スクリーニング調査の設計Tips
繰り返しになりますが、スクリーニング調査とは、「本調査に回答する人を抽出するための、前段部分となる調査」であると言えます。
ただし、スクリーニング調査をただ本調査回答者の抽出用に設計してしまっていると、100%存在意義(スクリーニング調査の調査目的)は達成させられていますが、データ活用の視点では改良の余地がある可能性が高いのです。私たちが確認する内容を今回は3つピックアップし、以下に記載致します。
ケース① 【本調査通過者でない回答者の有効利用】
- 事象 -
もしも、あなたが商品の売上の伸長に悩んでいて、市場把握をしたいとしたら、アンケートの本調査では商品Aのユーザー実態について調査したいと思うでしょう。
このような場合では、スクリーニング調査においては、本調査へ回答させる商品Aユーザーしか通過しないようにすることが一般的です。しかしこれだけではせっかくスクリーニング調査を実施するのにアンケートをフル活用できていないかもしれません。
- 解説 -
データをより価値があるものにするための手段の1つとして、スクリーニング調査において商品Aの非ユーザーへの設問を考えてみましょう。これは商品Aについてより深く分析をすることを目的とします。
例えば商品Aの非利用理由や、デモグラフィック情報など、ユーザーと非ユーザーを比較できるようになります。非ユーザーのデータを取得し違いを見ることで、ユーザー像を浮き彫りにするようにスクリーニング集計のデータを活用することができます。※スクリーニングのデータは別途費用が掛かることもございますのでその点はご留意ください。
スクリーニング調査は配信対象となった回答者全員が回答する部分です。回答者が本調査通過しないことが判明する設問では、回答をした直後にその回答者を回答終了させる(以降の設問に回答することがなくアンケートが閉じられる)ことが一般的です。しかし上述のように、調査終了対象に他の設問にも回答して欲しい時は、それらすべての設問に回答させてからスクリーニング調査への回答が終わるように設計します。
本調査へ通過しない回答者のデータは、設計によっては決して無駄ではなく、むしろ本調査の結果をより強化できるデータが取れたり、比較対象として利用できたり、などと活用できる場合もまた多くあるのです。
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ケース② 【スクリーニングデータの属性の偏り】
- 事象 -
スクリーニング調査部分の設問を最大限有効活用して、結果を集計してデータを確認できるとしましょう。それでもまだ集計の確認時に注意が必要です。そのスクリーニング集計が、市場実態そのままを表していない可能性があります。
なぜ、そのようなことが生じるかというと、本調査の設計において回収割付を設定することがよくあると思いますが、その割付を達成するように配信をした結果、スクリーニング調査部分のデモグラフィック属性に偏りが出る場合があるためです。(このような場合のスクリーニング集計は、特にそのGT表(全体集計)の結果を解釈する際にはとても注意が必要です。市場を代表していない、なにかもわからないデモグラフィック属性の構成比になっている集団を分析していることになるのです。)
例えば、とあるスクリーニング調査が、男性で100%だが女性で10%しか通過しないアンケートであったとしましょう。この場合スクリーニングの回収数は女性が男性の10倍の数になってしまいます。これは予め出現率が読めないような通過条件で調査した場合に生じがちです。
また例えば、女性20代の本調査回収数のみが不足した場合は、他の性年代への配信はせずに”女性20代だけ”にスクリーニングを追加で配信し、本調査割付を満たすまで女性20代だけデータが増え続ける場合もあります。実態と調査ターゲットがズレていた場合に生じがちです。
これらの場合のスクリーニング調査のGT表(全体集計)には、意味がありそうでしょうか…?こういった「本調査対象が属性ごとにどのくらいいるのか(量や割合が)見当もつかない」際には、スクリーニングの調査結果から市場の代表性が失われることがあります。
現実の消費者の構成からはかけ離れた構成比でスクリーニングデータが作成されても、そのデータは活用しにくくなってしまいますよね。それは非常にもったいないです。
※補足:
集計表を確認する際には、回収したデータ全体の構成比が調査対象の母集団の縮図になっていないと、全体集計を見る意味が薄れてしまうことを知っておきましょう。ただし特定の回収条件ごとの比較が主目的であるなど、理由がある場合はその限りではありません。
例えば、男性90%、女性10%の会社で社内アンケートを取ったとき、回収したデータの内訳が男女比5:5であったら活用しにくいですよね?(なぜならば、本来よりも女性の意見が強く反映されすぎてしまっているからです。)同様のことが、アンケート調査の現場でも生じていることがあるのです。
- 解説 -
このような事態の避け方としては、①スクリーニング割付や、②本調査の自然回収化、があります。どちらも本調査対象の出現率の見込みが立たない場合に、設計前に必要有無を確認することを推奨いたします。
実はスクリーニング調査においても割付を設けることが可能な場合があります。スクリーニング調査の回収数の割合を決めておけば、費用増にはなりますが上記の例のような極端な回収にはなりません。
例えば、スクリーニング回収における性年代の回収比率を固定します、一部のスクリーニング割付の回収が多く必要になった場合は、同様に他の割付についても(既に本調査割付が回収完了していても)回収比率を担保するように追加回収します。そうすることでスクリーニング集計における市場の代表性が失われなくなります。
または、本調査の割付をなくし、あくまでSC結果から自然と回収できた分のみ納品とすることも有効です。例えばスクリーニング回収数を1万に固定し、その内訳を日本人人口動態に合わせて回収すると、市場の代表性は失われずに分析できます。※回収数減により本調査内容が分析できなくなると本末転倒ですので、慎重な判断が必要です。
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ケース③ 【”全体”の誤認】
- 事象 -
スクリーニング調査を配信するモニターの条件設定に注意した方が良い場合があります。例えば本調査回答条件が子持ちかつ商品Bユーザーである場合に、スクリーニング調査への配信は、そもそも子持ちにしか行われないことが一般的です。
よってスクリーニング集計における”全体”は実は子持ちに絞られていることになります。この時、商品Bの利用率が高かったとしましょう。それはあくまで「子持ちには」利用率が高いということですので、市場規模を分析する際には「子持ち」の人口を分母にして計算する必要があります。
この時に、例えば日本人口全体の人口動態を基にして計算をしてしまうと、うまく商品Bユーザーの出現率を算出することができません。そのような状態で会社の意思決定をするのは憚られますね。
- 解説 -
どのようなアンケート調査であっても、その”データの全体”が指す内容が、果たしてどのような集団を意味しているのか、必ず整理するようにしましょう。考えることが難しいアンケートの場合は、調査会社と考え方の相談をされると良いでしょう。また、スクリーニング集計を確認する必要があるアンケートを設計されている場合は、配信属性についても念のため確認しておくと良いかもしれません。
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おわりに
いかがでしたでしょうか?スクリーニング調査とは、必ずしも本調査への通過条件となる回答者を絞り込むためだけのものではない視点をお持ちいただければと思います。
また、回収結果に著しい偏りが出ないように注意する視点や、分析の際の分母に注意する視点があると良いでしょう。スクリーニング調査の特性をよく理解されたうえで設計できると調査の質が高まりますね。
もし、今回お話したような内容がまったく意識されてなかったアンケートを実施していた場合には、ひょっとしたら市場の実態を分析しているつもりで、より頓珍漢な意思決定をしてしまうことにも繋がっていたかもしれません。
※あくまでスクリーニング調査部分のみでの話となります。本調査内容についてのデータはうまく活用されていることでしょう。
アンケートのスクリーニング調査部分がより良いものに昇華されれば、今まで以上に良質なデータが得られ、良い分析ができ、ひいてはあなたの事業の成功に繋がっていくでしょう。
しかし、このような内容はあなたではなく、代わりにネオマーケティングの運用担当者が考えますのでご安心ください。調査票の監修時には、調査目的を達成するのみ以外の視点からもご提案やご確認をさせていただいております。
最後にスクリーニング調査に関連するコラムをご紹介いたします。こちらもぜひご覧ください。
「スクリーニング調査の意味とは?失敗しないための注意点、質問事例ご紹介」
https://corp.neo-m.jp/column/marketing-research_081/