ニッチャーとしての戦略を成功させるコツとは?
ライター:株式会社ネオマーケティング
公開日:2022年07月11日
| 更新日:2024年10月22日
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マーケティングリサーチ
「ネオマーケティング」ライターチームです。
経営における地位別戦略は、リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーの4つに分類できると、米国の経営学者フィリップ・コトラー氏は述べています。ここでは、4つの地位戦略のうち、ニッチャーに焦点を当てて解説していきます。
ニッチャーとは?
ニッチャーは、ニッチ市場において成功している企業のことです。米国の経営学者として知られるフィリップ・コトラー氏の提唱した競争地位別戦略における分類の一つであり、専門知識や技術力を活かし、大手が興味を示さないような隙間市場(ニッチ市場)で独自に成功を収めている企業を指します。
●高い専門性によって他社参入を防ぐための戦略
競争地位別戦略では、企業の分類をリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの4つに分類し、それぞれの地位に合った戦略目標が示されています。
上図のうち質的経営資源は、技術力やブランド力を表し、量的経営資源は生産規模や資金力などを表します。
・リーダー
全方位型のリーダーは、いわゆるブランド力や資金力の大きい企業のことで、最大の市場シェアを誇るナンバーワン企業です。「業界トップ」と呼ばれるような企業でもあり、その名のとおり市場のけん引役も担います。
・チャレンジャー
生産規模や資金力も高くリーダー企業を追随する地位にいる企業のことです。しかし、技術力や独自性などが劣っているため、競争地位別戦略では差別化戦略を駆使することが戦略目標として提示されています。リーダー企業についで二番手に位置する企業がこれに該当します。
・ニッチャー
生産規模や資金力ではリーダーに及ばないものの、独自性を武器にニッチ市場ではオンリーワンの地位を確立している企業のことです。これに該当する企業の戦略目標としては、隙間市場において専門性を活かした集中化戦略が必要で、これにより規模の小さな企業も生き残りを図れます。
・フォロワー
生産規模も資金力も小さく、さらに技術力やブランド力なども乏しい、リーダー企業とは対極の地位にいる企業のことです。独自性も優位性もないため経営的には非常に不安定なポジションでもあります。市場では他社の模倣を戦略とすることで収益性アップを狙うことになりますが、ライバルが非常に多いのもこのグループの特徴です。
●ニッチ市場=小さい市場ではないのが魅力
ニッチ市場と聞くと、非常に小さいイメージを抱いてしまうかもしれませんが、必ずしもそういった意味ではありません。大手があまり注目しない穴場的な「隙間市場」を上手に活かし、得意な分野(技術力や独自性)で収益増を図れるのがこの市場の魅力でもあります。たしかに市場規模は狭いですが、その分野では大きなシェアを占めることが可能です。他社と市場がかぶることもないために戦略を立てやすく、経営資源を集中できます。
ニッチャーのメリット
ニッチャーは、特定の市場で地位を確立できるため、その分野に限ってはリーダーと同質の戦略を取ることもできます。さらに、競争の少ない市場だからこそトップを狙いやすい点もメリットです。
●自社の土壌で勝てる環境を作れる
大手でもカバーすることが難しい市場で、得意とする技術力や独自性などを発揮できるのがニッチャーの強みです。マーケット規模こそ狭くても、その市場をけん引できるリーダーになれます。経営資源が乏しくても、まさに「自社の土壌で勝つ」ための環境を作れるのです。
●市場が狭いからこそ競争率が低い
あえてニッチな隙間市場を選ぶことは、少ない経営資源をそこに集中化させ他社との直接的な競合を避けるという、戦略の一環でもあります。だからこそ、競争率の低い隙間市場においてけん引役になれるわけですし、高収益化も夢ではありません。
ニッチャーとしてのリスクもある
ニッチな隙間市場においてトップを取れれば高収益化への可能性も広がりますし、成功事例として企業のノウハウを蓄積していくこともできます。しかしその反面、ニッチャーならではのリスクが伴うこともまた知っておかなければなりません。
●市場の変化によって消滅するリスク
ニッチとは文字どおり「隙間」を意味します。つまり、市場の変化によってはその隙間がなくなってしまう可能性もあるのです。隙間がなくなるとは、つまりはその市場が消滅してしまうことです。隙間市場がなくなれば競合企業も次々と現れますので、激しい競争に巻き込まれてしまうリスクもあります。
これまで他の追随を許さないほどの技術力や独自性があったとしても、技術革新によって他社からそのハンディを埋められてしまえば、せっかくけん引役として引っ張ってきた市場を席巻されてしまう恐れも十分にあるのです。
●ニッチ市場の消滅によって大手が参入するリスク
そして、ニッチ市場がニッチな存在でなくなって市場が拡大してしまえば、今度は大手の参入リスクも待ち受けています。技術革新によって参入の障壁が下がれば、高い資本力とブランド力を武器に大手企業が難なく参入できてしまうでしょうし、これまで後塵を拝してきた他のニッチャーが続々と参入してくることも大いに予測できることです。
それによる競争激化によってこれまでの地位が脅かされ、ついにはトップシェアの座を奪われてしまう可能性すらあります。
ニッチャーとして成功する方法とは?
ニッチャーとしての戦略は、どちらかといえば大手よりも資本力やブランド力で劣る中小企業が取るべき選択肢ですし、ニッチ市場で収益拡大を上手に図ることさえできれば、企業基盤を強化し他の市場にも打って出られるだけの体力をもつことも可能です。
そのためにも、ニッチャーとして成功する方法についても理解しておくことが大切です。
●ニッチ市場を見つけてニッチ・トップを狙う
ニッチャーとして成功するには、「何をおいてもこの分野では絶対に負けない!」という市場を見つけることからスタートです。とはいえ、そう簡単にニッチ市場を見つけられたら苦労はしないというのもまた事実です。そのためにも、ニッチ市場の見つけ方としてのヒントを参考にすることをおすすめします。
大手は関心がなくても自社にとっては魅力を感じる市場
市場確保が面倒で手間がかかる分野
不採算性が高いものの自社のやり方でなら採算性が取れるかもしれない市場
これらはあくまでもニッチャーになるためのヒントでしかありませんが、いずれにしてもニッチャーとしての成功を考えているなら常にニッチ・トップを狙い続ける覚悟が重要です。
●ニッチ市場の見つけ方
では具体的に、どのようにすればニッチ市場を見つけられるのでしょうか。実は、それは意外と難しいことではありません。目の前の社会に埋もれた声を聞くことで見つけられます。
何に困っているのか、どんなことに不便や不満を感じているのか――。そうしたことに耳を傾けることによって、ニッチ市場を掘り起こせます。
そしてその解決策を見出して商品化やサービス化を進め、さらには採算性も取れると判断できれば、それがニッチ市場となるのです。
●リスクに備えて複数のニッチ市場に参入しておく
ニッチャーには、一つだけの市場で戦う「単一ニッチ戦略」と、複数の市場をもつ「複数ニッチ戦略」の二種類があります。先述しましたが、ニッチャーは技術革新などによって市場が消滅してしまうリスクがありますので、できることなら複数ニッチ戦略を取っておいた方がリスクを分散できます。
自社の技術力や独自性を活かせなければニッチャーにはなれないため、複数のニッチ市場を見出すのは難しいと感じてしまうかもしれませんが、単一よりも複数の市場において他社との差別化を図っておくと「生き残り」という点でも有利になります。
まとめ
量的経営資源が大手企業に劣っていたとしても、ニッチャーとしてニッチ市場での集中化戦略を図れれば、質的経営資源においては大手に負けない収益性を得られます。市場の変化によってニッチ市場が消滅してしまうリスクはありますが、それでも複数のニッチ市場を確保することでリスク回避も可能です。ニッチャーとしての道を選択することは、独自路線を活かして市場で生き残っていくための重要な戦略としても位置付けられるでしょう。
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