株式会社SHIBUYA109エンタテイメント マーケティング戦略事業部 マーケティング戦略部 SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)所長 長田麻衣様
設立:2017年4月
事業内容:SHIBUYA109事業および関連する事業
従業員数:77名(2019年3月31日時点)
――まずはSHIBUYA109エンタテイメント様のご紹介をお願いします。
株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは、SHIBUYA109渋谷を運営している会社です。私は、その中のマーケティング戦略部に所属していて、若者研究機関SHIBUYA109 lab.の所長をやっています。
SHIBUYA109 lab.は、SHIBUYA109渋谷のターゲットである「around20(15~24歳の男女)」の価値観や実態を把握して、社内のマーケティング活動に活かすことを目的に設立されたマーケティング機関です。今は企業様の若年層向けマーケティング活動のご支援も行っています。
――普段はどのような業務をされているのですか?
SHIBUYA109渋谷に来館している若者を対象に、インタビュー調査を毎月約200人、紙アンケートでの来館者調査を毎月約100人に実施して、若者の実態とトレンドを把握する活動を行っています。グループインタビューは毎週のように実施していますが、自分たちもモデレーター(インタビュー調査を進行する役割)としてインタビューに立ち会っています。
――実施しているリサーチの内容を教えてください。
ネオマーケティングとは主に、定点で実施しているSHIBUYA109渋谷の来館者調査とグループインタビューを一緒にやっています。
来館者調査はSHIBUYA109 lab.で独自に月1回実施しているのですが、毎月実施しているからこそ、若者の流行の移り変わりの早さを感じますね。
SHIBUYA109渋谷の来館者はトレンドに敏感で、世間の3か月先をいっている感覚なんです。来館者調査を基に、世間のトレンドを予想する「月次トレンドレポート」を2年ほど作り続けていますが、精度は高くなっていますね。やり続けることは大変ですが、重要性も感じています。
――グループインタビューはどのように実施しているのですか?
グループインタビューは、テーマを設けて実施しています。アイドル好き、漫画、アニメなどのヲタ活、コスメ、美容男子などです。
例えばヲタ活。今は本当にヲタ活をしている若い人が多く、ヲタ活の意味が軽くなっています。大学生や高校生が年間15万円以上のお金をオタ活につぎ込むんです。
美容男子もこれから普通になってくるかもしれません。化粧水の使用は当たり前、コンシーラーや男性用化粧下地を使う子もいます。繰り返し調査するうちに、男子は「盛りたい」よりも「整えたい」という思いがあるようだということがわかってきました。
ただ、グループインタビューの場合はインタビュー対象者が限られてしまうので、情報が偏ってしまう可能性があります。何回も同じことを色々な人にきいて、傾向をつかむことが大切だと思っています。
――来館者調査とグループインタビュー、定量調査と定性調査のどちらも行う意味はどういったところにあるでしょうか?
「顔」が見えるデータを得ることではないでしょうか。定量調査もビッグデータも数字のデータですが、数字だけ見ているとわからなくなってしまうことがあるんです。「このデータは本当なのか?」と。定量調査だけだと本当に理解したことにはならないと思っています。会って話をする、向き合うことを大切にしています。
定性調査は、すぐに結果の出る何かに活かせることは少ないかもしれません。ただ、何回もやっているからこそ出てくる考察があるし、生まれる言葉やコピーがある。モノを作っている、サービスを提供している人こそやったほうが良いですね。即効性を求めるものではなく、1人の消費者や市場の理解を深めるという形で使っていくほうが向いていると思います。
――ネオマーケティングに依頼していいただいたきっかけを教えてください。
ネオが実施した若者調査のリリースデータを使わせて欲しい、と相談したのがきっかけだったと思います。その後も「グラフレポートだけお願いできる?」とか軽い内容から相談しました。
定性調査を依頼する時は、要望も柔軟に聞いてもらえるし、会社同士の場所も近く、相談しやすいと思います。費用面のメリットもありますね。調査を運用する人ともお会いしているので、安心して気軽に頼むことができます。発言録この日よろしく、という感じで連絡しちゃうんです笑。
――調査を自社で行う場合とリサーチ会社に依頼する場合、どのように使い分けているのですか?
自分たちが入り込んで理解する必要がある調査、若者の感覚を深くつかむための調査は社内でやりたいと思っています。もちろん、リサーチ会社にグループインタビューを任せてしまった方が楽だし、レポートもまとめてもらった方が楽。ただ、自分たちで調査をすると、得られたデータへの理解とそれを説明する時の説得力が全然違うんです。自分たちでやっていく、リサーチ会社と一緒にやっていくという姿勢が事業会社にとっては大事だと思います。定性調査も実施するだけでなく、いろんな関係者に見に来てもらうとか、むしろインタビューに入ってしまえばいいんですよ。
一方で客観的にSHIBUYA109渋谷を見る必要がある時は、ネオに依頼することが多いですね。大規模なグループインタビューや来館者調査は、私たちの目線というよりも客観的にみたSHIBUYA109渋谷を知りたいという目的が強いのでネオに依頼しています。
―― 若者について最も調査をなさっているかもしれませんね。長田所長から見て、今の「若者」を巡る環境はどうなっているでしょうか?
企業の若者への注目度は、高まってきているように思います。若者へのアプローチがうまくいっていない企業が多く、未来の顧客となる若者の価値観をちゃんと把握しておかなければ、という思いがあるようです。セミナーなどでお話する時よく聞くのは、「若者の行動や、使っている単語が理解できない」という声。若者へのインタビュー調査を重ね理解を深めてきた私たちだからこそ、かみ砕いてお伝えできる情報があると思っています。
例えば、ファッション。今の若者に好きなブランドを聞いても、なかなか出てきません。SHIBUYA109渋谷の中で「どこで買い物した?」と聞いても、「7階のあそこにある店」などの回答が返ってきます。
ファッションの位置づけが変わってきています。今はSNSをはじめ、いろいろなところで自己表現ができますから。自己表現の場所が増えたから、ファッションに求める自己表現の度合いが減ってきているんです。1年程インタビューを続けて、好きなファッションブランドが本当に出てこないなと思って笑。もともと持っていた仮説が裏付けられることになりました。
――部署として、また長田様ご自身の今後の展望、目標をお聞かせください。
部署のミッションは2つあります。1つは、SHIBUYA109エンタテイメントのマーケティング体制を定着させること。マーケティングデータを中心に、テナント様の誘致やプロモーション、新規事業などが回っていく仕組みを作ることがゴールです。あらゆる部署が、自立してマーケティング活動を行っていく仕組みを作りたいと思います。
もう1つは、今よりも「若者マーケと言えばSHIBUYA109 lab.」という形にしていきたいですね。情報発信など含めいろんなことにチャレンジしていきたいと思っています。個人的には、若者マーケのプロとしてテレビに出ることを今年の目標にしたいです。
実は今、ネオが起点となって、私たちもネオのクライアント様と一緒にお仕事をしているんです。ネオには、調査だけにとどまるのではなく、新しい価値を生み出すような、会社と会社の「つながり」を作っていってほしいと思っています。総合マーケティング会社として、様々な会社の新しいマーケティング活動につながるような、架け橋のような存在になることを期待していますね。
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント様とは、SHIBUYA109渋谷来館者調査にはじまり、SHIBUYA109阿倍野来館者調査、SHIBUYA109渋谷離反ユーザーへのグループインタビュー等、様々な調査でご一緒させていただきました。
SHIBUYA109渋谷の将来を考える1メンバーとして温かく迎えていただけて、未熟な部分もあったかと思いますが、一緒に成長させていただきました。
ざっくばらんに様々なご意見やご相談をいただけていることも、とても有難く、嬉しく思っています。
調査以外でも、総合マーケティング会社としてこれからもお力になれるよう精一杯努めてまいります!
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