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キービジュアルは印象

ライター:与安 紀之

公開日:2023年08月01日 | 更新日:2024年10月24日

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目次

LPのトップ画面にどんな絵素材を使用するか? 広告のメインカットはどんな写真がいいのか? マーケティングに携わっていると、言葉と合わせてビジュアルについて考える機会も多いかと思います。

本コラムでは、PRや広告でカギとなるメイン画像——「キービジュアル」について、マーケティングとのかかわりも含め解説していきます。

キービジュアルとは?

キービジュアルはその言葉のとおり「カギとなる画像」のこと。代表的なのは映画やアニメのポスターですが、紙や映像、WEBサイトなど媒体を問わず、さまざまなコンテンツで使用されています。

マーケティングの領域では、Webサイトのトップ画面やLPのファーストビュー、商品パンフレットやちらしなどに用いられます。キービジュアルは企業やブランド商品の価値観をメッセージ、特徴など「そのものらしさを明確にビジュアル表現」します。

絵素材だけで訴求するものもありますが、多くはキャッチコピーと一緒に、「絵×言葉」で表現していきます。言葉がビジュアルを補ってくれることもありますし、逆に、言葉だけでは表現しきれないニュアンスをビジュアルが伝えることもあります。

たとえば、「グラスから溢れるビールの細やかな泡」「ステーキが焼けて、しみだす肉汁」など、そんなシズル感はどれだけ言葉で説明しようとも、ビジュアルが一瞬で伝えてくれます。

生活者がWEBサイトやポスターを目にしたとき、真っ先に目に飛び込んでくるのがキービジュアルです。そのとき、どんな印象を抱いてほしいのか? どう、記憶してもらいたいのか? これが、キービジュアルの制作にあたって、もっとも重要なポイントになります。

キービジュアルは想起するきっかけ

キービジュアルの目的は見た人に興味、好感を持ってもらうことにあります。キービジュアルでいかに印象を残すか? それは、マーケティング施策と密接にかかわります。

商品やサービスを購入してもらうためには、まず、生活者に想起してもらわなくてはなりません。「暑いからアイスが食べたい」「疲れたから体を癒したい」など、生活者が何かを欲したとき、自社の商品やサービスを記憶から呼び戻してもらう必要があります。そのきっかけとなるのが、CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)です。

たとえば、「ハンバーガーと一緒に飲むから」と、数ある清涼飲料水の中でコカ・コーラを選んだとしたら、「ハンバーガーと一緒に」がコカ・コーラのCEPとなります。

「ハンバーガーを食べるのなら、飲み物はスッキリできるコカ・コーラがいいな」

そう思った頭の中には、おそらく「氷とはじける炭酸」や「赤に白いライン」といった、コカ・コーラのビジュアルが連想されていることでしょう。

それは、「氷とはじける炭酸」「赤に白いライン」といったイメージが、コカ・コーラのメインビジュアルによって強く印象づけられているからです。印象の記憶がそのまま、マーケティングに紐づいているのです。

CEPとビジュアルは、ブランドイメージを相乗的に想起させるきっかけになります。いわば、キービジュアルは、想起する「きっかけのきっかけ」になるのです。

スポーツの迫力を印象づけた1964年東京五輪ポスター

では、キービジュアルが見る人にどういう印象を与えているのか。どんな効果があるのか。具体的な事例で見てみましょう。

まずは、日本デザイン界の巨匠・亀倉雄策さんが手がけた、1964年の東京オリンピックのポスターについてです。公式ポスターは全部で4作品あり、最初に発表されたのが、大きな日の丸と金色の五輪、「TOKYO1964」の金文字で構成されたシンボル・マークのポスターでした。これについては、見たことがある方も多いのではないでしょうか?

その次に発表されたのが、陸上選手がスタートダッシュを切る、その瞬間を切り取った写真をメインビジュアルに使ったポスターです。

背景は漆黒。外国人を含む6人の陸上選手が横一列に並び、まさに駆け出そうとしています。
体半分、リードした選手がいれば、腕を大きく広げ、歯を食いしばる選手もいる。

前へ! 前へ! 

そんな躍動感に溢れ、スターターピストルの残響やにおいすら感じる迫力で、緊迫感も伝わってきます。

撮影は夜の東京国立競技場で行われ、あえて望遠レンズが使われたそうです。遠くから引きで撮った写真を目いっぱい拡大して、レイアウトが組まれました。当時はデジタルカメラなどなく、フィルムで撮影しているため、拡大された写真の粒度は低く、とても荒い画像です。

しかし、それが全体の構図と相まって、肉体を使って競うスポーツの魅力を表現しています。
1960年代当時、それまでオリンピック公式ポスターで写真を使用したことはなかったそうです。革新的なビジュアルとして、このポスターが人々に与えたインパクトは計り知れません。

「これから東京オリンピックがはじまるんだ!」
このキービジュアルはそうした期待感を高めることに見事、成功したのです。

ゆる〜い印象を狙った「アイリサーチ」のメインビジュアル

 

もうひとつ、事例を見ていきたいと思います。これはネオマーケティングが運営するアンケート会員組織「アイリサーチ」のトップ画面です。

アイリサーチはモニター会員登録していただき、市場調査(マーケティングリサーチ)にご協力いただく総合サイトです。アンケートに協力いただくとポイントや謝礼が発生し、それはご自身の買い物に使うこともできるし、社会のために寄付をすることもできます。

2023年、LP特設サイトをリニューアルするにあたり、「そんなに頑張らなくても、『社会にいいこと。自分にいいこと』が、ゆる〜くできる」を、コンセプトとしました。

そこでまずは、メインキャラクター「ゆる井さん」を開発。ペンの手描き感でやさしさやポップさを出し、アイリサーチの親しみやすさや手軽さを端的に表現しました。

そして、このイラストのトンマナに合わせ、ロゴタイプはRやHの文字のカーブを強調させて丸文字に。ただし、すべてを丸文字にしてしまうと、子どもっぽさが出て稚拙な表現になってしまうので、やりすぎやいよう塩梅に留意しています。

このキービジュアルで目指した印象は「力の抜けたゆるさ」です。その狙いは伝わっているでしょうか。

キービジュアルについて考えるときに大切なのは、「どんな印象を抱いてもらいたいのか」という視点です。覚えてもらいたいからとインパクトに走ってしまうと逆効果です。自分たちの商品やサービスをどう思ってもらいたいのかを第一に考えてください。

みなさんも大切な人と会う日、どんな服装にしようか悩み、考えると思います。
スーツにネクタイでビシッと決めて「デキるビジネスマン」を演出するのか? 
それとも、カジュアルにしつつも清潔感ある服装で「親しみやすい人」を強調するのか?

服装ひとつでも、その人の「印象」は変わります。キービジュアルも同じです。見る相手にどのような「印象」を持ってもらえるかから設計し、それが端的に表現されていることが大切です。それが「良い印象」とともに記憶されることがマーケティングの成功につながるのです。


ネオマーケティングは国内約2889万人のアンケート会員を保有するパネルネットワークを構築、ご希望の調査対象者にリサーチを実施することが可能です。
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与安 紀之
WRITER
与安 紀之
クリエイティブ・デザイン業界歴15年超。 多摩美術大学情報デザイン学科卒業後、グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタート。 広告代理店、制作会社を経て、現在に至る。 主に、広告クリエイティブのデザイン・撮影のディレクションなどを担当。ブランディングにおけるビジュアル構築に関わる。

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