商品の使い勝手についてユーザーの声を聞くこと、商品の改善ポイントが知ることなどを目的に、マーケティングリサーチ・市場調査を実施することがあります。
しかしいざマーケティングリサーチ・市場調査を実施する際に、適切な調査方法が分からない方も多いのではないでしょうか。
マーケティングリサーチ・市場調査は大きく分けると、「定量調査」と「定性調査」の2種類に分けられます。今回は、定量調査の特徴と手法、定性調査の違いや使い分け方をご紹介します。
ネオマーケティングでは、定量調査・定性調査を調査設計から実行までご支援しています。
お困りの際はぜひご相談ください!
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定量調査とは
定量調査とは、回答ボリュームや割合が「数値データ」で表される調査手法のことで、選択肢式のアンケート調査のことを指します。どの選択肢を何人が選び、それはどの程度の割合なのかを把握できます。
定量調査の代表的な手法として、ネットリサーチ、会場調査、ホームユーステストなどがあります。
よく実施する調査テーマとして、満足度調査、ブランド調査、広告効果測定調査などがあります。
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定性調査との違い
定性調査と定量調査の違いをまとめると、以下のような表になります。
比較項目
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定量調査
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定性調査
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分析データ
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調査目的
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主な調査手法
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ネットリサーチ
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会場調査
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ホームユーステスト
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郵送調査
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デプスインタビュー
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グループインタビュー
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オンラインインタビュー
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エスノグラフィー(行動観察調査)
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分析データの違い
定性調査がインタビューなどで得た「言葉」や「行動」などの定性情報を分析対象とするのに対して、定量調査では数値データを分析対象とします。
定量調査では、基本的に選択肢式で回答してもらいます。例えば「女性20代の●%が購入したいといっている」などのようなデータを取得でき、年代や性別など、さまざまなセグメント別に回答を把握できます。
得られた結果に対して統計的な分析を行うことも可能で、GAP分析、コレスポンデンス分析、クラスター分析、因子分析などがあります。
調査目的の違い
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定量調査:仮説検証、実態把握、効果測定
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定性調査:仮説立案、行動理由や心理の深堀
定量調査の実施目的は大きく3つあります。
1つ目は仮説検証です。仮説検証とは、調査目的や課題となっていることについて、「~ではないか?」という仮説を確かめることを意味します。
例えば、新商品の売れ行きが悪い場合、
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そもそも認知されているか
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店頭に購入しやすい場所に並んでいるか
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悪い口コミや評判が目立っていないか
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パッケージが評価されていないのか
などさまざまな原因が考えられますが、「認知率が一番の問題ではないか?」と仮説を立てたとします。
その仮説があっていれば、必要なマーケティング施策は認知度を高めることになります。
生活者に対して新商品の認知度を確認するアンケート調査を行い、仮説があっているか検証します。
もし認知度が十分であれば、仮説が間違っていて他の原因があることがわかります。
このように、事前に仮説検証を行うことで、施策を打つうえで失敗リスクを小さくすることができます。
2つ目は商品・サービスの認知度、利用満足度、自社ブランドのイメージ、競合比較など、自社の商品・サービスの実態の把握です。
1度の調査結果だけを分析するのではなく、調査結果を経年比較することで、市場での相対的なポジションを時系列とともに確認することが可能です。
3つ目は、効果測定が難しいオフラインの広告施策、新聞広告やテレビ広告、交通広告などの効果検証です。
広告認知と購買への影響度を調査し、分析結果を次の施策に活用するために行います。
一方定性調査では、定量調査で検証する仮説やアイデアの立案・具体化のために実施します。
生活者の行動理由や心理を深堀し、生活者のニーズやインサイトの理解に努めます。
定性調査を実施することで「ターゲット生活者が購入しない理由は○○なのでは?」「捉えられていなかったニーズは○○なのでは?」という仮説の解像度を上げることができます。
調査手法の違い
目的の違いに応じて、それぞれの調査手法も異なります。
定量調査は量的な検証を行うため、多くの対象者から回答を得ることを重視します。
一方定性調査では、たとえ少数の対象者であっても、深く心理を理解することを重視します。
説得力のあるデータが得られる
定量調査は客観的な数値で結果が得られるため、意思決定や仮説検証を行う上で説得力のある客観的なデータが得られます。
大規模なサンプル数を確保して調査することで、データの説得力はさらに増します。
結果を可視化しやすい
数値で得られた結果は、表やグラフに可視化できます。
よく用いられるのは、GT表とクロス表、それらをもとにした円グラフ、棒グラフです。
統計的な分析を行った場合も表やグラフとして可視化しやすく、調査結果に対する理解も深まります。
データを可視化することで、意思決定者や関係者への調査結果の共有もしやすくなります。
下図は、美容への興味関心度を聞く質問のアンケート画面イメージと集計結果イメージです。
GT表を確認すれば、この質問の全回答者1100人のうち、選択肢「興味関心がある」を選んだ人が、全体の24.8%に当たる273人であることが容易に理解できます。
クロス表を活用すれば、年齢区分などの更に細かい条件(セグメント)で結果を見ることもできます。
【アンケート調査画面】
単一回答、複数回答、自由記述、マトリクス設問など、最適なデータが集められる質問形式を選択します。
【集計結果_GT表】
質問ごとに、どの選択肢を、どのくらいの人が回答したか確認することができます。GT表を確認することで、調査結果の概要をつかむことができます。
【集計結果_クロス表】
GT表の結果を性別や年代など任意の分析軸と掛け合わせたクロス表を確認することで、より詳細に調査結果を分析することができます。
安価に実施でき、ビジネスリスクを小さくできる
定量調査で事前に仮説の検証を行うことで、商品開発やマーケティング施策が失敗するリスクを小さくできます。特に定量調査の代表的な手法であるネットリサーチは低コストで実施できるため、回避できるリスクを考えると、非常に費用対効果の高い施策といえます。
デメリット・注意点
データ分析の知識やスキルが必要
調査やデータ分析に関する知識やスキルが不足している場合、調査結果を十分に活用できません。
特に、調査目的や解決したい課題に対してどのような分析を行えばよいかを想像し、伝えられるスキルが必要です。
実際の分析は専門家の力を借りることもできますが、どのような分析結果が必要かを調査目的や課題から逆算してイメージできなければ、調査設計から失敗する可能性があります。
調査結果を正しく(偏りなく)解釈できること、データに過剰に振り回されないデータリテラシーも必要でしょう。
事前に用意した質問の回答しか得られない
定量調査では事前に用意した質問と選択肢をもとに、インターネット上や紙の調査票で回答してもらいます。
調査対象者に追加の質問を行うことはできないため、質問を抜け漏れなく調査票に用意することが重要です。
行動理由や心理の深堀には限界がある
定量調査は市場全体やセグメント別の傾向を数値データで把握する目的で行うため、回答者一人ひとりの行動理由や心理の深堀には不向きです。
記述式の質問で回答させることは可能ですが、情報量は限られるため、必要に応じて定性調査との使い分けを行いましょう。
デメリットに対する考え方
データ分析の知識やスキルについては、専門家の力を借りれば済むことも多く、自身ですべての習得する必要はありません。
むしろ、基本的なデータリテラシー、調査目的や課題から逆算して適切な調査手法を選択できること、聞きたい内容によって定性調査と組みあわせること、抜け漏れなく調査設計を行うことが重要です。
主な調査手法
それぞれ個別の調査手法については、以下をご覧ください。
ネットリサーチ
ネットリサーチとは、生活者の意見を広く聞くためにインターネット上で行う定量調査のことです。ネットリサーチの特徴は、他の調査手法に比べ低コスト、スピーディに実施できることです。
ネットリサーチの詳細を見る
会場調査
用意した調査会場に対象者を集め、製品・サービスを試して使用感や、製品の味、パッケージの評価について、その場でアンケートに回答させ、定量的にデータを分析する手法です。CLT(Central Location Test)とも呼ばれます。
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ホームユーステスト
調査対象者の自宅に製品を郵送し、一定期間利用、または試飲・試食してもらい、評価させる調査手法です。一定期間試してもらう必要がある化粧品・食品や、自宅で試してもらう必要がある日用品などの調査に適しています。
ホームユーステストの詳細を見る
郵送調査
紙のアンケート用紙を指定の住所に郵送し、回答後に送り返してもらう調査手法です。住所さえ分かっていれば実施できるため、対企業への調査や自治体、学校主体の調査として実施される場合が多いです。
郵送調査の詳細を見る
定量調査の詳細、各調査手法について詳細を見る
定性調査との使い分け・併用
仮説検証は定量調査、意識の深堀は定性調査
これまで見てきたように、基本的に仮説検証は説得力のある数値データが得られる定量調査が適しており、行動理由や意識の深堀など、数値では分析できない内容を理解するためには定性調査が適しています。
併用する場合①:定性調査で仮説を構築し、定量調査で検証する
定性調査で仮説を構築し、定量調査でその仮説を検証して意思決定に活かす、という併用ケースが一般的です。
まずはインタビュー調査などで生活者理解を深め、そこで得られた課題解決のアイデアや仮説の、確からしさを定量調査で検証することで、精度の高い意思決定を行うことができます。
ターゲットの市場や生活者に対する理解の解像度が低く、何が効果的なのか検討がつかないという場合は、まずは深く生活者を理解し、そこで生まれたアイデアが本当にうまくいくかを検証する組み合わせ方が適しています。
併用する場合②:定量調査で全体像を把握し、定性調査で深堀する
定量調査で市場実態を広く浅く把握した後、特定の条件に当てはまる生活者の意見をさらに深堀するために定性調査を実施するケースもあります。
定量調査の情報だけでは、具体的な施策に落とし込めないこともあります。
市場実態も理解したうえで、より深く生活者を理解したい場合に、この組み合わせ方が適しています。
成功事例
【フードビジネス】ネットリサーチで広告効果の検証を実施
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企業名
株式会社セブン&アイ・フードシステムズ
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実施した調査
ネットリサーチ
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目的背景
広告やキャンペーン施策の投資対効果を検証し、PDCAサイクルを回すための情報が必要でした。
施策がどの程度ターゲットに届いているか、態度変容につながっているかを把握するため調査を行いました。
- 調査結果、活用
調査によって、次回の施策で利用するポスターやチラシの訴求ポイントが明確になったといいます。
キャッチコピーやビジュアルなどのクリエイティブを客観的なデータを根拠に作ることができ、迷いのない広告、より届きやすいキャンペーンの実施につながりました。
【食品製造販売】「店頭での」購買基準を知るためネットリサーチを実施
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企業名
エバラ食品工業株式会社
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実施した調査
ネットリサーチ
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目的背景
これまで実施した調査では、生活者に店頭で選ばれる基準を把握できていなかったといいます。
商品が想起されるシーンや選ばれる理由、自社ブランドのイメージなどを把握するため調査を行いました。
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調査結果、活用
調査によって、商品購入に至るきっかけや、競合とのブランドイメージの比較を行うことができました。
狙って打ち出していたブランドイメージは生活者に定着している一方で、競合商品と差別化する強烈なブランドイメージを築けていないことを認識することができました。
事例インタビュー一覧を見る
成功させるポイント
調査目的を明確にすること
「調査結果を眺めるだけになってしまった」「調査結果をうまく活用できなかった」という声を聴くことがあります。
それらは大半の場合、「調査結果をどのように活用したいのか」「この調査で何がわかればよいのか」が明確になっていないため、起きてしまいます。まずは調査目的を明確にしましょう。
調査目的について関係者間で合意をとること
調査目的を明確にした後は、社内の関係者や経営層にも共有して、合意をとる必要があります。
調査自体は売り上げに直結しないため、調査目的に対する合意形成を怠った結果、後になって調査実施の意味を問われるケースがあるからです。
例えば、社内に対して調査結果の報告会が行われることがよくありますが、事前に何のための調査なのかを握っておかなければ、報告会の場で上司や経営層から思ったような反応が得られないことがあります。
報告会の場で調査目的や調査内容から説明する羽目となり施策の議論にまで至らないケースや、調査の必要性自体を疑問視されるケースは、決して珍しくありません。
何のために調査を実施するのか、何に活用するのか、について必ず事前に関係者に共有し、合意をとっておきましょう。
分析イメージを持つこと
調査目的を明確にすることにも関係しますが、調査目的が曖昧だと、どのように分析すればよいのかもわかりません。
もしくは、とりあえず統計的な分析やデータ解析ツールでの分析を行ってみたものの、その後の打ち手につなげられないということもあります。
解決したい課題や調査目的に照らし合わせて、どのような分析を行うべきか、どのような結果が得たいのか、すべて逆算して考えることが重要です。
依頼する企業の選び方
アンケート専用パネルを保有し、適切に管理している企業
アンケートに回答してもらう一人ひとりの対象者をモニター、モニターの集合体・全体をパネルと呼びますが、アンケート専用のパネルを保有している企業に依頼しましょう。
パネルを自社で保有していな企業社に調査依頼をすると、別企業のパネルが利用されることになり、コストが余分にかかってしまうためです。
また、回答の偏り(バイアス)を小さくするためにも、アンケート専用のパネルであることが望ましいです。
例えば、特定のECサイト会員をパネルとして利用した場合、ECの利用頻度やキャッシュレス決済の頻度が、市場全体よりも多くなるのは当然です。
アンケート専用パネルを保有している企業は、パネル特性により回答の偏りが可能な限り発生しないよう、市場の代表性を失わないように、パネル管理を行っています。
モニターの個人情報を適切に管理しているかも確認したいポイントです。
近年企業には、個人情報を適切に取り扱うことがますます厳しく求められるようになっています。
その企業が個人情報を適切に取り扱っているかどうかを判断する際は、「プライバシーマーク(Pマーク)」の取得有無が一つの基準にするとよいでしょう。
ネットリサーチ以外も対応可能な企業
商品のカテゴリによっては、会場調査やホームユーステストなどの定量調査も対応可能な企業を選ぶとよいでしょう。
これまでの調査経緯を踏まえた提案や調査設計が可能になり、スムーズに調査実施が行えます。
定性調査も対応可能な企業
今後依頼する可能性を考慮して、定性調査も依頼可能な企業を選定するとよいでしょう。
課題に対して定量調査と定性調査を組み合わせることや、定量調査の結果をもとに定性調査を設計することが行いやすくなります。
事例が多い企業
支援事例が多く実績が豊富な企業に依頼しましょう。同じような業種、商材での事例、同じ調査目的での事例が多い企業であればさらに望ましいでしょう。
その他のポイント
その他、上場企業であるか、営業担当のレスポンスの速さ、知識と経験の豊富さなどが選定のポイントになります。
また、自社の調査リテラシーに適した依頼先を選定することも重要です。
調査リテラシーが高ければ、依頼した内容をミスなくスピーディにこなしてくれる企業が依頼先として適しているでしょう。
一方で、調査リテラシーに不安がある場合は、課題の明確化から調査設計、結果の活用方法までをサポートしてくれるような企業が依頼先として適しています。
商品サービスのことを思って、同じ目線で議論してくれる企業、調査だけでなくマーケティング課題を広く相談できる企業を探しましょう。
まとめ
定量調査とは、回答ボリュームや割合が「数値データ」で表される調査手法のことです。
主に仮説検証や、市場実態の把握、広告効果検証の目的で実施されます。
定性調査と組み合わせることで、仮説構築から検証までを行うことができ、意思決定をする上でのリスクを小さくすることが可能です。
定量調査と定性調査のどちらを行うべきか、どのように調査設計を行えばよいのかなど迷った際は、一度企業に問い合わせてみましょう。その際は手法ありきで相談するのではなく、今抱えている課題を伝えてください。
ネオマーケティングは国内約2450万人のアンケート会員を保有するパネルネットワークを構築し、マーケティング課題を解決し、必要なデータを取得するための調査設計から、調査結果の活用までご支援しています。リサーチを起点に、デジタルマーケティング、PR、ブランディング支援も行っています。