株式会社Antway ※役職はインタビュー当時。 取締役CMO・人事責任者 小川未来様、プロダクトマネジメント担当 鷲頭史一様
設立:2018年11月
事業内容:共働き世帯に向けたプロの調理人・栄養士による家庭料理のデリバリー事業
従業員数:従業員数308名(正社員・契約社員数51名)2022年4月14日現在
はたしてプロダクトの方向性は合っているのか?データで確信を得たかった
都市部の共働き子育て世帯に向けた家庭料理のデリバリー事業を展開する株式会社Antway様。都市部の共働き世帯は年々増加の一途をたどっていますが、はたして自分たちのターゲットだけで良いのか、2020年のサービスリリース以来、しっかりと調査したい課題であったそうです。今回は、ネオマーケティングが提供するエボークトセット調査(※1)とCEP調査(※2)を実施していただきました。
マーケティングに対する考え方や、実施したエボークトセット調査とCEP調査について、取締役CMO 小川未来様、プロダクトマネージャーの鷲頭史一様に伺っていきます。
※1:エボークトセット調査:特定の商品カテゴリにおける、知名集合・想起集合・推奨集合を調査し、個別の商品・ブランドがどのようなイメージを持たれているかを明らかにするネオマーケティング独自の調査サービスです。
※2:CEP調査(カテゴリーエントリーポイント調査):エボークトセット調査で明らかになった、ブランド想起のタッチポイントとなるワード。そのワードごとに、どの商品・ブランドを消費者が思い浮かべるかを定量的に把握する調査手法で、 ネオマーケティングのブランディングサービスの一環で行っております。
――はじめに御社の概要と事業内容について教えていただけますか?
株式会社Antwayは2018年に創業し「あらゆる家庭から義務をなくす」というミッションのもと、2020年2月より宅食サービス「 つくりおき.jp 」を提供しています。これは管理栄養士が監修し、プロの調理人が作った「デパ地下」品質以上のお惣菜を、そのままレンジでチンして食べられる状態でご自宅までお届けするサービスです。料理は全メニュー毎週替わりで、1人前700円程度、週に一回お届けします。2020年のサービス開始から、累計提供食数は350万食を突破(2022年4月末時点)し、現在は1都3県の一部エリアで共働きのご家庭を中心にご利用いただいています。
「機会の平等」が創業の志
――どのようなお考えから「 つくりおき.jp 」は誕生したのでしょうか?サービスに込められた思いを教えてください。
創業者である前島恵は、誰もがチャレンジや勉強、趣味に興じられる「機会の平等」を創業の志に掲げていました。共働き家庭は増加し、男性の家事労働時間が増えてはいるものの、未だ家事労働の負担は女性がより大きいのが現状です。また、本来外部に委託できるのに家庭にて無償で行っている労働について、内閣府統計によるとその市場規模のポテンシャルは100兆円以上あると言われています。
家事労働の中でも最も負担が大きいのが炊事です。炊事は材料の買い物から始まって、栄養やバランスの取れた献立を考えること、調理、片付けといったように手間がかかり、それが1日に3回発生するのです。これらに忙殺され、本来やりたい仕事、勉強、趣味などに興じられないとすれば、機会の不平等や、社会の機会損失につながっている可能性があります。ここから我々のミッションである「あらゆる家庭から義務をなくす」につながり、「 つくりおき.jp 」が誕生しました。
マスへの拡大。そのためには全社員で共有できる指針が必要
――今回はエボークトセット調査、CEP調査をご実施いただきました。どのような背景・課題があったのでしょうか?
PMF(プロダクトマーケットフィット)という言葉があります。一般的には提供している製品やサービスが特定の市場に適合(フィット)している状態を指すのですが、当社もシード期を経て現PMFをある程度達成している状態と認識しています。ただしPMFをしてコアなお客様を掴んでも、そのまま無策にやっていくわけにはいきません。どんどんプロダクトに魅力を足して、マスにたどり着かなくてはいけない。
そのために指針が欲しかった。どう進化するのか、方向性が欲しかったのです。共働きで都市部の子育て世代、特に乳幼児のお子さんがいらっしゃるお客様にはご好評いただくことも増えました。社内の議論では乳幼児の子育て世帯に特化して、機能開発すべきではという意見が出たこともあります。ただ、本当にいまの段階でターゲットを絞るべきか?とずっと考えていました。当社の商品は家庭料理、つまり日常消費財で誰もが必要とするものです。シニア世帯は対象にならないのか?単身の方は?ばりばり働きたいDINKSは? PMFは成し遂げましたが、これからの指針が課題でした。
――そこからどのように「エボークトセット」や「CEP」という概念にたどり着かれたのですか?
以前から書籍で読んで知識としては存じておりました。森岡毅さんの書かれた「確率思考の戦略論」や、バイロン・シャープの「ブランディングの科学」ですね。
以前から、デモグラ(人口統計学的な属性)やペルソナを用いたマーティング企画の経験はありましたが、それだけでは良い施策につなげづらいことも多いなと思っていたんです。そこで、今回はアンケートでCEPの特定をやりたいねとなったのですが、各社に問い合わせても知らないと言われることが多く、結果として御社にたどり着きました。コンタクトしたところリサーチ実績もお持ちだったので、今回調査を依頼することになったというわけです。
――具体的にはどのように調査を進められたのでしょうか?
依頼事項は「当社の事業が狙える余地のあるCEP探索」と「実際に狙うCEP絞り込みのための材料集め」でした。
まず当社はスタートアップであるが故に類似サービスが少なく、事業カテゴリが定義しにくいのです。カテゴリがフードデリバリーでは顧客の課題を上手く定義できていないし、「あらゆる家庭の義務を無くす」というミッションでは広すぎて実務ではしっくりきません。まずは事業カテゴリを定義することが必要でした。
そこで探索的にどのような事業カテゴリ(CEP)があり得るのかを、御社と協力し定量調査と定性調査を組み合わせて洗い出しました。次に洗い出したCEPの中から当社が狙うべきCEPを決める必要があるので、絞り込みに必要な情報を集めるためアンケートを実施しました。
予想外の結果と、「なるほどな」という結果が出たことに満足
――調査結果についてはどうお考えですか?またどのように活用されているでしょうか?
予想外の結果と、なるほどな、という結果がありました。選択肢の粒度が合っていないとか、設問主旨がズレたりするアンケートも世の中には多くあるなか、今回御社と実施させていただいたものがそうはならずに、まず満足しています。CEPの候補も出していただきましたが、その結果にも満足です。良いインサイトを貰えました。
調査と社内検討を往復しながら、CEPは最終的に30個から10個に絞りました。社内にはCEPを知らない人もいましたが、網羅性を担保しながら良い意味でメンバーを巻き込めたかなと思っています。
――調査結果を受けて、今後はどのように進めるおつもりですか?
洗い出したCEPと絞り込みのための材料を調査から得られたので、今はこれを元に直近狙うCEPを決めていく段階です。
次の工程としては、そのCEPで第1想起を得るために、プロダクトロードマップの作成やブランド施策などを行っていこうと考えています。調査で明らかになった、顧客がそのCEPで重視している価値や、そのCEPではどのような顧客属性が多いのかなどの情報を活用していくつもりです。
CEPに関するリサーチ経験が豊富で、パートナーシップ(伴走力)が強い
※プロダクトマネジメント担当の鷲頭史一様
――ネオマーケティングの印象と、今後当社に期待することを教えてください。
CEPに関するリサーチ経験が豊富で、パートナーシップ(伴走力)が強い印象です。当社のやりたいことを把握して、ゼロベースで議論や調査設計をしていただきました。短期間で調査 → インタビュー → 調査 → インタビューを繰り返していただき、PDCAを迅速に回すことができました。今後は引き続き、新しい視点でのリサーチに対しても柔軟にご対応いただけると嬉しいです。アンケートを重視しない会社もあるのですが、当社はとても重視しています。今後も調査系はやっていくので、ぜひ御社にご協力願いたいです。
――それでは最後に、今後のAntway様の展望や目標をお聞かせください。
今後もお客様の課題を解決することに真摯に向き合い「あらゆる家庭から義務をなくす」というミッションを進めていきます。家庭内無償労働市場における炊事の比率はまだ大きいですが、他の労働についても向き合いたいと考えています。
スタートアップでは珍しいことですが、当社は外部のパートナーさんと連携させていただくことが多いです。社内でやるべきことと、外部にお願いすることをきちんと分けています。外部にお願いすることは王道を理解している専門の方(パートナーさん)に相談して、決して我流ではやらない。ただしスタートアップである限りは挑戦を続け、社内でやるべきことはPDCAを回してやっていく。これを私たちは「王道+PDCA」と呼んでいます。当社はこれからも「あらゆる家庭から義務をなくす」というミッションを達成すべく、王道+PDCAを実直に進めていきます。
――以上になります。本日はありがとうございました。
ネオマーケティング担当者から
「エボークドセットを活用した事業拡大に伴走します」
調査設計段階から試行錯誤することも多く、予定通りとならない場面もありました。しかし両者でどうやって共創していくかといった場を多く持てたことやAntway様のリスクを取ってもチャレンジしていく姿勢にも助けていただき、結果として良い成果物につなげられたと思います。
今後益々事業拡大されていくフェーズにあるかと思いますので、引き続きマーケティング支援でAntway様の事業発展に貢献できればと思います。
K.M