Web広告の戦略策定や出稿時にほぼ必ず耳にする言葉の一つに「CPM」が挙げられます。聞いたことはあるものの、具体的に何を意味しているのか明確に理解していないという方も多いのはないでしょうか。
今回は、CPMの定義やCPCとの違い、運用方法についてわかりやすく解説します。CPMをKPIに設定するメリット・デメリットについてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
CPMとは
CPMはCost Per Milleの頭文字を取った言葉です。Milleはラテン語で「1,000」を意味する「ミル」で、英語の「マイル(Mile)」とは異なります。CPMの意味や使用される場面、CPMと似ているvCPMやeCPMとの違いを押さえておきましょう。
Web広告が1,000回表示されるごとにかかる広告費
Cost Per Milleを直訳すると「1,000ごとの費用」という意味になります。CPMはWeb広告が1,000回表示されるごとにかかる広告費を表す言葉です。広告が表示される回数をインプレッションと呼ぶことから、CPMは「インプレッション単価」と呼ばれることもあります。
また、CPMはWeb広告を出稿する際の課金方式を表す言葉としても用いられています。広告が表示されるタイミングで課金される出稿方法が「インプレッション課金方式」であり、ユーザーによるクリックが発生するごとに課金される「クリック課金」と対をなす課金方式です。
CPMが使用される場面
CPMがインプレッション単価を表す場合、Web広告の配信コストを確認するための指標として用いられます。あるWeb広告を出稿した場合、どれだけのコストがかかるのかを把握するには一定の回数表示された際のコストを把握しておく必要があります。この時に用いられるのがCPMです。
また、CPMがインプレッション課金方式を表す場合には、広告予算にもとづく意思決定を行う際に用いられます。広告予算内でどの程度の広告効果が望めるのかを予測する上で、CPMを把握しておく必要があるからです。
CPMと似ている用語
CPMと似た言葉として「vCPM」「eCPM」が挙げられます。
vCPM(viewable Cost Per Mille)とは、ユーザーが実際に閲覧可能な広告が1,000回表示された場合の費用、あるいはその課金方式のことです。一方、eCPM(effective Cost Per Mille)はWeb広告の表示1,000回あたりにかかる事実上の費用を表します。eCPMを用いることにより、課金形態の異なるWeb広告の効果を統一された基準で比較しやすくなる点がメリットです。
このように、CPMが単純に「広告表示1,000回あたりの費用」を表すのに対して、「実際に閲覧可能な」「事実上の」といった条件を付加している点が大きな違いといえます。
算出方法
CPMは下記の計算式によって求められます。
CPM(円)=広告掲載費用÷広告表示回数×1,000
一例として、広告表示100万回に対して30万円のコストがかかった場合のCPMを計算してみましょう。
30万円÷100万回×1,000回=300円
一般的にCPMの相場は10円〜500円程度です。ただし、広告を掲載するメディアなど条件によってCPMは変動するため、必ずこの範囲に収まるとは限りません。
このほか、FacebookやGoogle広告では下記の手順でCPMを確認できます。
・Facebook広告管理ツールの場合
- 広告マネージャを開く
- 列をカスタマイズする
- 確認したい項目を選択する
・Google広告の場合
- Google広告の管理画面で「キャンペーン」アイコンをクリック
- セクションメニューで「キャンペーン」プルダウンをクリック
- 「キャンペーン」または「広告」をクリック
- 「ディスプレイキャンペーン」を選択
- 「表示項目」プルダウンメニューから「表示項目を変更」を選択
- 「視認性」のプルダウンメニューをクリック
- 「視認範囲のインプレッション単価」のチェックボックスをオンにする
このほか、TVCMや新聞・雑誌広告など、Web以外の媒体においてもCPMを割り出す方法が考案されています。
たとえば、TVCMであればGRP(延べ視聴率)をインプレッションに換算するといった方法です。ほかにも、新聞・雑誌であればデジタル版に出稿した広告や、SNSとの連動企画によって広告接触者数や反応をデータ化できます。
CPCとの違い
CPMと似た用語として「CPC」が挙げられます。CPMとCPCは根本的に異なる概念のため、しっかりと区別して押さえておくことが大切です。
CPCは広告クリック1回あたりにかかる費用
CPC(Cost per Click)とは、広告クリック1回あたりにかかる費用のことを指します。Web広告を出稿する際の課金方式として用いる場合には、クリック課金型の広告を表す言葉です。CPCは下記の計算式によって求められます。
CPC(円)=広告費÷クリックされた回数
たとえば、1万円の広告費で出稿したWeb広告が1,000回クリックされた場合、CPCは1万円÷1,000回=10円です。CPCが低いほど、広告の費用対効果が高くパフォーマンスに優れているといえます。
CPMとCPCの使い分け
CPMとCPCは、広告を出稿する目的に応じて使い分ける必要があります。商品やサービスの認知を高めたい場合には、インプレッションを重視する必要があることからCPMを指標として用いるのが一般的です。これに対して、コンバージョンを重視する場合には実際に広告がクリックされた回数を重視する必要があるため、CPCが指標として用いられるケースが多く見られます。
課金方式を決定する際の目安として、クリック率が0.1%以上であればCPM課金、クリック率が0.1%未満であればCPC課金を選ぶのが得策です。
Web広告施策のKPIとしてCPMを設定することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主な3つのメリットを見ていきましょう。
ユーザーの認知度向上を図りやすい
CPMはインプレッション数を基準とする指標のため、多くのユーザーに認知を広げたい場合に適したKPIといえます。最大限の表示回数を目指すことにより、認知度向上を実現しやすくなるでしょう。
実際に広告をクリックして遷移先のページを閲覧してもらうことも重要ですが、その前段階として広告の存在が目に留まるかどうかが成否の分かれ目といえます。ディスプレイ広告のように視認性の高い広告であれば、広告内に伝えたいメッセージの核心部分を記載しておくことによって告知効果を得ることも可能です。
広告予算を立てやすい
CPM課金の広告は、クリックされたかどうかを問わず表示回数によって費用が決まります。クリック数に応じて広告費が変動するCPC課金と比べて、広告費が変動しにくい点が大きなメリットです。CPMであれば毎月の広告費が大きく上下することもないため、広告予算を立てやすいでしょう。
CPC課金の場合、何らかのきっかけによりSNSで爆発的に情報が拡散され、突如として広告のクリック数が激増することもありえます。広告費が跳ね上がるなど、想定外の事態に見舞われることにもなりかねません。広告費を安定させたい場合には、CPMをKPIに設定するほうが適しています。
クリック単価が割安になるケースが多い
CPM課金の場合、広告がクリックされた回数によって広告費が変動することはありません。クリックされやすい広告の場合はとくに、CPC課金よりも1クリックあたりの費用が安くなりやすい傾向があります。
一例としてCPMが300円、クリック率が1%の広告の場合、CPMを1クリックあたりのコストに換算すると300円÷(1,000回×1%)=30円です。一方、クリック率が2%になると300円÷(1,000回×2%)=15円と半分になります。CPC課金であれば、クリック率が1%から2%になっても1クリックあたりのコストは変わらないため、広告費が倍増してしまうでしょう。このように、クリック率が高いほどCPM課金のほうがクリック単価が割安になるのです。
KPIに設定するデメリット
CPMをWeb広告施策のKPIに設定することにより、デメリットを被る場合もあります。想定される主なデメリットは次の2点です。
ニーズが低い層にも広告が表示されやすい
CPMをKPIに設定することにより、必然的にインプレッション数を重視する施策となります。広告表示回数の最大化を目指すことになるため、場合によってはターゲット外のユーザーにも広告が表示されかねません。たとえば、ローカルビジネスの広告であるにもかかわらず全国のユーザー向けに広告が表示されてしまい、多くのユーザーにとって関心のない広告として映るといったことが想定されます。
結果としてクリック率が著しく低くなったり、想定していたほど広告の効果が得られなかったりする事態に陥るおそれがあります。CPMをKPIに設定するのであれば、ターゲティングの適正化もセットで強化することが重要です。
広告の費用対効果を把握しにくい
CPMをKPIに設定した場合、広告が表示された回数が施策の評価軸となります。広告が表示されたという事実しかわからないため、実際にユーザーが広告を見ているかどうかは不透明になりがちです。
たとえば、Web広告が表示されていてもユーザーは広告に目を留めることなくページをスクロールしていたり、広告が表示される前にページから離脱していたりすることも想定されます。広告の実質的な効果を把握したい場合には、実際にユーザーの目に触れる状態で表示された件数をカウント対象とするvCPMをKPIに用いるのが得策です。
運用方法
CPMの運用方法について解説します。CPMの運用によく使用されるツールや、PDCAサイクルを回す際の視点と改善方法を押さえておきましょう。
CPMの運用によく使用されるツール
CPMの運用に活用できるツールの例として、Facebook/InstagramといったMeta広告にて提供されている「広告マネージャ」が挙げられます。公式ツールを追加料金なしで利用できる点が大きなメリットです。
Meta広告ではCPM入札を採用しており、広告を経由して外部リンクに移動する可能性が高いユーザーに対して広告が表示される仕組みになっています。Meta広告のCPMが高くなる主な要因は、「ターゲットを絞りすぎている」「デイリー予算を上げすぎている」「ユーザーとの関連度が低い」の3点です。このように、Meta広告を活用することによってCPMの最適化を図るための方策を見極めるためのヒントが得られます。
PDCAサイクルを回す際の視点と改善方法
CPMを適切に運用するには、PDCAサイクルを回して改善を重ねていくことが重要です。改善するために必要な視点は次の2点です。
ターゲティングは最適化されているか
CPMを大きく左右する要因の一つがターゲットの属性です。CPMが安いものの集客効果が得られていないようなら、ターゲット外のユーザーに広告が多く表示されていることが懸念されます。このようなケースでは、ターゲティングを見直す必要があるでしょう。
こうした傾向は、実際に広告を運用してみないと判断がつかないケースも少なくありません。CPMと実際の集客効果を随時確認し、ターゲティングの改善に役立てていくことが重要です。
クリエイティブに改善の余地はないか
CPMを下げるには、広告クリエイティブを改善することも重要なポイントの一つです。広告の文字含有量や使用するイラスト・画像を少々変えるだけでも、CPMに大きく影響を与えるケースは少なくありません。
ただし、具体的に何をどう変えればCPMを抑えられるかについては、絶対的な法則やノウハウが存在するわけではありません。地道に試行錯誤を繰り返しながら、改善を図っていくしかないのが実情です。必要に応じてA/Bテストを取り入れながら、CPMの低減につながるクリエイティブを追究していく必要があります。
まとめ
CPMとCPCは、いずれもWeb広告を運用していく上で避けてとおれない重要な指標です。CPMが表していることや算出方法、どのようなケースでKPIに適しているのかを理解した上で、適切に活用していくことが大切です。
今回紹介したCPMの特性や運用方法を参考に、ぜひWeb広告運用の最適化を目指してください。