企業が成長し続けるためには、顧客の声を正しく理解し、サービスや製品の改善につなげることが不可欠です。その手段の1つとして、顧客満足度調査があります。しかし調査を自社で実施しようとすると、設計やデータ収集、分析に多くの時間と労力がかかります。
専門の調査会社に依頼する方法もありますが、費用やカスタマイズの制約といった課題もあり、どのようにすべきか悩んでいる方も多いかもしれません。
本記事では、顧客満足度調査(CS調査)を外部の調査会社に依頼するメリット・デメリットを整理し、最適な依頼先を選ぶためのポイントを詳しく解説します。
顧客満足度調査(CS調査)とは
はじめに顧客満足度調査(CS調査)とはどのような調査かについて簡単にお伝えします。
顧客満足度調査とは、特定の自社商品・サービスが市場内で顧客からどのように評価されているのか、現状を把握するために行われる調査手法です。顧客ニーズの把握およびサービス品質の向上等を目的として、広く実施されています。
顧客満足度調査を適切に設計し実施できれば、単に特定商品の総合的な満足度を測るのみならず、その商品への満足度を高めるために改善すべき要素を可視化することができるでしょう。購入に至った理由や、商品の利用頻度・利用方法、満足しているのは具体的にどういった点かを様々な角度から測ることで、売上からだけでは把握できなかった商品の強み・課題がわかり、次なるアクションを設定するのに役立ちます。
顧客満足度調査の依頼方法
顧客満足度調査の実施方法としては、定量的な方法、定性的な方法の大きく2種類に分かれます。代表的な方法は以下の通りです。

■インターネットによるアンケート調査(定量調査)
顧客満足度調査の主たる方法は、インターネットによるアンケート調査です。当該商品購入者の実態や傾向を統計的に把握できます。
具体的な例を挙げましょう。飲料メーカーA社が、昨今市場へ新規投入した缶ビールの顧客満足度を測りたいとします。その缶ビールを購入してくれた方を対象に、当該製品の味、価格、量、デザインといった満足度につながる要素のほか、総合満足度などを5段階評価で尋ねます。同様の質問を競合商品についても確認することで、市場での位置関係が明らかになります。
調査対象者としては、個人情報を取得できている自社の顧客、取得していない自社顧客(たまたまの来店客やウェブサイトに来訪している匿名顧客)の2通りが想定されます。前者の場合は既に自社サービスの会員になっているため、ある程度商品を好んでいる顧客が多い可能性があり、調査にあたってはその前提を汲んだ設問設計に仕立てる必要があるでしょう。
■グループインタビュー調査(定性調査)
選択式での質問からは測れない内容を深掘りし、潜在意識を引き出して顕在化させられるのが、グループインタビュー調査です。複数名を一つの会場に集め、順を追って商品の満足度に関する質問をし、それに対して答えていただく形式となります。
調査対象者は一定期間に調査対象商品を多く購入している顧客や、対象商品の満足度が高い顧客が想定されます。いずれにしてもまずはメールなどで回答を募り、スクリーニング調査をかけてから調査対象者を決定する必要があるでしょう。
グループインタビューで注意したいのは、直接話を聞けた顧客の声が全ての顧客を代表する声ではないという前提を押さえておくことです。数量的な信頼性も担保するために、定量調査と合わせて実施することが望ましいといえます。
調査会社に依頼するメリット
顧客満足度調査を調査会社に依頼するメリットはさまざまです。たとえば以下のようなものがあります。
・信頼性の高いデータを得られる
・調査の手間を削減できる
・具体的な改善施策を提案してもらえる
専門の調査会社は、調査や統計に関するノウハウをもっており、偏りのない正確なデータを集められます。過去の調査データや他社のデータと比較し、自社の強みや課題を明確化できるのもメリットです。調査結果から、具体的な改善策を提示してもらえます。
さらに顧客満足度調査を依頼すると、調査設計から分析まで一括対応してもらえます。担当者の手間を削減できるため、他の業務にリソースを回せるのも大きな利点です。
調査会社に依頼するデメリット
顧客満足度調査を依頼するさまざまなメリットがある一方で、少なくないデメリットもあります。
• コストがかかる(費用対効果を考慮する必要がある)
• カスタマイズが難しい場合がある
• 求めている結果が得られない可能性がある
調査規模によって費用が増加し、調査の対象人数や手法によっては高額になるケースもあります。自社でアンケートを実施する場合と比較すると、どうしても費用が高くなるため注意してください。
専門の調査会社に依頼する場合、既存の調査方法に沿う必要があり、自社独自の要望を反映しにくい場合があるのも難点です。さらには調査結果が想定と異なり、具体的な改善策につながらないなど、思うような成果が得られない可能性もあります。
依頼先を選ぶ際のポイント
「顧客満足度を向上させたい」「サービスの改善につなげたい」と考え、調査を外部に依頼しようとしても、どこに依頼すべきか迷うケースは少なくありません。調査会社によって得意とする分野や手法が異なるため、情報をよく集めておくのが重要です。
下記のチェックすべきポイントを参考に、目的に合った調査会社に依頼できるよう準備をしましょう。
調査の目的に合った手法を使っているか
依頼先を選ぶ際は、調査の目的に合った手法を使っているかどうかが重要です。たとえば顧客満足度の定量的評価が目的の場合は、NPSやCSIなどに強みをもっているところを選ぶと、施策の効果測定にも役立ちます。
一方で顧客の深いインサイトを得るのが目的の場合は、インタビュー調査やフォーカスグループに強みをもつ会社を選ぶと、顧客の本音や潜在的なニーズを把握しやすくなります。
業界・業種に特化した実績があるか
調査会社が自社の業界に精通しているかどうかは、調査の質に大きく影響します。業界ごとの競争環境や市場動向を把握している調査会社であれば、より適切な設問設計が可能です。顧客の満足度を左右する要因を的確に分析し、実用的なフィードバックを得られます。
選定の際は、依頼先の事例や実績を確認し、同業他社の調査経験があるかをチェックしましょう。同じ業界での豊富な実績があれば、自社の課題に合った調査をスムーズに実施できる可能性があります。
柔軟性・カスタマイズ性に優れているか
顧客満足度調査は、企業ごとの課題や目的に応じて柔軟に設計できるかどうかが重要です。たとえば特定の顧客層に絞った調査(VIP顧客、離脱顧客、新規顧客など)や、オンラインとオフラインのデータを組み合わせた分析などが挙げられます。
オプションが豊富な調査会社を選ぶのもポイントです。調査方法の選択肢が多かったり、さまざまな分析方法を活用できたりします。
費用対効果に問題はないか
顧客満足度調査を依頼する際は、かかる費用と得られる成果のバランスを考慮しましょう。
費用を決めるのは、「調査の規模」「調査手法」「対応範囲」などです。調査会社によって基本料金に含まれる内容が異なるため、細かい料金設定を事前にチェックし、他社と比較しましょう。
価格が極端に安い場合、調査の設計が甘かったり、データの質が低かったりする可能性があります。得られるデータの質や活用のしやすさも考慮するのが重要です。
サポート体制は整っているか
顧客満足度調査は、結果を集めるだけでなく、それをどのように解釈して活用するかが重要です。サポート体制が整っていないと、せっかくのデータも十分に活かせない可能性があります。
ノウハウに自信がない場合は、データをもとにした具体的な施策提案や、継続的なモニタリングをサポートしてくれる会社を選びましょう。
まとめ
顧客満足度調査(CS調査)を外部に依頼すれば、専門的な分析をもとに信頼性の高いデータが得られます。調査の設計から実施、分析まで一括で任せられるため、社内の負担も大幅に軽減可能です。
一方で、費用やカスタマイズの制約といったデメリットもあり、目的に合った調査会社の選定が欠かせません。調査結果の活用を見据え、アフターフォローやコンサルティングが充実している会社を選ぶと、より実践的な改善につながります。
適切なパートナーを選びつつ、調査結果を最大限に活用し、事業の成長を目指しましょう。