アンケート設問で注意すべき3つのポイント-ネオマーケティング-
ライター:株式会社ネオマーケティング
公開日:2021年06月17日
| 更新日:2024年10月24日
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マーケティングリサーチ
「新商品開発のためにニーズを探りたい」「自社商品の認知度を確認したい」「プロモーション施策の効果を測定したい」など、さまざまなケースでアンケート調査が用いられます。どんな意図で行なうにしても、有益なデータを得るためには「どう聞くか」が非常に重要となります。ここでは、アンケートの調査票設計における具体的な設問作成時の注意ポイントをまとめていきます。
設問で注意すべき3つのチェックポイント
まずは以下の設問を見てください。
一見、何の問題もないように思えるかもしれません。が、いずれも調査票作成での「失敗あるある」です。どこが問題なのか、おわかりになりますでしょうか?(できれば各設問の問題点を考えて答えを出してから以下を読み進めていただければと思います。)
Q1.あなたの収入はいくらですか?
Q2.あなたは普段どれくらい清涼飲料水を飲みますか?
Q3.この清涼飲料水の味やパッケージに満足していますか?
Q4.健康でいるために、毎日サプリメントをとることを心がけていますか?
Q5.多くの人がタバコを有害だと思っていますが、あなたはどう思いますか?
1.前提・認識・定義を明らかにする
まずは、Q1.あなたの収入はいくらですか?という設問。
この聞き方では月収なのか年収なのか?年収だとして世帯年収なのか個人年収なのかがわかりません。また、税込で答える人がいれば税抜きの額を回答する人もいるでしょう。さらに、ボーナスの扱いをどうするのかも人によって判断が変わります。聞きたい「収入」が具体的に何なのかを文言で示さないと、本来知りたかったデータ”のみ”を取得することができなくなります。
次にQ2.あなたは普段どれくらい清涼飲料水を飲みますか?という聞き方も同様に考えると、「普段」をどう捉えるのかは人によって異なります。直近1週間での話なのか?それとも1か月間なのか?はたまた1年間なのか?あいまいな期間設定にはあいまいな回答が返ってきます。(回答者に認識を委ねる形で、あえて「普段」を使う場合もあります。)
また、Q2.については、「どれくらい」というのも「量」の話なのか?それとも「頻度」の話なのか?解釈が分かれますね。設問文を読むだけで、選択肢を見なくても何について訊かれているのか、回答者全員が同じ認識で理解できる文章であることが、本来は望ましいです。おそらく回答を集計しても、意識の前提・言葉の定義が明らかになっていないことが原因で、回答者ごとにややズレが生じていることでしょう。
さらに、専門用語や業界用語など特殊な言葉使いは使わない、特別な知識がないと答えられないような質問は言い換えや注釈を補足する、といった配慮も必要です。小学生の子どもに聞いても答えることができるか?というような視点で考えてみるといいかもしれません。
2.1つの質問に1つの回答
では、Q3.この清涼飲料水の味やパッケージに満足していますか?という設問について。
何が問題なのか、おわかりになるでしょうか?こうした質問を「ダブルバーレル質問」と言います。ダブルバーレルとは「二重質問」のことで、1つの設問の中で複数の内容を聞くことを言います。
この聞き方では、清涼飲料水の味について聞いているのか、パッケージデザインについて聞いているのかわかりません。「パッケージは好きだけど味はいまいち」という人もいるはずです。「味に満足しているか?」「パッケージに満足しているか?」と分解して聞くべきです。あるいは選択肢が「味の良し悪し」×「パッケージの良し悪し」で4選択肢になっている(全ての回答パターンが網羅できている)必要があります。
Q4.健康でいるために、毎日サプリメントをとることを心がけていますか? という質問はダブルバーレル質問ではありませんし、しっかり前提が組み込まれているように見えます。
しかし、「健康でいるために」という前提を出しているため、「美容のためにサプリメントをとっている」という方がいたら、サプリメント自体は購入して飲んでいるが、ここでの回答は「NO」となるでしょう。頻度の切り口で言えば、「サプリメントは飲んでいるけど毎日じゃないんだよなぁ…」という人だっているかもしれません。
基本的には、1つの質問に対しては1つの回答を得られるよう設計することが大切で、選択肢についても回答者が適切に選べるかたちで(その設問の回答者が何も回答できない選択肢になっていないことも確認して)提示しましょう。
3.恣意的な質問になっていないか?
アンケート調査はその聞き方によって、回答を誘導することができてしまいます。ある意味、都合のいいデータを得ることも可能ではあるのですが、そのデータは実態把握に活きるものにはなり得ないことが多いことでしょう。バイアスがかからない、答えがねじ曲がってない、フラットな立場での回答が得られる設問を立てることが大切です。
その意味で、Q5.多くの人がタバコを有害だと思っていますが、あなたはどう思いますか? は、誘導質問の典型例です。タバコが有害だというのが大多数の意見であると提示することで、「NO」とは言いにくい状況を作ってしまっています。このように同調圧力をかけてしまうことがありますし、情報の一部のみを開示して誘導してしまうことがありますので、注意が必要です。
回答者の負担になっていないか?
ここまでお話したようなポイントを抑えつつ、設問内容を決めていくわけですが、調査設計をするとき念頭に置いておきたいのが、回答者が負担なく答えられるかということです。これはアンケートの調査票の設計において最も忘れられがちな注意ポイントの1つであると言えるでしょう。
大量の設問や選択肢は回答者にとって、負荷の大きい調査の筆頭と言えます。市場が細分化され、ユーザーひとりの「欲しい」単位に合わせて商品やサービスを提供していく時代になっていますが、それに伴って知りたい内容、知らなければならない内容もまた多くなっていることと思います。質問や選択肢のボリュームが増えてしまいがちなのもわかりますが、例えば選択肢を40個並べたところで、細やかに気持ちを汲み取れるかというと、決してそんなことはありません。適当な回答になってしまったり、途中で離脱してしまったりしたら、データの精度自体が落ちてしまいます。
知りたいことがたくさんあるという気持ちは理解しますが、調査を行う前に会社やプロジェクトチームの中で仮説を固めておくと、設問や選択肢の数を必要十分に抑えられるはずです。調査設計によって一概には言えませんが、設問の数は25問程度。マトリックス形式(表形式)の設問があるなら15〜20問程度が回答者の限度であると考えてあながち間違いではないと思います。
回答者の負担という意味では、「質問内容が長い」「よくよく考えないと答えられない」「同じようで少し違う問いが何度も出てくる」「複数の解釈が可能である文章になっている」といった設問にならないことにも注意が必要です。
また、マーケティングの現場では多くはありませんが、心理的負荷の高い問いかけになっていないかも確認しておきたい点です。たとえば、いじめられた経験を持つ人にいじめに関する質問をするとき、被災者に震災について聞くとき、単純に人の死や宗教についてなどは、言葉の使い方にも配慮しますし、そもそも回答にあたってそのような内容が設問に含まれていることへの許諾の取得が必要になるでしょう。
以上のように、設問ひとつを形にしていくにあたってもルールやコツがあります。ポイントを抑えて良い調査設計ができると、良いデータをとることができます。
ネオマーケティングは、専門の知識を有したスタッフが、調査の意図や目的、活用法などを確認しながら、調査票の設計・監修を行います。調査票にお悩みの方は、まずご相談ください。
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