Instagram運用のよくある失敗例-その原因は「目的が無い」から
たとえば、次のようなケースは、比較的よく見受けられる失敗例です。
---『Instagramが流行しているから、わが社も』と考え、ひとまずInstagramアカウントを開設。しかし、若者文化はよくわからないので、若手社員を一人、担当者にアサインし、あとは運用を任せておいた。
何ヶ月か経過して、『フォロワーが少し増えてきた』と報告を受けた。良い知らせだが、この成果を活かすために、何をすれば良いか判然としない。
『とにかく宣伝してみれば、売上につながるだろう』と、新商品の販売PRを積極的に投稿したら、急にフォロワーが激減してしまった。
こうした状況に陥ってしまう根本的な原因は、「何のためにInstagramを運用するのか」という意識が明確ではないことにあります。
目的が無いために、「上手く行っているのか、行っていないのか」の判断もできず、ある程度の手ごたえを感じたところで、事業の成果に結びつけることもできません。
また、フォロワーの傾向もうまく掴めておらず、あからさまな宣伝を投稿したら一気に敬遠されてしまった…といった失敗もありがちです。
最初から「次の新製品の売上につなげる」という目的を持っていれば、「この新製品に興味・関心を持ちそうなセグメントを狙って、その人たちが集まるような投稿を行っていこう」と、Instagram運用にも戦略を持たせることが可能でした。
しかし、目的もなく運用を続けてしまったために、フォロワーの傾向と、自社製品のターゲットとが合わず、いざ力を入れて行った宣伝が敬遠されてしまったわけです。
※SNS広告の基礎については、こちらのショートウェビナ―動画をご覧ください。
Instagramは一つの手段に過ぎない!「なんのために運用するのか」が一番大切
Instagram運用でもっとも重要なのは、「なんのために運用するのか」という目的意識を明確に持つことです。
Instagram運用は、あくまで手段の一つに過ぎません。
事業の業態、現在の課題、経営目標などをしっかりと捉え、事業フェイズに合った目的をInstagram運用にもしっかりと持たせることが大切になります。
■KGIを設定し、KPIに落とし込む
多くの事業や企業活動と同様に、Instagram運用にもKPI・KGIの設定が必要です。
KGIとは、Key Goal Indicatorの略称で、「重要目標達成指標」と言い換えることもできます。そして、KGIを達成するための中間目標が、KPI(Key Performance Indicator)となります。
たとえば、「次期新製品の初動販売数5000件/月」という指標をKGIに設定すれば、「見込み客をあらかじめ5000人以上は獲得しておきたい」と見えてきます。
これを掘り下げて、「次期新製品のターゲットになりそうな見込み客を、発売月までに5000人獲得する」という、具体的な中間目標=KPIを設定できます。
■KGIとKPIの設定例
・KGI(最終目標) … 次期新製品の初動販売数5000件/月
・KPI(中間目標) … 次期新製品のターゲットになりそうな見込み客を、発売月までに5000人獲得する
そうなると、このKPIを達成するために、Instagramが活用できそうですね。
次期新製品のターゲットになりそうなセグメントを、マーケティングリサーチでしっかりと調べ、その人たちが興味・関心を持ちそうなトピックスについて投稿していったり、その話題についてコミュニケーションを深めるような運用が効果的になりそうです。
そうして最初から興味・関心のあるセグメントにアプローチし、見込み客をフォロワーとして集めておけば、新製品の発売をPRしても敬遠されず、販売につなげることが期待できそうです。
必要な人材2:フォトグラフィック、画像編集、ライティングなど、クリエイティブの専門家
Instagram運用は、投稿するコンテンツも非常に重要です。
いかに「フォローする価値のあるコンテンツ」を提供し、他のアカウントとの差別化を図れるかが、フォロワー数増加の大きな要因になるためです。
ターゲットユーザーの目線で考えて、「このアカウントをフォローしたい」と思えるような、価値の高いコンテンツを提供していくことが、アカウントを育てるためには欠かせません。
Instagram運用であれば、具体的には、次のような専門性を持った人材が例に挙げられます。
■フォトグラファーやイラストレーター、画像編集など、写真・画像の専門家
Instagramは写真や画像をメインコンテンツとしたSNSです。そのため、ユーザーが閲覧して、ファーストインプレッションで好感を持てるような、高品質な画像は欠かせません。
また、近年はスマホのカメラ機能も進化しており、アプリ等で高度な編集も容易に行えるようになっています。いわゆる「インスタ映え」と言われますが、Instagramで人気の出やすい写真の撮影方法や編集方法も、ユーザー同士で知見が共有化されています。
こうした背景もあって、一般ユーザーの投稿する写真や画像も高品質化が進んでいます。なんの工夫もなく撮影した写真をそのまま掲載するだけでは、競合との差別化どころか、低品質なアカウントだと見なされてしまう可能性もあります。
より高い水準で“プロ並みの写真”が求められると言って良いでしょう。
■ライティングなど、文章やキャッチコピーの専門家
SNS投稿において、画像と並んで主要なコンテンツになるのが文章です。
どれだけ魅力的な写真が並んでいても、そこに「言葉」が無ければ、ブランドの世界観やメッセージを伝えることはできません。逆に、同じ写真でも、より魅力的な投稿文が付くことで、閲覧数や反応率が大幅に伸びることもあります。
またSNSでは、ユーザーとのコミュニケーションも文章で行われます。他のユーザーの投稿にコメントを付けたり、自分の投稿についたコメントに返信をしたり、といったコミュニケーションは、短い文章で行われることが通常です。
短い文章で、誤解なく伝わり、さらに好印象になるような文章を作ることは、そう簡単なものではありません。キャッチコピーやライティングの専門的な技能が必要になります。
■炎上対策に、SNSユーザーの気持ちや価値観を理解できる人材も
Instagram運用では、いわゆる「炎上」のリスクもあります。
SNSにおける「炎上」とは、アカウントや投稿に対して批判の声が広がり、多数のユーザーから非難されてしまう現象のことです。
「多くの人を怒らせるような投稿をしなければ良い」「自社のSNS担当者はシッカリしているから大丈夫だ」といった認識では、炎上対策になりません。
・長年の運用経験のあるアカウントでも、炎上のリスクはある
・SNS炎上により、製品の発売中止といった重大な事態に発展する恐れがある
・「女児向けグッズのキャラクターのセリフ」といったニッチな要素でも、顧客コミュニティを超えて批判が広がる
…等のSNSならではの特徴がわかります。SNSにおける炎上は、従来の「クレーム」とは大きく異なる性質を持っていると言えるでしょう。こうした炎上のリスクを抑えるために、「SNSユーザーの気持ち」がわかる人材も欠かせません。
Instagramには、他にも様々な目的設定と活用方法がある
さて、今しがたご紹介したのは、「次期新製品の初動販売数のために、Instagramを活用する」というパターンでした。こういった方法の他にも、Instagramには、様々な活用方法があります。
いくつか一般的な例をご紹介しましょう。
◆認知を高める
製品やブランドの認知を高め、より多くの人に「知ってもらう」ためにSNSを活用します。
◆ファンを増やす
製品やブランドを、思い入れを持って愛好してくれる「ファン」の獲得と、コミュニケーションを目的とするInstagram運用です。
◆リードジェネレーション、リード育成
自社の製品やサービスを購入・利用してくれそうな「見込み客」を集め、その興味関心を高めていくことが目的です。
◆ECサイト等、自社サイトへの誘導
自社の運営するECサイトやオウンドメディアなど、ウェブサイトへの誘導を目的とする運用です。
こうした活用例は、最終的に売上に直結していくものと言えるでしょう。
このほかにも、次のような目的でのInstagram運用もあります。
◆コンテンツの制作
たとえば、製品モニターをInstagramで募集し、感想や評価をモニター自身のInstagramアカウントで発信してもらうなど、コンテンツ作りにInstagramを役立てることもできます。コンテンツをユーザーと一緒に作っていけるため、ファンの育成にもつながります。
◆SNS検索対策
現代のインターネットユーザーは、気になる話題やトピックスについて、Googleなどの検索エンジンではなく、InstagramやTwitterなどのSNSで検索することも多くなっています。そうした検索対策として、Instagramを運用する方法もあります。
◆ブランド体験を提供する
Instagramの「ARフィルター」機能等を用いて、製品やブランドの使用感を疑似体験してもらうことも可能です。たとえば、家具やインテリアなどをARフィルターとして提供すれば、ユーザーはその製品を自室に置いた時のイメージを、スマートフォンを通して疑似体験できます。
■Instagramならではのベネフィットは、「ユーザーに共有してもらえること」
これらの取り組みをInstagramで行うベネフィットは、まず何よりも「ユーザーに共有してもらえること」です。
認知の向上、ブランドのファン育成、リードジェネレーション、自社サイトへの誘導などをはじめとし、いずれの取り組みも、Instagramを利用しない方法もあります。
しかし、Instagramを活用してこれらの取り組みを行うと、自社からの発信がユーザー同士のコミュニケーションにつながり、ユーザー同士で情報を共有、拡散してもらえます。この「拡散すること」は、InstagramをはじめとしたSNSならではの大きな利点だと言えるでしょう。
具体的なKPIの設定例-どんな指標を見れば良いのか
それでは続いて、具体的なKPIの設定例を見ていきましょう。
先ほども解説した通り、どんなKPIを選択するかは、その大きな目的であるKGIの設定次第になります。そのため実際には、KGIをまず設定し、その達成に資する指標として、KPIを選択していく流れになります。
とはいえ、具体的にどのような指標がSNSにおけるKPIとして計測できるのか、ある程度は知っておくことも重要です。そこで、こうしたSNS運用のKPIについて、主な具体例をいくつかご紹介していきます。
■「フォロワー数」「インプレッション数」「リーチ数」…いかに接点を持つか
(1)自社アカウントのフォロワー数や、(2)投稿がどのくらい閲覧されたかを示す「インプレッション数」、(3)何人のユーザーに閲覧されたかを示す「リーチ数」などの指標が挙げられます。これらの指標により、いかにユーザーとの接点を持てているかを測ることができます。
こうした指標は、どんな目的でInstagramを運用する場合でも、多くのケースで重要になってくるポイントとなるでしょう。まずユーザーとの接点を確保しなければ、Instagramの強みを活かした施策も実現が難しくなるためです。
■「アクション数」「アクション率」「エンゲージメント数」…いかにコミュニケーションが達成されているか
Instagramはコミュニケーションのメディアです。そのため、ユーザーとコミュニケーションをいかにとっていくかも重要なポイントになります。
具体的なKPIとして計測できる指標は、「アクション数」「アクション率」「エンゲージメント数」などになります。これらの指標により、アカウントや投稿に対して、どのくらいのユーザーが反応し、コミュニケーションがいかに達成されているかを可視化することができます。
■「お客様からの口コミ」「ハッシュタグ数」「UGC数」…いかに情報が拡散しているか
ユーザー同士による共有=「拡散」も、Instagramならではの大きなメリットです。いかに拡散が発生しているか、また、どのように自社のブランドや商品、投稿内容が言及されているかを測るためには、「お客様からの口コミ」「ハッシュタグ数」「UGC数(ユーザーによって作られたコンテンツの数)」などを見ていくと良いでしょう。
また、単なる数値の分析に留まらず、どのような内容で話題になっているのか、どんな点が好評になのか、あるいは「良くない口コミ」の内容はどんなものなのか等、ユーザーによる投稿の中身もしっかりと確認し、製品やサービス、Instagram運用方針の改善などに役立てていきましょう。
■リンクからの遷移数、ショップタグの閲覧数など…売上にどの程度つながっているか
Instagramを販売促進の目的で活用する場合、リンクからのECサイトへの遷移数や、ショッピング機能の利用数、ショップタグの閲覧数、コンバージョン率(CVR)などの指標もKPIとなります。
これらの指標を測ることで、Instagram経由で購入に至ったユーザーが何人いるのか、どんな投稿内容が購入の促進に効果的なのか、といった点を把握できるようになります。
事業のフェーズによって目的やKPIを変えることも重要
場合によっては、事業のフェーズによってInstagramの運用目的を柔軟に変えていくことも重要になります。
ここでは一例として、新規ブランドの立ち上げと共に、Instagramアカウントを開設し、Instagram運用を開始したと仮定して、事業フェーズの各段階におけるKPI設定の例を見ていきましょう。
■フェーズ1:認知の獲得
まず最初の段階は、認知の獲得が大きな目的になります。立ち上げたばかりの新規ブランドですから、多くの人には知られていません。Instagramを活用して、認知を拡大していきましょう。
見込み客の興味・関心のあるトピックスについて積極的に投稿したり、タグ付け投稿を行って、アカウントを見つけてもらえるよう工夫していきます。
このフェーズでは、フォロー数、フォロー率、インプレッション数などのKPIを見ていくと良いでしょう。
■フェーズ2:フォロワーとの関係構築
ある程度のフォロワーが獲得できたら、次はフォロワーとの関係性を深めていく段階です。
「なんとなく知ってフォローはしたものの、そこまで深い関心は持っていない」というフォロワーもまだまだ多いでしょう。マーケティングファネルにおける「認知」の段階です。ここから、さらに興味関心を引き出し、ファネルをドリップしていく必要があります。
ユーザーとしっかり双方向のコミュニケーションが取れているか、「アクション数」「アクション率」「エンゲージメント数」などのKPIを設定して、運用に取り組んでいきます。
■フェーズ3:製品の魅力や世界観をアピールし、販売を促進する
ここから先のフェーズは、事業により大きく異なります。そもそもの大きな目的を、どのように設定したかにより、取るべき施策や方向性も変わってくるためです。
ここでは例として、「製品の販売促進」を大きな目的にしていると仮定し、続きを解説していきます。
さて、フォロワーも集まり、コミュニケーションも十分に行えるようになり、信頼関係が構築されてきました。この段階でそろそろ、次の目的である「製品の販売」に結びつくよう、Instagram運用のKPI設定も変えていきます。
具体的には、自社ECサイトへの遷移数や、Instagramのショッピング機能からどのくらい販売できたか、ショップタグの閲覧数、コンバージョン率などを見ていきます。こうした指標は、一般的なECサイトのKPIと似ています。
■フェーズ4:お客様からの評判は?フィードバックを集める
製品が売れてきたら、お客様からの評判などフィードバックを得て、カスタマーサポートにつなげたり、今後の施策に反映したいところです。
お客様から反応を引き出せるよう、Instagram運用では、「お客様からの口コミ」「ハッシュタグ数」「UGC数」などをKPIに設定し、よりフィードバックを引き出せるよう、コミュニケーションを重視した運用に軸足を移していきます。
たとえば、お客様が口コミを自分のアカウントに投稿してくれたら、「いいね」を押したり、簡単なコメントを付けてみるのも良いでしょう。「公式から反応をもらえた!」と喜ばれ、さらなる反応を得られる可能性もあります。
■事業の段階に応じて、KPIを柔軟に変える
このように、Instagram運用は、事業の段階に応じてKPIを柔軟に変えていくことも重要です。
また、投稿単位で目的を使い分ける方法もあります。たとえ事業フェーズが進展しても、「認知の拡大」や「顧客コミュニケーション」などは、常にKPIの1つとして継続していくケースもあるでしょう。
こうした場合は、たとえば「この投稿は販売を促進するため」「次の投稿はお客様の反応を引き出すため」「今度の投稿は認知を拡大するため」といった風に、投稿単位で目的を使い分け、KPIを設定していくことも重要になります。
フェーズが進めば進むほど、Instagram運用の戦略は複雑になっていきます。投稿単位でしっかりと目的を捉え、KPIを見失わないよう運用していきたいところです。
他にも様々なKGI/KPI設定の選択肢がある
さて、これまでご紹介したKGI/KPIの設定方法は、Instagram運用における、ごく一般的な例の一部に過ぎません。
Instagram運用の目的は企業によって異なり、それに応じてKGI/KPI設定にも選択肢・組合せが複数あります。
たとえば、Instagram運用の目的を「ファンの育成」に絞っているようなケースです。この場合、顧客満足度やNPSといった指標がKPIに用いられることもあります。
また、自社Instagramアカウントが認知経路にどのぐらい貢献しているか、カスタマージャーニー全体を俯瞰しながら把握していく方向性もあるでしょう。
Instagramの分析ツールである「インサイト」機能では計測できない指標もあるため、他の手段を使って指標を確認していく場合もあります。
もし、他のInstagramのKGI・KPIの設定方法の具体例を知りたい方は、株式会社フルスピードが運営する「GrowthSeed」の「Instagram運用におけるKPI設定をKGIパターン別に紹介」にてInstagram運用におけるKPI設定の具体例について解説していますので、併せてご覧ください。【PR】
※NPS…Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)の略。ユーザーを「推奨者」「中立者」「批判者」にカテゴライズし、全体に占める推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出される値のこと。NPSの高い企業は、競合他社よりも高い成長率を示すことが知られている(Bain & Company『How is Net Promoter Score related to growth?』
まとめ:目的を定め、KGIとKPIを設定することは、企業Instagramの運用戦略に必要不可欠
今回は、企業Instagram運用のKGI・KPIの設定について、解説をお届けしてきました。
事業課題や経営目標など、より大きな目標を見極めたうえで、「何のために」Instagramを運用するのか、運用の目標(=KGI)をまず明確に定めることが大切です。そのうえで、「今は何を達成するべき時期なのか」を意識し、事業の段階に応じて適切なKPIを設定していくことが、効果的なInstagram運用につながっていきます。
KGI・KPIの設定は、常に見直しを続け、「今必要なこと」に合わせて柔軟に変えていく姿勢も重要です。事業環境は日々刻々と変化します。ビジネスに求められる成果や、達成すべき目標も、柔軟に変わっていくのが自然だと言えるでしょう。
「明確な目標を持つこと」「達成状況を測るための指標を持つこと」「それらを柔軟に変えていく姿勢」。この3つは、Instagram運用に限らず、事業のあらゆる場面において重要な要素かもしれません。
Instagram運用を1つの事業プロジェクトと捉え、しっかりと計画を立てて取り組んでいくことが、やがては大きな売上や利益へと結実していきます。