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インサイドセールス導入は「やめとけ」と言われる理由と対処法を解説

ライター:荒池 和史

公開日:2024年12月09日 | 更新日:2024年12月10日

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目次

インサイドセールスとは、メールや電話を駆使した非対面型の営業手法のことです。外勤営業(フィールドセールス)と対をなすポジションとして位置づけられています。インサイドセールスの導入により、リードタイム(検討期間)が長期間にわたる商材であっても、見込み顧客の購買意欲が高まったタイミングでアプローチが可能です。

また、近年は営業担当者の人手不足や働き方の多様化が加速しており、限られた人員で多くの顧客をカバーできるインサイドセールスに注目が集まっています。

インサイドセールスは「やめとけ」と言われる主な理由

そもそもなぜインサイドセールス導入は「やめとけ」と言われるのでしょうか。インサイドセールスに特有の課題について解説します。

 

 

一人あたりが担当する顧客数が多い

インサイドセールスとは、メールや電話を活用して非対面で営業活動を進める手法のことです。外勤営業(フィールドセールス)とは異なり、リード(見込み顧客)を直接訪問しないため、担当者一人あたりがより多くのリードを担当できる点が大きな特徴といえます。

限られれた人員で多くの顧客に応対できることはメリットである反面、担当者にかかる負担が大きくなりやすいというデメリットにもなり得ます。顧客情報や対応履歴の管理が複雑になりやすいことに加え、担当する顧客数は年々増えていくのが一般的だからです。担当者に少なからず負担がかかる可能性があることは、インサイドセールス導入に対して「やめとけ」と言われる要因の1つと考えられます。

 

 

マーケティング部門とフィールドセールス部門の板挟みになりやすい

インサイドセールスはマーケティング部門とフィールドセールス部門の橋渡し役となるケースが少なくありません。マーケティング部門の分析結果が実態と食い違っていれば、商談に臨んだフィールドセールス部門の担当者から苦言を呈されることもあるでしょう。このような状況ではインサイドセールス部門の責任が問われるケースもあるため、担当者の精神的な負担が大きくなりがちです。

また、フィールドセールス担当者が従来の営業手法にこだわってしまい、インサイドセールス部門が収集した情報をあまり信用しないこともあり得ます。最終的に商談をまとめるのはフィールドセールス部門のため、インサイドセールス部門の立場が弱くなってしまう場合もあるのです。

 

 

見込み顧客との信頼構築に長期間を要する

インサイドセールスは、リードタイム(検討期間)が長期にわたる商材に適した営業手法といえます。今すぐに購入・契約する予定がないリードとの間にじっくりと信頼関係を築いていくことにより、購買意欲が高まったタイミングで商談を設定できるのです。

見込み顧客との信頼構築は、一朝一夕に実現できるものではありません。数ヶ月〜半年、場合によっては年単位で地道にやり取りを続けた末に、ようやく案件化へと移行できるケースも少なくないのです。よって、短期間で成果を上げたいタイプの人にとっては手応えを感じにくい手法といえます。時間をかけて見込み顧客との信頼を構築していくプロセスを回りくどく感じる人もいることから、インサイドセールスは「やめとけ」と言われやすいのです。

 

 

フィールドセールスとの情報共有にハードルがある

インサイドセールス担当者は営業出身者だけでなく、マーケティング出身者など多様なバックグラウンドをもっていることが想定されます。外勤営業担当者が商談に向けて必要とする情報と、インサイドセールス担当者が重視する情報との間にギャップが生じることもめずらしくありません。

こうしたギャップは、部門間での円滑な情報共有を妨げる恐れがあります。フィールドセールス部門にとってインサイドセールス担当者の提供する情報があてにならないと感じたり、反対にインサイドセールス部門から見るとフィールドセールス担当者が意図通りに動かないと感じたりするといったように、お互いにストレスを抱えやすいからです。情報共有に一定のハードルがあることも、インサイドセールス自体が「やめたほうがいい」と言われる原因の1つと考えられます。

 

 

担当者のモチベーションを維持するのが容易でない

前述のとおり、インサイドセールスの特性上、リードとの信頼構築に期間を要するケースが多くなることが想定されます。リードとの関係性に進展が見られないまま、やり取りを続けなくてはならない期間が生じる場合もあるでしょう。こうした期間に担当者のモチベーションを維持するのは容易ではありません。

モチベーションの維持が困難になる要因として、インサイドセールスの成果地点や評価指標が曖昧になりやすい点が挙げられます。中長期にわたる施策となることを前提に、具体的な成果地点・評価指標を決めておく必要があるでしょう。

 

 

インサイドセールス導入の課題に対処する方法

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インサイドセールスの導入に伴って発生しやすい課題は、どのように解決を図っていけばよいのでしょうか。5つの具体的な対処方法について解説します。

 

 

客観性の高いKPI・KGIを設定する

インサイドセールスに求められる役割は、主に次の3点です。

・見込み顧客と深い信頼関係を築くこと

・商談化すべきタイミングを適切に見極めること

・フィールドセールスに見込み顧客を引き継ぎ、提案活動へとつなげること

したがって、これらの役割をどの程度果たせているかが客観的に確認できるKPIKGIを設定する必要があるでしょう。具体的には、以下のような項目が想定されます。

・コネクト数:アプローチしたい相手と直接会話した回数

・商談化件数:アポイントから商談へとつながった件数

・商談への貢献率:商談全体に対してインサイドセールスが貢献した金額・件数

客観性の高いKPIKGIを設定することにより、インサイドセールスの目的を見失わないようにすることが大切です。

 

 

インサイドセールスの役割を周知する

インサイドセールスが営業プロセスの中でどのような役割を果たし、その役割がなぜ重要なのかをマーケティング部門やフィールドセールス部門にも理解してもらいましょう。リードナーチャリング(顧客育成)の概念とその重要性について、営業プロセスに関わる全部門の関係者が出席する研修会や勉強会を開催することをおすすめします。

同じ組織内で働いている従業員であっても、果たすべき役割が異なると相互理解を図りにくくなることは決してめずらしくありません。お互いの役割や存在意義を知り、尊重し合える組織風土を醸成していくことが重要です。

 

 

部門間の連携方法を確立する

見込み顧客の購買意欲に応じて営業プロセスを分業化することは、同一の見込み顧客を複数の部門が担当することを意味します。部門間の連携が不十分な状態が続くと、お互いに不信感を抱く原因にもなりかねません。

コミュニケーションや情報共有に役立つツールを導入するなど、仕組みのレベルで連携不足を回避する工夫が求められるでしょう。担当者の個人的な気配りや努力によってコミュニケーションが成立しているような状況を、できるだけ作らないようにすることが大切です。

 

 

顧客管理ツールを活用する

インサイドセールスでは担当者一人あたりが応対する顧客数が多くなりやすいことから、複数の担当者が顧客情報を共有・管理できる仕組みを整えておく必要があるでしょう。具体的には、顧客情報や対応履歴などを管理するCRM、購買意欲のスコアリングやシナリオ作成・実行などを支援するMA、フィールドセールスにリードを引き継ぐ際の情報共有・案件管理を支援するSFAといったツールが挙げられます。

こうしたツールを導入する本質的な目的は、「誰が担当しても高均一な対応ができるようにすること」です。担当者の個人的な感覚や経験則に依存することのないよう、各種ツールを軸とした施策設計をしていくことが重要です。

 

 

必要に応じてアウトソーシングも検討する

インサイドセールスの導入・実行は、必ずしも社内で完結させる必要はありません。自社のリソースやノウハウの状況によっては、アウトソーシングを活用することも検討しましょう。

アウトソーシングを活用することで、インサイドセールスの実績がある委託先のノウハウを活用できます。また、社内の負担を軽減し、より少ないリソースでインサイドセールスを導入できる点も大きなメリットです。リソースやノウハウ面がインサイドセールス導入のボトルネックとなる公算が大きいようなら、アウトソーシングの活用も視野に入れて施策設計を検討することをおすすめします。

 

 インサイドセールスを導入するメリット【企業編】

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ここまでに見てきたとおり、インサイドセールスの導入・実行にはさまざまなハードルがあることから、あたかもインサイドセールス自体が避けるべき施策であるかのように受け取られがちです。一方で、想定される課題を一つひとつ解決し、インサイドセールスを効果的に導入することで得られるメリットも多々あります。

まずは、インサイドセールス導入によって企業が得られるメリットを見ていきましょう。

 

 

受注や案件化の精度向上を実現できる

インサイドセールスはリードとの関係性をじっくりと深め、信頼関係を築いていく上で有効な施策です。リードの購買意欲が高まったタイミングでアプローチできるため、商談の成功確度を高める効果が期待できます。

フィールドセールスのみで受注・案件化を目指す場合、飛び込み営業で接点を作り、接点ができたリードの元に足しげく通うといった、いわゆる「足で稼ぐ」営業活動が中心となります。営業担当者にとって体力的・精神的な負担となりやすいことに加え、安定的な受注を実現するのは容易ではありません。こうした課題を解決できる点が、インサイドセールスを導入するメリットの1つです。

 

 

安定的な売上確保につながる

リードを育成し、購買意欲を少しずつ高めていくことによって、従来であれば逃していた可能性が高いリードの顧客化を促進できます。結果として機会損失のリスクを抑制し、安定的な売上確保につなげられるのです。

リードによっては、さまざまな事情から即座に購入・契約へと踏み切れない状況に置かれていることも想定されます。たとえば、現在使用しているシステムの契約期限が半年先であれば、少なくとも半年間は現状のシステムを使い続けるという判断を下すケースもあるでしょう。裏を返せば、契約期限が切れる前にタイミングよくアプローチすることで検討の俎上に載る可能性が高まります。このように、リードの状況にあわせて対応しやすくなることも、インサイドセールスを導入する大きなメリットです。

 

 

多様な働き方に対応しやすい

インサイドセールスは非対面の営業手法であることから、場所を選ばず就業できるというメリットがあります。テレワークや時差勤務といった働き方とも親和性が高く、柔軟な働き方を取り入れやすくなるのです。

フィールドセールスは対面での営業活動が前提となるため、訪問先の都合にあわせて動かなくてはならない事情を抱えています。ライフステージの変化などに伴い、優秀な営業担当者が外勤営業に携わるのが困難になるケースも少なくありません。インサイドセールスであれば、優秀な営業担当者に引き続き能力を発揮してもらえるのです。

 

 

業務の属人化を回避できる

インサイドセールスでは複数の担当者が同一のリードに応対することが前提となるため、業務の属人化を回避できるというメリットがあります。特定の営業担当者が顧客を囲い込むのではなく、会社の顧客として情報を共有できる点が大きな利点です。

業務の属人化は組織にとってリスクとなり得ます。たとえば、営業担当者の急な退職や休職に直面した場合、後任の担当者はイチから関係性を築いていかなくてはなりません。顧客側から見た場合、後任の担当者が頼りなく映ってしまうでしょう。情報共有不足は自社に対する顧客の信頼を低下させる直接的な原因となります。こうしたリスクを回避できることも、インサイドセールスを導入するメリットの1つです。

 

 

人手不足への対応策としても有効

インサイドセールスはフィールドセールスと比べて、一人あたりの担当者が対応できる顧客数が多くなります。物理的な移動を伴わないため、地理的要因に影響を受けることなく営業活動を進められるからです。

最小限の人員で営業活動を進められることは、人手不足への対応策としても効果を発揮します。採用や人材育成に要するコストを削減できるだけでなく、フィールドセールス担当者の負担を軽減させる上でも有効な施策といえるでしょう。

 

インサイドセールスを導入するメリット【担当者編】

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インサイドセールスの導入は、担当者にも多くのメリットをもたらします。具体的なメリット面は次のとおりです。

 

 

営業・マーケティングスキルが身につく

インサイドセールスに特有の非対面による営業スタイルには、対面営業にはない難しさがあります。テキストベースが中心のコミュニケーションや、相手の顔が見えない状況下で行われる購買意欲の分析など、対面であればあまり直面することのない課題が発生しがちです。

こうした課題を乗り越えていくには、必然的に営業スキルやマーケティングスキルの研鑽が求められるでしょう。担当者に高いレベルでの学習意欲やスキル習得が求められることは、スキルアップのチャンスが豊富であることを意味しているのです。

 

 

データの分析能力を伸ばせる

リードとの関係構築は、うまくいくケースばかりとは限りません。しかし、成功事例だけでなく失敗事例も含めて経験を積むとともに、リードへの対応履歴や分析データが蓄積されていくことにより、データにもとづく判断の精度が着実に高まっていくでしょう。

データの分析能力は、今やインサイドセールスに限らずあらゆるビジネスパーソンに求められている資質の1つといえます。実務を通じてデータにもとづく検証や施策の実行を学べることは、インサイドセールスを経験する大きなメリットです。

 

 

見込み顧客との信頼構築のプロセスを体験できる

インサイドセールスの担当者はリードとの信頼関係をイチから築いていく必要がある反面、信頼構築のプロセスを目の当たりにできるというメリットがあります。はじめは関心を寄せていなかったリードが徐々に変容し、成約に至る過程を繰り返し体験できるのです。

こうした信頼構築のプロセスは、長年の営業経験を通して実感できるものとされてきました。リードとの対応履歴や購買意欲のスコアリングといったプロセスが記録されるインサイドセールスだからこそ、こうした体験をより短期間のうちに数多く得られるのです。

 

 

調整能力が身につく

インサイドセールスの導入は、営業プロセスの細分化を意味します。マーケティング部門やフィールドセールス部門と連携して業務を進めていくことが前提となるため、他部門との意見や利害関係の調整・交渉は必須です。実務を通して調整能力が身につくことは、インサイドセールスを経験する大きなメリットといえるでしょう。

ビジネスパーソンにとって、調整能力は強力なポータブルスキルの1つといえます。立場や役割の異なる相手と適切なコミュニケーションを図り、問題を解決していくスキルが身につくことで、今後のキャリアの選択肢も広がっていくはずです。

 

 

アップセル・クロスセルに貢献できる

インサイドセールスの職務は、商談成立後も続きます。リードが顧客になってからもやり取りを継続することにより、アップセルやクロスセルにつながる可能性があるからです。

新規顧客の獲得難度が高まっている昨今、既存顧客のフォローを通じた売上伸長は組織にとって重要なテーマの1つといえます。新規顧客をコンスタントに獲得し続けていくことが現実的に難しくなりつつあるため、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)を最大化し、売上を伸ばしていく必要に迫られているのです。自社にとって重要な売上の柱となる役割を担えることは、インサイドセールスを経験するメリットの1つといえるでしょう。

 

まとめ

 

インサイドセールスの導入について「やめとけ」といった否定的な意見が聞かれる背景には、従来の営業手法とは異なるインサイドセールス特有の課題があります。一方で、インサイドセールスだからこそ得られるメリットが多々あるのも事実です。今回紹介した課題への対処方法を参考に、ぜひインサイドセールスのスムーズな導入を実現してください。

 

 

 

※このコラムは「マーケのカチスジ」で2024月1月25日に公開された記事を移行したものです。

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荒池 和史
WRITER
荒池 和史
新卒でセブン‐イレブン・ジャパンに入社、イー・ガーディアン株式会社で取締役や子会社の代表を経験後、現在はネオマーケティングで事業全体の管掌と新規事業開発に取り組んでいます。

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