具体的な方法・進め方
「このサービス、なんだか使いづらいな」「思ったより良かった!」といった顧客の声を、企業はどのようにして把握し、改善につなげているのでしょうか。 ただ感想を集めるだけでは、的確な施策にはつながりません。
顧客満足度調査は、正しいステップを踏んで実施することで、企業の成長につながる重要なヒントを得られます。
目的の設定
顧客満足度調査(CS調査)を実施する際、まず最初に行うべきなのは目的を明確にすることです。「何を知りたいのか」「調査結果をどのように活用するのか」をはっきりさせれば、それに応じて適切な調査方法や質問内容を決められます。
目的が曖昧なまま調査を行うと、収集したデータが活用しにくくなり、効果的な施策につなげられないかもしれません。具体的には下記の3つの例を参考にしてください。
・既存サービスの改善:「サービスのどこに課題があるのかを把握し、品質向上につなげたい」
・リピーター獲得:「顧客が継続して利用したくなるポイントを探り、ロイヤルティを高めたい」
・競合との差別化:「他社と比較したときの強みや弱みを明確にし、自社ならではの価値を打ち出したい」
調査対象
顧客満足度調査を効果的に実施するには、「誰に」調査を行うのかを明確にするのが重要です。ターゲットが十分に絞り込めていれば、調査の目的に合ったデータを収集しやすくなります。
調査対象ごとに目的を整理しておくと、調査設計がスムーズになります。
調査対象
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目的
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新規顧客
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初回購入後の評価を把握し、サービス改善につなげる
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既存顧客
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リピート率や継続利用の満足度を測定し、ロイヤルティを向上させる
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離脱顧客
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不満点や改善点を特定し、離脱防止や再利用のきっかけを探る
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たとえば新規顧客に対する調査では、「購入の決め手は何か」「初回利用の満足度はどの程度か」などを確認し、マーケティングやサービスの改善に活用します。
一方、離脱顧客への調査では「なぜサービスをやめたのか」「どのような点が不満だったのか」を探り、課題解決のヒントを得るのが一般的なやり方です。
タイミングの設定
顧客満足度調査を実施する際は、タイミングの設定も重要です。具体例としては以下のようなものがあります。
調査のタイミング
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目的
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定期調査(年1〜2回)
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顧客満足度の変化やリピーター率、ブランドの評価推移を把握し、改善の効果を測定する
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価格改定・サービスリニューアル直後
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顧客の反応を確認し、必要な調整を行う
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購入・利用直後
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初回利用時の感想や満足度を収集し、改善につなげる
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クレームや問い合わせ対応後
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顧客対応の質を評価し、サービス向上につなげる
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リピーター率やブランドの評価、特定のサービスの満足度の変化といった長期的な傾向を知りたい場合は、年に1回または2回の定期調査が適しています。
一方で、価格改定やサービスリニューアル後など特定の変化に対する顧客の反応を知りたい場合は、変更後すぐに調査を実施し「情報の鮮度」を意識するのが重要です。
調査方法の選定
次に、調査の目的や対象に応じて、適切な方法を選びます。具体例は、以下の表を参照してください。
調査方法
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説明
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アンケート調査
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短時間で多くのデータを収集できる(Webアンケート、紙アンケートなど)
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インタビュー調査
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少人数の顧客と直接対話する方法で、より深いインサイトを得られる(オンラインインタビュー、電話インタビュー、対面インタビューなど)
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SNS分析
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顧客が自発的に発信した声を分析する(Instagram、Xなど)
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行動データ分析
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顧客が実際にどのように商品・サービスを利用しているかをデータで分析する(Webアクセス解析、購買履歴など)
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顧客満足度を詳しく調査するのであれば、アンケートもしくはインタビュー調査がおすすめです。
調査票の設計
調査票の設計は、回答率やデータの精度を左右する重要なステップです。質問が多すぎたり、曖昧な表現が含まれていると、正確な回答が得られず、調査結果の信頼性が低下する可能性があります。
たとえば「当社の商品は適正価格だと思いますか?」という質問は、基本的に好ましくありません。「適正価格」の基準は人によって異なり、主観的になりすぎるからです。「価格に満足していますか?(5段階評価)」など、具体的な質問にするとよいでしょう。
先入観やバイアスを生みそうな表現にも注意してください。「多くの顧客が満足している当社のサービスを、あなたはどう評価しますか?」という質問は、まさにその典型例です。「当社のサービスにどの程度満足していますか?(5段階評価)」など、先入観を与えない形に修正しましょう。
実施・回収
顧客満足度調査をスムーズに進めるには、事前告知と、効率的な回収が重要です。調査対象者に対して事前に調査の目的や所要時間を伝え、回答率を高めましょう。
Webアンケートを活用する場合は、自動集計機能を利用すれば、リアルタイムで回答状況を確認しながら進められます。未回答者へのリマインドや、回収状況に応じた対応も可能です。
調査の実施・回収が正しくできれば、より多くの顧客の声を集めつつ、分析の精度の向上にもつながります。
分析・改善
最後に、顧客満足度調査で得たデータを分析し、レポートとしてまとめます。ただデータを集めて満足するのではなく、改善策の立案など実際のアクションにつなげましょう。
具体的には、以下のようなプロセスを踏みます。
・定量データの集計とスコア算出(NPSなどの指標を活用)
・定性データの分析(共通する意見を抽出し、傾向を把握)
・課題の洗い出しと優先順位付け(どの問題が最も影響が大きいかを判断)
・具体的な改善策の提案(商品・サービスの改良、価格戦略の見直しなど)
調査結果を最大限に活用するためには、適切な分析方法を選ぶのが重要です。
■クロス集計(クロス分析)
クロス集計(クロス分析)とは、 2つ以上の項目を組み合わせて分析する手法です。顧客属性ごとの傾向や特定の条件下での満足度の違いを把握するのに役立ちます。具体例は、以下のとおりです。
・「性別×満足度」(男性と女性で満足度の違いはあるか)
・「年齢×満足度」(年齢層によって満足度の違いはあるか)
・「サービス利用頻度×不満点」(ヘビーユーザーは何に不満を感じやすいか)
「20代は比較的満足度が高いが、40代は低評価が多い。40代向けのサービス改善が優先課題である」といったような二軸での分析ができます。
■ポートフォリオ分析
ポートフォリオ分析とは、 顧客が重要だと考えている項目と実際の満足度を比較し、改善すべきポイントを明確にする分析手法です。縦軸「重要度(顧客がどれだけ重要視しているか)」横軸「満足度(現在の評価)」の2つの軸で考えます。
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満足度 高
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満足度 低
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重要度 高
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維持すべき強み(例:カスタマーサポートの対応、商品品質)
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最優先の改善点(例:配送スピード、価格の適正性)
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重要度 低
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マーケティング活用(例:デザイン性、パッケージの魅力)
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優先度低(例:サイトのデザイン、販促イベント)
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上記のような場合は、重要度が高いのに満足度が低い項目を最優先で改善します。
顧客満足度調査(CS調査)の結果活用例

「アンケートを採ったけど、どう活かせばいいのかわからない」という悩みを抱える企業は少なくありません。顧客満足度調査(CS調査)は、結果を分析し、具体的な施策につなげるのが重要です。本章では、調査結果を最大限に活用する方法を紹介します。
定期的な調査の実施
顧客満足度調査(CS調査)は、一度実施するだけではなく、定期的に継続するのを意識しましょう。長期的にデータを蓄積すれば、トレンド分析にも役立ち、より効果的な改善施策につなげやすくなります。
新しい施策を導入した際は、それに応じた質問を追加し、改善の効果を測定しましょう。たとえば新たなカスタマーサポート体制を導入した場合、「対応のスピードや質に満足していますか?」といった項目を追加し、施策の影響を評価します。
顧客満足度の改善施策の立案・実行
顧客満足度調査を実施したら、改善施策の立案・実行をしましょう。
たとえば「価格が高い」という不満が多い場合は、割引キャンペーンの実施やポイント制度の導入、コストパフォーマンスを強調したマーケティングを行います。
また、「カスタマーサポートの対応が遅い」という意見が多い場合は、AIチャットボットの導入、FAQページの充実、対応フローの見直しなどを検討するべきです。
顧客の声を分析しつつ、的確な施策を打ち出し、サービスの品質向上やロイヤルティ向上につなげましょう。