顧客の心に訴えるブランドストーリーの作り方とは?
ライター:株式会社ネオマーケティング
公開日:2022年05月28日
| 更新日:2024年10月25日
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ブランドマーケティングにおいて、中核的な役割を果たすのが「ブランドストーリー」です。顧客の心に訴える魅力的なブランドストーリーは、どのように作成されるのでしょうか。
本コラムでは、ブランドストーリーに必要な要素と実際の作り方について解説します。
ブランドストーリーとは
ブランドストーリーとは、ブランドのコンセプトやユーザーと共有したい価値観を伝えるためのストーリーを指します。自社のルーツや提供している価値を象徴的に伝え、顧客の感情に訴えかけることがブランドストーリーの主な役割です。
私たちは、常日頃から物事をストーリーとして認識しています。出来事には原因やきっかけがあり、心境の変化や気づきを与え、記憶に残っていくものです。人は物事を「点」で捉えているのではなく、物事と物事を無意識のうちに「線」で繋ぎながら理解しています。
商品を購入する場合も同様です。顧客が購入するのは商品そのものですが、商品という「点」だけを見ているのではありません。市場に商品が行きわたった現代において、顧客は「暮らしに必要不可欠だから買う」のではなく「自分らしい選択の一つとして買う」からです。
企業がなぜ商品を作り、消費者の手に届けているのかという「線」を伝えることが、ブランドストーリーの目的といえるでしょう。
なぜブランドストーリーが重要なのか
ブランドストーリーがブランドマーケティングの中核的な役割を果たすことは冒頭で触れた通りです。では、なぜブランドストーリーが重要とされているのでしょうか。ここには主に二つの理由があります。
●消費者は感情で購入する
消費者は感情で購入し、購入後に理屈で正当化するといわれています。高機能であること・高品質であることは、理屈の上では購入するべき理由になるかもしれません。しかし、実際は理屈だけでは購入に至る十分な動機となり得ないことが多いものです。
フットウェアメーカーのTOMSでは、靴が一足売れるごとに靴が必要な子どもに一足寄付するOne for Oneキャンペーンを掲げています。消費者は「自分が欲しい靴を買う」だけでなく、「靴が必要な子どもに靴を届ける」という社会貢献活動に参加しているのです。
TOMSの事例では、「自分と同じように靴が必要な子どもがいる」という感情が、同社の商品を選ぶ強力な動機を生み出しています。ブランドストーリーには機能性や品質といった「点」の情報を、消費者の感情を動かす「線」へと昇華させる力があるのです。
●世界観への共感が購入の動機となる
ブランドストーリーは企業が提唱する世界観への共感を促し、購入を決断してもらう動機付けとなります。安易に価格競争へと突入するのではなく、価格によらず消費者に選ばれる企業へと脱却するための原動力となるのです。
革製品を扱うココマイスターでは、革職人が一点ずつ手作りした製品を会員限定で販売しています。大量生産の時代にあえて「手作り」を打ち出すことで、同社の製品は顧客にとって「自分のために作られた特別なもの」となるのです。顧客は製品が製作されたアトリエの様子を想像し、他社製品とは異なる大切な持ち物として製品に愛着を感じるでしょう。
ココマイスターの事例では、革製品の製造工程に込められた世界観を顧客も共有しています。ブランドストーリーは世界観への共感を促し、他社ではなく特定の企業の商品を購入する動機となるのです。
ブランドストーリーに必要な五つの要素
効果的なブランドストーリーを構築するには、いくつか満たしておくべき要素があります。ブランドストーリーを作成する際は、次のポイントを押さえることが大切です。
●顧客に向けて語られていること
ブランドストーリーは顧客に向けて語られていなければなりません。自社の商品が「いかに素晴らしいか」「どのような点が優れているか」といったことを語っても、顧客にとって意義のある情報にはなりにくいでしょう。
顧客が関心を持っているのは、基本的に自分自身に関わることです。自身の価値観を代弁してくれるストーリーや、理想とするライフスタイルを実現するためのストーリーに顧客は惹かれます。
顧客が自分自身に置き換えてイメージできることが、ブランドストーリーに必要な条件の一つです。企業側の「自分語り」「独りよがり」にならないよう注意しましょう。
●パーソナルな内容であること
ブランドストーリーは、パーソナルな内容であるほど顧客の心をつかむ傾向があります。創業者のどのような体験がきっかけとなって事業がスタートしたのか、といった創業物語はパーソナルなブランドストーリーの典型です。
たとえば、アリババ創業者のジャック・マー氏は数十回にわたる受験や就職、起業の失敗を経て現在のアリババグループを築いたことで知られています。決して順風満帆ではなく、幾多の失敗を経て成功をつかんだストーリーに顧客は引き込まれ、自分自身を重ね合わせるはずです。
パーソナルなストーリーに顧客は自分自身を投影させ、自分にとって特別な企業と認識します。誰にでも当てはまる無難なストーリーではなく、パーソナルかつ強烈な原体験こそがブランドストーリーを魅力的なものにするのです。
●感情に訴えかけること
ストーリーには感情に訴えかける力があります。心に響くからこそ強く印象づけられ、ロジックでは超えられない強力な顧客エンゲージメントを実現するのです。
たとえば、自動車メーカーが車の性能がいかに優れているかを長々と紹介しても、よほど車に関心のある一部の顧客を除いて心に残るものは少ないでしょう。一方、カーライフを通じて家族が絆を強めていくストーリーであれば、多くの人が心を揺さぶられる可能性があります。
このように、「説明」ではなく「感情に訴えかける物語」であることがブランドストーリーとして非常に重要な要素といえます。
●メッセージがシンプルであること
複雑に入り組んだストーリーでは、顧客の心に届きにくくなってしまいます。ストーリーに込めるメッセージは、できるだけシンプルでストレートなものにするべきでしょう。
優れたブランド戦略としてしばしば引き合いに出されるのがコカコーラ*です。ブランドロゴに「Enjoy」と表記されている通り、楽しい時間を提供するというブランドストーリーで貫かれています。楽しい時間を過ごしてほしいというメッセージは非常にシンプルで、かつ普遍的です。現に、コカコーラは年齢や性別を問わず、時代を超えて愛され続けています。
シンプルなメッセージを込めるといっても、キャッチコピーが短ければいいわけではありません。直感的に理解でき、共感を得られるシンプルなストーリーが求められているのです。
●オリジナリティがあること
シンプルで共感を得やすいストーリーを追究していくと、どこにでもある平凡なブランドストーリーになりがちです。そこで、あえて「ひねり」を加えてオリジナリティを演出することが重要になります。
EVメーカーとして知られるTeslaは、当初から自らを自動車メーカーではなく「テクノロジー企業」と称しています。もし同社が「高性能電気自動車メーカー」を掲げていたとしたら、他の自動車メーカーに埋もれていたでしょう。
ただし、オリジナリティはインパクト狙いであってはなりません。顧客に理想的なライフスタイルを提供したいという強い思いやパーソナルな体験こそが、結果としてブランドストーリーにオリジナリティを与えるのです。
ブランドストーリーの作成ポイント
ブランドストーリーを作成する際の大きな流れとポイントを確認していきます。商品の機能性や優位性といったロジックをいったん離れ、次の手順でブランドストーリーを築いていきましょう。
●自社の原点を再確認する
ブランドストーリーの根幹を支えるのは「自社の存在意義」です。自社がなぜ世の中に存在するべきなのか、提供するべき価値は何であるのか、原点に立ち返って再確認しておく必要があります。
自社の存在意義を明確化する上でヒントになるのが創業の動機です。既存の企業が見過ごしてきた課題や解決されていない問題があるからこそ、創業を決意したという事業者は少なくないはずです。自社の原点に立ち返ることで、存在意義を再確認しておきましょう。
●理想とする顧客像を設定する
ブランドストーリーを構築する際に「ターゲットを明確にすることが重要」とよくいわれています。しかし、ここでのターゲットは現状想定し得る顧客に限定しないことが重要です。顧客となるべき層・商品を手にするべき層を理想的な顧客像として設定しましょう。
ブランドストーリーは顧客を変容させる力を持っています。スマートフォン市場におけるiPhoneの国内シェアは67%に達していますが、商品の価格帯から考えれば驚異的な数値といえるでしょう。Appleのブランドストーリーに共感したユーザーにとって、価格は購入を見合わせる本質的な理由にはならないのです。
●コアとなる世界観を定める
ブランドストーリーは商品ごとに設定するものではなく、企業が一貫して伝えていくべきものです。長期的に打ち出していく以上、ブランドストーリーは普遍的でなくてはなりません。
自社が届けたい・実現したい価値は何であるのか、コアとなる世界観を定めておく必要があります。ブランドカラーやロゴ、プロダクトデザインやパッケージに至るまで、すべてに通じる世界観を形成することがブランドストーリーのゴールであり、出発点でもあるのです。
まとめ
ブランドストーリーは、ロジックでは伝わらないブランドの価値観や世界観を伝える役割を果たします。顧客に響くブランドストーリーを構築するには、自社が世の中に届けたい価値を深く見つめ直すことが大切です。ぜひ本記事を参考に、魅力的なブランドストーリーを生み出してください。
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