オウンドメディアを実際に作っていく場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。基本的な制作方法を7ステップで紹介します。
1. コンセプト設計
オウンドメディア運営の背骨にあたるのが「コンセプト」です。誰に向けてどのような情報を提供するメディアなのか、メディアとして発信していくべき核となるメッセージは何か、といった点を明確にしておく必要があります。
コンセプト設計を進める際には、企業側の独りよがりに陥らないことが大切です。読み手となるターゲットやペルソナを設定し、具体的かつ実在し得るユーザーに対して情報を届けることを意識しましょう。ペルソナが潜在的に求めているものの、現時点では顕在化していないニーズを掘り起こしていくのがオウンドメディアの主な役割です。コンセプト設計はこの後のステップにおける方向性を決定づけるため、十分に吟味した上で決定してください。
2. テーマと運営方針の策定
コンセプトが決定したら、コンセプトにもとづくテーマ案を作成していきます。数回の情報発信で事足りてしまうようなテーマではなく、年単位で発信し続ける必要のある大きなテーマを掲げることが大切です。
次に、決定したテーマに沿ってサイトやコンテンツを制作していくための運営方針を固めていきます。テーマの特性や自社のリソースを考慮しながら、毎月何点のコンテンツを制作していくか、チーム体制をどうすべきか、どのように役割分担をするかなど、具体的な運営方法を決めましょう。
3. サイト制作
コンテンツを掲載するサイトを制作していきます。公式サイト型・独立サイト型のいずれで運営していくかによって、サイト制作の方針は大きく異なるはずです。独立サイト型の場合、コンセプトに沿ってデザインを1から構築しなければなりません。自由度が高い分、制作メンバー間でコンセプトを共有した上で、共通認識をもって進める必要があるでしょう。
また、サイト制作時には資料ダウンロードやLPなどへの遷移を促すCTAの設置方法も検討しておくことが大切です。サイト訪問者がどのように行動するか仮説を立て、できるだけ自然な形で行動を促していくのがポイントです。CTAを固定位置に設置する方法もありますが、コンテンツに合わせてCTAの設置場所を都度判断するのも1つの方法といえます。
4. コンテンツ案の作成
テーマ案に沿って、具体的なコンテンツ案を作成していきます。文字ベースのメディアであれば、記事のタイトル・構成やそれぞれの見出しに記載すべきことなど、制作依頼が可能な段階まで詰めておくことが大切です。
コンテンツのトンマナやNG事項(他社商品名の記載はNGなど)、画像点数や選定基準を明確にしておくことも重要なポイントです。各コンテンツに共通するルールを定めておくことで、リリース後の方向性のブレや担当者ごとの認識のずれを防げます。
5. コンテンツ制作検索エンジン対応(SEO)の効果が高まる
コンテンツ案がそろったら、各コンテンツの制作に入ります。まず構成案を作成し、構成案に沿って記事を制作していきましょう。コンテンツのクオリティを安定的に保つためにも、構成案を自社チームで作成するか、外部委託する場合も一度社内でチェックしてから執筆へと移る方法がおすすめです。
誤字や変換ミス、表記ゆれなどが見られると、コンテンツ全体の信頼性が疑わしい印象を与えるだけでなく、検索エンジンの評価が低下する原因にもなりかねません。原稿チェックは必ず実施するとともに、必要に応じて校正ソフトを活用するなどして品質の高い記事に仕上げましょう。
6. コンテンツ配信
コンテンツ制作が完了したら、サイトにアップロードして公開していきます。CMSを活用するのであれば、委託先の外部スタッフに入稿まで依頼するケースもありますが、公開前のチェックは必ず自社で行うようにしてください。誤りが見つかった場合、公開後に修正することもできますが、基本的には公開した段階で多くのユーザーの目に触れることを想定しておくべきでしょう。
なお、制作したコンテンツは必ずしも単独のメディアでの配信に限定する必要はありません。SNSやメルマガなど、Webサイト以外にも複数のメディアでコンテンツを再利用していくことで、より多くのユーザーの目に触れる機会を創出できます。
7. 効果測定・CTA改善
オウンドメディアの運営は中長期的に継続していくことになります。公開したコンテンツは事後に必ず効果測定を行い、反応の良いコンテンツと反応が芳しくないコンテンツの原因を総括しておきましょう。反応が芳しくないコンテンツについては、必要に応じてリライトを実施するなど、改善を重ねていくことが大切です。
また、CTAの反応を分析し、適宜チューニングしていくことも非常に重要なポイントです。CTAの設置位置、訴求方法、コンテンツとの親和性など、さまざまな角度から分析していく必要があります。分析結果を今後制作していくコンテンツおよび過去に制作したコンテンツに反映させ、改善を繰り返すことでPDCAを回していきましょう。
オウンドメディアの効果を高める運営のコツ
オウンドメディアを運営する目的や具体的な立ち上げ方について理解が深まったでしょうか。次に、オウンドメディアの効果を高め、求める成果を上げるためのコツを見ていきましょう。
カスタマージャーニーマップを作成する
Webサイトなどを訪問したユーザーの行動を想定し、コンテンツ制作を進めるには、カスタマージャーニーマップを作成しておくことが大切です。訪問したユーザーはあくまでも「多数のWebサイトの中から」「偶然にも」自社のオウンドメディアを訪れたことを前提に、タッチポイントを設計していく必要があります。以下は、Webサイトとメルマガ配信を駆使してクラウド会計ソフトへのユーザー登録を促す場合のカスタマージャーニーマップ例です。
【カスタマージャーニーマップ例】
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ユーザーの心理・行動の段階に合わせて施策を講じていくことで、無理なくコンバージョンへとつなげやすくなります。また、どの段階がボトルネックとなっているか分析しやすくなるため、効果の検証や改善施策をより効果的に講じられるのです。
KPIの設定とコンテンツのブラッシュアップ
オウンドメディアを運営する上で、達成すべき目標となるKPIを設定しておくことは非常に重要なポイントといえます。現状の施策が効果を発揮しているのか、改善が必要な点はどこにあるのか判断する際の指標となるからです。一方で、KPIはオウンドメディアの運用フェーズに合わせて設定する必要があります。具体的には、下表の例のようにKPIを設定するとよいでしょう。

オウンドメディアは中長期的な施策のため、リリース後も効果測定・検証を継続することが大切です。KPIの達成率が芳しくない場合には、コンテンツのブラッシュアップやCTAの設置変更を行い、PDCAを回していきましょう。
中長期的な運営を見据えた体制づくり
オウンドメディアの効果を高める最大のポイントは「継続運用」にあると言っても過言ではありません。高品質なコンテンツの配信を継続し、ユーザーの信頼を獲得していくには、安定した運営基盤を確保しておく必要があります。専任チームの設置や運営メンバーの選定、外部委託先との関係構築、予算など十分なリソースを確保しておくことが大切です。
一方で、オウンドメディアは短期的な成果を求めるべき施策ではありません。とくに立ち上げ期や運営開始初期においては、投じるリソースに対して得られる成果があまりないように見えやすいことから、決裁権を握る上層部の説得が必要になる場合もあるでしょう。担当者自身がオウンドメディアを運営するメリットを十分に理解し、自信をもって伝えていく必要があります。
また、短期的・長期的どちらもで成果を出したい場合などは、広告運用と並行してオウンドメディア運用をしていくのもひとつの方法です。KPIの達成率等に合わせて、広告とオウンドメディアの比重を変えて実行していくのも良いと言えるでしょう。