スクリーニング調査とは
スクリーニング調査とは、大勢の母集団の中から特定の条件に当てはまる対象者を絞り込むために実施する調査のことをいいます。
「screening」には「ふるいにかけること」「選別」といった意味があり、具体的には、『■■を対象に調査したい』場合の『■■』に該当する方を探し出すものです。
実施目的
アンケート調査やインタビュー調査を実施する場合、一般的には調査会社のパネル(アンケート会員組織のこと)を利用します。
パネルにはさまざまなモニター(個々の会員のこと)が登録されていますが、調査対象の条件にあてはまらないモニターが調査に参加しても欲しい情報は得られません。
そのためパネルの中から条件に当てはまるモニターを選別し、調査依頼を行う必要があります。
この選別に必要なのがスクリーニング調査です。
スクリーニング調査は、調査に回答してもらうモニターを抽出することを目的としています。
調査対象者のみに実施する調査が「本調査」と呼ばれることから、本調査の前に実施されるスクリーニング調査は、「事前調査」または「プレ調査」とも呼ばれます。
スクリーニング調査の例
スクリーニング調査が行われる場面をひとつご紹介しましょう。
例えば、衣料用洗剤のメーカーA社が、「競合他社B社の洗剤を普段購入している」人の消費行動を調査したいとします。聞きたい内容としては、商品に対する満足/不満点や、普段の洗濯方法等の実態であるとします。
上記の目的を達成するためには、調査対象者(『■■』にあてはまる人)は、「B社の洗剤を普段使用していて、商品への満足・不満足点が存在する人」です。
「B社の洗剤を普段使用していて、商品への満足・不満足点が存在する人」をパネルの中から抽出するために、本調査の前にスクリーニング調査を実施し、使用している洗剤や、洗濯頻度、などを事前に確認します。
スクリーニング調査を通過したアンケート回答者のみ、本調査で回答してもらうことで、必要な情報が入手できます。
『●●を対象に調査したい』の、『●●』部分の条件が細かくなればなるほど、その探索作業に用いるスクリーニング設問数は増えます。
実施メリット
回答データの精度を上げられる
スクリーニング調査を行うことで、本調査の回答者を調査対象者の条件に合致する人のみに絞れます。
意図しない回答者からの情報を除くことで、より精度の高いデータの取得、意思決定につながります。
回答者の負担を軽減できる
興味関心が低いことや経験がないことについての設問が続くと、回答者は調査協力に負担を感じてしまいます。
負担を強く感じてしまうと、回答の途中離脱や適当な回答につながってしまいます。
スクリーニング調査を行い、回答者ごとに本調査の設問を適切にスクリーニングすることで、回答者の負担を軽減できます。
調査コストを削減できる
スクリーニング調査を行うことで、余計な本調査の回答者を減らすことができ、コスト削減に繋がります。
通常、調査に回答したモニターには金銭に換金できるポイントで謝礼が支払われます。
謝礼の額は、回答した設問数や回答にかかる時間などの負荷に比例します。
スクリーニング調査で本調査の回答者を対象条件に合致する対象者のみに絞ることで、本調査の条件に合致しない回答者にはスクリーニング調査までの謝礼を支払い、本調査の回答者にはスクリーニング調査と本調査を合わせた謝礼を支払うことでき、トータルでかかるコストを削減できます。
スクリーニング調査の3つの注意点
ここまでご紹介したように、スクリーニング調査は非常に便利ですが、実施にあたって注意すべき点を3つ紹介します。
●抽出に使わない設問は控える
一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)では、インターネットリサーチの品質に一定の基準を設けるべく、「インターネット調査品質ガイドライン」が策定されています。
本ガイドラインでは、スクリーニング調査において抽出に使わない設問を控えるよう定められています。
スクリーニング調査は本調査の対象者を選定する目的で行われるため、ほとんどの調査協力者がスクリーニング調査でふるいにかけられることになります。
(例えば、出現率が10%の条件に当てはまるモニター1,000人に本調査を回答させたい場合、10,000人にスクリーニング調査を実施する必要があり、そのうち9,000人はスクリーニング調査のみで終了します。)
スクリーニング調査の設問数が多いと、回答に手間がかかる一方、労力に見合うだけの謝礼を得られないため、調査協力者の非アクティブ化・退会の要因につながりかねません。
従って、抽出に使用しない設問は原則として本調査で尋ねる必要があります。
【参考】『JMRAインターネット調査品質委員会:インターネット調査品質ガイドライン』
●本調査の対象者を確実に抽出できる設問にする
スクリーニング調査では、本調査の対象となる条件を明確に定義付ける必要があります。
たとえば、本調査で「資産運用をしたいと真剣に考えている人」のみを対象にしたい場合に、スクリーニング調査に「資産運用に対する興味はありますか」という設問を設けるとします。
すると、資産運用に多少興味を持っている程度の人も、資産運用をしてはいないものの熱心に情報収集している人も、既に資産運用をしている人も「はい」で答えることになるでしょう。
このような「はい、いいえ」の二者択一で答える設問では、興味度合いに差があっても回答結果は同一となり、本調査へ進めるべき人が不明確になります。
本調査の目的を押さえた上で、可能な限り条件を詳細に定義して質問を設計することが大切です。
今回の例の対策としては、質問文を「資産運用について、あてはまるものをお答えください」として、選択肢を「現在運用している/過去に運用していたが、現在はしていない/現在運用していないが、将来的に運用を考えている」などとするのが良いでしょう。
●十分なサンプル数を確保する
スクリーニング調査を実施して調査対象者を絞るということは、当然ながら、対象者条件によって回答数が変動します。
大半の生活者にあてはまるような条件であれば(例:20歳以上60以下の男性のみ)懸念は薄いですが、反対にニッチな条件(例:犬、猫、蛇、フクロウ、ハムスターの全てを飼育している人)の場合は注意が必要です。
例えば、「●●を普段購入していて、かつ週に〇回▲▲をしていて、かつ…」といったように単純に条件数が多い場合、サンプル確保が難しくなっていきます。
また、ある特定の職業の方や珍しい資格の所有者等を調査対象者とした場合も、やはりそもそも存在する人数が少ないという点で出現率が低いため、サンプル確保が難しい場合が多いです。
前述した通り条件は明確にする必要がある一方で、十分な母数が確保できるかどうかのバランスを取ることが求められます。
スクリーニング調査のノウハウをさらに詳しく知る
スクリーニング調査の質問例
最後に、スクリーニング調査の質問文について、悪い例と良い例を用いて紹介します。
●悪い例
「直近3ヶ月でB社の衣料用洗剤をドラッグストアで購入している人」をスクリーニングにかけたいとします。
単刀直入に「直近3ヶ月でB社の衣料用洗剤をドラッグストアで購入しましたか?」と尋ねた場合、(大変残念なことではありますが)アンケート回答者の中には「この調査がB社の洗剤を直近ドラッグストアで購入している人に対して実施したい調査なのではないか」推察する方がいらっしゃいます。
その結果、実態と乖離した回答結果になり、適切なスクリーニングができません。
●良い例
このような場合には、まず「あなたが直近3ヶ月で購入したものを、以下の中からご選択ください」と尋ねます。選択肢には洗剤の他、生活必需品といえる消耗品を列挙し、複数選択できるようにしておきましょう。
次に、「購入された物の場所をそれぞれご選択ください」と質問し、チェックした品物ごとに「ドラッグストア」「コンビニ」「インターネット」など、どこで購入したのかを聞いていきます。
最後に、ドラッグストアで洗剤を購入した方に対して、「あなたが普段利用している洗剤の種類をお答えください」という質問をし、B社の製品を選択肢の中に混ぜ、複数選択できるようにしましょう。
1つの設問で2つ以上の情報を聴取するのはオススメしないという点も抑えておきましょう。