D2Cのブランド世界観とは?ブランディングにストーリーが重要な理由-ネオマーケティング-
ライター:株式会社ネオマーケティング
公開日:2021年09月06日
| 更新日:2024年10月08日
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PR・プロモーション
この記事では、D2Cのブランド世界観について解説していきます。
「D2C」「ブランド世界観」といったテーマは、ふわっとした概念の話だけに留まってしまうことも多いかと思います。
「いまいち具体的なイメージが掴めない」
「自社で導入するには何から始めたら良いのか…」
と、迷っている担当者も多いでしょう。
そこで今回は、具体的な例にもとづき、D2Cのブランド世界観についてヴィジョンを明確化するところから始めましょう。
この記事をお読みいただければ、
・D2Cのブランド世界観とは何なのか
・D2C戦略の実践にあたって、何から始めれば良いのか
といったことを、より明確にご理解いただけるかと思います。
D2Cとは何か-なぜブランドの世界観が重要なのか
まずはD2Cとは何なのか、その意味を確認していきましょう。
言葉としては、「Direct to(2) Customer」、略してD2Cと呼ばれています。ですが、これを文字通りに「顧客に直接届ける」とだけ受け止めてしまうと、D2C戦略は失敗に終わってしまうでしょう。
一方で、「D2Cとは何なのか」をしっかりと考えていけば、プロジェクトを成功に導ける可能性は段違いに高くなります。
その第一歩としてD2Cとブランド世界観の切っても切り離せない関係性について、解説していきましょう。
●D2Cとは?Eコマースとの違い
D2Cとは何か。
これを理解するためには、従来のEコマース(製品を自社サイトで販売するビジネスモデル)との比較が役立ちます。
さて、EコマースのWEBサイトと言われて、どんなサイトを想像するでしょうか?
トップページにバナーがあり、「おすすめ商品」や「キャンペーン情報」が、見栄えの良いバナーで掲載されていますよね。商品ページには、商品をいろいろな角度から撮影した写真、セールステキスト、機能や原材料などの表、価格、そして「カートに入れる」ボタン。
考えてみると、EコマースのWEBデザインは、イメージとしてはチラシに近い印象です。
一方で、D2C企業のWEBサイトは、こうしたチラシのような印象はまったくありません。
フォトジェニックな写真、文学的なテキスト、思わずシェアしたくなる魅力が詰まっている一方で、セールス色はほぼ無いと言って良いでしょう。もちろん商品ページには価格や機能表示もありますが、それらは意図して控えめにデザインされています。
この違いは一体どういうことでしょうか?
その答えが、EコマースとD2Cの違いであり、「D2Cとは何か?」の答えにもつながっていきます。
・Eコマース … ”商品”を顧客にアピールする
・D2C … ”ブランドの世界観やコンセプト”を顧客に届ける
つまり、顧客に届けるものがまったく異なります。
D2C、すなわち「Direct to(2) Customer」で顧客に届けるものは、商品やサービスではありません。ブランドのイメージ、世界観、ストーリー、そして一貫したコンセプトです。
魅力的なブランドメッセージが顧客に伝わり、SNSなどでシェアされ、広がっていった結果として、商品も売れていく…といったイメージで捉えて頂くと良いでしょう。
●ブランドの世界観がなければ、D2Cは成立しない
D2Cは、一貫したブランドコンセプトを顧客に発信することで、商品の魅力を高めて販売につなげていくビジネスモデルです。
従って、そもそもブランドの世界観がなければD2Cではなく、従来のEコマースの延長になってしまうでしょう。
つまり、「D2C=ブランドの世界観やストーリー」と捉えることが、最初の一歩になります。
※関連ホワイトペーパー:D2C事業を成功させるための重要ポイントとは
D2Cのブランドストーリーとは
D2Cでは、特にブランドストーリーが重要になります。このことは、いろいろな資料でも度々言及される内容です。しかし、「ストーリーが重要」と言われても、それだけで直感的に理解できる人は多くはないでしょう。
そこで、D2Cブランドの世界観のコアとも言える「ブランドストーリー」とは何なのか、イメージが掴めるよう、わかりやすく解説していきます。
●顧客が欲しいものは?マーケティングで有名な例え話
マーケティングの分野には、昔からよく持ち出される、こんな例え話があります。
ホームセンターに工具のドリルを買いに来た顧客がいます。さて、この顧客が本当に欲しいものは何でしょうか?
「ドリルを買いに来たのだから、顧客はドリルが欲しいに決まっている」
…と、そう考えてしまいそうですよね。
ところが、これは正解ではありません。
顧客が欲しいものは、ドリルではなく、「穴」です。
どこかに穴をあけたいから、ドリルが欲しいわけですね。だから顧客はドリルを買いに来た、ということになります。
●顧客が何を求めているか、さらに突き詰めて考える
それでは、この考え方を発展させてみましょう。
「なぜ顧客は、穴を必要としているのだろうか?」
と、もう一歩踏み込んで考えてみます。
ドリルを買って、どこかに穴をあけて、それで満足して終りでしょうか?そういった趣味の方もいるかもしれませんが、多くの場合は違うでしょう。
「穴をあけたい」と考えるのも、突き詰めれば、もっと何か別の目的を達成するためです。
もしかすると、お気に入りの絵画を壁に飾りたいのかもしれません。
それとも、日曜大工で素敵な犬小屋を作りたいのかもしれませんね。
さて、こうして考えてみると、顧客が本当に欲しいものは何でしょうか。
「ストレスなく手軽に壁に穴を開けて、お気に入りの絵画を飾って楽しむ」
「手際よくペットの犬小屋を作って、子供たちを喜ばせる」
こうした一連の体験こそが、顧客が本当に求めているものではないでしょうか。
●顧客が求めている体験こそが、D2Cのブランドストーリー
「(工具の)ドリルが欲しい」「穴をあけたい」では、いまいち物語性はわかりません。ですが、「手際よくペットの犬小屋を作って、子供たちを喜ばせる」となると、物語性を帯びてきます。
たとえば、こんな物語です。
-よく晴れた日曜日、新しく迎えたペットの白い犬。「よし、お父さんが犬小屋を作ってあげよう」。設計図を引き、材木をノコギリで切り揃え、ピカピカのドリルでサっと穴を空け、組み立てて釘を打って…。素敵な犬小屋を手際よく作る姿に、子供たちは尊敬の眼差しを送ります。
いかがでしょう。まるで穏やかなホームドラマのような、物語のワンシーンが思い浮かびます。
これこそがまさに、顧客の求める体験であり、D2Cブランドが顧客に訴求する「ストーリー」になります。
顧客を主人公とした魅力的なストーリー。
その物語を彩る重要な小道具として、自社の製品やサービスが登場するイメージです。
●製品の背景をブランドストーリーと捉える方法も
ここまでの説明と少し異なりますが、製品の背景をブランドストーリーと捉える考え方もあります。
・どんな想いを込めて、その製品を開発したのか?
・そのこだわりは、どんな機能やデザインに反映されているのか?
こういった視点で物語を展開する方法もあります。
ただし、この場合も「顧客の求める体験」を基盤に置くことが重要です。作り手のこだわりばかりをアピールしてしまうと、顧客を置き去りにしてしまいかねません。
先ほどのドリルの例を用いるなら、
「工作に不慣れな方でも、たまの日曜大工をストレスなく、安全に楽しんで頂きたい。そんな想いから開発しました」
といった切り口でしょうか。
しっかりとマーケティング調査を行い、”顧客の求める体験”をキャッチアップできていれば、視点を自社(作り手)に切り替えても、顧客を置き去りにしてしまう心配は無いでしょう。
D2C成功事例で見るブランドストーリーの展開例
それでは実際に、D2Cの成功事例から学んでみましょう。
D2Cに成功しているブランドは、どんなブランドストーリーを、どういった形で発信しているのでしょうか?
それを確認するため、今回はスーツケースブランド「Away」の成功事例に注目して、Instagramアカウントをチェックしてみましょう。
出展:https://www.instagram.com/away/?hl=ja
たとえば、一番左上の写真に目を向けてみましょう。
Awayの商品であるスーツケースは、写真の中にそれほど大きく映ってはいませんよね。中央のテーブルの隣に置いてあるだけです。
ですがこの写真からは、物語を読み取ることができそうです。
両サイドの観葉植物、テーブルの上に置かれたサングラスと麦わら帽子。まるで南国の、海沿いのリゾートのような雰囲気を感じます。ホテルよりはプライベートな空気感ですから、もしかすると別荘かもしれませんよね。
南国のプライベート・リゾートに一人旅。日常のストレスから解放される素敵な時間。そんな旅のお供に、Awayのスーツケース。
こうした物語が、たった一枚の写真で伝わってきます。
●宣伝とブランドの世界観の違いにも意識を
AwayのInstagramを見ると、スーツケースの宣伝はほぼ無いことにも気が付きます。
セールス情報なし、キャンペーン情報なし、それどころか、価格も商品名すらもありません。
この点もまさに、ブランド世界観とセールスの違いであり、D2CとEコマースの違いと言えるでしょう。
「これからはD2Cだ、SNSをやろう」と考える企業の多くが、SNSをチラシのように使ってしまう事例がたびたび見受けられます。しかし、それではD2Cにはならず、従来のEコマースとの差別化はできません。
一方で、AwayのInstagramアカウントはまったく違います。
ご覧いただいた通り、Awayが発信しているのは、「自社製品のスーツケースが登場するストーリー」と言えるでしょう。
リゾートを彷彿とさせる風景の中に、Awayのスーツケースが写っています。
Awayのスーツケースに荷物を詰めて、リゾート地へ旅するストーリー。
顧客は自分自身をそのストーリーの主人公と重ねて、Awayのスーツケースを持ってリゾート地へ旅する自分の物語を思い描きます。そして、思い描いたストーリーを実現したいと感じた時、自然とその商品を注文していることでしょう。
ですが、もしここに「大特価30%OFF」「新規の新作」といったセールスが入っていたら、どうでしょうか?せっかくの夢見心地も台無しです。一気に現実に引き戻されてしまいます。
だからこそ、セールスよりもブランド世界観を優先するのが、D2Cの特徴と捉えて良いでしょう。
D2CでSNSが主戦場と言われる理由
さて、先ほどD2Cの成功事例、スーツケースブランド「Away」のInstagramをご紹介しました。Instagramは、言わずと知れた人気のSNSです。
この「Away」に限らず、成功したD2Cブランドは、ほぼ全てがSNSを活用しています。SNSはD2C事業においての主戦場と言っても良いでしょう。
ですが、その理由は一体なぜでしょうか?
今回は要点だけまとめていきましょう。
D2C事業においてSNSが主戦場と言われる理由。
それは、ブランドストーリーを発信するのに、SNSがもっとも向いているからです。
SNSは誰もが発信でき、共有できるプラットフォームです。
SNS上で何か素敵な物語やエピソードを見つけた時、思わずシェアしてしまった経験は無いでしょうか?
SNSを利用している方なら、心当たりがあるかと思います。
そしてD2Cは、まさに「ストーリー=物語」に軸足を置いた事業展開です。ブランドが発信する素敵な物語は、SNSを通して顧客にシェアされ、拡散していきます。
これが結果としてバズ・マーケティングにつながっていったり、あるいは顧客からのフィードバックにつながっていきます。時にはSNS担当者との親しい交流も生じるでしょう。
こうしたSNS上で発生する、顧客とブランドとのケミストリーが、さらにブランドイメージを良い方向に強化していきます。
このような流れができあがれば、そのD2C戦略は成功したと評価しても良いでしょう。
まとめ:D2Cはブランドストーリーを描くところから始まる
D2Cの本質は、まさにブランドストーリーです。
SNSで宣伝することでもなければ、脈絡もなく小洒落た写真を掲載することでもありません。
顧客の求める体験、自社製品の持つ世界観、それらを踏まえたコンセプトに従って、ストーリーを展開し、提示していくことです。
「D2Cで商品を売りたいが、世界観やストーリーはどうしよう」と区別して考えるのではなく、全てを物語の一場面として、一貫して捉えることが重要になります。
自社サイト、SNSアカウント、店頭、製品デザイン、カスタマーサービス、あらゆる場面において、ストーリーと世界観に基づいて一貫したサービスデザインを行い、これを表現していきます。こうした取り組みが、従来のEコマースと異なる、D2Cならではのブランド戦略になります。
まずは自社の製品がどのようなストーリーの中で活きるのか、顧客のどんな物語に”出演”できるのか、実際の活用事例などを調べてみることもお勧めです。
顧客の目で見て、「自分もこんな体験をしたい」「この体験を誰かと共有したい」と思えるような、魅力的な物語を描いていくことが、D2C事業を進める上での第一歩です。
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