ネットリサーチは、インターネットを活用して効率的にデータを収集できる調査手法です。しかし効果的なリサーチを行うためには、基本的な手順や注意すべきポイントを理解しておく必要があります。
ネットリサーチの実施を検討しているものの、実際にどのような方法で行えばよいのかわからないとお悩みの方に、ネットリサーチの全体的な流れや方法、そして実施時に気を付けるべき重要なポイントを詳しく解説します。
ネットリサーチの概要
インターネットを活用してデータを収集する調査手法として、近年その重要性が高まっているネットリサーチ。
ここではネットリサーチの基本的な定義と、注目される理由について説明します。
ネットリサーチの定義
ネットリサーチとは、インターネットを使って情報やデータを集める調査方法です。比較的コストを抑えつつ、幅広い人々からスムーズにデータを収集できるのが特徴です。企業や研究機関などで広く活用されています。
たとえば企業が新しい商品を発売するときに、消費者の意見をアンケートで集めたり、SNSの投稿を分析してトレンドを把握したりするのもネットリサーチの一例です。集めた情報はリアルタイムで分析でき、意思決定に役立てられます。
ネットリサーチが注目される理由
ネットリサーチが注目される背景には、現代のデジタル化の進展が大きく関係しています。インターネットの普及や技術の進化によって、調査の手法や対象範囲が大きく広がりました。オンラインアンケートやSNS分析、アクセスログの解析など、さまざまな形式でデータを収集できるようになっています。
ネットリサーチが注目されるもう1つの理由は、現代ビジネスのスピード感に合っている点です。市場の変化や顧客の声をいち早く捉え、商品開発やマーケティング戦略、意思決定に活かせます。SNSでの流行を素早く分析し、新しいプロモーションに活かすといった事例は、昨今ではよく見られるようになりました。
5ステップで進めるネットリサーチの全体的な流れ
ネットリサーチは下記の5ステップで進めていきます。
STEP1.調査の目的と課題の明確化
まずは調査の目的・課題の明確化です。「何を知りたいのか」「どのような課題を解決したいのか」を整理し、調査全体の方向性を定めます。
たとえば顧客満足度を把握したい場合、具体的な項目を設定して、顧客の満足度を測定する方法を考えます。また、新商品の需要調査を行う場合は、ターゲット層のニーズや市場の動向を明らかにするための質問設計が求められるでしょう。
STEP2.ターゲット・手法の決定
次に、ターゲット・手法の決定です。調査目的に合ったターゲットを選び、そのターゲットに最適な手法を選択します。
重要なのは、ターゲットを決めてから手法を考える点です。「若年層をターゲットとするからSNSを活用して調査しよう」「企業の意思決定者をターゲットとするからインタビューの形式にしよう」など、ターゲットと手法には相性があります。
調査手法について詳しくは、後の項目で紹介します。
STEP3.調査票(アンケート)の設計
ターゲット・手法まで決められたら、次に調査票(アンケート)の設計を行います。設計時は、とにかく「シンプルさ」「答えやすさ」を意識するのが重要です。難解な表現や専門用語を避けつつ、質問数を最低限にします。
設問形式は、大きく分けて「選択式」「自由記述」の2種類です。選択式は、回答者があらかじめ用意された選択肢から答えを選ぶ形式で、定量データを集めるのに適しています。一方の自由記述は、回答者が自由に意見や考えを記述する形式で、定性データを収集するのに最適です。
STEP4.調査実施
調査票(アンケート)の設計が終わったら、いよいよ調査の開始です。対象者にアンケートを配信し、回答を収集する作業が中心となります。
メールやSNS、Webサイト、調査会社のモニターパネルなど、事前に決定した配信方法を活用し、効率よくアンケートを配信しましょう。配信後は、回答数や進捗状況を適宜確認し、何か問題があれば追加配信やリマインドを行います。
STEP5.回収・分析
最後に、回収された回答データを集計し、集計データをもとに分析します。アンケートの回収が終わった段階では、データはまだ「回答が集合している状態」に過ぎません。収集したデータを整理・分析し、役立つ形にまとめます。
定量データであれば集計結果をもとに、調査目的に関連する傾向やパターンを抽出します。必要に応じてグラフを使い、視覚的にわかりやすくするのもよいでしょう。自由記述形式の回答は、「ポジティブな意見」「ネガティブな意見」などカテゴリーごとに分け、内容を整理します。
ネットリサーチの基本的な手法
ネットリサーチの基本的な手法は、主に「Webアンケート」「モニター調査」の2つです。
Webアンケート
Webアンケートは、Web上で配信されるアンケートフォームを使用して、一般の人々からデータを収集する方法です。「ビジター調査」「オープン調査」と呼ばれることもあります。
Webアンケートのメリットは、コストが低く、短期間で多くの回答を集められる点です。顧客満足度調査、商品・サービスに対するフィードバック収集などに活用できます。基本的には本格的な調査や専門性の高い調査よりも、簡易的な調査に用いるとよいでしょう。
モニター調査
モニター調査は、専門会社が保有するパネル(登録モニター)に対してアンケートを配信する方法です。アンケートフォームは一般には公開されないため、「クローズ調査」と呼ばれることもあります。
年齢、性別、職業、地域など、詳細な属性でセグメント分けができ、特定のターゲットに向けた調査などに活用しやすいのが特徴です。ただし自社でWebアンケートを実施するのに比べて、コストが高くなる可能性がある点には注意しましょう。
ネットリサーチを実施するときに注意したい2つのポイント
ネットリサーチは効率的にデータを収集できる便利な手法ですが、信頼性できる結果を得るためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。
1.対象者の偏りに注意
ネットリサーチでは、調査対象者に偏りに注意が必要です。インターネットを利用している人のみが対象となるため、特定の年齢層などが調査から排除されてしまう可能性があります。
そのため、回答が偏らないように工夫する作業が必要です。たとえば調査会社のモニターパネルを利用すれば、対象者の属性を事前に絞り込めるため、偏りをある程度軽減できます。また、アンケートの配信方法を多様化すれば、幅広い層へのアプローチが可能です。
2.設問設計に注意
ネットリサーチを実施する場合、設問設計にも注意が必要です。難解な表現や専門用語は極力避け、誰でも回答しやすいシンプルな設計を心がけましょう。
回答者にバイアスを与えないようにするのも重要です。回答に影響を与えるような誘導的な表現を避け、中立的で公平な言葉遣いを意識します。たとえば「こちらの商品は使いやすいと評判ですが、使い心地はいかがですか?」のような質問文は、先入観を与える表現が含まれており、回答に影響を与える可能性があります。
設計時は、回答率を高める工夫も必要になります。
まとめ
ネットリサーチは、変化の激しい現代のビジネスシーンにも対応できる調査手法です。対象者の偏りや設問設計などのポイントを押さえることが成功の鍵となります。
調査にまつわる課題に対応できない場合や、重要な調査で失敗が許されないような場合は、専門会社に依頼するのも1つの選択肢です。専門家の力を借りることで、より信頼性の高い結果を得られるでしょう。