あるサイトでチェックした広告が、他のサイトに行っても同じように表示されたことはありませんか?また、さまざまなサイトで表示される広告が、なぜか自分の興味に近いものばかりだったという経験もあるかもしれません。これらはすべてクッキー、それもサードパーティクッキーと呼ばれるデータの活用によるものです。広告を出稿する側にとってはとても便利なサードパーティクッキーです。しかし、近年では個人情報保護の観点から、利用を規制する動きがみられます。本コラムでは、サードパーティクッキーの概要や活用方法、利用に関わる問題とその規制などについて解説していきます。
そもそもクッキーとは何か?
サードパーティクッキーの概要についてお話しする前に、そもそもクッキーとはどのようなものなのかを確認しておきましょう。
クッキー(Cookie)はChromeやEdgeのようなWebブラウザを経由し、スマートフォンやパソコン(以下、デバイス)に保存されるデータのことで、実体はプレーンなテキストファイルです。クッキーがデバイスに保存されると、頻繁に訪問するECサイトなどでユーザーIDや住所、氏名などを入力する手間が省けるなど、クッキーによって閲覧者が識別され、ユーザーには省力化のメリットが発生します。このクッキーをデバイスに受け入れる/受け入れないはユーザーに選択が求められることもあります。Webブラウザのセキュリティレベルを下げると、すべてのクッキーを自動的に受け入れる設定になってしまう場合もあります。
クッキーの詳細については、本コラムの別記事「3分でわかる「Cookie(クッキー)とは」をご覧ください。
ファーストパーティクッキーとサードパーティクッキー
クッキーには発行元の違いにより、ファーストパーティクッキーとサードパーティクッキーの2種類があります。
●ファーストパーティクッキー
ユーザーがアクセスしているドメイン(http://www.*****co.jp/の、*****の部分)の運営者が発行しているクッキーが、ファーストパーティクッキー(1st party Cookie)です。ファーストパーティクッキーは精度の高いトラッキング(ユーザーのサイト閲覧情報を収集して分析すること)が可能です。しかし、ドメインの制限があるのでサイトを横断したトラッキングはできません。
●サードパーティクッキー
ユーザーがアクセスしているドメイン以外のドメインが発行するクッキーを、サードパーティクッキー(3rd party Cookie)といいます。サードパーティクッキーはドメインの制限を受けないので、サイトを横断して利用することが可能です。
サードパーティクッキーは、上記のようにユーザーがアクセスしているドメイン以外のドメインが発行するクッキーです。これはたとえば、Aというサイトに訪問してBという広告をクリックした場合、Bの発行するものがサードパーティクッキー(Aが発行するのがファーストパーティクッキー)という意味です。
このサードパーティクッキーを含むクッキー全般は、同じWebサイトに再度訪問した場合、必ずWebブラウザ側からWebサイト側へデータが戻るように設定されています。このような仕組みで、再度訪問したサイトでログインIDが表示されていたり、住所や氏名があらかじめ表示されていたりするのです(サーバ側がログインIDによって識別している場合もある)。
同じようにサードパーティクッキーは、ユーザーが遷移した別サイトにBの広告スペースがあった場合、そこに過去Aサイトでユーザーがクリックした広告の情報を表示できるのです。この仕組みは、サイトを横断して利用できるサードパーティクッキーならではのものです。
サードパーティクッキーの活用方法
このようなサードパーティクッキーの特徴をリターゲティング広告(一度自社の広告サイトを閲覧したユーザーに、再度広告を表示する手法)に利用すれば、過去にはさまざまな理由で購買に至らなかったユーザーに再度アプローチができ、購入まで至る可能性があります。またユーザーの遷移データから性別や趣味、嗜好などを推測し、よりユーザーにマッチした広告を表示させることもできるのです。
サードパーティクッキーはこのような広告宣伝への利用に最適な仕組みです。ここでそのメリットとデメリットを整理しておきましょう。
●メリット
・複数のWebサイトで同じユーザーの行動を追跡可能。ユーザーが興味をもつ商品やサービスを、複数回にわたりユーザーに提示できる。
・ユーザーの嗜好を分析し、興味ある商品やサービスの広告を表示。購買の可能性を高めることができる。
●デメリット
・ユーザーによってはしつこい広告を嫌悪する傾向があり、リターゲティング広告が逆効果になってしまう。
・ユーザーにブロックされやすく、ブラウザにはクッキーを一括で削除する機能もある。
・プライバシー保護の観点から、サードパーティクッキーには規制がかかりはじめている。
サードパーティクッキーへの規制
サードパーティクッキーは、とくにこの仕組みを利用したリターゲティング広告が発端となって規制が始まっています。この規制で一番の問題とされているのが、プライバシーや個人情報の保護です。サードパーティクッキーを元にユーザーの情報を分析すれば、個人の興味や趣味、嗜好、住んでいるエリアや行動範囲、家族構成、年収などといった、極めて個人的な情報まで推測することが可能になってしまうのです。
このような問題に対し、EUでは世界に先がけて「EU一般データ保護規則(GDPR)」を施行、個人情報は個人にコントロールする権利があり、クッキーやIPアドレスなども個人情報として保護すべきだとしています。本規制には厳しい罰則(違反金)が科されており、この影響でアメリカなどでも同様の規制が始まっているのです。
またWebブラウザの開発・提供元も、プライバシーや個人情報保護の観点からサードパーティクッキーの利用に関する規制を強めています。AppleのSafariはすでにサードパーティクッキーをブロック、Google Chromeも2023年後半にはサードパーティクッキーの利用を禁止すると発表しています。
規制が進む中、企業に求められる対応とは
行き過ぎた使い方が問題になっているとはいえ、サードパーティクッキーはマーケティングにとって非常に便利な仕組みです。上記のような規制が進む中、企業にはどのような対応が求められているのでしょうか?
●サードパーティクッキーに頼らないマーケティング
サードパーティクッキーを利用したリターゲティング広告のデメリットには、ユーザーはしつこい広告を嫌う傾向があり、度重なるリターゲティング広告は逆効果になってしまうというものがありました。また攻めの広告として現在でも盛んに行われているプッシュ広告(不特定多数のユーザーに対して強制的に広告を流し、商品やサービスを認知させる手法。テレビCMやテレホンアポイント、バナー広告などが代表例)という仕組みも、同じように一部のユーザーからは嫌気される傾向にあります。
このような傾向は、サードパーティクッキーとは関係なく以前からあるものなのです。不特定多数に送られるわけではありませんが、リターゲティング広告もプッシュ広告の一つです。規制の有無に関係なく、企業としてはユーザーに選ばれる広告施策 (マーケティング)が必要だといえるでしょう。
サードパーティークッキーを使わない広告施策として、コンテキスト広告(コンテクスチュアル広告)が注目されています。
●適法にサードパーティクッキーを使うマーケティング
上記の他に、サードパーティクッキーの活用を適法に行うという方法もあります。個人情報の利用で一番問題となっているのは、ユーザー(個人)の同意を得ることなく情報を収集し、使い道に関しても同意を得ることなく使うことです。サードパーティクッキーを含む個人情報を収集する際には、以下のようなゲートを設け、ユーザーに同意を得ることが重要となります。
・クッキーを発行する際(履歴を取得する際)には、ユーザーから同意を得る。ユーザーが未成年の場合は、親権者に同意をしてもらう。
・ユーザーからのデータ開示や削除要求に対応する。
・データを第三者には提供しない。もしくはユーザーから第三者提供への同意を得る。
サードパーティクッキー廃止への対策については、本コラムの別記事「サードパーティクッキーの廃止による影響と実施するべき対策とは?」をご覧ください。