タグラインの重要性について
ライター:土田 琢磨
公開日:2022年06月10日
| 更新日:2024年10月21日
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タグラインとは、企業や商品の思いやビジョンを身近な表現で表した「合い言葉」です。
ブランディングの礎となるもので、タグラインにこめたメッセージは生活者の行動に大きな影響を与えます。
それを実証すべく、今回、ネオマーケティングでは自主調査を実施しました。その結果は…意外なものであり、タグラインの重要性を再認識させられるものでした。
ブランディングの根幹となる「タグライン」
タグラインは商品やサービスに込めた思いを生活者に端的に伝え、同時に、社内に向けて自分たちが大切にすべき“志”を示すものです。タグラインは事業をドライブさせるエンジンにもなりますし、商品開発のブレない軸にもなります。
たとえば、ライザップは「結果にコミットする。」というタグラインのもと、ダイエットだけでなく、英会話やゴルフ、シニアの健康管理などのサービスへも事業を拡張。
また、ミツカンは「やがて、いのちに変わるもの。」をタグラインに掲げ、お酢だけにとどまらない、健康をキーワードにしたさまざまな商品を世に送り出しています。
リンク:
「タグラインとキャッチコピーはどう違うのか」
https://column.neo-m.jp/column/marketing-research/-/3459
タグラインは、ブランドの思いや世界観をより丁寧に伝える文章「ステートメント」と視覚的に伝える「キービジュアル」とともに開発していきます。
タグライン+ステートメント+キービジュアルが一体となってブランドの礎となり、広告やウェブサイトなどの各種制作物へとつながっていきます。タグラインはブランド戦略の根幹をなす、極めて重要なものなのです。
タグラインによって変わる生活者の印象
タグラインはとても重要なものですが、一方で言葉の持つ影響力はなかなかイメージしにくいものです。そこで今回、ネオマーケティングは生活者のブランド意識はタグラインによってどう変わるのかを調査することにしました。
その方法は、あるブランドに対しAとBの2種類のコピーを用意。アンケートでどんな印象を抱いたのかを尋ねるかたちで行いました。
2種類のコピーは次のように切り口を変えて比較します。
コピーA:商品と直接関係ない、日本・世界・社会といった主語が大きいコピー
コピーB:「あなた」に直接メリットを感じさせるコピー
そのコピーが以下になります。No.1からNo.4が男性対象、No.5からNo.8は女性対象のコピーです。
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A 主語が大きい既存のコピー |
B 「あなた」にメリットを感じさせるコピー |
No.1 飲食業 |
日本を美味しく |
肉汁が日本を元気にする |
No.2 機能性飲料 |
エナジードリンクの常識が代わる |
ちょっとジブン再起動 |
No.3 スポーツメーカー |
スポーツによる社会の発展に貢献する |
練習も本番も、ずっと味方だ |
No.4 ヘアケア |
植物研究のたゆまぬ歴史が、商品力の源 |
自然体で生きてきた植物のチカラを、あなたに |
No.5 スキンケア |
私たちは安心安全に徹底的にこだわる |
肌も暮らしも包み込むコラーゲン |
No.6 穀物食品メーカー |
The Kokumotsu Company |
実は、あなたも食べている |
No.7 医薬品製造会社 |
次のすこやかさへ、一歩一歩 |
じっくり温めるから、元気、持続する |
No.8 ヘアケア |
植物研究のたゆまぬ歴史が、商品力の源 |
自然体で生きてきた植物のチカラを、あなたに |
基本的にコピーAは、既存のコピーを使用しています。一方、コピーBはネオマーケティングが考案したオリジナルのものです(ただし、No2についてはABともに既存のコピー。No4,No8についてはABともにネオマーケティングが考案)。
一般的に、自分自身にメリットが感じられるコピーが生活者に届くといわれています。自分事になると心が動き、行動に移しやすく、結果として商品やサービスの売り上げアップにつながるーー。コピーBはこのコピー制作のセオリーにのっとったものです。
これらのコピーをロゴと一緒に見てもらい、魅力度を5段階で、購入意向を7段階で評価してもらいました。また、同時に「好感がもてる」「新しさを感じる」「独自性がある」「わかりやすい」といった印象についても聞いていきました。
※全国20~59歳男女 3200サンプル。1ブランド2コピーに対して性年代均等で400sずつ回収・回答
調査の結果、2つの発見がありました。
●女性は、この商品・サービスが「自分に何をもたらすのか?」という直接的にメリット(ベネフィット)を感じられる表現を好む。
●男性は、自分に直接もたらされるメリットを訴求したメッセージよりも、日本・社会・業界を通じて間接的に自分に影響がある表現を好む傾向がある。
以下、詳しく見ていきましょう。
女性ターゲットには「あなたに」が響く
女性を対象に行ったNo.5からNo.8の結果が以下になります。
魅力度や購入意向度、印象についてポジティブな回答の割合を示し、コピーAとコピーBの差(B―A)をまとめています。
「あなた」のメリットを強調したBの評価が目立って高い結果はグリーンに、主語が大きなAの評価が高いものについては水色にマークしてあります。
結果は一目瞭然。女性をターゲットしたNo6〜No8に関しては、コピーBのほうが多くの人の心に刺さったことがわかります。
また、「あなた」へのメリットを打ち出したコピーに「独自性がある」「わかりやすい」という印象を抱くと、購入意向が高まるという傾向がわずかながら見られました(No.6〜No.8)。
つまり、「独自性がある」という印象は「私向けのものだ」と受けとめらやすく、「買いたい」気持ちに影響する。商品開発において「独自性」は極めて重要です。ただし、それが生活者のメリットとして“わかりやすく”伝わらなければ、購買にはつながりにくいといえます。
男性は大きな主語から自分ゴトに引き寄せる
男性をターゲットとしたNo.1からNo.4の結果は以下になります。ほとんどグリーンがなく、「あなた」のメリットを強調したコピーがあまり響いていないことがわかります。No1の飲食業にいたっては、好感度・信頼性・共感性などほとんどの印象について、主語が大きいコピーAのほうが高い評価となりました。
先に指摘したように、コピーのアプローチの基本は、「あなた」にメリットがあるかどうかです。
女性はストレートに「この商品・サービスが自分に何をもたらすのか」という、より直接的なメリットを重視し、それを感じられる表現を好む。
一方、男性は「日本に〇〇をもたらす」「社会に〇〇であり続けたい」「業界の〇〇を変える」「研究を〇〇年」といったビジョンや歴史を通じて、間接的に自分へのメリットを感じていると推察できます。
今回は、「あなた(自分)」への距離感を意識的に変えたコピーで比較しましたが、切り口を変えることで、男性に響くコピーの特徴を探っていけるはずです。
タグラインによって印象もメッセージも変わる!
この結果は正直、意外なものでした。と同時に、改めて痛感するのは、言葉一つで、これだけ印象が変わる、ということです。
自社の商品やサービス、あるいは会社全体のタグラインは生活者に届いているでしょうか? 直接的にしろ間接的にしろ、生活者に対してメリットやベネフィットが伝わっているでしょうか?
ネオマーケティングでは、クリエイティブディレクターがタグラインからキービジュアルの開発までをサポートしており、リサーチを活用してコピー表現のトライアル検証も行っています。
みなさんが考えている以上に、言葉の持つ影響力は大きいものです。高らかに掲げている企業の理念、誇るべき商品やサービスがあったとしても、そのメリット(ベネフィット)が伝わらなければ意味がありません。
言葉=タグラインは、生活者とのコミュニケーションのきっかけとなる重要なものです。ブランド施策をワンステージ高めていきたいと考えるならば、タグラインの見直し・開発を検討してみてはいかがでしょうか。
ネオマーケティングは国内約2889万人のアンケート会員を保有するパネルネットワークを構築、ご希望の調査対象者にリサーチを実施することが可能です。
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