「顧客満足度を向上させたい」と考えていても、何をどのように改善すればよいのかわからないかもしれません。その際は顧客満足度調査(CS調査)を実施して、顧客が何を評価し、どの点に不満を感じているのかを把握するのが重要です。
しかし顧客満足度調査は、ただ実施するだけでは意味がありません。目的を明確にして、適切な手法を選び、データを正しく分析・活用する必要があります。本記事では、顧客満足度調査(CS調査)の目的や手法、成功させるためのポイントを詳しく解説します。
顧客満足度調査(CS調査)とは

顧客満足度調査(CS調査)とは、企業やブランドが提供する商品・サービスに対する顧客の満足度を測定し、評価するための調査です。商品・サービスの品質向上など、さまざまな目的があります。
顧客満足度調査(CS調査)を実施する目的
顧客は、必ずしも「不満があるから離れる」わけではありません。なんとなく印象が薄かったり、他にもっと魅力的な選択肢があったりすれば、簡単に別のブランドへと移ってしまいます。
顧客に「また使いたい!」と思ってもらうためには、顧客満足度調査を実施し、さまざまな課題を解決するのが重要です。以下、そもそも何のために調査を実施するのかを詳しく解説します。
商品・サービスの品質向上
まずは、商品・サービスの品質向上です。顧客が「また使いたい」と思う商品やサービスには、改善を重ねた形跡があります。優れた商品を作るだけでなく、顧客の声を取り入れながら進化し続けるのも重要です。
顧客満足度調査(CS調査)を通じて、「どこに満足しているのか」「どのような点が不満なのか」を可視化すれば、具体的な改善点が見えてきます。定期的にフィードバックを収集し、PDCAサイクルを回すことで、長期的な顧客満足度の向上につながります。
リピーターやファンの獲得
リピーターやファンの獲得も、調査を実施する目的としてよく挙げられます。ビジネスにおいて、せっかく獲得した顧客が一度きりの利用で終わるのはもったいないことです。そのため、基本的にはリピーターやファンになってもらうのを目指します。
顧客満足度調査を実施すると、「なぜリピートしているのか」「何がネックになって離脱してしまうのか」といったポイントが明確になります。顧客の満足度を定期的に把握し、細かな改善を積み重ねることで、リピーターやファンが段々と増えるわけです。
自社ブランドの独自化戦略の立案
自社ブランドの独自化戦略の立案も、重要な目的です。顧客満足度調査を活用すれば、競合との差別化ポイントを明確にし、ブランドの独自性を打ち出すヒントを得られます。
たとえば「競合よりもカスタマーサポートの対応が良い」という声が多ければ、それを前面に打ち出してブランディングし、差別化を図れます。一方で「もっと○○な機能があれば良い」という要望が多ければ、先駆けて商品開発を行い、市場での優位性を確立するというやり方もあるでしょう。
顧客体験(CX)の最適化
顧客体験(CX)の最適化も、主な目的です。「このブランドの商品は好きだけど、購入手続きが面倒」「問い合わせをしたら、すぐに対応してくれて安心した!」というように、顧客の印象は、商品や価格だけでなく、体験そのものによって大きく左右されます。
顧客体験の向上は、単に満足度を上げるだけでなく、ブランドの信頼性を強化しつつ長期的な関係を築くための重要な基盤となります。CXの課題を特定し、1つずつ改善していくために、顧客満足度調査(CS調査)が活用されるわけです。
さまざまなデータ収集
顧客満足度調査は、さまざまなデータ収集をするのにも便利です。これまでの話にも通ずる部分ですが、調査によって「なぜ顧客が自社の商品・サービスを選んだのか」「どのような点を魅力に感じているのか」といった貴重なデータを収集できます。
データを集めずに勘や経験だけで意思決定をしてしまうと、顧客のニーズとずれた施策を打ち出してしまうリスクもあります。顧客満足度の向上だけでなく、企業の競争力を高める意味でも、データを正しく収集・分析することは重要です。
リスクの軽減
リスクの軽減も、顧客満足度調査(CS調査)を実施する目的のひとつです。顧客は、自社の商品・サービスを使い続けるうえで、「なんとなく使いにくいけど、やめるほどではないな…」といった不満を抱えることがあります。
それが顧客の心に留まっているうちであればまだ良いのですが、「この対応には納得できない、もう二度と利用しない!」と不満が表面化するケースもあるでしょう。現代は口コミが盛んであり、悪い噂があればすぐに広まってしまいます。
顧客満足度調査を通じてネガティブな意見を事前に把握できれば、想定されるクレームを事前に把握し、対策を講じられます。顧客の離脱防止や企業のリスク回避につなげる意味でも、顧客満足度調査(CS調査)の重要度は高いといえるでしょう。
顧客満足度調査の目的を達成するための手法
「顧客満足度を向上させたい」と考えていても、具体的に何をどう改善すれば良いのかがわからなければ、的確なアクションにつなげられません。そこで重要になるのが顧客の本音を数値化し、深掘りし、分析するための手法です。
アンケート調査による数値化
顧客満足度調査(CS調査)の目的を達成するには、アンケート調査による数値化が重要になります。顧客の気持ちは、「なんとなく満足している」「少し不満はあるけど許容範囲」というように、曖昧なことが多くあるからです。
アンケート調査を活用すれば、多くの顧客から標準化された回答を収集でき、「満足しているかどうか」を客観的なデータとして可視化できます。顧客満足度調査の指標について詳しくは、以下の記事を参照してください。
インタビューによる深掘り
アンケート調査では数値として満足度を測れますが、その背景や理由までは見えません。そこで役立つのがインタビュー調査です。「評価はどうか?」ではなく「なぜその評価に至ったのか?」を深く掘り下げられます。
数字だけでは捉えきれないリアルな顧客の声を聞くことで、より実践的な戦略やサービス改善のヒントを得られるのが、インタビューの最大の強みです。
データ分析によるインサイトの可視化
顧客満足度調査(CS調査)で大量のデータを集めても、それを活かせなければ意味がありません。重要なのは、データを分析し、そこから有益なインサイトを導き出すことです。
たとえばクロス集計(クロス分析)を使えば、「年齢×満足度」や「購入頻度×不満点」といった関係性を可視化でき、「どの層の顧客がどんなポイントに不満を抱えているのか」を明確にできます。
データの背後に隠れたパターンやトレンドを発見し、顧客が求める改善策を的確に打ち出せるのが、データ分析最大の強みです。
顧客満足度調査の目的を達成するためのポイント
顧客満足度調査(CS調査)は、ただ実施すれば効果があるわけではありません。目的に合った手法を選び、正確なデータを収集し、それを的確に分析・改善に活かすことで初めて意味を持ちます。以下、重要なポイントを4つに絞って解説します。
ポイント1.調査目的に合った手法を使う
まずは、調査目的に合った手法を使うことです。「顧客満足度を測りたい」と思っても、やり方は1つではありません。たとえば「全体の満足度を数値で把握したい」なら、アンケート調査が有効です。
一方で、「なぜ満足しているのか?どんな点が不満なのか?」を深掘りしたいなら、インタビュー調査が適しています。実際の顧客の声を直接聞き、数値だけではわからない課題や隠れたニーズを発見できるからです。
調査の目的によって最適な手法は異なります。「何を知りたいのか?」を明確にし、それに合った手法を選ぶのが重要です。
ポイント2.シンプルな調査設計を意識する
シンプルな調査設計も、顧客満足度調査の目的を達成するためには欠かせません。調査を設計する際にやってしまいがちなのが、「せっかくなら詳しく聞きたい」と質問を増やしすぎることです。
しかし質問が多くなるほど、回答者の負担は増え、途中離脱や適当な回答のリスクが高まります。質問を「必要最低限」に絞り、簡潔でわかりやすい言葉を使うだけでも、回答率に良い影響を及ぼすでしょう。
ポイント3.正確なデータを収集する
顧客の本音を正確に把握するためには、バイアスを避けたデータ収集が重要です。誘導的な質問をしてしまうと、顧客の本音を正確に把握できません。
回答者が自由に意見を伝えやすくするために、匿名での調査を実施するのも1つの方法です。実名での回答が求められると、「ネガティブな意見を書きにくい」と感じる人もいるため、率直なフィードバックを得るのが難しくなります。
ポイント4.分析・改善を徹底する
顧客満足度調査(CS調査)は、データを集めるだけでなく、その結果をどう活かすかが重要です。ただ数値を見て満足するのではなく、「なぜこの評価になったのか?」「どの部分を改善すれば満足度が上がるのか?」を考え、具体的な改善策に落とし込む必要があります。
一度の調査だけで終わらせず、定期的に結果を確認し、改善サイクルを回し続けるのも大切です。調査は「ゴール」ではなく「スタート」という意識を持つだけでも、調査が有意義なものになります。
まとめ
顧客満足度調査(CS調査)は、商品やサービスの品質向上やリピーター獲得、ブランドの差別化、顧客体験(CX)の最適化など、さまざまな目的で実施されます。
しかし調査の実施だけでなく、正しい手法でデータを収集し、適切に分析・活用することも重要です。調査結果をもとに改善を繰り返せば、顧客満足度の向上だけでなく、企業の成長にもつなげられます。
調査を「やること」自体が目的にならないよう、戦略的に活用し、顧客に選ばれ続ける企業を目指しましょう。