ファネル分析とは消費者行動を階層に分けて停滞、あるいは離脱するポイントを特定するための手法です。
ボトルネックと呼ばれる停滞箇所を見つけることで、戦略の見直しや改善策を打ちだして問題解決を目的とした分析方法として古くから用いられてきました。
今回は「ファネル分析」について、基礎知識から種類、活用例まで詳しくご説明いたします。
ファネル分析とは
「ファネル分析」とは、消費者の購買行動プロセスをファネル(漏斗:ろうと)に見立てて、「認知」「経験」「リピート」などの階層に分けて分析することで、停滞箇所(ボトルネック)はどこかを特定する分析手法です。
以下の図でも、ファネル分析の例をご説明しています。
この例の場合ボトルネックは「経験」の階層にあり、コンバージョンレートを高める必要があることが分かります。
このように、ファネル分析を行うことでボトルネックが正しく把握することができ、ズレのないアクションプランを立てることが可能になります。
施策を実行後も同指標を継続的に取得すれば、
・施策の評価
・自社ブランドの長所と短所
が把握できます。
ファネル分析によってボトルネックが発見できれば、どの部分でつまづいているのかが把握できるため、マーケティング施策の作成や見直しに役立ちます。
ファネル分析の種類について、以下から見ていきましょう。
パーチェスファネル
パーチェスファネルは購入をゴールとして、消費者の行動を以下のように分けた分析です。
・認知
・興味関心
・比較検討
・購入
消費者の行動を同じように分類をしているAIDMAを軸にしたとされ、一般的に「ファネル分析」というとパーチェスファネルを指すことが多いです。
ただ、消費者の行動様式が変化した現在には適さないと言われることも増えてきました。
その理由については、後程詳しくご説明します。
ダブルファネル
ダブルファネルマーケティングとは、認知~購入の先の消費者行動まで分析するための手法です。
購入後の消費者行動を、継続・紹介・発信に分けたファネルをインフルエンスファネルと呼びます。
スマホの普及で口コミサイトやSNSのレビューの影響力が強くなり、広告の役割を果たすこと、リピーター獲得に繋がることから近年は多くの企業が購入後の消費者行動の分析に力を入れています。
パーチェスファネルに、このインフルエンサーファネルを組み合わせたのが「ダブルファネル」です。
画像引用元:マーケティングファネルで顧客の動きを見る | コンテンツマーケティングの教科書 | 日経BPコンサルティング
・購入率(コンバージョンレート)
・継続率(リテンションレート)
・認知度
の向上に役立つと考えられます。
具体的なマーケティング施策としては、購入後のアフターケア拡充やターゲットに合ったインフルエンサーの選定などが挙げられるでしょう。
ルーピングファネル
これまでのファネル分析は、消費者行動を直線的に分類していました。
しかし、オンラインでの買い物はもっと複雑な紆余曲折を経て行われることが多いです。
画像引用:How to Master The New Digital Marketing Funnel ᐈ Case Study
たとえば1足の靴をネットで買いたいと考えた時、
ブランドや商品名で検索(認知をスキップ)
↓
複数のプラットフォームやネットショップ、価格比較サイトで並行して情報収集
↓
お店の口コミやレビューを公式、SNS、匿名のサイトなど複数チャネルで確認
↓
値段やサービスを考慮してベストなお店で靴を購入
↓
次回使用時のクーポン付与/期間限定のセールのお知らせを受け取る
↓
購入する物を選ぶ(検討のスキップ)
といった、従来のセオリーから外れた行動も一般的です。
特にECの需要がかつてないほどに高まる今、より時代に即した分析を行いたい場合にも最適かもしれません。
マイクロモーメンツファネル
マイクロモーメンツファネルとは、Googleが提唱した「いますぐ〇〇したい!」という瞬間的な願望と反射的な行動を意味する「マイクロモーメント」を意識した分析手法です。
画像引用元:マイクロモーメントを活かす 5 つのポイント - Think with Google
今や1日平均150回もスマホをチェックしていると言われ、購入に至るまでの消費者の行動プロセスはよりスピーディーに、より複雑になっています。
この動きをマーケティングに活用するためには、ユーザーの検索タイミングや場所について注視する必要があります。
● いつ
● どこで
● なにを
● なぜ
これらを見極めることは、ボトルネック(停滞箇所)の改善にも繋がります。
「階層ごとにどのように検索語句や行動が変わっていくのか」など、パーチェスファネルとマイクロモーメントを組み合わせる考え方もあり、目まぐるしいスピードで変化し続けるオンライン上のニーズを掴むのに役立つでしょう。
ファネル分析が古いって本当?
ビファネル分析は、「古い分析」「時代に合わない」という意見も見受けられます。
一体なぜそのような指摘がされるのか、本当にファネル分析は古いのかについて考えていきましょう。
消費者の行動変化
ファネル分析の元となったAIDMAの法則は、1920年代に提唱されました。
AIDMAの法則は、下表のように消費者の行動プロセスを5つの段階に分けたものです。
AIDMAの法則
AIDMAの法則 |
A
|
Attention(注意を引く)
|
認知段階
|
I |
Interest(関心を持つ) |
感情段階 |
D |
Desire(欲求を持つ) |
|
M |
Memory(記憶する) |
|
A
|
Action(行動する)
|
行動段階 |
当時は実店舗販売が前提だった上に、「実際の消費者行動は直線的とは限らない」という指摘もありました。
その後ネットショッピングの普及した2004年は、日本の電通などがAISASというモデルを提唱し、購入後の行動もマーケティングに重要であることを提示したのです。
A
|
Attention(注意を引く)
|
I |
Interest(関心を持つ) |
S |
Serch(検索する) |
A |
Action(行動・購入・契約) |
S
|
Share(口コミ・感想・評価を共有する)
|
2010年代に入りスマートフォンが爆発的に普及すると、複数の工程を直線的に辿るのではなく、段階をスキップしたり、また前の段階に戻ったり、いきなり行動したりと複雑なプロセスを踏む消費者が増加。
こうした行動プロセスの変化やニーズの細分化により、「消費者行動の分析としては時代に合わないのでは?」という意見が増えたのだと考えられます。
その場合は、ルーピングファネルやマイクロモーメントを使用した分析など、ターゲットに即した分析を取り入れましょう。
近年ではSNS主流のデジタル時代に沿った、5A理論も人気があります。
5Aはアメリカの経済学者であるフィリップ・コトラー氏と、イワン・セティアワン氏らによって提唱された理論で、日本でも「今」のマーケティング分析として広く用いられています。
参考:マーケティング4.0に必要な5Aの活用 イワン・セティアワン氏講演:日経クロストレンド
BtoCかBtoBによって最適な内容は異なる
先述の通り従来のパーチェスファネルなどは、今日の消費者行動分析に向いていない
部分もあります。
しかし、パーチェスファネル分析自体が完全に過去の産物かと問われると、否定せざるを得ません。
ファネル分析が有効とされているのがBtoBビジネスです。
ビジネス用プロダクト・サービスもオンラインで情報を集めることが多いですが、組織として契約するため個人消費者のように即決断するわけにもいきません。
情報収集・比較・検討と、プロセスを踏んで行動に移すBtoBにおいては、ファネル分析が有効だと言えます。
長引くコロナ禍で、営業とクライアントの接触が減少している中でファネル分析を用いたマーケティングはむしろ存在感を増すかもしれません。
ファネル分析結果の活用
ファネル分析で自社ブランドのボトルネックは“認知→経験(トライアル)”と判明した場合、どのような対策を取るべきなのでしょうか。
ボトルネックが分かったら課題を設定し、自社ブランドの経験者と非経験者を以下のように比較・分析しましょう。
例えば、
・自社ブランドの経験者は非経験者に比べ、●●を重視していた
・自社ブランドの経験者は非経験者に比べ、●●のイメージを持っていた
上記結果から、経験者になった要因を把握し、“認知→経験”させるためのアクション立案に活かします。
このように、停滞した階層ごとに有効な対策を立てる必要があります。
トップオブファネル(Top of the Funnel)
トップオブファネルは、階層のトップ=プロセスの初期段階を意味します。
この段階で停滞している場合は、認知を高め興味を引くために情報コンテンツの拡充に務めましょう。
● SEO対策
● SNSでの発信
● 動画コンテンツの発信
● 不特定多数に向けた広告
● インフルエンサーマーケティング
などが施策として挙げられます。
ミドルオブファネル(Middle of the Funnel)
ミドルオブファネルは、中間の情報段階を指します。
この段階にボトルネックがある場合は自社ブランドを認知しており、興味はある段階なので見込み客を取り込むための施策を行いましょう。
● SNSでの交流
● パーソナライズに特化したSEO対策
● イベント開催
● トライアル
などが例として挙げられます。
ボトムオブファネル(Bottom of The Funnel)
ボトルオブファネルは、購入がほぼ決まっているか既に購入した段階の顧客です。
この階層で停滞する場合、
● 購入する決め手にかける
● リピートに至らない
などの問題が考えられます。
期間限定の割引オファーや、リピート特典、定期的なセールやクーポンの通知などの施策事例があり、様々な分野で利用されているようです。
ファネル分析のアンケート文
最後に、ファネル分析のアンケートの一例をお見せします。
ブランドごとに、以下の内容を聴取します。
■認知
・あなたが知っているものをすべてお答えください。(お答えはいくつでも)
・ブランド/プロダクトを知ったきっかけを選んでください。(SNSメーカー公式HP/検索エンジンなど選択肢を複数表示)
・商品名(またはブランド名)は知っていましたか?(認知度の選択肢を表示)
■興味・関心
・商品名(またはブランド名)についてどのようなイメージがありますか?(好感度の選択肢を表示)
・商品/サービスを利用する場面(もしくは頻度)について答えてください(使用方法や頻度の選択肢を表示)
・いつもこのジャンルの商品はどこで購入しますか?(店舗/大手EC/自社チャネルなど)
■比較・検討
・この製品と候補になった他社製品はありますか(競合他社の製品を選択肢で表示)
・この商品をどれくらい購入したいと考えていますか?(選択肢をチェック)
■経験
・あなたが購入したことのあるものをお答えください。(お答えはいくつでも)
・特定の製品の購入経験について選択してください(購入した/購入したことはない)
・当社の製品を購入したことがある人に伺います。満足していることを教えてください(選択肢/自由記述)
■リピート
・あなたが2回以上購入したことのあるものをお答えください。(お答えはいくつでも)
・今後も当社の製品を利用したいと思いますか?
・当社の製品、またはサービスを周囲の人やSNSで共有したことはありますか?
まとめ
本記事では、ファネル分析について解説いたしました。
従来のファネル分析はパーチェスファネルを指すことが多く、ファネル分析で表す直線的なプロセス分析はオンラインショッピングが普及した現在にはそぐわないのでは?という意見もあります。
しかし、比較的段階をしっかり踏むBtoB取引では依然としてよく用いられていますし、ダブルファネル、ルーピングファネル、マイクロモーメントファネルのように今の時代にあったファネル分析も登場しています。
ネオマーケティングでは、ファネル分析の実施から、分析結果の活用のご提案まで行っています。
マーケティング調査についてご興味のある方は、是非お気軽にお問合せください。