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タグラインとキャッチコピーはどう違うのか

ライター:土田 琢磨

公開日:2022年01月19日 | 更新日:2024年10月15日

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「タグライン」はブランディングを高めていく上で、重要な役割を果たすものですが、「キャッチコピー」との違いがわかりにくいといった声をよく聞きます。両者の役割の違いを理解しておくことは、マーケティング施策の効果や効率を上げていく上でも大切です。
本コラムでは、タグラインとキャッチコピーの違いについて解説します。

タグラインとキャッチコピーの違い

ブランディングの支援で「タグライン」の提案をすると、「キャッチコピーと何が違うの?」と質問されることが少なくありません。
また、タグライン案を提出すると、キャッチコピー的なものをイメージされているのか、「ちょっと地味なんじゃないか?」と指摘されることもあります。
言葉を駆使しメッセージを伝えるという点では、タグラインとキャッチコピーは確かに似ています。が、それぞれ担っている役割が異なります。

タグラインのタグ(tag)の意味は「認識する」「区別する」「ラベル」。ライン(line)は「一筆」「一節」という意味があります。直訳すると、「(ブランドを)認識する一節」となります。商品やサービスへの思いやビジョンを身近な表現で端的に表現した「合い言葉」がタグラインです。

「ブランドスローガン」と言い換えることもできますが、スローガンという言葉には少し、内輪向きのイメージや一方通行感があります。「合い言葉」と言いましたが、タグラインはブランドと生活者(アウター)、社員(インナー)をつなげるものです。自社の商品やサービスが何をもたらすのか、生活者とかわす約束であり、同時に社員が何を志すべきかを示す言葉です。
ブランドのあり方自体に深くかかわるものですから、当然、頻繁に変更されるものではなく、中長期的に使い続けるものです。

一方、キャッチコピーはその名の通り「キャッチする」のが役割。一言で生活者の気を引くための言葉です。ターゲットを振り向かせ、そして購入してもらうのが目的となります。

初夏、中華料理店の店頭に掲げられる『冷やし中華はじめました』の張り紙やパン屋の前の『焼き立て販売中!』のポップも、人をふりむかせるキャッチコピー。
言葉の意味自体がわからない造語でも、『うそ!』『えっ!』といった一言だけでも、「何が?」「どうした⁉︎」という関心を集められれば、立派なキャッチコピーです。

どんな言葉が生活者に響くかは、対象者や時期によって異なります。キャッチコピーは季節やターゲットによって、その都度都度で変わっていいし、変えていくべきものです。

 

タグラインとキャッチコピーの違い

 

柔軟に変化するのがキャッチコピー

タグラインとキャッチコピーの違いを、ダイエットサポートを行うライザップを例に具体的に見ていきましょう。
ライザップのタグラインは「結果にコミットする。」です。「私たちはあなたの結果にコミットします」と利用者と約束をする。この言葉は同社の事業全体に通底するもので季節やターゲットが変わろうと、揺らぐことはありません。それがブランドの強さにつながっています。

CMではこのタグラインを掲げながら、時期やターゲットに応じて細やかにキャッチコピーを変えています。
年初には「今年こそ痩せます」「新しい年に痩せたいあなた」と呼びかけ、夏前には水着姿の女性が登場する。
「一生ガリガリだと思っていました」と痩せた若い男性が登場したり、「まだまだ現役」と70代の男性タレントが登場したり。
また、シニアプログラムがスタートした際には、俳優の松平健を起用し「健康寿命を延ばしたい。」というキャッチコピーでCMを展開していました。
痩せたい女性や筋肉をつけたい男性、健康であり続けたいシニア、それぞれに対して送る言葉は変わっても、「結果にコミットする。」と約束は変わらない。これが、タグラインとキャッチコピーの違いであり、関係です。

両者がそれぞれの役割を果たすことで、ブランドメッセージは伝わり、販促に結びつく。逆に、キャッチコピーとタグラインそれぞれの役割を混同させてしまうと、本来、果たせるはずの目的を果たせなくなってしまいます。

タグラインもキャッチすべき?

冒頭で触れたように、タグラインを提案したときに「目立つ言葉じゃないよね」という意見をいただくことがあります。キャッチコピーは人の関心を集めるものですから、目立つ言葉を考えていきます。しかし、タグラインも同様であるべきでしょうか?

もちろん、生活者の印象に残ることは大事かもしれません。しかし、タグラインの役割や目的から考えると、目立つことは決して重要なことではありません。
必要なのは、誰に対しても、いつでも伝わること。そして、長く使っていても色あせない言葉であること。むしろ、キャッチコピーのようにトレンドを意識したり、限定されたターゲットにしか伝わらない言葉はタグラインに向いていません。

「私たちはみなさんとこれを約束します」という、不変的なメッセージを生活者にキチンと伝えられているか。こうした目線でタグラインは考えていくべきです。

たとえるなら、タグラインが土台でキャッチコピーはその上に立つネオンサインです。タグラインをしっかり定義するとキャッチコピーも浮かびやすくなるし、効果も出やすくなります。逆に土台がしっかりしていないと、上辺だけのコミュニケーションになってしまいます。キャッチコピーで一瞬、振り向かせることができたとしても、それでは購入や継続、推奨につながらないでしょう。

役割を意識した広告展開を

重要なのは、タグラインとキャッチコピー、それぞれの役割を生かしてコミュニケーションを図っていくこと。その点において、印象に残った広告をご紹介します。

2021年10月、コンビニのファミリーマートはプライベートブランドを「ファミマル」にリニューアルしました。10月17日読売新聞の朝刊に一面広告を出稿。そこには、次のようなキャッチコピーが大きく掲げられていました。

「負けていたのは、イメージでした。」

 

ファミリーマートの広告

 

この広告は話題になったのでご存じの方も多いと思います。ファミリーマートのハンバーグと“業界1位の会社”のハンバーグ、どちらがおいしいのか? イメージでの意見と銘柄を隠して実食したブラインド調査との結果を比較し、「負けていたのは、イメージでした。」と高らかに掲げたのです。

「負けていたのは」という以上、勝負の相手がいることは明らか。こう言われたら、誰しも「何が⁉︎」と気になり、キャッチコピーの下に書かれている文書を読んでみたくなる。ただ単に「アンケート調査の結果発表!」「ファミマのハンバーグのほうが美味しい!」と書かれていただけでは、ここまで人を惹きつけることはなかったでしょう。
キャッチするという目的を十二分に達成した秀逸なキャッチコピーです。しかし、ファミマル誕生時の広告戦略はこれだけではありませんでした。

同時期、ファミリーマートは「そろそろ、ナンバーワンを入れ替えよう。」というキャッチコピーを掲げた広告を渋谷駅に展開しました。

「業界1位の会社」や「ナンバーワン」がセブインイレブンを指しているのは明らかです。コンビニ業界は売上・シェアともにセブンイレブンがダントツで、2位のローソンと3位のファミリーマートを足しても、セブンイレブンに届きません。
しかし、絶対に敵わない壁として立ちはだかっているセブンイレブンに対して、臆することなく対抗していく。その思いが、この時期の広告戦略にあったことがわかります。

ファミリーマートは「あなたと、コンビに」をコーポレートメッセージとして掲げています。これがファミリーマート全体のタグラインに該当しますが、ファミマルの発表と同時に、「チャレンジするほうのコンビニ!」という宣言も行なっていて、これもタグラインに近いメッセージです。

「負けていたのは、イメージでした」という新聞広告も、「ナンバーワンを入れ替えよう」という駅看板も、「チャレンジするほうのコンビニ!」が土台になっています。

タグライン(的な言葉)がブランド戦略を明確にし、その上に力強いキャッチコピーが人の関心を惹きつける。とても、印象に残る広告戦略でしたが、キャッチコピーが響いたのも、それを支える地味なワードをしっかり開発して、ブランドとしての考え方が強固になっていたからだと思います。

タグラインとキャッチコピー、どちらが重要なのか比較するものではありません。それぞれに大切な役割があり、両方とも大切。その目的と役割を理解したうえで開発していくことが重要です。

ブランディングは目先のデータにふりまわされることなく、中長期的な視野に立って進めていくものです。その核となる「合言葉」がタグライン。
広告含めマーケティングは時期やターゲットに応じて、柔軟に展開していくものであり、その看板の一つとなるのがキャッチコピー。この使い分けを意識すると、マーケティング施策の効率や効果は格段に上がっていくでしょう。

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土田 琢磨
WRITER
土田 琢磨
コピーライターとしてキャリアをスタートし、国内広告会社にてクリエイティブ部門責任者・シニアクリエイティブディレクターを務めた。主に、広告クリエイティブのディレクション・コピーライティング・CMプランニングを担当。医薬品・新聞社・官公庁・教育・家電などのクライアントワークに携わる。

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