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PRにおけるストーリーテリングの重要性について

ライター:高橋 拓己

公開日:2021年06月30日 | 更新日:2024年10月08日

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放送メディアにプリントメディア、ウェブメディアやSNSとチャネルが増え、情報が溢れるなか、PRのあり方に変化が求められています。いま、PRに求められているのは、情報伝達を越えて共感を促す「ストーリーテリング」なPRです。それは、生活者側に立って考えることで生まれる新たなPRバリューの創出と、メディアと共有・創造することでユーザーに共感を促す新たなPR手法です。
今回は、そんな、いまのマーケットを動かすキーとなるPRのストーリーテリングについて解説します。

◇PRでのストーリーテリングのコツ:受け手目線のストーリーを紡ぐ

自社の商品やサービスについて、生活者に伝えたいとき。広告は比較的、課題が少ないかもしれません。もちろん、対象に合った媒体選択は重要ですし、どういうクリエイティブにするのかは悩みどころです。また、コストに見合った効果を出さなくてはいけないというシビアさもあるでしょう。
しかし、目的は価格や機能、あるいはキャンペーンなど、知ってもらいたい情報をアナウンスすることですから、「新商品が出た」「値段はいくら」「こんな機能がある」といった事実が届けば、その役割は果たしたといえます。

メディアを介して一方通行で情報を送る広告と違い、PRはメディアと関係を構築しながら生活者に共感を生み出す役割を担います。提供した情報が報じるに値する価値があるかどうかを判断するのはメディア。受け取るかどうかは生活者に委ねられます。時代やニーズにマッチしていなければ、溢れる情報に埋もれてしまいます。
PRが打ち出すメッセージは、見つけてもらうこと、共感してもらうこと、さらにいうなら、拡散したくなるような価値提供が必要で、それをサポートするのが「ストーリーテリング」です。

メディアが「おもしろい企業/商品だから取材をしたい!」と考える価値ある物語。
記事を見た生活者が「気になって仕方がない」「みんなに話したい!」「知りたい、使いたい。人に薦めたい。」「何度でも繰り返し使いたい」と思うきっかけを生む物語。
こうしたストーリーを、受け手目線で作ることが重要になります。

◇PRでのストーリーテリングのコツ:価値こそが生活者を動かす

どんなストーリーを語るかは、企業や商品、サービスによってそれぞれです。
これまで日の目を見なかった開発過程を紹介することで商品価値を上げるということもありますし、リサイクル素材を採用するなどサステナビリティを意識した企業活動を打ち出すこともあります。

具体的な例をあげるならば、たとえば、ある化粧品会社は、以前は成分や肌改善の効果または発色や美しい仕上がりなど製品の効果効能を伝えていたのに、最近では素材の調達や開発者の話または環境を意識した物づくりなどを紹介することでリピーターになるロイヤルユーザーを増やしています。
有名ブランドでなくても、派手な広告をしなくても、ストーリーテリングなPRによってエンゲージメントの強いファンが現れリピーターになり、人にすすめてファンコミュニティが形成されます。それは“ブランド”の誕生です。企業・商品・取り組みが、ユーザーに愛されるブランドに変わる分岐点には、ストーリーテリングなアプローチが大きな役割を担います。


情報もモノも溢れている時代。商品の機能や効果を紹介することも消費者にとって大切な情報ではあるのですが、沢山の類似品や溢れる情報の中から「買いたい」「人にすすめたい」「また買いたい」というユーザーの消費行動を形成するためには、商品の価値あるストーリーをPRによって付加していくことが効果を発揮します。

◇PRでのストーリーテリングのコツ:時代に合ったシンプルなメッセージを

「ストーリーテリングが大切なのはわかるけど、うちにはネタがない」
そういうPR担当者もいらっしゃるでしょう。しかしそれは、もったいない思い込みです。企業・商品それぞれに、メディア・消費者の共感を生む打ち出すべき物語は必ず見つかります。

いまの生活者は何を考え、何を求めているのか、それに対してどんなメッセージが伝わり、共感されるのか、そうした生活者起点からスタートすると語るべき物語が見えてきます。
社内で検討していても「うちにはネタがない」と思うのであれば、商品やサービスを届けたい消費者の実態を把握すること、そして消費者にメッセージや付加価値のヒントを見つけてもらうという手法も有効です。新しい消費者調査手法にチャレンジするなどで意外な価値に気づくことができますし、生活者の声や実態に即したストーリーは、企業内で考えたメッセージ以上に届きやすいものになります。

そのメッセージは具体性があり、シンプルであることが重要です。「シングルマインド」という用語もありますが、一途な思いを、できるだけ一言で思い出せるようなフレーズに込めるのです。
深く理解してもらいたいと言葉を重ねてしまいがちですが、メッセージがぼやけてしまうだけ。あれもこれも、それもあれもと考えず、柱を一つつくって、キーメッセージで思い切ってストレートに仕上げていくのがポイントです。

また、ターゲットを広くとっておきたいとの思いも、できれば抑えてください。PRの支援をしていて、ターゲットを定めきれないというケースは少なくありません。新規の顧客を開拓したいけれど、ロイヤルカスタマーを裏切りたくないという思いはよくわかります。
しかし、マーケティングは、PRだけでなく様々な手法で支えられています。調査結果などを踏まえながら、自社のウェブサイトやSNSでは既存客を裏切らないような施策を同時に展開するなど、マーケティング全体で考えていけばいい。いくつかある施策の中でも、PRは自由で遊びがあっていいものです。思い切って仕掛けていくことをおすすめします。

ストーリーをかためていくときも同様です。調査を行うなどして、価値あるストーリーを見いだしても、そのポテンシャルを活かせないケースがあります。「うちの会社っぽくない」「職人が出ていくのは恥ずかしい」などと躊躇していたら、宝の持ち腐れです。

一方で、ストーリーテリングは意識しているのだけれど、独りよがりで効果に結びついていない残念なケースもあります。どんなに自社の商品や歴史に自負があろうとも、生活者が求めていなければ、それは今行うべきPRとしての価値はありません(あくまでも“いま現在”の“PR”としての価値です)。
たとえば、こだわりの製法を若い世代に伝えたいとき、年配の創業者が出てきて長々語るよりも、製造に携わる女性のひたむきな姿を映し出すほうが強いメッセージとなるケースもあります。
PRは生ものであり、タイミングや時代性がカギとなります。時代性と誰にどう届けるかは、どんなストーリーを語るにせよ忘れてはいけないポイントです。

◇おわりに

繰り返しになりますが、情報過多の時代、これまでどおりのPRでは厳しくなっているのは事実です。新しいPRのあり方として、ストーリーテリングを取り入れてみてはいかがでしょうか。ターゲット層に響く自社の価値は何か?どんなストーリーを語るべきか? 生活者の実態を探る様々なデータソースを活用することでその答えを見つけて、自社のストーリーテリングを開発し、最適なPR手段で効果的に展開していきましょう。

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高橋 拓己
WRITER
高橋 拓己
マーケティング業界歴13年。2011年よりネオマーケティングに入社。マーケティングリサーチに留まらず、次なるPR施策まで含めた提案も多く実施。 日用品・調味料メーカー、広告代理店、PR会社など多様な業界でのプロジェクトに携わり、数々のプロモーションを手掛ける。

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