多くの商品開発担当者にとって、自社の商品が市場に受け入れられるかどうかや、改善すべき点がないかという点は重要な課題です。そういった課題に対して解決策となる選択肢の1つがホームユーステストです。ホームユーステストが重視される理由と、調査を成功させるためのポイントを紹介します。
ホームユーステスト(HUT)とは
ホームユーステスト(HUT:Home Use Test)とは、対象者に商品を送り一定期間使ってもらい、リアルな感想や評価を集める調査方法で、アンケート調査の一種です。他の調査と比べて対象者への謝礼などの費用はかかりますが、費用に見合った効果があるとしてさまざまな企業が採用しています。
ネオマーケティングでは、ホームユーステスト(HUT)の実施をトータルでご支援しています。
実施をご検討の方は、下記サービスページをぜひご覧ください。
>ホームユーステストのサービスページをみる
ホームユーステスト(HUT)のメリット
まず始めに、ホームユーステストのメリットを3つ紹介します。
●本音に近い感想が聞ける
ホームユーステストの特徴は、対象者が実際の使用環境に近い状態で試飲・試食・試用する点です。実際の使用環境における商品の良さ、必要な機能、不要な機能などを知れるのです。たとえば、お風呂あがりに使われることが多い化粧水や美容液などは、自宅で試用されてこそ意味があります。
●継続利用ならではの意見が聴取できる
ホームユーステストに近い調査方法に「会場調査」という方法があります。会場に調査対象者が集まり、その場で商品を試用してもらう調査方法です。実際に使うという面はホームユーステストと同じですが、会場調査がその場で試用して終わるのに対して、ホームユーステストは複数日にわたって継続利用をしていただきます。そのため、飽き・耐久性といった、継続利用ならではの得られる情報を集めることができます。
●ファンになる可能性がある
調査期間中に商品を継続利用していただくことで、調査対象者が商品のファンになる可能性があります。繰り返し使用していただくことで商品の良さを知り、市場投入後に商品を購入したり、商品の良さを積極的にプライベートで発信してくれるかもしれません。もちろん対象者にとって価値ある商品であることが前提ですが、開発に参加したことで、思い入れが強くなることもあります。ただし、このメリットは必ず享受できるわけではなく、影響力も微々たるものなので、過度な期待は避けましょう。
ホームユーステスト(HUT)のデメリットと対策
次に、ホームユーステストのデメリットと対策を紹介します。
●調査対象者が途中で離脱する可能性がある
調査が一定期間にわたるため、途中で商品の試用を放棄する調査対象者が一部発生する可能性があります。このリスクを想定して、適当な謝礼の用意や、調査人数にバッファを設けるなどして対策をとりましょう。
●商品の発送・梱包・返送など費用、手間がかかる
調査人数や発送する商品によって、発送数や梱包形態などが大きく変わります。(例えば、割れ物は厳重に梱包して段ボールで発送するなど、手間と費用がかかります)
予め、梱包材や、発送作業の手間がどのくらいかかるのかを計算しておきましょう。
●アンケートの回答が正確でない可能性がある
調査対象者によっては、実際に商品を試用していないが、謝礼目当てでアンケートに回答する方も一部いらっしゃいます。実施側で様子を確認することができないので、調査期間中は確認方法がありません。アンケートの回答結果を集計する前に、1人1人の回答結果を確認し、適切な回答か否かを判断する必要があります。
ホームユーステスト(HUT)の流れ
ホームユーステストは、他の調査手法と比べて、比較的手間がかかります。ここでは、実施の流れを8段階に分けて整理します。
- 目的の整理
- 製品提示方法の決定
- 評価方法の決定
- ターゲットと使用環境の設定
- スクリーニング調査の実施
- リクルーティング
- 商品発送
- アンケート集計
それぞれについて解説します。
①目的の整理
ホームユーステストは目的によって、「対象者に商品を幾つ送るか」「どのくらいの期間利用して頂くか」「比較として、競合商品などを送付するか」といった、実施方法が変わります。
・ホームユーステストの目的例
- ブランド効果やパッケージを抜きにした、商品自体そのものの評価
- 競合製品と比較利用して、どのような違いがあるのか
- 複数試作品から市場投入する商品を選びたい
②製品提示方法の決定
対象者への製品提示方法によって、ホームユーステストは「ブラインドテスト」と「ブランデッドテスト」に分かれます。
・ブラインドテスト
ブラインドテストとは、客観的な評価を得るためにブランド名を隠して行うテストです。ブランドによる先入観を排除して、商品の性能や品質そのものの評価を得られます。
・ブランデッドテスト
ブランデッドテストとは、対象者にブランド名を開示して、ブランドイメージを含めた評価を集めるテストです。また、同じ商品でブラインドテストを並行して実施、評価を比較することで、ブランドイメージの効果を確認する方法もあります。
③評価方法の決定
評価方法は主に「モナディック法」と「直接比較法」の2種類があります。
・モナディック法
モナディック法は、評価する商品を1つに限定して単独評価(絶対評価)する方法です。対象者は1つの商品に集中して使用感を確かめるため、商品の性能や品質に関する詳細な感想を集められます。
・直接比較法
直接比較法は、複数の商品を同時に使って比較する評価方法です。商品間の優劣をつけたい場合に用います。中には、商品1つ1つ1つを順番に絶対評価した後に、比較評価する「シークエンシャルモナディックテスト」と、1つの商品を絶対評価した上で他の商品を相対評価する「プロトモナディック法」があります。前者は複数の商品に対する絶対評価と相対評価の両方を得られる点が、後者はすでに出ている商品との比較ができる点がそれぞれメリットとして挙げられます。
④ターゲットと使用環境の設定
これはホームユーステストに限ったことではありませんが、調査対象者は商品のターゲットに合致していることが大前提です。加えてホームユーステストにおいては、性別や年齢、居住地といった属性情報の他に、調査する商品カテゴリーのユーザーか否か、生活環境が商品利用に適しているか、などといった点も情報として必要です。
⑤スクリーニング調査の実施
調査の詳細が決まったら、次は調査対象者を見つける事前調査「スクリーニング調査」を行います。調査会社は「モニター」と呼ばれるアンケート調査に協力する会員を有しており、その中から条件に合致する人を探すわけですが、ホームユーステストの場合は、属性情報だけでなく細かい使用環境が条件設定されるため、モニターが事前に調査会社に登録している属性情報だけではスクリーニングしきれません。そこで別途「スクリーニング調査票」を作成しスクリーニング調査を実施することで、最終的な調査依頼対象者を抽出します。ここでの調査では、条件に合致するか否かだけではなく、「商品発送して一定期間利用して頂けるか」といった許諾を聴取する必要もあります。
>スクリーニング調査に詳しい記事を読む
⑥リクルーティング
次に、スクリーニング調査結果を基に、条件に合致していて、且つ調査に協力いただける対象者に対して、架電やメールなどで直接連絡し、最終確認をする、いわゆる「リクルーティング」を行います。リクルーティングには、「本当に条件に合致しているか否か」といった最終確認をする要素もあるため、非常に重要なプロセスです。
⓻商品の発送
リクルーティングで発送対象者が決まったら、試用いただく商品に加えて、調査への参加許諾書類や試用案内書、アンケート書面等を同封して対象者宛てに発送します。ブラインドテストを行う場合は、発送するパッケージや商品等に自社名やブランド名の記載がないか確認しましょう。また、試用期間終了後は、商品を返送していただく場合がありますので、「着払い発送伝票が貼られた梱包」も忘れずに用意しておきましょう。
⑧アンケート集計
調査対象者からアンケートが集まってきたら、次にアンケートの集計・分析を行います。アンケートの集計方法には、主に単純集計(GT)やクロス集計などがあります。また、ネットアンケートの場合は集計ツールを用いて比較的短時間で集計可能ですが、紙アンケートの場合は、手作業で集計する必要があります。
ホームユーステスト(HUT)の注意点
ホームユーステストの流れについて解説しましたが、その工程の中で注意する点がいくつかあります。ここでは、特に注意する点を3つ紹介します。
●十分なサンプル数の確保
先述したデメリットでも挙げましたが、調査対象者が途中で調査を放棄したり、実際に試用していないのにアンケートに回答する可能性があります。また、調査結果に信ぴょう性を持たせるという意味でも、サンプル数は十分に確保する必要があります。
●分かりやすい試用案内書の作成
試用案内書は、調査対象者に試用していただく商品の試用方法をまとめた書類を指します。調査対象者が理解しやすいように、専門用語はできるだけ避ける、画像やイラストなどを用いるなどして、誰が見ても共通の認識を持つように工夫をして作成することを心がけましょう。
●案内書の作成
調査に協力していただくにあたって、調査対象者に厳守してほしいことなどを記載した書類を用意しておきましょう。例えば、市場投入を前提とした試作品の場合は、情報漏洩防止は必須です。ブランド名を開示する場合は特に注意が必要です。例えば、調査対象者がSNSを利用して「●●●(ブランド名)でこんな商品のテストをしている」などと投稿する可能性もあります。
ホームユーステスト(HUT)×インタビュー調査
自宅でテスト品を試用してもらうホームユーステストに、定性的なインタビュー調査を組み合わせることで、定量と定性、両方のデータを取得することができます。テスト品についての使用感、感想、評価も、使用してすぐインタビューするからこそ詳しく話してもらうことができます。
オンラインでのインタビューを行い、インタビューの中で、送付した製品を試飲・試食・試用してもらうことで、画面越しで対象者の試食・試飲している様子を見ることができます。 この方法であれば、調査環境をコントロールしづらいという課題も解決できるでしょう。また、ホームユーステストのアンケート調査の自由記述で記載された回答について、その場で深堀りして聞くことが可能です。
>インタビュー調査に詳しい記事を読む
まとめ
ここまで、ホームユーステストのメリット、実施の流れ、成功させるポイントについて紹介しました。商品に対する評価や使用感、他商品との比較について、リアルな意見を聴取できる手法です。実施の際には、どんな目的で、どのようにして、誰に対して調査を実施するのか、しっかりと整理をしましょう。。ネオマーケティングでは、ホームユーステストの調査設計からリクルーティング、分析、までトータルでサポートをしております。実施をご検討される際は、ぜひご相談くださいませ。
>ホームユーステストのサービスページをみる