないからです。
広告・プロモーションの効果測定では、認知度や好意度、推奨意向などたくさんの指標が用いられます。あまりに多いため、何をどう見ていいかわからなくなってしまう。結果、大事なものが見失われ、形式的にただ調査を行うという状況に陥っている企業やブランド担当者は少なくないのです。
今後、重要指標となる「エボークトセット」
広告・プロモーションの目的はブランドを広く認知させて、興味を喚起させることにあります。しかし、その先には、手に取ってもらい購入してもらうことを見据えているはずです。商品やサービスを買ってもらうことが最終的なゴール。広告・プロモーションはその入り口です。
認知度やイメージはとても大切です。しかし、本来の目的と最終ゴールから考えると、より重要なのは購入候補に入ったかどうか。その指標となるのが、「エボークトセット」です。
エボークトセットは「想起集合」とも訳されるもので、あるカテゴリーにおいて生活者が頭に思い浮かべるブランドや商品のことです。人は何かを買おうとしたとき、頭の中にはすでに選択肢があり、その中から選ぶことがほとんどだといわれています。
つまり、購入を検討する候補に入らなければ、実際に買ってもらえる可能性は格段に低くなるのです。
エボークトセットを知るには、これまでの効果測定に「この商品の購入を検討しますか?」といった問いを加えるだけです。しかし、この一問を加えることで、網羅的な調査が可能になります。
商品やサービスを知ってもらう「認知」がファーストステップ。知っているというところから興味・関心を抱いてもらえたかどうかは「興味喚起」で測る。そこに「エボークトセット」を加えることで、施策が購入につながりうるものだったのか、最終ゴールの目前まで生活者を引き寄せられたかどうかが見えてきます。
通販のようなレスポンス重視の広告はとくに、エボークトセットがより大事な指標になります。もちろん、イメージ広告を含めさまざまなケースで使っていけるはずです。
また、事前・事後の比較はもちろんですが、いくつかの広告・プロモーションを比較する、といった分析もできます。ある特定の広告・プロモーションだけエボークトセット率が高まったとなれば、そこに購入意向を高めるポイントがある、と考えられるわけです。
興味喚起から購入意向まで結びつけられる要素がわかれば、その後の広告展開の効果を高めることもできる。効果測定がクリエイティブへの具体的なヒントをもたらすことにもなります。大袈裟にいえば、失敗しない広告を制作できるわけです。
どんな調査にもいえることですが、調査には目的があります。その目的のために、結果を活かさなくては意味がありません。長年、慣習的に行っている効果測定はとかく、調査自体が目的になりがちです。そこに「エボークトセット」という新たな軸を入れることで、広告戦略をよりアグレッシブにできる。
まだまだマイナーな指標ではありますが、今後、「エボークトセット」は重要指標になっていく。ネオマーケティングはそう確信しています。