コモディティ化とはある市場が活性化した結果、メーカーごとの差がなくなり同質化することを指すマルクス経済学の用語です。特定の分野ではなくあらゆる製品・サービス・アイディア、そして人材がコモディティ化するリスクを持っています。
本記事では、
• コモディティ化とは一体なにか
• コモディティ化を防ぐための3つの方法
• コモディティ化を防いだ企業とあえて選んだ事例
について紹介していきます。
コモディティ化とは?プロダクトの同質化
コモディティ化とは、市場の活性や競争を経て製品間の品質や機能の差がなくなることで、製品やサービスの一般化とも言われます。
市場に参入した時には、品質が高く付加価値もあると判断されていたプロダクトが、他社参入によりその価値や独自性が薄れコモディティ化に繋がるとされます。
コモディティ化した市場は品質のレベルはある程度上がっている状態なので、低価格化に進むしかなく低価格競争が激化する事例もあります。
また、コモディティ化した製品は価格弾力性が高くなります。
価格弾力性とは「価格によって需要や供給の度合いが変化する」度合いのことを指し、価格弾力性が高いと価格によって需要が変化しやすいことを意味します。
つまり安くないと需要がないので、一度価格競争に入るとその状態から脱するのが難しくなってしまいます。
コモディティ化した製品の例として、コーヒー、牛丼、薄型テレビなどが挙げられます。
では、コモディティ化は消費者と企業側にどのような影響を与えるのか見ていきましょう。
消費者から見るコモディティ化
消費者からすると、製品のコモディティ化はメリットもあります。
品質の高い製品を安く買えるというのは、消費者にとっては新興品や高額な製品ではない普及品でも機能や性能が優れているというのは大きな利点と言えるでしょう。
コモディティ化して低価格化した製品は薄利多売となるケースが多く、供給量も増えるのでどの地域に住んでいても手に入りやすくなります。
一方で、コモディティ化により選択肢が少なくなるというデメリットも存在しています。
マジョリティから外れた機能や性能、デザインにニーズがあっても、コモディティ化した市場の中では探すのが難しいこともあるでしょう。
企業側から見るコモディティ化
グローバル経済の発展や情報社会によって、昔と比べてコモディティ化までのスピードは早くなってきています。
企業側としては、
• 価格競争による利益率の低下
• 同質化による営業の難化
• 開発・投資額の縮小
などの影響が出ると考えられます。
また、コモディティ化は製品だけではなく人材にも当てはまります。
人材のコモディティ化は技術の進歩やその技能を持つ人が増えることでに、技能や知識の価値が相対的に下がることを指します。今後AIの進化によって人間の仕事を奪い、人材のコモディティ化が進むと考えられています。
コモディティ化を防ぐための差別化
コモディティ化を防ぐためには、製品の差別化をして優位性を保つことが大切です。
差別化に繋がる3つの施策について、詳しくご紹介します。
ブランディング
そのブランドを持ちたいと消費者に思わせるためのブランディングは、必要不可欠でしょう。
適切なブランディングを行うには、綿密な市場分析が必要です。
フレームワークを駆使し市場の状況や消費者のニーズ、競合他社の分析などを行い計画を作成してミッションを決めて行きましょう。
2020年代のブランディングには「ソーシャルグッド」な要素が求められる傾向があります。
ただ単にブランドとして魅力的というだけでなく、環境、人権などに関する取り組みを積極的に行う企業が増えてきています。
付加価値を付ける
コモディティ化を避けるための付加価値には注意が必要です。
それは、「消費者が不要な付加価値は無意味」ということ。
かつて隆盛を誇った日本の家電業界ですが、アメリカのジャパンバッシングから90年代のアジア新興国の台頭により国際的なシェアを大きく減少させました。
そこで多くのメーカーが高付加価値化を進めましたが、消費者が求めていない機能を付け、高価格化することで海外のメーカーに大きく遅れを取ることになり「ガラパゴス化」とも言われるようになりました。
色々な機能を付けることで企業側も開発投資分がそのまま負担になるリスクもあります。
現在多い付加価値の付け方は、シンプルな機能に特化したもの。
必要最低限の機能でデザイン性が格段に高い製品や、1つの機能を極めたものなど。とくに家電や調理器具で多く見られるようになりました。
体験を提供する
ここ数年分野を問わずに行われているのが、「体験型ブランディング」です。
体験とは消費者が実際に製品を使うこと、裏側や世界観に共感する心理的なことも含まれます。
具体的な施策としては、
• 製品体験に特化したショールーム的な店舗を作る
• 消費者をオンラインミーティングに参加
• 製造過程やこだわり、失敗などの裏側をストーリーとして提示
• 自社製品を使った店舗や宿泊施設の運営
• 製品を使ったライフスタイルの提案
• 店舗接客の強化
• SNSと連動したキャンペーン
などが挙げられます。
ブランド→消費者の一方的なコミュニケーションではなく、双方向コミュニケーションによりブランドを共創している実感が得られる体験型ブランディングが主流となっています。
Ankerに見る脱コモディティ化のヒント
Anker (アンカー) Japan公式サイト
モバイルバッテリーやケーブルなど、充電関係のアイテムを多数販売している「Anker」。
今ではコンビニでも取扱があるほど身近な存在となりましたが、その戦略には脱コモディティ化のヒントがあります。
競争力のあるECプラットフォームを利用する
Ankerはブランド創業時から自社チャネルではなく大手ECのプラットフォームを軸に置いていました。
知名度もない時から自社チャネルで誘導の施策を打つよりも、最初から潜在購買者が集まる大手ECを利用して合理的に広告依存度を下げることを狙ったと言います。
また、入金サイクルの早い大手ECを選んで、売上を開発資金に回せて早いサイクルで新商品リリースができたことも急成長に繋がっています。
確かな品質の製品を作る
もちろん数多くの製品が並ぶ大手ECの中で生き残るためには、製品の品質も求められます。
特別な機能を付けず求められる性能がしっかりとしていてコストパフォーマンスが高い製品であると、口コミで話題を集めカテゴリランキングで1位を達成しました。
ニッチなニーズを見逃さない
これは創業者のスティーブン・ヤン氏の顧客体験に基づく戦略で、当時ノートパソコンのスペアバッテリーは、品質とサポートが良い高額の純正品か、安いけれど品質が劣る無名メーカーの2択だったそう。
その隙を突き、「品質とサポートは純正品並みだが、高すぎない価格設定」の製品を販売することで、競争力のある大手ECの中でシェアを伸ばしました。
これらのAnkerの戦略は、今からすると当たり前という感じもしますが2010年代初めでは画期的なものでした。
EC全体の市場は拡大しているので、異なるプロダクトでも再現性があると言えるでしょう。
あえてコモディティ化戦略を選ぶ会社もある
コモディティ化は企業にとってはデメリットも大きいので、どの会社も対策に尽力しています。
しかし、中にはあえてコモディティ化を選ぶ会社も存在するようです。
2000年代初頭の話になりますが、当時パソコン用のソフトは5,000~8,000円だったのに対し、消費者が購入したい価格は2,000~5,000円と差が合開いていました。音楽や映像ソフトと比べても高い水準の価格だったのでソースネクストはあえて新製品を1,980円で販売し、売上を伸ばしました。現在もパソコン用のソフトは高い大手メーカーのものか、機能が劣る簡易的な安価(または無料)のものが多いです。
専門性が高い機能はクラウドサービスもあまりないので、その隙間を埋めるコスパの良い新興ブランドが誕生するかもしれません。
まとめ
コモディティ化した市場は、差別化や脱却は容易ではありません。
あらゆる分野で技術が進化し、新興国から低価格製品を輸入できるようになり、性能や使用感がすぐに共有できるようになった現在では、コモディティ化までのスピードが格段に早くなりました。
だからこそ、あらかじめ普及段階ごとの施策を計画し、どのように優位性を保つかが鍵となります。今回ご紹介した施策方法と、企業の実例がマーケティング戦略の参考になれば幸いです。