法人の自社ECや個人でのSNSを利用したインフルエンサーマーケティング、アフィリエイトなどが一般的になったことで、近年広告やプロモーションに携わる人も増えてきました。
そこで改めて注意しなければならないのが「景品表示法」(以下、「景表法」)と「薬機法」です。
景表法と薬機法は遵守しなければならない法律であり、「知らなかった」や「不注意だった」では済まされないケースも多々あります。実際にこれらの法律に違反したことで処罰を受けた事例も決して少なくはありません。
本記事では、景表法と薬機法の概要や遵守チェックの重要性などについて解説します。
景表法とは?
私たちが普段「景表法」と呼んでいる法律は正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。これは、「製品およびサービスの品質や内容、価格などの表示を偽ること」を規制するとともに、「消費者の正確な判断を妨害するような過大な景品類の提供」を禁止する法律です。
景表法の目的は「経済活動において消費者が合理的な判断、選択ができる環境を保つこと」です。そのため、製品やサービスを広告、販売するすべての人が守らなければなりません。
景表法の要点とポイント
景表法の「過大な景品提供の禁止」については、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
一方で、表示に関する規制を詳しく知らないという方は少なくないと思います。「不当な表示を禁止する規制」のポイントとして、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」について、それぞれ解説します。
優良誤認表示
景品表示法第5条1号によって優良誤認表示が禁止されています。
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
この条文では自社の商品について「実際よりも甚だしく優良であるような表示」を規制しています。
有利誤認表示
景品表示法第5条2号によって有利誤認表示が禁止されています。
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
この条文では価格や内容量などについて、「実際よりも甚だしく有利であるかのように誤認させる表示」や「競合他社の商品より著しく有利であるかのように誤認させる表示」を禁止しています。
有利誤認表示に抵触しないためには、
・比較広告の内容が客観的な事実であること
・数値や事実を適正に引用していること
・公正に比較していること
が重要です。
※)各条文については参照元もご確認ください。
薬機法とは?
薬機法は正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、2014年に薬事法から薬機法へと改正されました。
薬機法は「医薬品や医薬部外品、医療機器などに関して品質や安全性、有効性などを確保すること」を目的に制定されています。そのため、表示や広告だけでなく、製造や販売、流通など細部に至るまで、厳しく法律が定められています。
また、医薬品や医薬部外品以外の商品の広告やプロモーションにおいて、医薬品もしくは医薬部外品と同等の効果があると誤認されるような表現は禁止されています。
具体的な病気に関する治療・予防・改善への言及、身体の具体的な部位に言及する効果効能の訴求などは禁止されているので注意しましょう。
とくに注意したい薬機法の対象となる商品
薬機法はその名称から、医薬品や医薬部外品、医療機器などを規制する法律と思われがちですが、それ以外の製品やサービスに適用されるケースも非常に多いものです。
とくに注意したいのが、「健康食品やサプリメント」と「化粧品」です。これらは販売のハードルも低いため、知らないあいだに薬機法に違反していたというケースも珍しくありません。それぞれのポイントについて解説します。
健康食品・サプリメントと薬機法
健康食品やサプリメントについて、医薬品のような効果効能を表現した上での販売は禁止されています。「ガンが予防できる」「脂肪がなくなる」などの表示はできないので注意しましょう。
化粧品と薬機法
化粧品に関しては薬機法第2条3項で以下のように定義されています。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。(以下、略)
そのため、
・効果効能
・成分および原材料
・用法用量
・安全性
・他社製品との比較
・医療関係者などのコメントや推薦文
などの表現についてはその都度、適切かどうかをチェックする必要があります。
薬機法で注意すべき表現
薬機法についてはケースによって、どんな表現がOKもしくはNGなのかといった判断が異なることもあります。しかし中には、「場合によらずほとんどのケースでNG」という表現も存在します。その一部をご紹介するので、とくに留意してください。
・◯◯が「治る」
・◯◯に「効果」あり
・◯◯が「改善」します
・「安心」と「安全」
これらの表現は薬機法に抵触するリスクが高く、使用を控えた方がよいでしょう。
景表法と薬機法の違い
これまで景表法と薬機法、それぞれについて解説してきましたが、どちらも製品やサービスの表示に関する法律という点では相違はありませんが、異なる部分もあります。
広告や広報、プロモーションの際は必ず両方ともチェックしましょう。
表1:景表法と薬機法の違い
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景表法
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薬機法
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目的
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経済活動において消費者が合理的な判断、選択ができる環境を保つ
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医薬品や医薬部外品に関して品質や安全性、有効性などを確保する
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管轄 |
消費者庁 / 国民生活センター 都道府県庁 / 消費者センター |
厚生労働省 都道府県庁 / 警察 |
内容 |
「商品やサービスの品質や内容、価格などの表示を偽ること」を規制するとともに、「消費者の正確な判断を妨害するような過大な景品類の提供を防ぐこと」を禁止している。 |
「医薬品・医薬部外品」 表現できる効果効能の範囲が定められており、範囲外の表現は禁止。
「その他」 医薬品および医薬部外品と同等の効果効能があると誤認される表現は禁止。
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薬機法に違反した場合のリスク
もし薬機法に違反してしまった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?
実際には以下のように、罰則や措置命令などの処罰を受ける可能性があります。また、処罰の適用については故意かどうかが考慮されないことも多いので、「知らなかった」では済まないケースもあることを知っておきましょう。
罰則
罰則の対象行為として、「虚偽広告や誇大広告等(薬機法66条1項)を行った場合又は未承認医薬品等の広告の禁止(薬機法68条)に違反した場合」と「特殊疾病用の医薬品等の一般向けの広告の制限(薬機法67条)に違反した場合」が定められています。
前者は2年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金またはその両方、後者は1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金またはその両方が課せられる場合があります。
課徴金
罰金の他に課徴金が請求されるケースもあります。金額は違反を行っていた対象商品の期間売上額×4.5%で算出されるのが一般的です(景表法の課徴金納付命令が課された場合は控除の可能性あり)。
措置命令
罰則や課徴金の他に措置命令が課されることもあります。実際には「違反広告の中止」や「公示」、「その他公衆衛生上の危険の発生を防止するための措置」などが挙げられます。
社会的信用の低下
薬機法に違反して罰則や課徴金、措置命令などの処分を受けたとしても、それで終わりではありません。消費者は企業の法律違反や不祥事を覚えているものだからです。一度信頼が低下してしまうと、回復までの道のりは非常に困難でしょう。
薬機法に違反し世間に知られてしまうと、今後のビジネスに悪影響が及ぶことはほぼ間違いありません。「たとえ一回でも薬機法に違反しない」という強い意識で表現を考えたりチェックしたりする必要があります。
まとめ
景表法や薬機法に関する知識は、ECサイトの運営やインフルエンサーマーケティング施策、アフィリエイト広告の作成など、製品やサービスをPRするあらゆる場面で必要になってきます。
たとえ知らなかったとしても、法律違反をしてしまった場合は「罰則」や「信頼の喪失」など大きな不利益を被る可能性があるため、十分に理解し注意する必要があります。
広告やプロモーションにおけるクリエイティブ制作およびチェックの際には、常に細心の注意を払うように心がけましょう。