<調査背景>
近年ジェンダー平等が叫ばれる中、少しずつではあるものの多様性を受け入れる社会へと変化しています。新しい価値観にも寛容になってきているため、それまでタブー視されがちであった性や生理の悩みについて声を挙げやすくもなってきています。こうした流れの中で、女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決する商品(製品)やサービスを指す「FemTech(フェムテック)」といったビジネスも世界的に注目を浴びています。
そこで今回は、改めて女性特有の健康課題(現象・症状)およびそれに伴う制度についての知識、自身のスタンス等を、勤め先での実態と絡め調査しました。是非今後のマーケティング活動の一資料としてご活用ください。
【調査概要】
調査の方法:株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用したWEBアンケート方式で実施
調査の対象:アイリサーチ登録モニターのうち、全国の20歳以上69歳以下の男女
有効回答数:1,000名(うち有職者681名)
※令和2年度国勢調査に基づいて割付数を算出
調査実施日:2022年11月8日(火)~2022年11月9日(水)
「ウィメンズヘルスリテラシーの実態把握調査」主な質問と回答
・勤務先に制度が「あるかわからないランキング」のTOP3は「不妊治療に対する休暇」「更年期障害に対する休暇」「生理休暇」の3つ。
「不妊治療に対する休暇」「更年期障害に対する休暇」の2つについては、女性であってもライフステージ等の違いから関心が薄いことも頷けるが、有職者の全女性が関係するであろう「生理休暇」がTOP3に入った点は驚くべき結果だ。
・「生理休暇」は、52.6%が制度があっても実際は申請しにくいと感じている。
勤務先の制度の申請のしやすさをランキング化したところ、2位と3位の「更年期障害に対する休暇」「不妊治療に対する休暇」はそれぞれ36.6%・36.5%である一方、「生理休暇」は52.6%と突出して高い割合となった。
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お勤め先の制度(n=681)
有職者に対し、お勤め先の会社の制度についてお聞きしました。なお今回は、制度自体の認知を問うべく、「育児休暇」や「産後休暇」等といった労働基準法上必須の制度も、任意の制度も、全て含めてお聞きしています。
制度の有無について把握していない(「わからない」と回答)順にランキング化したものを1つ目の図に示しています。また、ランキングTOP3の制度の有無を従業員人数別にまとめたものが2つ目〜4つ目のグラフです。
「あるかわからないランキング」のTOP3は「不妊治療に対する休暇」「更年期障害に対する休暇」「生理休暇」の3つ。「不妊治療に対する休暇」「更年期障害に対する休暇」の2つについては、女性であってもライフステージ等の違いから関心が薄いことも頷けますが、有職者の全女性が関係するであろう「生理休暇」がTOP3に入った点は驚くべきことではないでしょうか。
お勤め先の制度の申請のしやすさ
前掲した設問「お勤め先の制度(n=681)」にて、それぞれに「制度がある」と回答した人に対し、制度の申請のしやすさについてお聞きしました。
制度の申請がしにくい(「申請しにくい(しにくいと思う)」と回答)順にランキング化したものを1つ目の図に示しています。
前掲した設問「お勤め先の制度(n=681)」にて掲示した「あるかわからないランキング」TOP3と同じく、「不妊治療に対する休暇」「更年期障害に対する休暇」「生理休暇」の3つがTOP3に挙がりました。しかし順序は異なり、申請のしにくさでは「生理休暇」が52.6%と突出して高い割合となっています。(「更年期障害に対する休暇」「不妊治療に対する休暇」はそれぞれ36.6%・36.5%)
前掲した設問「お勤め先の制度(n=681)」と本設問の結果から、有職者の全女性が関係するであろう「生理休暇」について、制度の有無を把握していない・制度があっても実際は申請しにくい、という状況が浮き彫りになりました。
生理休暇を申請しにくいと思う理由(n=81)
前掲した設問「お勤め先の制度の申請のしやすさ」にて生理休暇を「申請しにくい(しにくいと思う)」と回答した人に対し、申請しにくいと思う理由をお聞きしました。
上の図は、男女それぞれの回答をランキング化したものです。(男性の「生理休暇」について、制度を任意で設けている企業があることを考慮し、今回は調査対象に男性を含めております。なお、「男性の生理」について医学的な根拠はありません。)
男女で結果を比較すると、「生理休暇は無給だから」「評価が下がりそうだから」という理由に差が生じていました。特に前者について男性は11.1%で6位である一方、女性は26.7%で3位にランクインしています。
申請のきまずさや周囲の前例がないということが主な理由ではあるものの、「無給休暇」ということが、「(頻繁に休むわけにはいかないため)我慢して出勤してしまう」「無理をしてでもなんとか働いてしまう」という実態を作っている大きな要因ではないでしょうか。これは業務の生産性の観点からも、企業の安全配慮義務の観点からも、非常に不適切な状況であると言えます。
労働基準法上にある規定の認知度(n=1,000)
各休暇について、労働基準法で規定があることを知っているものをお聞きし、その結果をベースに「労働基準法上に規定があることを知らない(認知度が低い)」ランキングを作成しました。
前掲した設問「お勤め先の制度(n=681)」にて掲示した「あるかわからないランキング」で1位にランクインした「生理休暇」が、ここでも首位を獲得しています。そのうえ、割合は74.9%という高さです。
生理休暇とは労働基準法第68条に規定されている法定休日で、従業員から「どうしても勤務するのが難しい」との申告があった場合には、必ず取得させなければなりません。無理に出勤させたり、請求を認めなかったりするのは違法となります。
法に定められたれっきとした休暇であるにもかかわらず、「生理」=「休めないもの」「我慢するもの」、さらには「隠すもの」「タブーなもの」という意識の強さから、なんとなく生理休暇は“特殊な休暇”として認識してしまっている人が多いのかもしれません。
女性特有の現象・症状への理解度(n=1,000)
女性特有の各現象や症状について、自身がどの程度理解していると思うかお聞きしました。
上のグラフは、「内容を理解している」「少し内容を理解している」を合算した割合を表示しています。
男女の割合を比較すると、全体的に20ポイント以上の差が生じていることがわかります。中でも最も理解度に差があったのが「生理(月経)」で、27.3ポイントでした。
女性特有の現象・症状への理解の必要性(n=1,000)
女性特有の各現象や症状について、自身はこれからどの程度理解を深める必要があると思うかお聞きしました。
上のグラフは、「理解を深める必要がある」「少し理解を深める必要がある」を合算した割合を表示しています。
男女の割合を比較すると、「生理(月経)」「妊娠」「出産」「不妊」の4つに差はほとんどありませんでした。これらについては、現象・症状が生じる当事者の女性だけでなく男性も、自身の理解を深めることにポジティブな気持ちを抱いていることがわかります。
女性特有の現象・症状への職場の理解度(n=279)
女性の有職者279名に対し、女性特有の各現象や症状について、お勤め先の職場でどの程度理解を得られていると感じるかお聞きしました。
上のグラフは、理解を得られていない(「あまり理解を得られていない」「理解を得られていない」の合算)と回答した割合を表示しています。
「更年期症状・更年期障害」が、最も職場で理解を得られていないと感じているようです。また年代別に比較すると、全体的に20代の割合が低くなりました。20〜29歳という年齢では経験しない現象や症状、ライフステージの違いがあることから、関心度合いに差が出た結果でしょう。
職場における、女性特有の現象・症状の理解への期待度(n= 279)
女性の有職者に対し、女性特有の各現象や症状について、お勤め先の職場でどの程度理解してほしいと思うかお聞きしました。
上のグラフは、「理解してほしいと思う」「もう少し理解してほしいと思う」を合算した割合を表示しています。
全体的に約80%〜90%の割合となっており、女性の有職者のほとんどが職場に対し各現象・症状への理解を求めていることがわかります。「不妊」「生理(月経)」については、女性の間でも年代ごとで差が大きく、前者は最大16.2ポイント、後者は最大16.7ポイントの差が生じていました。
テクノロジー用語の理解度(n=1,000)
各用語に対する、自身の理解度としてあてはまるものをお聞きしました。
いずれの用語についても「聞いたことがあり、意味を理解している」割合は10%以下にとどまりました。本調査のテーマ「ウィメンズヘルス」に関係する「フェムテック」(※)は、近年世界的に注目されている分野ですが、やはり認知度が高いとは言えないようです。
※Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語。女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決する商品(製品)やサービスのことを指す。具体的には、生理痛の改善や月経周期の予測、不妊対策、妊娠中のQOL向上、更年期障害の改善、女性特有の病気等のケアへの取り組みがある。
日本フェムテック協会「山田 奈央子さん」コメント
「フェムテック」の言葉や考え方は、新型コロナウィルスの流行をきっかけに「家にいながら活用ができる柔軟なセルフケア」の1つとして注目が集まりました。また企業においても、健康経営やSDGsへの取り組みの中で、女性が自律的キャリア形成をしてより活躍できるように「ウィメンズヘルスリテラシー向上」への取り組みが少しづつ増えてきました。単に女性管理職や議席数などの数値目標を達成するだけではなく、“性別に関わらず、だれもが平等な機会と権利を持てること”を重視する風潮が高まっています。
今回は「女性特有の健康課題」に関する制度導入が広がりつつある中での「職場におけるウィメンズヘルスリテラシー」に関する実態調査を行いました。その結果「生理休暇」は誰もが取得できるものであるのにも関わらず、制度があることを把握できておらず、さらには制度があっても52.6%もの女性が実際は申請しにくいと感じている実態が明らかになりました。このことは、勤務先では「女性特有の健康課題」への理解と対処が進んでいないことをあらわしています。
申請しにくい理由としては「無給休暇」であるという点が挙げられています。「我慢して出勤してしまう」という実態を作っている大きな要因と考えられますが、これでは働く女性のパフォーマンスが下がってしまいます。「生理」=「我慢するも の」、さらには「隠すもの」「タブーなもの」という、女性自身や周囲の意識がまだ残っているのが現状と言えます。
また、最も職場で理解を得られていない項目が「更年期症状・更年期障害」であることも分かりました。生理に限らず、女性が継続して働き続ける上で直面する可能性の高い「妊活」であったり「更年期症状・更年期障害」への職場での理解も急務であることが分かります。
「女性特有の現象・症状に関する理解」では、男性の理解度が低い数値となっているものの、理解したいと思っている男性の割合が女性とほぼ同数いる点はポジティブであり注目すべき点です。
このような実態の中で、女性自身はもちろんのこと、女性と共に仕事をする男性も「ウィメンズヘルスリテラシー」を上げることが仕事を円滑に進める上では必須ですので、男性も無理なく「ウィメンズヘルスリテラシー」をあげられるように企業研修の中に取り入れたり、福利厚生の中での女性の健康視点の取り組みが増えていくことを期待します。
■山田 奈央子さんプロフィール
大手下着メーカーで下着の企画・開発を行った後、世界初の下着コンシェルジュとして独立。株式会社シルキースタイルを設立し、女性特有のお悩みに寄り添ったインナー、コスメ、健康雑貨などの商品企画開発を17年間行う。2021年に、医師、経済人、医療ジャーナリスト、キャリアコンサルタントらと共に(一社)日本フェムテック協会を設立。代表理事として女性特有のゆらぎに寄り添うためのウィメンズヘルスリテラシーの重要さを雑誌・TV・企業・行政などで周知する活動をしている。2男の母。
株式会社シルキースタイル 代表取締役
一般社団法人日本フェムテック協会 代表理事
■この調査のその他の質問
・女性の健康に関するセミナーや研修への参加経験(複数回答)
・勤務先の会社に、女性の健康に関するセミナーや研修制度があるか(単数回答)
・女性特有の症状について、普段相談している相手(複数回答)
・基本情報(現在の婚姻状況、子どもの有無 等)
■この調査で使用した調査サービスはコチラ
ネットリサーチ:https://neo-m.jp/research-service/netresearch/
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<例>「生活者を中心にしたマーケティング支援事業を提供する株式会社ネオマーケティングが実施した調査結果によると……」
■「ネオマーケティング」
URL:https://neo-m.jp/
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