D2Cブランドは様々な分野で続々と生まれていますが、ブランドの特徴やアプローチの仕方は実に多種多様です。
この記事では、D2C発祥のアメリカと日本で注目すべきブランド一覧をまとめました。
・ブランドの特徴
・どんなサービスを提供しているか
について、詳しくご紹介しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
長引くコロナ禍でも成長を続けるD2Cブランド
D2Cブランドの市場は長引くコロナ禍においても成長を続けています。
日本国内のマーケットを数字で見てみましょう。
2025年には3兆円に達すると予測されるD2Cマーケット。
コロナ禍という特殊な状況を味方に付ける理由として、3つのポイントが考えられます。
年
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市場規模(単位:億円)
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2019年
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20,300
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2020年
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22,200
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2021年
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24,100
|
物販系ネットショッピングのニーズ急増
経済産業省が2021年7月末に発表した電子商取引(EC)に関する市場調査の結果によると、旅行や宿泊などサービス分野のECはコロナ以前の2019年の36.05%減と大きく数値を落とした一方、物販系ECは21.71%増と大幅にシェアを伸ばしています。
参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)
D2Cは店舗やECサイトなどの中間を介さずに顧客に直接プロダクトを販売するモデルのため、物販系ECのニーズが増えたことはD2Cにとっても追い風だと言えるでしょう。
SNS閲覧時間の急増
株式会社ヴァリューズが2021年11月に発表したメディア接触動向変化では、コロナ前と比べてSNSの利用時間が大幅に増えたことが分かっています。
また、同調査ではオンライン上のコミュニケーションができるツールである掲示板やブログの利用率が大幅に減少し、情報収集とコミュニケーションの両方をSNSで行う人が増えていることも分かりました。
D2Cではただ物を売るだけではなく、ストーリーで惹きつけてコミュニティを形成しブランド自体のファンを作るという商法が大事です。
ブランド側からの情報発信と、顧客(ファン)との双方向のコミュニケーションが行えるSNSはコロナ以前からD2Cブランドの重要なツールでしたが、その重要性は今後も高まっていきそうです。
新しい生活様式
コロナ禍に入ってから、「3密(密集・密接・密閉)」を避けるための新しい生活様式が急速に普及しました。
参照:新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました|厚生労働省
厚生労働省がまとめた実践例にもあるように、店舗での買い物は身体的接触を避け滞在時間も短く効率的にするのが望ましいです。時間をかけてゆっくり買い物したい時はSNSで情報収集→オンラインショップで買い物という流れになる人も増えています。さらに、2020年夏に行われた緊急事態宣言解除後の消費者行動&実施時期を調査では、7割の人がコロナ後も日常的なEC利用を継続したいと答えています。スマホの普及により伸びていたEC全体の市場が、コロナ禍によってより日常的なものとなったようです。
※関連ホワイトペーパー:D2C事業を成功させるための重要ポイントとは
巨大な市場を有する中国のD2Cブランド
中国はオンラインショッピングがとても発達していて、日常的に利用する人数も世界トップクラス。
都市部であれば当日に注文したものが届くショップも多く、もはや人々の暮らしに欠かせないインフラとなっています。
D2Cブランドの出現はアメリカや日本に比べると遅かったようですが、世界的にも大きなマーケットのため今後多くのD2Cブランドが生まれると予測されます。
すでに中国においてECのニーズはより感情に訴えかけるエモな商法に切り変わってきていて、ストーリー性や共感が重視されるD2C普及の土壌が整いつつあると言えるでしょう。
ただ、気を付けたい点があることも忘れてはなりません。
中国においてユーザーが自ら選択して応援するというシステムは大変人気がありますが、ユーザー同士の競争が加熱しやすく、当局の規制の対象にもなりやすいという点です。
かつて資本主義を中国ナイズしたように、ECやD2Cも中国独自の方法で発展する可能性が高く、色々な意味でその動向は注目されます。
楽純(ラチュン)
楽純(ラチュン)
「楽純(ラチュン)」は、中国における食品系D2Cの代表的な存在です。
取り扱っているのは無添加のヨーグルトで、オンライン上でユーザーからの意見を取り入れて新しいフレーバーを追加するというD2C的な戦略で急成長を遂げました。
創業者の劉丹尼(リウ・デニー)は、アメリカの企業で働いた後に中国・北京で起業。
• ブランド力の高い大企業にUXを提供
• 送料を5元までに抑えてデイリーユースしやすく
• 安全性の高くトレンドを掴んだ製品の提供
• ユーザー参加型の施策
といった戦略が功を奏し、今やブランド公式アカウントのフォロワーは100万人を越えています。
花王精致生活館
花王精致生活館
「花王精致生活館」は、花王の中国支社がWeChatで開始したD2C形態のショップです。
WeChatとは日本でいうLINEのようなメッセージアプリで、月間アクティブユーザーは12億人を越える最大のアプリです。
チャット機能以外にも、ニュース、オンラインショップ、WeChatPayというQR決済機能も備えており、WeChatPayはオンライン・オフラインに関係なく一般的な支払い方法として広く使われています。
「花王精致生活館」はキッチン・寝室・リビングなどカテゴリごとにページを作成し、洗剤や生理用品、おむつなどシーンに合ったおすすめ商品を提案しています。
商品と合わせてライフスタイルに関する情報を提供、「よきモノづくり」と題した消費者の意見を開発プロセスに活かす施策も行い、メッセージアプリの利点を活かしたブランディングに注目されます。
MIZUTOKI
MIZUTOKI
MIZUTOKIは上海で生まれたアパレルブランドです。
シンプルで飽きの来ないユニセックスなデザインとヴィンテージ感のある洗練された風合いが人気で、価格も求めやすいのが特徴。
2021年秋冬には日本のダウンブランドTaionとコラボしたコレクションを発表しました。
・淘宝直播(タオバオライブ)でのライブコマース
・クリエイターが集まるエリアのショールームショップに出店
・コーヒーショップとのコラボアイテムを販売し、世界観にあったライフスタイルを提案
など、ニッチ層を狙った戦略的なマーケティングも注目されており、今後も人気拡大が予想されるブランドです。
SHEIN
SHEIN
SHEINはZ世代から注目を集める中国発のD2Cアパレルブランドです。
ファストファッションブランドとしてZARAやH&Mと肩を並べる存在でありながら、母国中国ではそれほど知られていない対外的なブランドでもあります。
・毎日数千点発表される新作アイテム
・SNSをプラットフォームごとに1日複数回更新し、ナノインフルエンサーから有名セレブまで活用
・生産は基本小ロットだが売れてるアイテムは自動的に増産指示が入るオリジナルシステム
この3点に力を入れることで、顧客が毎日SHEINのアプリやSNSアカウントを見たくなる工夫が成されています。
企画から生産、そして販売までにかかる時間は最短3日と、ウルトラファストファッションを越える「リアルタイムファッション」として注目されています。
たしかに、生産までの期間が短ければトレンドをすぐキャッチできますし、小ロットから生産することで在庫余剰を防げます。
近いうちにニューヨーク証券取引所へ上場するとも見られ、今後のファッション業界を変えるゲームチェンジャーになるかもしれません。
既存ブランドもD2C化を進める
リーバイス
Levi’s® NextGen Stores Come to North America -
先ほど花王のD2Cショップをご紹介しましたが、近年特に目立つのが大手企業のD2C進出です。
既存の主力製品はそのままに、「顧客体験」と「パーソナライズ」を重視した新サービスを提供する企業が増えてきています。
リーバイス
デニムでお馴染みのリーバイスは2019年ごろからD2Cに力を入れ、カスタマイズして自分の好きなデニムを作る「NextGen」というサービスをスタート。
オンラインで注文し店頭や駐車場で受け取るカーブサイド・ピックアップや、より顧客体験に重きを置いた新型店舗を展開。
Virtusizeと提携し、バーチャル試着システムをオンラインショップで提供することでサイズ選択のミスを防ぎます。
ロレアル
L'Oréal Groupe : L'Oréal unveils latest beauty tech innovations ahead of CES 2022
ロレアル
コスメ世界トップのロレアルでは、メイクアップ・ヘアケア・セルフヘアカラーなどの部門でD2C的アプローチ、つまりパーソナライズされた顧客体験サービスの提供を始めています。
セルフヘアカラーツールColorsonicは、専用アプリから色合いを決めてカラー剤を自動で調合。
電動ブラシを使って片手で簡単にセルフカラーができます。
さらに今後はモディフェイス(顔認識AR)を検索エンジンに組み込む予定です。
インカメラを起動して実際にコスメの色を合わせて付けたときのイメージをしやすくするという機能で、既に大手ECで導入されてから製品の購入率は3倍以上伸びています。
Googleなどの検索エンジンやYouTubeに組み込むことで、検索画面から直接気になる製品のバーチャルタッチアップを試せるようになり、購買率も上昇すると考えられます。
それ以外にも、YouTubeのメイク動画やコスメ紹介動画で使われている製品のタグをタップするとバーチャルタッチアップページに繋がるようになり、能動的に情報収集するユーザーの購買率アップを図っています。
このように大企業がD2C的なアプローチをすることで、
• 資金面に余裕があるから大規模なアプローチができる
• 技術力が高いので製品やオンラインマーケティングのレベルが高い
• 小規模ブランドがターゲットとしていたニッチ層も狙える
• 既に店舗が多数あるので顧客体験を得るまで待たなくても良い
といった利点があります。
これまでのD2Cブランドは小規模から成長して大企業に売却するか、投資を受けてさらに規模を広げていくかというルートを辿るケースが多い傾向にありましたありました。
資金力やマーケティング力という大きな強みがある大企業が次々と参入する中で、従来のようなアプローチで成功するのは難しくなっているかもしれません。
まとめ
今回は、注目したい国内外のD2Cブランド一覧をご紹介しました。
2000年代後半から2010年代にかけて多くの人気D2Cブランドが登場したアメリカでは、新たな局面に面しており、まだ普及段階である日本から見ると学ぶべき点も多いでしょう。そうした海外ブランドの手法やノウハウをベースに、日本のライフスタイルに合わせて切磋琢磨していく国内のD2Cブランドはどのように進化いていくのか楽しみです。
また、D2Cブランドの世界的な広がりにより、マーケティングやプロダクト開発はより多様かつハイレベルな進化を続けています。今後の中小D2Cブランドはより強固な世界観の構築や、大手ではできない個性的なプロダクト開発、小回りの効くSNS活用、より魅力的なインフルエンサーなどが求められるようになるでしょう。
これまでアメリカがD2Cブランドの聖地として知られていましたが、今後はEコマースが盛んな中国、世界に先駆けてメタバースに本格参入する韓国などアジアでどんな動きがあるのか、目が離せません。